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シネマの森の迷走と探索

FBに投稿した映画作品紹介を整理し、再掲します。

☆は「満足度」(☆5個満点、★で補足)。

チャン・イーモウ監督「サンザシの樹の下で(原題:山楂樹之恋)」(中国、2010年、114分)

2024-12-29 16:43:50 | 中国
文化大革命のもとでの若い男女の淡い恋を描いた作品。

主要舞台は西坪(シーピン)。

「毛語録」「紅衛兵」「走資派」「下方」などの言葉が飛び交います。

タイトルにある「さんざし」は、この作品のなかに時々象徴的にでてくる樹とその実です。

主人公のひとりは都市の高校生である静秋(周冬雨、チョウ・ドン・ユィ)。文化大革命下の教育の一環として、農村にホームステイします。その村には「英雄の樹」と呼ばれるサンザシの樹があり赤い花を咲かせますが、それは抗日戦争で斃れた志士たちの血の象徴です。

静秋が身をよせた農家には、地質調査隊の一員として村を訪れていた青年、孫建新(竇驍、ショーン・ドウ)が同居していました。あたかもその家の三男のようで、「老三」(三番目の兄の意)と呼ばれていました。孫は共産党幹部の息子で、経済的にゆとりがありました。一方の静秋は父親が労働改造所送りとなり、母親は教師の「走資派」との批判を受け職場で再教育を受けていました。

静秋は母親から過失無く教師としての職を目指すようさとされて育ってきました。

静秋と孫は徐々に心を通わせ、母親の目を盗んではひっそりと会うようになります。
やがて、静秋は教師として仮採用となりますが、並行して休暇中には自らきつい労働を志願します。孫は彼女を経済的にも支援しますが、とうとう静秋の母に見つかり二人は距離を置くよう説得されるのですが・・・。

呉天明監督「變臉(へんめん) この櫂に手をそえて」(中国,1997年)

2024-12-25 16:53:51 | 中国


わたしが本格的に映画鑑賞の世界にはまっていった頃(30年ほど前)に観た感動的作品です。

それまで断片的にいわゆる名画は観ていましたが、それらは映画ファン(オタク)でなくとも誰もが一度は観た不朽の作品。

たとえば「ローマの休日」「チャップリンの独裁者」「サウンド・オブ・ミュージック」「カサブランカ」「風とともに去りぬ」「雨に唄えば」「シェルブールの雨傘」「男と女」などなど。

本作品「變臉 この櫂に手をそえて」は誰もが観た作品ではないかもしれませんが、鑑賞者の心にささってくる感動を与えるもので、わたしはこの作品を知って映画の奥深さ、魅力を発掘し、この世界にはすばらしい宝物がゴロゴロころがっていることを知りました。

「變臉」とは瞬時に次々と面を変える中国古来の芸です。本作品はこの變臉の技で人気を博していた老人と跡取りの子との確執を描いています。跡取りは男の子と定められていましたが、老人は子どもが売買されている場所で男の子を買い、芸を仕込みます。この子は熱心に芸を学び、二人の間に強い絆が生まれます。しかし、そのうちこの子が女の子だとわかり、絶望した老人はこの子を手放すことを決めこむのですが、この子は涙ながらに老人にすがります。

「變臉」を初めてこの映画で知り、1920年代の中国の風土を背景にした老人と子どもの葛藤にうたれました。

わたしの映画遍歴(体験)の記念碑的作品です。


チェン・カイコー監督「始皇帝暗殺(原題・荊軻刺秦王)」(中国、1998年、168分)☆☆

2023-03-02 23:31:30 | 中国


舞台は紀元前3世紀の中国戦国時代末期。

当時、中国では7つの国(秦、韓、趙、魏、楚、燕、斉)が群雄割拠。そのうちのひとつ秦の王・政(リー・シュエチエン)は中国をひとつにするとの理想を掲げ、天下統一を狙っていました。

政の幼馴染の趙姫(コン・リー)は彼に協力。彼の天下統一こそが民に平和をもたらすと信じ、燕国討伐の口実をつくるために政の暗殺計画を仕組み、政に恨みをもつ太子・燕丹(スン・チョウ)と、燕に赴きます。

趙姫はそこで暗殺者・荊軻(チャン・フォンイー)と出会います。彼はすでに暗殺者の役割から脚を洗っていましたが、美しき趙姫に心動かさます。

一方、政は側近の長信侯(ワン・チーウェン)の謀反、さらに宰相・呂不偉(チェン・カイコー)が実の父親だったという衝撃の事実を知り、気が動転。

趙姫は彼女の故国で大虐殺を行った政を見かぎり、荊軻と結託。趙姫への愛のため荊軻は燕の使者として政に謁見し、短刀をふりかざすも失敗。その場で果てます。

呆然とする政の前に現れた趙姫は、・・・・。

結果、政が天下統一を果たし。始皇帝と名乗って帝国を築いたことはよく知られているとおりです。
 

リー・チーシアン監督「1978年、冬(原題: 西幹道)」(中国・日本、2007年、101分)☆☆☆★

2023-02-21 23:27:48 | 中国
時代は文化大革命が終焉に近づく1978年の冬(邦題)。

舞台は中国の地方都市・西幹道。

この街で暮らす兄弟と少女との交流が描かれます。セリフは最低限に抑制され、映像で物語を綴ります。

11歳の内気な弟ファントウ(チャン・トンファン)と18歳の兄スーピン(リー・チエ)。兄は仕事に勤勉さがなく、母親に始終、生活態度がなっていない、と怒られています。ちゃんと工場に行っているのか、弟が学校に行く際に見張るように、言われる始末。ファントウは尾行を実行しますが、工場の前で別れると、スーピンは方向転換して別のところへ向かい、廃屋でラジオ放送を聞いています。

叔父を頼って北京からやって来た少女シュエン(シェン・チアニー)が現われます。いつも楽器の二胡を背負っています。兄弟の住む家の前の家屋に住み込みです。彼女に関心を抱いた兄弟は、戸惑いながらも彼女と交流を深めていきます。スーピンはたぶんに恋愛感情をいだいて、ファントウは自分が描いた絵を褒められて嬉しくなります。

その後、シュエンは父親を失い、それがきっかけでスーピンとシュエンは恋愛関係になります。密会現場が町の人たちに見つかり、ふたりは町の人たちから村八分にされます。この事件の後、スーピンは逃げるようにして入隊し軍隊での生活に入りますが・・・。

ワン・チュアンアン監督「再会の食卓(原題: Apart Together)」(中国、2010年、96分)☆☆☆☆

2023-02-20 23:30:25 | 中国


ベルリン映画祭、銀熊賞受賞作品です。

1949年、国民党が共産党に敗れ台湾へ退却。数10万世帯の国民党軍兵士の家族が生き別れとなります。1987年、台湾当局は退役軍人の本土帰省をようやく許可。多くの家族は失った時間を取り戻し始めます。こうした事情がこの作品の展開の背景です。

ユィアー(リサ・ルー)の夫・イェンション(リン・フェン)は、国民党兵士の一人。ユィアーと上海で生き別れ、台湾で新しい家庭を築いたイェンション。妻が亡くなり、一人になり上海をもう一度、観たい、との手紙がユィアーの元に届きます。複雑な時代背景を理解しがたい子供たちでしたが、豪勢な食事を用意しイェンションを迎えることになります。

ユィアーは幼い息子を抱え、その後で出会ったルー(シュー・ツァイゲン)と家庭をもちます。事実婚の状態のなか、二人の間には二人の娘、アイホアとシンホアとがいました。ルーを筆頭にルー一家は台湾老兵帰郷団の一員としてやってきたイェンションを暖かく迎えたものの、イェンションがユィアーと一緒に余生を過ごしたい、ときりだすにおよんで波紋がひろがります。

お人好しのルーはイェンションの提案に、ユィアーが承諾するならそれがいいと受け入れますが・・・。

チェン・カイコー監督「花の生涯~梅蘭芳~(原題:梅蘭芳)」(中国、2008年、140分)☆☆☆☆

2023-02-18 21:19:28 | 中国


実話にもとづく作品です。

舞台は清朝崩壊後の中華民国。

京劇の名門に生まれた梅蘭芳。早くに両親を亡くし、伯父に育てられます。しかし、その伯父は西太后の誕生日に赤い服を着なかったかどで処刑されます。手紙が一通、蘭芳に残されました。京劇役者になるなと。

10年後、梅蘭芳(ユイ・シャオチェン)は京劇の女形。京劇に現実味を持たせようとする政府高官の邱如白(スン・ホンレイ)に共感。ふたりは義兄弟の契りを交わします。

伝統を重んじる師匠・十三燕(ワン・シュエチー)は、蘭芳のその考え方に異をとなえ、ふたりは劇場でどちらが観客にうけるか勝負します。勝利は観客の心を掴んで蘭芳。

数年後、円熟期にある蘭芳(レオン・ライ)は、邱とともにアメリカ公演を計画。その頃、蘭芳は妻がありながら、男形女優の孟小冬(チャン・ツィイー)と恋愛関係にありました。

ふたりの関係が蘭芳の芸道の妨げになると感じた邱は、蘭芳の妻、福芝芳(チェン・ホン)を小冬のもとへ差し向けます。「彼は観客のもの」と涙ながらに訴える芝芳に同乗した小冬は身を引くことを決意します。

アメリカ公演は大成功。しかし、小冬の件を知った蘭芳と邱の間は溝ができます。

1937年、日本占領下の中国。邱と別れて上海にいた蘭芳を、占領政策に京劇を利用しようとした日本軍の田中少佐(安藤政信)が訪れますが・・・。

チャン・イーモウ、ティエン・チュアンチュアン、シーチン監督「楊貴妃 Lady of the Dynasty(原題:王朝的女人・杨贵妃)」(中国、2015年、122分)☆☆☆★★

2023-02-17 21:21:09 | 中国
ワダエミさんが衣装を担当。楊貴妃を演じたのは、美貌の誉たかいファン・ビンビンさん【下の画像】。映像は流麗です。

主要舞台は唐王朝隆盛期から末期にむかう長安。

東ローマ帝国からの二人の使臣が皇帝・玄宗( レオン・ライ )に拝謁するところから物語が始まります。そのうちの一人の述懐でストーリーが進んでいきます。

戦死者弔いの儀で舞を披露する玉環[後の楊貴妃](ファン・ビンビン)に心を奪われる皇帝・玄宗様子に気づいた皇后・武恵妃(ジョアン・チェン)は、玉環が皇子・寿王(ウー・ズン)の妃になる娘だと虚言し、そのことを実行に移します。

後日、王宮に召し上げられた玉環。拝謁にきた使臣にハープを習い、たちまちに上達。その美貌と天真爛漫な性格により宮中で愛され、寿王の妃として優雅な日々を送っていました。そんなおり、武恵妃の謀略で皇太子が謀反をおこし、結果、死罪となり、次期候補に寿王の名が上がると、権力を誇る皇帝の座を巡り、王宮は憎悪と策略の世界に一変します。

玉環の転生、安禄山の反乱、ドラマは一気に終盤へ・・・。

チャン・イーモウ監督「活きる」(中国、1994年、122分)☆☆☆☆

2021-10-14 12:02:03 | 中国
  
余華(ユイ・ホア)による同名小説(1993年)の映画化です。

影絵人形芝居が得意な男の家族が、1940年代(国共内戦)、1950年代(大躍進)、1960年代(文化大革命)と時代に翻弄されながらも、誠実に生きていくぬく様を描いた作品です。

1940年代:福貴(グォ・ヨウ)は、賭博に明け暮れ家屋敷を失います。妻・家珍(コン・リー)は夫に愛想をつかして去り、家族は崩壊します。福貴が改心し賭博をやめると、妻は娘の鳳霞と実家で生まれた息子の有慶を連れて戻ってきました。影絵芝居の巡業で生活しますが、国共内戦に巻き込まれます。相棒の春生とともに九死に一生をえて、家族のもとに帰ったものの、妻はその日暮らしのありさま。鳳霞は大病で口がきけなくなっていました。そして、かつて賭博で福貴の家屋敷を巻き上げた龍二は反動地主として人民裁判にかけられ、見せしめに銃殺されます。

1950年代:大躍進政策の名の下、鉄鋼生産量あげる政策を遂行するため、人々は家庭から鉄製の鍋釜、雑品を提供します。福貴の家も然り。長男の有慶が区長の運転する車の下敷きになるという不慮の事故にあい、亡くなります。区長はかつての同僚・春生でした。鳳霞は見そめられて労働者と結婚。時代は1960年代の文化大革命の時代へ。

紅衛兵が跋扈し、走資派が吊し上げられ・・・、福貴の家族も時代の荒波に飲み込まれていきます。

チェン・カイコー監督「さらば、わが愛/覇王別姫」(中国、 年)☆☆☆★★

2019-12-10 17:36:20 | 中国


日中戦争や文化大革命などを背景に京劇の世界を小楼や蝶衣の目を通して描いた作品です。原作は李碧華(リー・ピクワー)の同名小説です。

「覇王別姫」は、項羽と虞美人とのを心の交錯を描いた京劇で、この映画では2人の主人公が演じます。

時代は1920年代。舞台は中国・北京。楼閣の女郎の私生児・小豆子は、京劇俳優養成所に連れられてきます。厳しい稽古と折檻、仲間から娼婦の子といじめられる小豆子を助けてくれたのは、先輩の石頭。やがて小豆子は、石頭に同性愛的な思慕を抱くようになります。

成長した2人は、それぞれ程蝶衣(小豆子)と段小楼(石頭)という芸名を名乗り、『覇王別姫』 で共演しトップスターになります。しかし、二人の人生は思いもよらない波乱万丈の人生行路をたどります。

おりしも、日中戦争の激化(1937年)、日本軍の占領下の北京。やがて日本の敗戦、中華民国軍(国民党軍)の兵士たちの北京入城、文化大革命、四人組の失脚。時代に翻弄されながら生き抜いた京劇人の生き方(愛と苦悩)を切々と哀しく、しかしリアルに綴った、中国映画史不滅の大作です。