1935年のブルックリン。ここで生活をしているアイルランド移民のカトリック教徒,マラキ(ロバート・カーライル)とアンジェラ(エミリー・ワトソン)の家族の話である。この家族はアメリカで生活できなくなり、故郷のアイルランドに帰る。待っていたものは・・・。
800年もの長きにわたってイギリスの支配下にあったアイルランド。「ジャガイモ大飢饉」に象徴される貧しさは,この国の代名詞だ。世界恐慌を経て,アイルランドのカトリック教徒の極貧家族がどのような思いで,どのように生きたかを息子のフランクの目をとおして綴ったヒューマン・ドラマである。
この映画にはなぜ「アンジェラの灰」という題名がついているのだろうか、映画を観てもよくわからなかった。それもそのはずである。原作の小説を読めば氷解するが、映画の話には続きがあり、後にフランクは家族をニューヨークへ呼び寄せ共に暮らす。1981年,母アンジェラは死に,フランクら息子たちはその遺灰を母の故郷アイルランドに持ち帰った。それは懸命に一生を生きぬいた母への子どもたちの想いであった。「アンジェラの灰」の題名の由来である。