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シネマの森の迷走と探索

FBに投稿した映画作品紹介を整理し、再掲します。

☆は「満足度」(☆5個満点、★で補足)。

ラナ・ゴゴボリセ監督「金の糸(原題::Okros dzapi)」(ジョージア・フランス、2019年、91分)

2024-02-24 23:27:02 | ジョージア
数々の名画を上映した岩波ホール(神田神保町)が閉館したのは昨年の7月。その最後を飾ったのが本作品で、わたしは今日、U-NEXT配信で観ました。

監督は高齢(91歳)の女性。彼女は日本独特の技術である「金継ぎ」(陶磁器の破損部分を漆で修繕する技法)にインスパイアされ、過去との和解をテーマにした作品をおもいたちました。

二箇所のシーンでこの日本の陶芸修復技法に触れています。

舞台はジョージア・トビリシ。1991年4月までジョージアはソ連邦の一共和国、その名称はグルジア共和国でした。

独立後、その旧市街の片隅にある古い家で娘夫婦と暮らす作家のエレネ(ナナ・ジョルジャゼ)。79歳の誕生日を迎えましたが、家族の誰もが記憶していません。

エレネは姑のミランダ(グランダ・ガルニア)にアルツハイマーの症状が出始めたため、自分の家に連れてきて一緒に暮らすといいだします。ミランダは、ジョージアのソビエト時代に政府の高官だった女性。

そんなエレネの誕生日に、かつての恋人アルチル(ジラ・キプシゼ)から電話がかかってきます。

共和国の独立が勝ち取れとられてから30年ほどたったとしても、そこに住む人々の感情、人間関係がすぐに変るわけではなく、ミランダは旧ソ連時代の体質をときにかいまみせ、かつて娘の小説を発禁本にしたことをひけらかしたりする始末。

過去にとらわれてはいけない、過去を破壊してもいけない、人々の人間関係は「金継ぎ」でつながれ・・・。

ナナ・エクフティミシュビリ、ジモン・グロス監督「花咲くころ(原題: Grzeli nateli dgeebi)」(ジョージア、2013年、123分)☆☆☆

2023-03-11 20:42:13 | ジョージア



舞台は1992年春、ジョージアの首都トビリシ。

前年にソ連から独立したジョージアは、ガムサフルデァ初代大統領と反対派が対立。大統領の逃走により少し落ち着きは取り戻したもの、内戦のきな臭さが残り、新たな紛争の不安が漂っています。

14歳の少女エカ(リカ・バブルアニ)は、母と姉からの干渉に反発を感じています。父は刑務所に入っています。エカの親友ナティア(マリアム・ボケリア)の家庭では、父がアルコール中毒のため争いが絶えません。夫婦げんか、家族とのまともな対話がありません。

生活物資が不足しがち。パンの配給にはいつも行列ができますが、そこはエカとナティアはおしゃべりができる楽しいひとときでした。

ナティアはハンサムなラドと不良仲間とつるんでいるコテからの好奇の的です。

ある日、ラドはナティアからプレゼントをもらいますが、何とそれは・・・。そのことから、ストーリーは急展開し、二人の少女の運命が変わっていきます。

映画全体にひとつひとつの事柄が、この人はどういう人なのか、なぜそうなったのか、は明かされることなく、見る側の判断に委ねられる感じで流れていきます。


ギオルギ・オバシュビリ監督「とうもろこしの島(原題: Simindis kundzuli)」(ジョージア、2014年、100分)☆☆☆☆★

2023-03-08 19:29:52 | ジョージア


ジョージアとそこからの独立をのぞむアブハジア自治共和国は、1992年以降、激しい紛争状態にありました。両者の間にはエングリ川が流れています。この川は春の雪解けとともに、コーカサス山脈から肥沃な土を運んできて、中洲を形成します。中州はジョージアとアブハジア自治共和国が争う境界地点に位置します。

その中州に老人(イリアス・サルマン)がたどりつき、土地の所有を示すために白い布を掲げます。そこから老人の労働が始まります。木材を舟で運んできて、支柱を建て、小屋を作り始めます。

老人は次に、孫娘らしい少女(マリアム・ブトゥリシュビリ)を連れてきて、ふたりは板材で小屋の壁を打ち付け、屋根を葺きます。少女は手作り人形を抱えています。

老人は魚を捕まえるため、罠を川に仕掛け、ふたりはかかった魚を焼いて食べたり、干して保存食にしたり。

小屋が出来上がると、ふたりは周囲の土地を耕し、トウモロコシのタネを植えます。

両岸で兵士がにらみ合い、銃弾が飛び交う中、ふたりは助け合って苗を育てます。戦闘は悪化。ある日、傷を負った若いジョージア兵が中州に逃げこんできます。

深い森と大河の悠々とした流れ、ときおり聞こえる銃声、とうもろこしを黙々と育てる老人と孫娘―大自然のめぐりと人間の営みを対比した作品です。

サザ・ウルシャゼ監督「みかんの丘(原題: Mandariinid)」(エストニア・ジョージア、2013年、87分)☆☆☆

2023-03-07 19:31:50 | ジョージア


背景。100年前にコーカサスに移住したエストニア人。ところが1992年にジョージアとアブハシアとの間で紛争が起こり、エストニア系住民
はほとんど北欧に帰国しました。なかにはコーカサスにとどまったものもいました。本作品の主人公は、そのひとりです。

年老いたみかん農家の主・イヴォ(レンビット・ウルフサク)はアブハシア共和国にあるエストニア系移民集落で暮らしていました。ジョージアからの独立を求め、各地で紛争を起こしていたのが、アブハジアです。

武装したチェチェン人が、イヴォの家に来て食料を求めに来ます。言われるままに食料を提供した彼は、近所に住むマルゴス(エルモ・ヌガネン)の家へいくと、彼の畑には、シーズンでみかんがいっぱい実っていた。マルゴスは紛争が激化する前に収穫しようと、精をだしていました。

その時、近くで銃声が。先のチェチェン人が、ジョージア軍と衝突したのです。銃撃戦で兵士が倒れています。イヴォとマルゴスは、まだ生きていたチェチェン人のアハメド(ギオルギ・ナカシゼ)とジョージア人のニカ(ミハイル・メスヒ)を介抱し、亡くなった兵士を埋葬しました。

イヴォは敵対する彼らを、自分の家の別々の部屋で匿うことに・・・。ドラマはここから急展開します。