シネマの森の迷走と探索

FBに投稿した映画作品紹介を整理し、再掲します。

☆は「満足度」(☆5個満点、★で補足)。

荒戸源次郎監督「赤目四十八瀧心中未遂」(2003年、159分)☆☆☆☆

2022-11-30 23:26:28 | 日本・2010年~


原作は車谷長吉(1945-2015)による自伝的要素の強い同名作品。車谷は本作品で直木賞を受賞。

舞台は大坂市、尼崎市、そして三重県名張市赤目渓谷。

大坂で日雇い労働をしていた生島与一(大西滝次郎)。手配師の紹介で、仕事を求め兵庫県尼崎市にたどり着きました。

この街で与一が得た仕事は、ホルモン焼き屋を営む勢子ねえさん(大楠道代)の指示に従って、アパートの一室にこもり朝から晩までひたすら鶏肉や牛の贓物を捌き、その肉塊を串に刺すという、孤独な単純労働でした。

その安アパートには刺青の彫師・彫眉(内田裕也)など怪しげな連中が住み込んでいます。与一は誰とも言葉を交わすことなく、ホルモン焼きの下ごしらえを収める冷蔵庫の他になにもない四畳半一間で寝起きする日々。

そんなある夜のこと、与一は以前から気にかけていた同じアパートに住む綾(寺島しのぶ)という女と出会います。

綾の兄は暴力団員で、与一は兄にからまれることを覚悟しますが、兄は組の運営資金に手をつけていて、そのためで綾は兄の借金を
背負わされていました。その結果、彼女は博多の風俗店に売りとばされることになります。

いよいよ博多にたつ日、綾は与一に「あたしをこの世の外へ連れてって」と懇願するのですが・・・。

それにしても赤目渓谷は知りませんでしたが、すごいところですね。行ってみたいです。
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石井岳龍監督「蜜のあわれ」(2016年、105分)☆☆☆★

2022-11-29 23:28:57 | 日本・2000年~


原作は室生犀星の同名小説です。老作家と小悪魔金魚の恋の物語。

老作家の上山(大杉漣)は、飼っている金魚と仲良しです。金魚の成り代わりの赤子(二階堂ふみ)は、上山に「恋人になろう」と提案し、ふたりは仲を深めます。

ある日、赤子は上山と恋人同士になることを提案。上山は、「人間の女がもう相手にしてくれないので、とうとう金魚と寝ることになった」と言い、その申し出を受け入れました。

上山が講演に出かけたおり、赤子はこっそりその会場に向かい、講演を聞きます。すると、隣に座った青白い女性・ゆり子(真木よう子)が、急に呼吸困難に陥りました。

その女性は、15年前から上山と親交があるのだと言いますが、決して上山と会おうとしません。赤子は上山のところに連れて行こうとしますが、その女性は立ち去ってしまいました。

講演後、赤子は上山に「田村ゆり子という女性と会った」と言うと、上山は「田村ゆり子はとうに死んでいる人だ」と応えます。ゆり子は以前、上山が原稿を読んでもらっていた女性だったのですが、あるとき突然亡くなったのでした。

上山、赤子、ゆり子の三すくみで物語は(寓話的に)展開します。
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阿木燿子監督「TANKA 短歌」(2006年、102分)☆☆☆

2022-11-28 23:30:49 | 日本・2010年~


原作は歌人・俵万智による小説「トリアングル」。

主要な登場人物は、33歳のフリーライター・薫里(黒谷友香)、ヴァイオリニストの卵・圭(黄川田将也)、そしてカメラマンのM(村上弘明)。

独身の薫里は既婚者のMと長いつきあいが続いていますが、圭との出会いで新しい展開が・・・。

随所に原作者の俳句がちりばめられています。ベリーダンスのシーンが多くあるのは監督の好みでしょうか?
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森田芳光監督「海猫」(2004年、129分)☆☆☆

2022-11-27 23:33:18 | 日本・2010年~

原作は谷村志穂による同名小説。

舞台は北海道の函館と南茅部町。時代設定が小説では昭和30年代ですが、この作品では昭和50年代に変更されています。

冒頭、函館に住む野田美輝(ミムラ)は、相手の男性から一方的に婚約の破棄を通告されます。彼女の母親の薫の過去の醜聞が理由です。母親に何があったのか? 婚約破棄のショックで声が出なくなった彼女は、母親に不信感を持ち、祖母(三田佳子)から何があったのかを(筆談で)聞き出そうとします。

母親の薫(伊東美咲)は父親の血筋から青い瞳孔と白い肌を受けついだ美人でしたが、それはかえって彼女に重荷で、さびしい幼少時代を過ごしました。成人して銀行員になり、漁師の赤木邦一(佐藤浩市)と出会い結婚し、長女が生まれます。

漁村での昆布採りの仕事は厳しく、薫はついていけません。漁師のグループ間のトラブルは絶えず、ある日、邦一は仲間の漁師たちとトラブルを起こし大けがを負い入院します。入院中、邦一は看護師の啓子(小島聖)を見初め、退院後は家を空けるようになります。

邦一には性格が優しく、函館で職工をしている弟・広次(中村トオル)がいて、彼は薫に心惹かれていました。薫は夫に裏切られた寂しさから広次と会い、一夜を過ごします。その結果、薫は妊娠、次女・美哉が生まれます。

不倫の事実が判明すると、邦一は逆上。薫を外出禁止にします。

そして、ついには・・・。

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黒澤清監督「トウキョウソナタ」(2008年、119分)

2022-11-21 20:55:46 | 日本・2010年~

現代の家族の一典型をとりあげた作品。

舞台は井の頭沿線の一軒家に暮らす佐々木一家。家族がそれぞれ深刻な秘密をかかえています。

家族構成は、健康機器メイカーで働く佐々木竜平(香川照之)と妻で主婦の恵(小泉今日子)、長男で大学生・貴(小柳友)に次男で小学生の健二(井之脇海)。

竜平はある日突然、会社を解雇されます。リストラです。妻の恵には言えません。ハローワークで職を探しますが、良い条件の仕事は見つからず、そんな折、高校の同級生・黒須(津田寛治)と出会います。同じ失業者で、やはり家族に内緒にしています。

ところが黒須夫妻は、中学生の一人娘を残して自殺。竜平はそれを聞いてショックをうけますが、やっとのことでショッピング・モールの清掃員の職に就きます。家族には言えません。

びっくりすることが起こります。貴がアメリカ軍の国外志願兵に応募し、選考が進み、保護者の署名が必要と言い出します。このことで、貴は父の竜平と大喧嘩。結局、もともとは反対だった恵一人の承諾を得て、アメリカへと旅立ちます。

次男の健二(井之脇海)は、金子先生(井川遥)にピアノを秘密で教わり、月謝は給食費を流用していますが、そんなことはすぐにバレます。給食費の未納で小学校に呼び出された恵は、健二の行動に驚きます。竜平は健二をどなりつけます。

この後、強盗(役所広司)が佐々木家に乱入し・・・。

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篠原哲雄監督「起終点駅 ターミナル」(2015年、111分)☆☆☆☆

2022-11-20 20:58:03 | 日本・2000年~


原作は桜木紫乃による同名小説です。わけあって国選弁護人となった主人公の心の遍歴を描いた作品。余談ですが、本作品のなかで主人公がザンギ(鶏のからあげ)をつくるなど、料理のシーンがたくさんあり、印象的です。

舞台は北海道の旭川、そして釧路。

25年前。妻子を東京に残し旭川の地方裁判所判事の職にあった鷲田完治(佐藤浩市)。その彼が覚醒剤取締法違反の裁判を担当することに。被告人はなんと完治の学生時代の恋人だった結城冴子(尾野真千子)でした。

二人には過去がありました。交際していたのは学生時代。おりしも学生運動がキャンパスに吹き荒れ、活動家として政治活動に身を投じていた冴子。完治はそれらの活動に加わらずひたすら司法試験の勉学に励んでいました。その冴子は完治が司法試験に合格した直後、突然姿を消します。

裁判で完治は冴子に執行猶予付きの有罪判決を下します。直後、偶然、彼女の営むスナックで会います。そして、逢瀬を重ねるようになります。

事件が起こります。任期満了で東京に戻る日が近づいていた完治。家族を捨て、冴子と新しい人生を決意したある日、旭川駅のホームで、彼女が完治の目の前で列車に飛び込みます。

このショックで、以後、誰とも関わる事なく国選弁護人として生きてきた鷲田完治。

その彼の前に、ある裁判で弁護を担当した若い女性・椎名敦子(本田翼)が現れます。個人の依頼は受けないことにしていましたが、彼女に冴子を重ね合わせた完治は・・・。
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山口清一郎監督「北村透谷 わが冬の歌」(1977年、103分)☆☆☆

2022-11-18 21:00:47 | 日本・戦前


詩人で文芸評論家の北村透谷(1868-94)が自由民権運動に挫折し文学の世界に入っていく時期の苦悩を描いた作品。透谷は本名・門太郎、東京専門学校(現早稲田大学)中退の評論家・詩人でしたが25歳で夭折。

明治25年年(1892)2月、透谷は評論「厭世詩家と女性」を『女学雑誌』に発表し、近代的な恋愛観(一種の恋愛至上主義)を提唱しました。「恋愛は人世の秘鑰(ひやく)なり」(鑰は鍵の意)という冒頭の一文がよく知られています。

舞台は日清戦争へひた走る頃(明治26年末から27年初夏)の東京。

冒頭、勤務する学校に欠勤中の透谷(みなみらんぼう)にかわり、妻・美那(田中真理)が透谷の様子を伝えに、明治女学校を訪れます。校門で美那は透谷の教え子、斉藤冬子(鳥井恵子)と出会います。冬子の美しさが心に残ります。

美那は事務官から、透谷の退職届の提出を知らされ、悪い予感をもって家路を急ぐと、透谷は咽喉に刃物を突きたて、命を絶とうとしていました。美那の発見で未遂。

透谷の自殺未遂を伝え聞いた知人、友人たちが北村家に見舞いに訪れます。島崎藤村(西塚肇)星野天知(簗正明)、樋口一葉(藤真利子)、山路愛山(堀内正美)、大矢蒼海(石橋蓮司)、平野友輔(河原崎次郎)。

そこへ透谷が現われます。透谷が静かに自らの過去を語り始めます・・・。
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本木克英監督「大コメ騒動」(2021年、106分)☆☆☆★

2022-11-17 21:02:14 | 日本・2000年~


舞台は、大正7年の富山県。

富山県の漁師町から広まった米騒動がモチーフ。米価高騰に苦しむ主婦たちが、コメの積み出し阻止を試み失敗するも、騒動が地元の新聞に載り、騒動が全国に広まる経緯を描いています。

17歳で漁師の利夫(三浦貴大)のもとへ嫁いだ松浦いと(井上真央)は、三人の子を持つおかかで、米俵を浜へと担ぎ運ぶ女仲仕として働いています。

この小さな漁師町では、おかかたちは家事、育児をこなし、さらにわずかの収入になる仕事をもって働いています。漁に出る夫のために毎日一升のコメを詰めた弁当を作るのも彼女たちの仕事。

しかしコメの価格が高騰。頭を悩ませたおかかたちは、リーダー的存在の清んさのおばば(室井滋)とともに、コメの積み出し阻止を試みるも失敗。地元の新聞がその騒動を「細民海岸に喧噪す」と報じました。

大阪の新聞社が陳情するおかかたちの様子を「女一揆」と大きく書き立て、騒動は全国へと広まっていきます。

ある事故で、我慢の限界に達したおかかたちは、さらなる行動に・・・。
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橋本一監督「HOKUSAI」(2021年、129分)☆☆☆☆

2022-11-14 21:03:56 | 日本・2000年~
葛飾北斎の生涯を描いた作品。

舞台は町人文化が隆盛の江戸。

主人公は、その江戸の片隅で芽の出ない一人の絵師、勝川春朗。のちに葛飾北斎と名乗る貧乏絵師です(青年期を柳楽優弥が、晩年を田中泯が演じています)。

絵師としての才能をもちながら、あまりの傍若無人ぶりに師匠・勝川春章から破門されます。

ついには一日の飯すら、食べられなくなる羽目に。ところがこの貧乏絵師に才能を見出した人物がいました。喜多川歌麿(浦上晟周)や東洲斎写楽(玉川宏)を世に送り出した希代の版元・蔦屋重三郎(阿部寛)です。

重三郎の後押しで、「絵の本質」に気づいた北斎は、その才能を開花させます。誰にも真似できない革新的な絵を次々と世に問い、人気絵師となります。

その奇想天外な世界観は、江戸で大評判。

そんなおり、北斎の盟友で戯作家の柳亭種彦(永山瑛太)が、幕府の禁に触れたとの報せが飛び込んできます。信念を貫いた友のため、北斎は怒りに震え、命懸けの作品に取り組みますが……。
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東陽一監督「四季・奈津子」(1980年、120分)☆☆☆★

2022-11-13 21:05:38 | 日本・1980年~


原作は五木寛之による同名小説です。作者の五木はこの小説の執筆動機について、「働く女性が増加し、女性の社会進出が目立つようになった時代を背景に、男にうじうじくっつかず、自立した女性の冒険小説を書いてみようと思った」と語っています。

舞台は福岡、そして東京。

主人公は福岡の実家で父と暮らす四姉妹の次女・奈津子(烏丸せつ子)。飲料会社「九星飲料」の職員で配達業務を担当。最近まで、男友達・金森達夫(風間杜夫)とつきあっていて、一時は結婚も考えていましたが、それは無理かもしれないという予感があります。

5月のある日、奈津子は車を運転して飯塚市の病院に療養中の妹(四女)を見舞います。その帰り、中垣(本田博太郎)という青年から福岡まで乗せてくれないかと頼まれます。道中、中垣が東京に住んでいてカメラマンであると聞いた奈津子は、突然「ヌードを撮ってくれない?」と話を持ちかけます。

東京で写真を撮る約束をして中垣と別れた奈津子は、翌日、反対する達夫に「古い淀んだ池に石を投げるの」と宣言し、数日後、本当に新幹線で東京に向かいます。

東京駅に着いた奈津子は、中垣の案内で撮影場所として借りた彼の女友だち・けい(阿木燿子)の自宅を訪れ、撮影に臨みます。撮影後、福岡へ。

この後、姉の離婚、学生運動にのめりこむ妹や元カレの達夫との確執を経て、自立の道をもとめて再度、上京しますが・・・。
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加藤彰監督「襟裳岬」(1975年、94分)☆☆☆

2022-11-09 23:39:31 | 日本・1970年~


森進一が「襟裳岬」(岡本おさみ作詞、吉田拓郎作曲)でレコード大賞を受賞したのは1974年。本作品はその余勢で制作されたもの。森進一本人もコンサートのシーンで歌手として出演し、歌っています。

舞台は東京の原宿、三軒茶屋界隈。そして北海道襟裳岬。主人公は靖子。クモ膜下出血で急逝した恋人の故郷が襟裳です。

ブティックに勤めている野々宮靖子(山口いずみ)はある日、アパートに帰る途中、八百屋に寄ったおり、高価な布地を入れた風呂敷包みを、店先に停まっていたトラックの荷台に置き忘れてしまいます。気がついた時にはすでにトラックは立ち去っていました。戸惑う靖子。

その時、偶然通りがかった青年・五郎(神有介)の機転で、風呂敷包みは見つかります。

春の展示会が終わり一息ついた靖子は、五郎とラーメン屋でばったり会います。五郎は、故郷・襟裳岬から冷凍倉庫の仕事見習いのために東京に出て来て、ラーメン屋でバイトもしていたのです。

それ以来、二人はデートを重ね、やがてほのかな愛が芽生えます。ある日、約束の時間に待ち合わせの喫茶店に、五郎が来ませんでした。心配になった靖子は五郎の下宿を訪れますが・・・。

後半、急死した五郎の遺骨を抱いて、五郎の親友・俊一(夏夕介)とともに(フェリーを利用して)襟裳の故郷を訪れます。
ラスト、森進一が唄う「襟裳岬」、沁みます。襟裳岬から臨む荒海が印象的です。
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神代辰巳監督「もどり川」(1983年、137分)☆☆☆

2022-11-08 23:41:06 | 日本・1980年~


原作は連城三紀彦による小説「戻り川心中」(1981年)。

歌人・苑田岳葉(萩原健一)の女性関係を中心にその半生を描いた作品。岳葉は実在の人物ではありません。ショーケンの無頼ぶりが炸裂!!

舞台は大正時代後半の東京。

歌人・岳葉は才能がありながら、破天荒な生活ぶりでその力を発揮できずに、世にも認められず、すさんだ日々を送っていました。

病身の妻ミネ(藤真利子)を顧みず、遊廓通い、師匠・村上秋峯(米倉斉加年)の妻・琴江(樋口可南子)との不倫、深窓の令嬢で彼のファンだという音楽学校の女学生・文緒(蜷川有紀)との許されぬ恋愛など女性遍歴を重ねます。しかし、それらはすべて、歌を作るための実践でした。

あげくのはて、岳葉は文緒との心中の失敗を題材とした歌集を出版し、歌壇に認められ一躍、時代の寵児となります。しかしその心中は、・・・
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深作欣二・佐藤純彌・中島貞夫監督「人生劇場」(1983年、138分)☆☆☆

2022-11-07 23:42:43 | 日本・1980年~


原作は尾崎士郎による同名小説です。「青春篇」「愛慾篇」「残侠篇」がベースで、深作監督が「愛慾篇」、佐藤監督が「青春篇」、中島監督が「残侠篇」をそれぞれ担当しています。

ひとことで言えば、大正ロマンのムードを背景に、主人公・青成瓢吉の成長のプロセスを人生劇場としてドラマ化した作品。

大正7年の東京。早稲田大学で貧乏学生の日々を送る青成瓢吉(永島敏行)。彼にとって故郷・三州吉良には、さまざまな想いがありました。

没落したものの男の矜持を失っていない父・瓢太郎(三船敏郎)の心意気、幼なじみ・おりんと(叶和貴子)の淡い初恋、そして、何かと彼をかばってくれた侠気の男・吉良常(若山富三郎)など。

とくに吉良常は、瓢吉が原因となった喧嘩で人を殺め、獄窓につながれていました。その頃、瓢吉は吹岡(奥田瑛二)、横井(平田満)と知り合い、学生運動(大隈重信夫人銅像建設反対運動など)にのめりこみます。

そんなおり、瓢吉はお袖(松坂慶子)と知り合います。お袖は瓢吉の純粋さに惚れこみ、二人は急接近。

学生運動は内部分裂を繰り返し、瓢吉は大学を捨てる決意をしますが・・・。

出演は他に、女流作家を目指す照代(森下愛子)、侠客・飛車角(松方弘樹)とその愛人・おとよ(中井貴惠)など。
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石原興監督「獄(ひとや)に咲く花」(2009年、94分)☆☆☆☆

2022-11-06 23:44:42 | 日本・2010年~
原作は古川薫による小説「野山獄相聞抄」(改題:吉田松陰の恋)。

主要な舞台は安政年間の長州藩の牢獄・野山獄。この牢獄は武士階級に属した囚人が入ることになっていて、12室の独房が6室ずつ向かい合わせの構造。検視小屋や刑場も設けられていました。幕末には、この作品にあるように吉田松陰も収容され、獄内で教育活動を行いました。

1854年、海外密航を企てた吉田松陰こと寅二郎(前田倫良)は、長州藩の士分を収容する牢獄、この野山獄に送られてきます。ひとたび入れば生きては出られない地獄の牢獄として知られています。

そこは長い幽閉生活で希望を失った者で溢れ、喧嘩がたえません。しかし、牢獄でも松蔭は常に前向き。思索を重ね自らの生き方を鍛えます。松陰の姿に、牢につながれた輩は、少しずつ心を動かされていきます。

高須久(近衛はな)は唯一の女囚。短歌の集いなどを通じ、松陰に思いをよせますが……。
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佐古忠彦監督「米軍(アメリカ)が最も恐れた男~その名はカメジロ-」(2007年、107分)☆☆☆☆

2022-11-05 23:47:57 | 日本・2010年~


戦時中、塗炭の苦しみのなかにあった沖縄、その沖縄が戦後、アメリカ占領軍に支配され、本土復帰もままならなかった頃から、人々のなかで不屈のたたかいの先頭にたった瀬長亀次郎の半生を描いた映画です。

監督はTBSのニュースキャスターだった佐古忠彦さん。音楽担当に坂本龍一さん、ナレーションは元NHKアナウンサーの山根さんと俳優の大杉漣さん。

瀬長亀次郎といえば、わたしがまだ20代半ば頃だったに、「不屈」の闘志として知られた人物です。沖縄の民衆に支えられ、那覇市長、国会議員と闘い続けた政治家、その人が瀬長亀次郎。

米軍統治下の沖縄で弾圧を恐れず米軍に「NO」をつきつけ、演説会では毎回何万人もの人びとをひきつけ、熱狂させました。この

映画では、瀬長亀次郎の知られざる実像と、信念を貫き通したその人生があますところなく貴重な映像で描かれています。
 
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