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シネマの森の迷走と探索

FBに投稿した映画作品紹介を整理し、再掲します。

☆は「満足度」(☆5個満点、★で補足)。

成瀬巳喜男監督「めし」(1951年、97分)

2025-04-09 19:46:33 | 日本・1950年~

林芙美子の同名の小説の映画化です。朝日新聞に連載された小説ですが、林芙美子が連載中に急逝、全体の3分の2ほどが発表され、未完に終わりました。そのため、この作品の結末は成瀬監督と脚本家・田中澄江、井手俊郎によるものです。

舞台は大阪です。

証券会社に勤める岡本初之輔(上原謙)とその妻・三千代(原節子)は結婚生活5年目に入りますが、倦怠期に突入していました。

些細なことで、いざこざ、反目が毎日のように起こります。そこに、初之輔の姪である里子(島崎雪子)が家出をして東京から大阪へやってきます。

日々、家計をやりくりし家事に追われ、不満を募らせていた三千代は、うかれている里子の姿、行動に苛立ちます。

三千代は里子に帰京を促し、里子を送る名目で東京の実家に里帰りします。彼女は東京での職探しをいとこ(二本柳寛)に頼み自立を考え始めます。

三千代のもとに、夫の初之輔が訪ねてきます。この夫婦は一体?


成瀬三喜男監督「驟雨」(1956年)

2025-04-08 19:47:39 | 日本・1950年~

舞台は小田急線・梅が丘界隈。昭和30年頃のごく普通のサラリーマン家庭の日常風景です。

並木亮太郎(佐野周二)と文子(原節子)の夫婦は結婚4年目です。亮太郎は化粧品会社に勤めています。夫婦の間には倦怠感がただよっています。子どもはいません。日曜日といってもどこかに行くでもなく、お互いにすることがない様子です(テレビはない時代)。些細なことで口喧嘩が始まり、亮太郎はフイと家を出て行ってしまいます。

結婚早々の姪(香川京子)がもうはや夫に愛想をつかし愚痴をいいに来ます。時々、文子が手なずけていた野良犬が近所にトラブルをまきおこします。そして、亮太郎の退職の話が・・・。


山本薩夫監督「荷車の歌」(1959年、145分)

2025-04-03 19:51:11 | 日本・1950年~


この作品は今から30年前に初めて観ましたが、それ以来2回目です。

原作は山村巴による同名小説。

舞台は明治中期から大正、昭和初期にかけての広島県の山奥の村。

荷車引きの茂市(三国連太郎)の妻になったセキ(望月優子)の生活と人生をつうじて、封建的家族のなかの女性の生活、地位、労働、そしてその生活感情を描いた作品。

荷物を運ぶ手段が荷車から馬車、そして自動車に変っていくさまがリアルに映像化されています。

<ストーリー>
郵便配達夫の茂市に求婚された、地主の屋敷で女中奉公するセキ。

その茂市は荷車ひきに転職。茂市の好意を感じていたセキは、周囲の反対をいとわず、茂市と結婚。

二人はそれぞれに荷車を引いて、往復十里の道を町へ荷(炭など)を運搬します。やがて車問屋になる日を胸に描いているものの、現実の労働は苛酷です。

姑(岸輝子)はセキに冷淡そのもの。茂市の弁当箱には米の飯をつめ、セキの弁当には粟飯をつめるような人。

セキはやがてオト代(左時枝、成年になってからは左幸子)を生みます。オト代は気性の強い娘に育ちます。祖母の酷い仕打ちにさからい続けたオト代は、縁あってコムラ夫婦に貰われ、村を離れます。

その後、茂市とセキの苦労が実って、車問屋を始めるまでになります。しかし、間もなく鉄道が通じ、山奥の村から荷馬車が荷を運ぶようになります。手車は時代の波に取り残され、茂市とセキは・・・。

大曾根辰保監督「顔」(1957年、104分)

2024-06-12 19:44:07 | 日本・1950年~


原作は松本清張による同名の短編小説。

清張作品で映画化されたものは多数ありますが、本作品はその最初のもの。

東海道線の夜行列車内。男が転落死する事件が起きます。男は闇で堕胎手術を請け負う無免許医、飯島(山内明)でした。当初は事故による転落と了解されたものの、病院の霊安室に女性から花束が届けられます。刑事の長谷川(笠智衆)は、直感でこれは殺人との疑念をもちます。

匿名で花束を届けたのはファッションモデルの水原秋子(岡田茉莉子)。夜行列車から飯島が転落したのは、秋子との口論が原因でした。

秋子は少女の頃から孤独で苦労し、水商売から人気モデルにまで成った女性でした。
そんな秋子の前に、石岡三郎(大木実)が現れます。石岡は秋子と飯島が夜行列車で言い争う現場を目撃したのです。目撃情報を警察に売り、顔認証のため刑事とファッションモデル、水原が出演する会場をまわる石岡。しかし、秋子を認めても、石岡は刑事に事実を告げません。

警察から独自に秋子に接近する石岡。発覚をおそれて石岡の殺害を決意する秋子。しかし、石岡はトラックに轢かれて不慮の死にいたります。

刑事の長谷川は堕胎手術の関係者の線から捜査を進め、秋子が犯人と目星をつけます。行き場を失いモデル会場で立ち尽くす秋子でしたが・・・。

成瀬巳喜男監督「流れる」(1956年 117分)

2024-05-25 19:41:17 | 日本・1950年~
原作は幸田文(幸田露伴の娘)の同名の小説です。

幸田さんは、小説家として名をあげた後に、一時筆を折って東京・柳橋の芸者置屋で女中奉公の経験をしました。その体験を小説に仕立て、当時のベストセラーになりました。

開巻、大川(隅田川)のゆったりとした流れのシーンが映ります。この大川(隅田川)端の芸者置屋の「つたの家」が舞台です。落ち目になっていて、借金がかさみ、その家も抵当に入っている様子。そこに職業安定所を介して、夫と子供に先立たれた梨香(田中絹代)が女中として奉公にきます。彼女の眼をとおして「つたの家」の様子がわかります。

「つたの家」をしきっていたのは、つた奴(山田五十鈴)。夫と別れひとりできりもりしています。その娘勝代(高峰秀子)は、芸者の仕事に関心がなく、もちろんその家をつぐ気持もありません。かといって何か仕事につくでもなく、家でぶらぶらしています。つた奴の妹でやはり夫と別れ、子供とともに居候しているのが米子(中北千枝子)。芸者として染香(杉村春子)、なな子(岡田茉莉子)、なみ江(泉千代)が働いています。

みなそれぞれにわけありの人生を背負っています。そして経営のカネ回りも滞りがちです。

そうこうするうちに、うた奴はつたの家を、昔の同僚であるお浜という水野の女将に売ることを決心しますが・・・。

今井正監督「また逢う日まで」(1950年、111分)

2024-03-25 23:22:08 | 日本・1950年~


2003年に一度観ましたが、今回が二度目です。

ロマン・ロランの小説「ピエールとリュース」の翻案。学生と若い女性(画家)の純愛が戦争によってひきさかれる悲劇を詩情豊かに描いた作品です。

舞台は戦中(昭和18年)の東京。

主要な登場人物は、田島三郎(岡田英次)と小野蛍子(久我美子)。窓ガラスごしの接吻シーン♥は日本映画史に名高いです。

三郎は戦争に疑問を抱く学生。父(滝沢修)は法務官。長兄は戦死し義姉がいます。慕っていた次兄の、二郎が軍国主義に染まり、孤独を感じています。

蛍子は母(杉村春子)とふたりの生活のたしに画を売っています。

二人が初めて会ったのは、空襲警報が鳴るなか逃げ込んだ地下鉄のホームでした。逃げて来た人々と身を寄せ合う三郎は、目の前にいた女性に惹かれます。しかし、警報と空爆が止み外へ出た時には、彼女の姿は雑踏のなかに消えていました。

二人が再会したのは三郎が友人の兄を尋ねて印刷会社、白楊社を訪れたときでした。建物から出てきた蛍子。以後、二人は人目をしのんで待ち合わせをしデート(?)を重ねますが、彼女は彼がすぐにも戦地に行くのではないか、と不安を口にします。

三郎は、二人でいる時に暗い話はやめようと彼女を諭し、自分の肖像画を描くよう彼女へ提案しますが・・・・。

五所平之助監督「黄色いからす」(1957年、103分)

2024-03-25 20:46:26 | 日本・1950年~
舞台は戦争が終わって10年ほどたった鎌倉、そして江ノ島。

戦後、抑留地から戻った復員兵の家族をリアルに描いた作品。

冒頭、小学校の生徒たちが鎌倉の大仏のあたりで写生会をしています。担任の芦原靖子(久我美子)は、生徒の清(設楽幸嗣)が描く大仏の画をのぞきこみます。清の画に使われている絵具は黒と黄色がほとんどなので、靖子先生はもっとたくさんのクレパスを使うようにアドバイスします。清の暗い画風は心の様子を映し出していました。

戦後しばらく、清は母、吉田マチ子(淡島千景)と二人でほそぼそと暮らしていました。生活費は隣の博古堂からの下請け仕事がたよりでした。博古堂は松本雪子(田中絹代)という女主人がひとりで切り盛りしている鎌倉彫の工房。雪子には清と同じくらいの年齢の養女、春子がいたので、彼女たちは家族ぐるみの付き合いです。父親、一郎(伊藤雄之助)が戦地であった中国からが復員したのはかなりの時間がたってからでした。

父親、一郎と初対面同様の清。なかなかなじめません。一郎は復帰した職場に不満で、イライラしています。それが手伝って清に優しくなれません。やがて妹の光子が生まれ、清の感じる疎外感はますます強くなります。

そんなおり、清が保護した幼いカラスの子を父から放り出されたことが原因で、清は家出。豪雨のなか清は戻ってきますが、隣の雪子の子になりたいと言いだし・・・。
 

川島雄三監督「新東京行進曲」(1953年、97分)

2024-03-24 23:23:56 | 日本・1950年~


首都・東京はかつて20年ほどの間に、二度焼け野原、灰燼に帰しました(1923年の関東大震災、1945年の米軍B29大編隊による東京大空襲)。それが戦後になって復興。この作品の冒頭でそういった説明があります。

舞台は1950年代初頭の東京、とくに銀座、上野、有楽町、日比谷公園のあたり。作品全体でこの頃の東京の街並み、人々の服装、人間関係(人情)がよくわかります。

現在とまるで違うのは言うまでもありません。

復興期の花形職業である新聞記者や同僚たちが織りなす人間関係、恋愛模様が描かれると同時に、主人公である新聞記者の真砂隆(高橋貞二)の小学校時代(銀座の泰明小学校)の友達5人のその後の人生が絡み、複雑な展開です。

真砂隆は都庁に勤める須田美代子(淡路恵子)とヒョンなことで知り合いになります。有楽町駅をでたところで彼女が通行人にぶつかり転倒したおりに、ハイヒールのかかとがおれ、そこにたまたまいあわせた真砂がそれに気づいて目と鼻の先にある庁舎までタクシーで彼女をおくったのがきっかけでした(当時の都庁はこのあたり[現在の東京国際フォーラム])。

同僚の女性記者、一ノ瀬文子(小林トシ子)は、真砂に好意をもっていますが、彼はそのことに気づいていません。

真砂は同僚文子と共同で汚職事件を調査。その汚職の主要人物が自分の小学校時代の恩師、須田昌平(須賀不二夫)と知って驚きますが・・・。

小林恒夫監督「終電車の死美人」(1955年、91分)

2024-03-23 23:25:56 | 日本・1950年~


サスペンスです。「警視庁物語」の発端、原型となった作品。犯罪の発生から捜査、容疑者の特定、アリバイ崩し、犯人追及、逮捕までがドキュメンタリータッチで描かれます。

主要舞台は東京の中央線沿線(有楽町、新宿、吉祥寺、三鷹)、池袋。

ある豪雨の夜更け。三鷹駅を終着駅とする終電車内で殺人事件が起こります。殺されたのは若い女性。

赤木警部(伊藤久哉)ら警視庁捜査一課が乗り出します。手がかりとなったのは女性が身につけていたロケットのなかの男の写真と有楽町駅発行の乗車券のみ。そして乗車券の調査を調べるうち、被害者の後を追うように三鷹行きの切符を買ったもう一人の男がいたことがわかります。

後日、三鷹署にロケットの中の男、丸山(朝比奈浩)が現れます。彼は被害者、湯浅とし子(大谷怜子)の婚約者。とし子は三星書店の女店員で、丸山の使い込んだ公金の穴埋めに奔走していたことがわかります。

さらに被害者に関係のある場所をしらみつぶしに調べていくと、池袋の不動産周旋業、早川(東野英治郎)がとし子との取引きに立っていたことが判明。全力で早川の身許洗いが始められます。

すると、早川と懇意だったパチンコ屋の寄宿人、高野三郎(南原伸二)が事件当日以後、消息不明との情報が入り、捜査陣は、色めき立ちますが・・・。

五所平之助監督「挽歌」(1957年、117分)

2024-03-16 19:58:56 | 日本・1950年~


原作は原田康子の1956年に出版された同名の長編小説。爆発的ベストセラーになり、釧路在住の原田康子の名を全国に知らしめた作品です。

舞台は北海道の釧路。

厳しい道北の自然を背景に、男女3人が繰り広げる愛の葛藤劇です。

主人公は関節炎を患って以来、硬直した左肘にわずかな障害がある若い兵頭怜子(久我美子)。彼女は父親とばあや(浦辺粂子)との3人暮らし。母親は他界しています。

父親はそんな娘を不憫に思い、お見合いの話を持って来ては、優しく甘やかしてくれる存在でした。彼女の挙動を制するのはばあやの小言くらいです。怜子はそんな環境の中でコンプレックスと鼻柱の強さをないまぜた性格の女性になっていました。

怜子の救いはアマチュア劇団です。彼女はそこで美術部員としての仕事を担当。近くのカフェ、バーが団員や近くの住民のたまり場になっています。

ある日、怜子は中年の建築・設計技師で愛犬と散歩していた桂木節夫(森雅之)と知りあいます。油断したすきに犬が怜子の手を噛み、怪我をしたのが切掛でした。桂木は怜子に謝り、親しくなります。

桂木も妻、あき子(高峰三枝子)と娘の三人暮らし。夫婦関係は冷えきっています。そういうこともあって、桂木と怜子の関係は一気に縮まります。仕事で桂木が札幌に長期出張になると、怜子も追いように札幌へ。

ここから悲劇的結末まで、ストーリーは波乱含みで展開しますが・・・。

中村登監督「土砂降り」(1957年、105分)

2023-12-14 23:05:09 | 日本・1950年~

新派で上演された北条秀司の原作を、中村監督が映画化しました。

舞台は東京荒川区南千住、そして神戸。

阿部たね(沢村貞子)は、温泉旅館(連れ込み)の女主人。昔の恋人だった大久保和吉(山村聡)がたまに顔をみせています。役所に勤めている長女の松子(岡田茉莉子)の他に、長男の大学生、竹之助(田浦正己)と次女の高校生、梅代(桑野みゆき)が一緒に暮らしています。

松子には、同僚の須藤(佐田啓二)との結婚話が進んでいました。しかし、須藤の母(高橋とよ)が松子の母親の商売を知るにいたって、結婚に大反対。結果、破談となります。

仕方なく須藤は見合い結婚をし、松子は絶望して、須藤とそして母親と大喧嘩になり家出します。

二年が経過し、松子は神戸・元町でキャバレーのダンサーになっていました。ある夜、店の客として、偶然、須藤が現れます。須藤は役所での汚職の罪で、逃亡中でした。松子は須藤を自分のアパートにかくまいます。それなのに、優柔不断な須藤は、実母に「松子が離さないので家に帰れない」と手紙を書きます。須藤の母は、松子の母の許に怒鳴り込みにきますが・・・。
 
 

木下恵介監督「野菊の如き君なりき」(1955年、92分)☆☆☆☆

2023-08-25 23:19:53 | 日本・1950年~


原作は伊藤左千夫による小説「野菊の墓」。

舞台は軽井沢(原作は千葉県)。

冒頭、老人(笠智衆)は小舟に揺られ、60年前の過ぎ去った甘い青春の想い出を回顧します。(回想シーンは楕円形のスクリーンが使われ、短歌が要所要所で挿入されています。)

ゆったりとした平和な郷で、いとこ同士の政夫(田中晋二)と民子(有田紀子)は、まるで姉弟のように育ちます。民子17才、政夫15才。

民子は、村一番の旧家の女主人で病身の政夫の母(杉村春子)の看病に、数里離れた川下の町からやって来たのです。二人は幼いころから、仲のいい友達。
ところが、こんな二人の仲を、村の人たちが噂し、同じ家にいる作女のお増や、底意地の悪い嫂のさだも、二人に悪恵ある嫌味をあびせます。

そんな二人を温く見守っていた政夫の母。秋祭が近づいたある日、政夫は、母の言いつけで、民子と山畑に綿摘みにでかけました。このころでは、周囲の噂が逆に二人を接近させ、心にほのかな恋心さえめばえていました。

人気のない山の中、二人きりになった民子と政夫は、仕事の終った後、時のたつのも忘れて一時をおくります。政夫は民子を「野菊」に、民子は政夫を「リンドウ」にたとえます。

家へ帰るとすでに陽は落ち、このことで二人はきつく叱られ・・・。

青柳信雄監督「サザエさん」(1956年、86分)☆☆☆★

2023-07-06 20:12:06 | 日本・1950年~
「サザエさん」シリーズの第一作。

この作品が製作されたのは、わたしが6才の頃。大相撲ファンになりかけていた時期で、当時まだテレビは家庭になく、ラジオで実況放送を聴いていました。千代の山、栃若全盛時代です。その頃に、この映画が上映されていたとは知りませんし、親も映画館にこの作品を観につれていってくれませんでした。当時の人たちは、家族連れで観に行ってたのですね。羨ましい!

昭和30年代前半の社会と家庭の様子、雰囲気がわかります。本作品の舞台は東京世田谷区成城界隈です。

サザエさん(江利チエミ)のいる磯野家は5人家族。父親の波平(藤原釜足)、母親の・フネ(清川虹子)、弟のカツオ(小畑やすお)、妹のワカメ(松島トモ子)。

サザエは未婚。お転婆で、おっちょこちょいです。アルバイトが見つかります。「女性クラブ」の記者です。出勤日、勤務先があるビルをうろうろしていると、同じビルに入っている「山高商事」の社員・フグ田マスオ(小泉博)が「クラブ」まで案内してくれます。ところが、最初の日から大失敗。雑誌の執筆者に依頼原稿をとりにいって、追い返されます。というか、逃げ帰ります。

クビになったサザエがばったりマスオさんに会うと、彼は「探偵会社」に紹介してくれます。最初の仕事は、なんと、従兄のノリスケ(仲代達矢)の見合いの相手の母親からの依頼で、何と彼の素行の調査?

木下恵介監督「惜春鳥」(1959年、102分)☆☆☆☆★

2023-06-29 20:29:00 | 日本・1950年~


主要舞台は会津若松。有馬稲子さんの白虎隊剣舞が見事です。本作品で2度、踊っています。

東京から会津に一時帰省した大学生の岩垣直治(川津祐介)が、地元に残る高校時代の同級生4人と再会しますが、互いの境遇が違っていることがわかり、気持ちがすれ違います。5人の友情の行方を描いた作品。

若い彼らの個性が強い輪郭で描分けられています。

妾の子として育ち、バーテンダーの仕事につき、甘いマスクとは裏腹に年齢以上に大人びている牧田康生(津川雅彦)。

徹底して冷徹な性格で、勤める工場のストライキにかかわりながら、腹のなかで利己的打算的にものを考える手代木浩三(石浜朗)
温泉宿の息子で、心優しく、人がいい峯村卓也(小坂一也)。

片足が不自由で岩垣に思慕の情を抱く馬杉彰(山本豊三)

冒頭、会津行の汽車のなかで直治は康生の叔父、牧田英太郎(佐田啓二)に会います。直治は卓也の宿にしばらく身をよせるが、康男にも会いたい、と伝えます。

そこから始まって、久しぶりに集まった若者たちは、白虎隊の墓前で剣舞を舞います。高校時代にここで奉納剣舞のお披露目をした仲ですが、それぞれの人生が変わり、友情にも亀裂が入ります。

他方、藝者のみどり(有馬稲子)は、東京から療養のために帰ってきた英太郎に惚れていて、抜き差しならぬ事態に・・・。

木下恵介監督「日本の悲劇」(1953年、120分)☆☆☆☆★

2023-06-26 21:23:12 | 日本・1950年~

主要舞台は熱海。

冒頭、当時の大事件のフィルム、新聞記事が示されます。労働争議、血のメーデー事件、三鷹事件、極東軍事裁判、人間天皇、踊る宗教、パンパン、傷痍軍人、新憲法式典などなど。「日本人のすべてがこの暗黒の坩堝に巻き込まれている」とう字幕が出ます。

本作品で監督は、戦後の苛酷な社会状況のなかでの家族関係の亀裂、親子の愛情の断絶をリアルな目で描いています。

熱海の旅館で働く戦争未亡人・春子(望月優子)の生き甲斐は、英語塾や医科大学に通う娘・歌子(桂木洋子)と息子・清一(日守新一)。

春子は闇屋をやったり、株に手を出したり、ときに客をとるなどし、やっとの思いで子どのたちを育ててきました。

ところが子どもたちは、水商売で生活をたてている母に冷淡で、内心軽蔑すらしています。清一に養子縁組の話が舞い込み、本人はまたとない人生の転機と、話をすすめます。春子の心は穏やかでありません。

歌子は一人暮らしで働きながら英語塾に通っていましたが、塾を開く赤沢(上原謙)と関係をもち、とくに好きでもない赤沢に迫られて、住居を引き払い駆け落ち同然でいなくなります。

子どもたちに見捨てられたと思った春子は、東京から熱海への帰路の途中、湯河原駅で降り、衝動的に反対側のホームに入ってきた列車に向かって・・・。