
数々の名画を上映した岩波ホール(神田神保町)が閉館したのは昨年の7月。その最後を飾ったのが本作品で、わたしは今日、U-NEXT配信で観ました。
監督は高齢(91歳)の女性。彼女は日本独特の技術である「金継ぎ」(陶磁器の破損部分を漆で修繕する技法)にインスパイアされ、過去との和解をテーマにした作品をおもいたちました。
二箇所のシーンでこの日本の陶芸修復技法に触れています。
舞台はジョージア・トビリシ。1991年4月までジョージアはソ連邦の一共和国、その名称はグルジア共和国でした。
独立後、その旧市街の片隅にある古い家で娘夫婦と暮らす作家のエレネ(ナナ・ジョルジャゼ)。79歳の誕生日を迎えましたが、家族の誰もが記憶していません。
エレネは姑のミランダ(グランダ・ガルニア)にアルツハイマーの症状が出始めたため、自分の家に連れてきて一緒に暮らすといいだします。ミランダは、ジョージアのソビエト時代に政府の高官だった女性。
そんなエレネの誕生日に、かつての恋人アルチル(ジラ・キプシゼ)から電話がかかってきます。
共和国の独立が勝ち取れとられてから30年ほどたったとしても、そこに住む人々の感情、人間関係がすぐに変るわけではなく、ミランダは旧ソ連時代の体質をときにかいまみせ、かつて娘の小説を発禁本にしたことをひけらかしたりする始末。
過去にとらわれてはいけない、過去を破壊してもいけない、人々の人間関係は「金継ぎ」でつながれ・・・。