シネマの森の迷走と探索

FBに投稿した映画作品紹介を整理し、再掲します。

☆は「満足度」(☆5個満点、★で補足)。

テオ・アンゲロプロス監督「永遠と一日(Μιά αιωνιότητα και μιά μέρα)」(ギリシャ他、1998年、134分)☆☆☆☆

2021-05-29 23:47:49 | ギリシャ
 
悠久の時のながれのなかに個の在り方を描くのがアンゲロプロスの手法です。歴史のなかに生きる人間の営みが、詩の言葉で紡がれるかのように映像化されています。

舞台は北ギリシャの港町テサロニキ。

開巻、1936年の夏の少年の日。親友と朝早く遠泳をして島に行ったときの追憶。アトランティス(サントリーニ島)の伝説から詩の台詞が謳いあげられ、アレクサンドロス(ブルーノ・ガンツ)は少年の日の記憶を取り戻します。

19世紀の詩人・ソロモスを研究している彼は、重病を患っています。入院を明日に控え、追憶にひたります。

自分の詩は習作(下書き)にすぎなかったと悔やむ今、生前、寂しい思いをさせてしまった妻・アンナ(イザベル・ルノー)が輝いていた夏の日々が記憶に甦ります。

しかしもう時間は残されていません。少年と夜の街を走った“運命のバス”を思い出に、詩人は海から聞こえる亡き妻の声に誘われるように砂浜に立ちます。

アレクサンドロスは立ち寄った薬局で、窓ふきをしていた少年(アキレアス・スケヴィス)が「人買い」に誘拐されるのを目撃します。彼は手持ちの財産で、少年を買い戻します。少年は命を賭けてアルバニアから亡命してきた旅人でした。

詩人はこのアルバニア人の少年に、国に帰るよう、アルバニア国境までともに旅します。しかしそこには国境を越えられず死を迎えていた亡命者の姿が・・・。
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吉田喜重監督「秋津温泉」(1962年)☆☆☆★

2021-05-25 23:30:40 | 日本・1960年~
日本映画の源流には黒澤明、溝口健二、小津安二郎、成瀬巳喜男、木下恵介が巨匠として並び称される。𠮷田喜重もその中に入る。なかでも評価の高い作品。

太平洋戦争中、結核に冒され生きる気力を失った東京の大学生、河本周作(長門裕之)は死に場所を求め、秋津温泉にくる。温泉に来て倒れたところを、温泉宿の女将の娘、新子(岡田茉莉子)の介護で回復する。

そして、終戦。純粋な新子に惹かれた河本は、生きる力をとりもどす。互いに 意識しあう二人だったが、女将が河本を追い出してしまう。

数年後、秋津に再び現れた河本。しかし彼は酒におぼれ、堕落していた。新子はいらだちを覚える。河本が結婚したことを知った新子は、苦しい河本への思いを捨てきれない。

一途なまでに河本を思う新子、そして、優柔不断でだらしない河本。ふたりは抜き差しならない状況にはまっていく。
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内田吐夢監督「飢餓海峡」(1965年)☆☆☆☆

2021-05-19 17:22:41 | 日本・1960年~


1954年(昭和29年)9月、勢力の強い台風が津軽海峡を襲い、青函連絡船・洞爺丸が沈没、1000人を超える死者・行方不明者を出した。ほぼ同じ頃、北海道岩内では大火が発生し、町の8割が焼失した。

作家の水上勉はこの2つの事件にヒントを得て小説「飢餓海峡」を執筆し、その映画化が本作品である。

映画では台風の時期は昭和22年9月20日に設定され、青函連絡船の名前は「層雲丸」となっている。

以下は本作品((原作の小説)の内容である。

この台風の最中、北海道岩内で質店一家3人が惨殺され、犯人は放火し姿を消した。直後青函連絡船の惨事が起き、船客530名の命が奪われた。死体収容にあたった函館警察の刑事弓坂(伴淳三郎)は、引取り手のない二つの死体に疑問をもつ。

弓坂は漁師からの聞き取り調査で消防団員と名のる大男・犬養(三国連太郎)が、連絡船の死体をひきあげるため、船を借りていった話を入手する。弓坂はこの男が二人の男(岩内の殺人犯)とともに海峡を渡ったと推測、青森県下北半島に足を延ばし、そこで船の焼却跡を発見した。犬飼がここに上陸したことはまちがいない。

犬飼は事件の直前、軽便電車で偶然に出会った杉戸八重(左幸子)と花街で再会し、一夜を共にする。翌朝、犬飼は彼女に大金を渡して立ち去り、その後、行方がわからなくなった。

弓坂刑事による殺人犯、犬飼の追跡捜査、そして10年後、東舞鶴で樽見京一郎の名前で食品工場を経営していた男のもとで働く書生と八重の不可思議な無理心中(?)。関係がありそうな2つの事件をめぐって、捜査は難航する。
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ニキータ・ミハルコフ監督「太陽に灼かれて(Утомлённые солнцем)」(ロシア・フランス、1994年、135分)☆☆☆★

2021-05-15 20:28:57 | ロシア・ソ連
社会主義建設が着々と進行しながら、他方ではスターリンの独裁体制が確立し、大粛清の嵐が吹き始める矛盾に満ちた1930年代後半の悲劇的家族の物語です。

舞台は1936年のモスクワ近郊。原題の「太陽に灼かれて」は作品のなかで歌われている歌詞の一節です。

ロシア革命の英雄コトフ大佐(ニキータ・ミハルコフ)、若妻・マルーシャ(インゲボルガ・ダプコウナイテ)、娘のナージャ(ナージャ・ミハルコフ)は、モスクワから少し離れた田園地帯の避暑地「芸術家村」で幸福な日々を送っていました。そこにサングラスの髭面老人に変装した旧
 
貴族階級の青年ディミトリ(オレグ・メーシコフ)がやってきます。

大佐の家族は、ディミトリとかつて家族同然に親交がありました。一家は再会を喜び、ナージャもなつきます。実は大佐の妻・マルーシャは,10年前にはディミトリの恋人でした。大佐はそのことを知っていました。

ディミトリは秘密警察の一員でした。なぜ今になってコトフ大佐の家族を訪れたのでしょうか?
 
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ヴィクター・フレミング監督「風と共に去りぬ(Gone with the Wind)」(アメリカ、1939年)☆☆☆☆☆

2021-05-13 22:35:24 | アメリカ・戦前
 
ベストセラーになったマーガレット・ミッチェルの同名の小説が映画化された作品。

題名はアーネスト・ダウスンの恋愛詩「シナラ」からとったもの。映画の冒頭のメインタイトルでスタッフ・キャスト等のテロップの後に、このダウスンの詩の一句が出てくる。

物語の舞台はアメリカ南部ジョージア州タラ。時代は1861-1873年、南北戦争開戦から戦後の復興期までである。

裕福な家庭で不自由なく育ったスカーレット・オハラ(ヴィヴィアン・リー)。好きな男性を虜にするすべを心得ていて、町中の男が彼女に夢中だった。

しかし、彼女には芸術や文学を愛する貴公子アシュリ・ウィルクス(レスリー・ハワード)という本命がいた。自信家のスカーレットはアシュリと結ばれることを願っていた。ところが、信じられないニュースが入ってくる。ウィルクス家の舞踏会でアシュリとメラニー・ハミルトンの婚約発表があるという。

スカーレットの心中はおだやかでなかった。婚約パーティの日、自分から告白すればアシュリの気が変わるはずと、書斎で2人きりになり告白するも拒否される。プライドを傷つけられた彼女はアシュリを罵り、陶器をつかんで暖炉に投げつけた。すると、暖炉の前のソファから社交界ののけ者レット・バトラー(クラーク・ゲーブル)が登場する。ハラハラドキドキの展開はこのあとに・・・。
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