シネマの森の迷走と探索

FBに投稿した映画作品紹介を整理し、再掲します。

☆は「満足度」(☆5個満点、★で補足)。

アレクサンドル・ドヴジェンコ監督「大地(Земля)」(ソ連、1930年、87分)☆☆☆★★

2020-07-30 20:09:59 | ロシア・ソ連


今から90年前に製作されたサイレント映画です。ソ連映画の古典的傑作と言われています。

大自然と人間とのたたかいを背景に、農業集団化にのりだす農民とそれに抵抗する富農との対立が描かれています。絵画的で豊かな大自然描写と大胆な官能描写は、当時、世界を驚かせました。

舞台はウクライナの農村。富農の妬み深い息子ホーマーが悪の権化として、コルホーズ員ワシリーが善・美の象徴として登場します。

麦畑にそよぐ風、老人の死、実る果実、そこにやってくるトラクター。トラクターがいかに特別なものか、どういう役割を持ったものかが群衆となって現れる農民たちの行動によって示されます。農業にトラクターを入れるか否かで揉める様子がモンタージュ法で描かれます。

対立のなかホーマーはワシリーを卑怯な一弾で殺害します。一人、小舎でワシリーを待っていた婚約者は、絶望のあまり裸でのたうちまわります。
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木村恵吾監督「牝犬」(1951年、100分)☆☆☆★

2020-07-11 11:46:19 | 日本・1950年~
 
戦前の日本映画に登場する女性は、概して、封建的家族制度のなかで控えめでおとなしく描かれていました。良妻賢母型の耐える女性です。戦後になって、この女性像を破壊したのが京マチ子です。

この作品のストーリーは、次のようです。謹厳実直な保険の経理部長・堀江亘(志村喬)は、部下の使い込みを調べるために浅草のレビューに出かけ、そこで踊り子エミー(京マチ子)にあいます。堀江はエミーの肉体に溺れ、会社のカネを横領し、家族から逃避、隠匿し、港町にキャバレーを開くまでになります。その店が雇ったトランペット吹の青年(根上淳)にエミーが心をよせると、堀江は嫉妬で逆上し、狂います。そして・・・。
京マチ子が体当たり演技です。男に何度、突き飛ばされても、突っかかり、ついには籠絡し、破滅させます。

戦前の女性像を完全に破壊した彼女の演技に、当時の観客はおどろいたことでしょう。
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根岸吉太郎監督「遠雷」(1981年、135分)☆☆☆★

2020-07-11 11:43:07 | 日本・1980年~
立松和平の同名の小説の映画化です。

舞台は宇都宮。都市化の流れに抗し、トマト栽培に賭ける青年の姿を描いた作品です。

僅かな土地にしがみつきトマト栽培をしている満男(永島敏行)は、母(七尾怜子)と祖母(原泉)の三人暮らし。父親は家を出て女と同棲、兄は百姓を嫌い東京でのサラリーマン生活。

満夫にお見合の話がきます。あや子(石田えり)という女性で、気に入ります。田舎の暮らしに次々と大小の事件がおこります。父親が選挙を手伝うも、違反行為をして警察沙汰になったり、子供の時からの友人だった広次(ジョニー大倉)が工業団地に住む人妻カエデ(横山リエ)と駆け落ちしたり、トマトが大量発生したアブラムシで全滅したり。

ラスト。満夫とあや子が腐ったトマトを処分し、燃しています。すると、土地を売ってくれないかと不動産屋がやってきて・・・。はるか遠くに雷鳴が・・・。
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ゲイリー・シニーズ監督「二十日鼠と人間(Of Mice and Men)」(アメリカ、1992年)☆☆☆☆

2020-07-01 21:26:04 | アメリカ・1990年~


スタインベックの同名の小説(1937年)の映画化です。1930年代の貧しい労働者たちの境遇と主人公の一人レニーの無邪気さがもたらした悲劇がテーマです。原題はスコットランドの詩人ロバート・バーンズの詩からの引用です。

舞台は1930年代、大恐慌のなかのカリフォルニア州ソルダードから少し離れた大農場。

頭がよいジョージ(ゲイリー・シニーズ)と巨漢で鈍感だがナイーブなレニー(ジョン・マルコヴィッチ)の2人の季節労働者は、農場から農場へ渡り歩く生活を続けていました。二人はお互いに助け合い、将来農場をもつ夢を語りあう仲でした。

彼らは新しい仕事先のタイラー牧場に到着しました。仲間と仕事に慣れ、彼らの夢に賛同するキャンディ(レイ・ウォルストン)の言葉に、夢がまた一歩、現実に近づいたように感じます。

しかし、牧場主の息子カーリー(ケイシー・シーマスコ)は、彼らを疎み敵視していました。この後、次々と事件がおこります。カーリーのレニーに対する暴力、その仕返し。納屋の中で死んだ子犬を抱え悲しむレニーのカーリーの妻(シェリリン・フェン)へのふるまい。そして・・・・。
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