シネマの森の迷走と探索

FBに投稿した映画作品紹介を整理し、再掲します。

☆は「満足度」(☆5個満点、★で補足)。

チャールズ・チャップリン監督「キッド(Kid)」(イギリス,1926年)☆☆☆★

2020-03-28 10:51:05 | イギリス


チャップリンのユーモア,ヒューマニズム,才能とセンスのよさが凝縮した作品である。

舞台はロンドンの裏町。画家の恋人に捨てられた貧しい娘(エドナ・パーヴィアンス)は,慈善病院で産まれたばかりの父なし子を,路上駐車していた自動車のなかにこっそりと置き去りにした。二人組の泥棒は,何も知らずその車を乗り逃げした。二人がスラム街で下車して一服していると車中の赤ん坊が激しく泣き出し,赤ん坊はごみ箱のわきに捨てられた。

この赤ん坊を拾うハメになったのがチャーリー。朝の散歩中,空き缶に詰めたシケモクをうまそうに吸い,すったマッチを捨てたところでふと目をおとすと,赤ん坊が捨てられていた。慌てたチャーリーは乳母車をおした婦人に「落し物です」と赤ん坊を手渡すがことわられ,次に杖をついた老人におしつけたがうまくいかず,かといって見捨てるわけにもいかず,結局自分の家に連れていって育てることになった。おしめを作ったり,ハンモックのなかの子をあやしたり,チャーリーは懸命の子育て。さて、この話の結末は?

チャップリンの自伝的要素の強い映画である。「チャーリー」とキッドはじつは一体である。孤児のキッドは20年何年か前の『チャーリー』,そして育てる『チャーリー』はいまの彼である。
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ロバート・ベントン監督「クレイマー,クレイマー(Kramer vs. Kramer)」(アメリカ,1979年)☆☆☆☆

2020-03-27 10:30:14 | アメリカ・1970年~


舞台はマンハッタンに住むサラリーマンの家庭。そこで起った妻の家出、そしてその余波が描かれる。

妻ジョアンナ(メリル・ストリープ)が家出したのは理由があった。自分らしく生きたいと思ったのだ。夫テッド(ダスティン・ホフマン)は、妻をひとつの型にはめこもうとした。ジョアンナには、したいことがいくつもあった。仕事に熱中していたテッドは、忙しさを理由に彼女の相談にのろうともせず,無視し続けた。ジョアンナは精神的にも落ちこみ,自殺も考えたほどであった。テッドは7才になったビリー(ジャスティン・ヘンリー)に、こうに語りかける。

アメリカの当時(1970年代後半)の家族問題を直視しながら,笑いも挟み込まれた上質の映画である。要所は,シリアスである。

第52回(1979年)アカデミー賞作品賞。ロバート・ベントンは監督賞と脚本賞を受賞。ダスティン・ホフマンは男優賞,メリル・ストリープは助演女優賞をそれぞれ受賞した。
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イ・ハン監督「ワンドゥギ」(韓国、2011年、108分)☆☆☆

2020-03-26 23:31:45 | 韓国


韓国映画らしい作品。

貧しい家庭環境のなかに生きる主人公ワンドゥギ(ユ・アイン)は、世をななめにみて、反抗的な高校生活をおくっている。父親は脚が不自由で、街頭での踊りから入る収入で、どうにか暮らしている。母親はいない(らしい)。住んでいるところは、バラックのよう。喧嘩、罵声が絶えない。

ワンドゥギの通っている高校は夜間高校だろうか。この担任の名前はドンジュ(キム・ユンスク)。ワンドゥギの家のすぐそばに住んでいて、ワンドゥギの生活にしじゅう介入してくる。しかし、ドンジュは粗野でガサツな教師にみえるが、きわめて人間臭い。

ワンドゥギとこの教師とのやりとり、確執、人間的交流がこの映画の中心になっている。他にも父親との葛藤、久しぶりに再会した父母の葛藤、ワンドゥクと成績優秀なユナとの葛藤、それぞれの葛藤に、ユーモアがあり、ペーソスがある。
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カン・ヒョンチョル監督「サニー 永遠の仲間たち」(韓国、2011年)☆☆☆

2020-03-25 23:35:42 | 韓国


「あらすじ」は、だいたい以下のとおり。

主人公のナミ(ユ・ホジョン)は、ビジネスマンの夫と高校生の娘に恵まれ、平凡な毎日を送っていた。ある日、ナミは母の入院先の病院で、高校時代の親友チュナ(チン・ヒギョン)と偶然、25年ぶりに再会する。

しかしチュナはガンに侵され、余命は2か月と宣告されていた。チュナの願いは、高校生時代の親友たちの集まりであった「サニー」のメンバーと会うことだった。ナミはチュナの願いを叶えるため、探偵社を使って7人の仲間を捜し始める。

「サニー」結成は、いわくつきのものであった。回想が始まる。

この作品のポイントは、現代のアラフォー中年女性がかつての少女時代を回想するところ。少女時代だった80年代には輝きばかりではなく、いじめや差別があり、韓国独特の家族関係や政治状況が背景にあった。そしてかつて「サニー」をくんでいた娘たちは、いま恵まれている人もいれば、そうでない人もいる。この2つの年代の対比がうまくできているのがこの作品である。

さてさてこの結末は??
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シドニー・ルメット監督「12人の怒れる男(12 Angry Men)」(アメリカ,1957年)☆☆☆★

2020-03-20 22:32:02 | アメリカ・1950年~


陪審員制度は,日本の司法制度に組み込まれていないので分かりにくい(日本では裁判員制度が2009年から施行されている)。簡単に言えば,一般市民から選ばれた陪審員が審判に参与し,事実の有無などを評決する制度である。

この作品(ヘンリー・フォンダ主演)はほとんど有罪が確定していた殺人容疑の18歳の若者に対して,「証拠が希薄」と有罪に疑問を持った一人の陪審員がねばり強い議論を重ねて陪審員会の結論を無罪と評決せしめたプロセスを描いている。

陪審員制度がどういうものかがよく分かるうえ,議論のプロセスがドラマチックに構成され,真実を明らかにするにはどれほど勇気とエネルギーとが必要であるかが気迫をもって描かれている。

死刑になる寸前で少年は,救われる。12人の陪審員は,長い裁判所の階段をおり,それぞれの家路につく。陪審員制度の難しさ,審議の重要性を手に取るように,息もつかせぬ緊迫感でまとめている。

第7回(1957年度)ベルリン国際映画祭金熊賞。
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家城巳代治監督「みんなわが子」(1963年)☆☆☆★

2020-03-20 11:34:46 | 日本・1960年~
全国農村映画協会第2回作品(第1回は「荷車の歌」)。

大平洋戦争末期、山梨に疎開した都会の子どもたちの生活を描いた作品。家城巳代治監督、中原ひとみ主演。

緊迫した社会情勢のなかで屈折した子どもたちの生活をとらえ、彼らの苦しみ、辛さを真正面から描いている。

子どもたちは遠足気分で疎開地、山梨にむかったが、そこにはつらい日々が待っていた。空襲が日をおうごとに激しくなり、疎開先の山寺のあたりには医者がいない。そのため、体の弱い子は市内ですごす。しかし、空爆は彼らの命を奪う。教師たちは食糧の買い出しにでかけるがなかなか手に入らない。空腹にたえかねた子は、絵の具をなめることもあった。ようやく終戦をむかえるが・・・・。
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セルゲイ・M・エイゼンシュテイン監督「戦艦ポチョムキン(Влоненосец Потемкин)」(ソ連,1925年)☆☆☆☆

2020-03-19 14:35:18 | ロシア・ソ連


モンタージュ技法(ショットの繋ぎ方の工夫で視覚的意味をもたせる方法)を先駆的に実践した作品として知られる。

1905年。前年に始まった日露戦争が2年目に入り,帝政ロシアの首都ペテルブルクでは厭戦気分が蔓延していた。「血の日曜日事件」が1月に起こり,皇帝ニコライ二世の弾圧政治に対する不満が民衆,兵士に充満していた。こうしたなか,この年の6月に起こったのが「ポチョムキン号の反乱」である。これらの一連の動きは1905年革命と呼ばれ,1917年のロシア革命の伏線となった。

全体は五章(①人間と蛆虫,②甲板上のドラマ,③死者は呼びかける,④オデッサ,⑤艦隊との遭遇)から成る。

映画はこの全体をサイレント約75分。映画の魅力が存分に発揮され,息つく間もないほどの緊張感で見ることができる。エイゼンシュテイン監督、27歳の記念碑的作品である。
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サンドラ・ネットルベック監督「マーサの幸せレシピ(BELLA MARTHA)」(ドイツ、2001年)☆☆☆★

2020-03-14 11:51:20 | ドイツ


綺麗な色の食材、包丁,フライパン,なべ。リズムがあり,メリハリの利いたシェフの動きとマナー。料理とかかわる作品なので,料理関連用語が飛び交っている。ニョッキ,トリュフ,ラビオリ,レモン・タイム,クリーム・プリュレ,コニャック,バジリコ,ローズマリー,バジリコ・ソース,フォアグラ等々。音楽の風味も心地よい。

マーサは,ハンブルクでフリーダという中年女性の店長が営むフランス料理店の一流シェフです。

独身で,長身の美人。几帳面な性格で,真面目一点ばり。仕事場では,同僚との同調を嫌い,彼らが談笑していても、会話に加わることはない。
そんなマーサに2つの事件が起こる。ひとつは姉のクリスティンがマーサの家に娘を連れて車で向かっていた途中に事故って,8才のリナを残して他界したこと。マーサはリナを引きとり(父親が行方不明のため),一緒に暮らすことになる。しかし,リナの心の傷は深く,マーサにはなかなかなつきません。

もうひとつは,マーサの勤めるレストランにマリオという男性のシェフが入ってきたこと。ところがマリオは時間にルーズ。明るいイタリア人気質ですが、厨房に音楽を流し,リズムをとり,踊りだす。マーサはひとつひとつが燗にさわる。

マーサの人生はいったいどうなるのか?
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アン・リー監督「いつか晴れた日に」(イギリス、1995年)☆☆☆★

2020-03-11 16:35:29 | イギリス


19世紀初頭、イングランド南西部はサセックス州を舞台に、対照的な性格の良家の姉妹が、結婚をめぐる愛とお金の問題を克服して幸福をつかむまでを描いた一編。18世紀の女性作家ジェーン・オースティンが1795年に発表した小説『分別と多感』の映画化。

私園ノーランド・パークの主ヘンリー・ダッシュウッドは、先妻の息子の長男ジョン(ジェームズ・フリート)に、現在の妻ダッシュウッド夫人(ジェンマ・ジョーンズ)と3人の娘たちの世話を託して亡くなる。

ジョンは誠実に彼女たちの世話をするが、強欲な妻のファニー(ハリエット・ウォルター)がそれを拒み、父の遺言を反故にしてしまう。ファニーはノーランド・パークにおしかけ、ダッシュウッド夫人らを追いだそうとする。

分別ある長女エリノア(エマ・トンプソン)は丁重に対応するが、次女のマリアンヌ(ケイト・ウィンスレット)はあからさまに嫌悪の情をあらわし、おてんばな三女マーガレット(エミリー・フランソワ)は幼ない。事態はどう展開するのだろうか?
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