シネマの森の迷走と探索

FBに投稿した映画作品紹介を整理し、再掲します。

☆は「満足度」(☆5個満点、★で補足)。

ビガス・ルナ監督「マルティナは海(原題:Son de Mar)」(スペイン、2001年、95分)

2024-02-29 23:15:47 | スペイン
地中海沿岸の小さな町での、男女の抑えきれない激情の愛を官能的に描いた作品。
この街に文学教師として赴任してきたのはウリセス(ジョルディ・モリヤ)。下宿先の美しい娘マルティナ(レオノール・ワトリング)に惹かれた彼は、たちまち恋に落ちます。

やがてマルティナは妊娠し、2人は結婚。家を持ち、念願の小さな漁船も手に入れ、息子が生まれます。しかし、ウリセスはそんな生活に退屈を感じていました。

ある日、マルティナは以前から彼女に好意を寄せていた富豪のシエラ(エドゥアルド・フェルナンデス)と再会。彼の家で開かれるパーティーに夫婦で招待されます。パーティーにやってくると、シエラはかねてから横恋慕していたいマルティナにに言い寄ます。

拒絶するマルティナ。

直後バルコニーからパーティー会場を見下ろすと、そこでは赤いドレスの女と親しげに話すウリセスの姿をみとめました。

翌日、ウリセスは釣りに行くと言って海に出ますが、その後、嵐となり、遭難。遺体が見つからないまま、ウリセスは死んだものとして、葬儀がとりおこなわれました。
数年後、マルティナはシエラと再婚していました。その後、何不自由のない生活を送っていたマルティナに無言電話がかかってきます。

その後、マルティナが電話に出ると、電話の向こうから聞こえたのは死んだはずのウリセスの声でした???
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マルコ・チュリオ・ジョルダーナ監督「狂った血の女(原題:Sanguepazzo)」(イタリア、2008年、153分)

2024-02-28 23:17:54 | イタリア
ムッソリーニ政権下で実在した女優と男優の危険な関係とその末路を綴った作品。この時期のベネチア国際映画祭、イタリア映画協会、チネチッタ映画界の混沌、などが描かれていて興味深いです。

舞台は1936年夏からの数年間、ローマ、ベネチア、そしてミラノ。

ファシスト党による一党独裁政権下のイタリアで、放蕩とコカインに溺れ自堕落な生活をすごしていた人気俳優オズワルド・ヴァレンティ(ルカ・ジンガレッティ)は、新人女優ルイザ(モニカ・ベルッチ)と出会い、深い仲となります。

ルイザは上流階級出身で反ファシズムの新進監督ゴルフィエロ・ゴフレディ(アレッシオ・ボーニ)に声をかけられ、人気女優となっていきます。ルイザはゴルフィエロに惹かれながらも、オズワルドとの関係を続け、事実上の妻となります。

第二次世界大戦が始まり、ローマでの映画製作が難しくなり、オズワルドは誘われるままに精鋭部隊デチマ・マス師団の中尉になります。しかし、国内戦で劣勢にたたされ、ファシストの降伏が時間の問題となるなか、1945年4月20日(イタリア解放の5日前)、ミラノでオズワルドはルイザと共にパルチザンに投降。

ファシスト党の広告塔となり、殺人や拷問に加担した疑いのあるふたりに、パルチザンが処刑を命じた矢先、ゴルフィエロがとった行動は・・・。
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寺山修司監督「さらば箱船」(1984年、127分)

2024-02-26 23:20:35 | 日本・1980年~
ガブリエル・ガルシア=マルケスによる小説『百年の孤独』の翻案です。監督の遺作。

舞台は沖縄のある村。その村の百年間の変遷のなかでの土俗的社会と近代的社会の葛藤というモチーフが潜んでいます。

沖縄のどこかの森にある小さな村での話。村の本家の時任家のあととり息子の大作(原田芳雄)は、少年の頃、本家の柱時計以外の村中の全ての柱時計を盗み出し、おおきな穴に葬り、本家だけが「時間」を管理するシステムにしてしまいます。

数年後。時任家の女スエ(小川真由美)といとこの捨吉(山﨑努)は相思相愛だったものの、いとこ同士が結婚すると犬の顔をした子が産まれるという迷信ゆえに、スエに貞操帯がつけられてしまいます。捨吉はスエを抱くことができず、捨吉の煩悩は募ります。

ある祭りの日。恒例の闘鶏で、大作のシャモは連戦連勝。そこに、捨吉が自分のシャモを持って現れ、勝利。悔しさのあまり大作は捨吉をバカにし、村人の前で恥さらしにします。怒りくるった捨吉は、包丁で大作を刺し殺してしまいます。

捨吉とスエはその夜、逃亡。途中ようやく辿り着いた空家に泊まりますが、翌朝にわかったことはその家は逃げたはずの自分達の家でした。いつのまにか戻ってきてしまったのです。以来、捨吉は大作の亡霊に悩まされ、ものの名前を忘れてしまう病にとりつかれ・・・。
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小栗康平監督「FOUJITA」(2015年、116分)

2024-02-25 23:23:43 | 日本・2010年~


小栗監督と言えば「泥の河」(1981年)、「伽倻子のために」(1984年)、「死の棘」(1990年)でよく知られ、わたしの好きな監督のひとりです。本作品はこれまでの小栗作品とは、少しテイストが違うように感じました。

画家、藤田嗣治(1886-1968)の半生を描いた作品です。

前半は1920年代のパリ、後半は1940年代の日本。

エコール・ド・パリの旗手として画壇の寵児となった藤田嗣治(オダギリジョー)。画家仲間や踊り子たちとの乱痴気騒ぎにうつつを抜かしながらも、彼は名声を得ねば大成しないとの信念のもと、フーフー(お調子者)のニックネームを意にかいしません。

彼の名声の宣伝に協力したフェルナンド(マリー・クレメール)と別れ、新たな恋人ユキ(アナ・ジラルド)と遊興に耽る藤田。彼はモデルのキキ(アンジェル・ユモー)に「スキャンダルや馬鹿げた騒ぎを重ねるほど、自分の絵は綺麗になる」とうそぶくのでした。

1940年代の日本に帰国した藤田。軍部から戦意高揚画の製作を依頼されます。彼はこの作業に携わり(「アッツ島玉砕」など)、「絵が人の心を揺さぶることを知った」と悟り、戦争絵画に意欲を見せます。

空襲の惨禍は東京に迫り、藤田は妻の君代(中谷美紀)と田舎に疎開。敗戦への道をまっしぐらにたどるなか、近隣の農家の人々と豊かな自然に接しながら藤田は新たな日本を再発見していきます。

戦後、戦争協力者と批判を浴びた藤田は再びパリへ・・・。
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ラナ・ゴゴボリセ監督「金の糸(原題::Okros dzapi)」(ジョージア・フランス、2019年、91分)

2024-02-24 23:27:02 | ジョージア
数々の名画を上映した岩波ホール(神田神保町)が閉館したのは昨年の7月。その最後を飾ったのが本作品で、わたしは今日、U-NEXT配信で観ました。

監督は高齢(91歳)の女性。彼女は日本独特の技術である「金継ぎ」(陶磁器の破損部分を漆で修繕する技法)にインスパイアされ、過去との和解をテーマにした作品をおもいたちました。

二箇所のシーンでこの日本の陶芸修復技法に触れています。

舞台はジョージア・トビリシ。1991年4月までジョージアはソ連邦の一共和国、その名称はグルジア共和国でした。

独立後、その旧市街の片隅にある古い家で娘夫婦と暮らす作家のエレネ(ナナ・ジョルジャゼ)。79歳の誕生日を迎えましたが、家族の誰もが記憶していません。

エレネは姑のミランダ(グランダ・ガルニア)にアルツハイマーの症状が出始めたため、自分の家に連れてきて一緒に暮らすといいだします。ミランダは、ジョージアのソビエト時代に政府の高官だった女性。

そんなエレネの誕生日に、かつての恋人アルチル(ジラ・キプシゼ)から電話がかかってきます。

共和国の独立が勝ち取れとられてから30年ほどたったとしても、そこに住む人々の感情、人間関係がすぐに変るわけではなく、ミランダは旧ソ連時代の体質をときにかいまみせ、かつて娘の小説を発禁本にしたことをひけらかしたりする始末。

過去にとらわれてはいけない、過去を破壊してもいけない、人々の人間関係は「金継ぎ」でつながれ・・・。
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寺山修司監督「田園に死す」(1974年、100分)

2024-02-17 19:15:37 | 日本・1970年~


奇抜な異形のシーンがずっと続きます。

「恐山」「母殺し」「家出」など寺山特有のテーマが取り上げられ、自伝的要素が見られるものの作為的な箇所も多い作品です。刊行された同名の歌集からの短歌が、映画の中で何度も朗読されます。

恐山の麓の村で母と二人で暮らしている中学生の私(高野浩幸)。父親はいません。唯一の楽しみはイタコに父親の霊を呼び出させ、会話をすること。隣には他所から嫁入りした若い人妻(八千草薫)が住んでいて、意中の人です。

ある日、村にやって来たサーカスへ遊びに行った私は団員から外の世界の事を聞かされ、憧れを抱きます。生活に嫌気がさしていた私は家出を決心し、同じように生活に飽いている隣の人妻と共に村を離れる約束をします。駅で待ち合わせをし、線路にそって歩く二人。

不意に映写終わります。ここまでは、映画監督となった現在の私が制作した自伝映画の一部でした。試写会が終わって、ある評論家(木村功)と一緒にスナックへと入った私(菅貫太郎)は、「もし、君がタイムマシーンに乗って数百年をさかのぼり、君の三代前のおばあさんを殺したとしたら、現在の君はいなくなると思うか」と問われます。

質問の意味をつきつめた私は、少年時代の自分自身に出会います。少年の私は、映画で描かれた少年時代は脚色されていて真実ではないと言い放ちます。そして本当の少年時代が語られると・・・。
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大木萌監督「漫画誕生」(2017年、118分)

2024-02-17 16:32:19 | 日本・2010年~
自宅からそれほど遠くない大宮(盆栽町)に「漫画会館」があります。漫画家、北澤楽天を記念した会館で、楽天が戦後住んでいた住居の跡が利用されています。かつて訪れたことがあります。

この映画はその北澤楽天の半生を描いたもので、本作品鑑賞後、この記念館の再訪を考えています。

昭和18年(1943年)、太平洋戦争が激化するなか北澤楽天(イッセイ尾形)は、国策として漫画を統制する組織「日本漫画奉公会」の会長に就任。

そんなある日、彼は内務省の検閲課に呼ばれ出頭します。検閲官、古賀(稲荷卓央)に促され、楽天は自らの過去を語り始めます。

明治32年(1899年)、福沢諭吉(モロ師岡)に見出され時事新報社に入社した楽天(若い頃の楽天を演じるのは橋爪遼)。従来の新聞絵の主流であったポンチ絵から、「漫画」という表現方法で風刺性の高い作品を読者に提供する希望をもっていた彼は諭吉に認められ、機関紙での作品掲載の場を与えられます。

直後、楽天は旅順陥落で湧く東京で偶然出会った宮武外骨(瓜生真之助)に感化され、風刺漫画雑誌の立ち上げを決意。雑誌の名は『東京パック』。

「時事漫画」や雑誌のヒットにより職業漫画家として頭角を現した彼は、いの(篠原ともえ)と結婚しました。

明治43年(1910年)、大逆事件が起こります。かつての親友が次々に社会主義運動に身を投じていた楽天は・・・。
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佐々部清監督「約束のステージ-時を駆けるふたりの歌-」(2019年、83分)

2024-02-16 16:34:42 | 日本・2010年~

かつて読売テレビ主宰で制作・放送されていた『全日本歌謡選手権』をモチーフにとりあげた作品。

2019年から1975年の日本にタイムスリップした歌手志望の女性が、自分と同じように歌手になる夢を持った同名の女性と邂逅し、意気投合。ユニットを組んで、この番組に出場したその顛末を描いています。

この『全日本歌謡選手権』で勝ち抜いてデビューした五木ひろし、八代亜紀、天童よしみらが審査員役で出演しています。

東北・青森の港町で暮らす翼(土屋太鳳)は、母がひとりで経営する食堂が不振で、歌手の夢を諦めかけていました。そのことで彼女は母と大喧嘩になり家を飛び出し、上野行きの電車に乗りこみます。結果、翼は1975年(昭和50年)の東京にタイムスリップ。

終着駅の上野で翼は同じく歌手志望の少女・つばさ(百田夏菜子)と出会い、世話になります。偶然であった元歌手・浩一郎(向井理)にご馳走になるなか、事情(家出)を説明すると親切にされます。彼は自身の借金の肩代わりに二人を人買いに渡すつもりでした。

ところが、彼にも良心のかけらがのこっていたのか、行きつけのスナックで歌う二人の歌を耳にすると一転、「全日本歌謡選手権」でデビューさせる決心がムラムラと。
ふたりは順調に勝ち上がったものの、10週勝ち抜きはならず、つばさはリタイア。ユニットが組めなくなった翼は、故郷の青森に帰る決心をしますが・・・・。
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三宅伸行監督「世の中にたえて桜のなかりせば」(2022年、87分)

2024-02-14 16:37:30 | 日本・2020年~


終活アドバイザーのアルバイトをしている不登校の女子高生が同僚の老紳士とともに、様々な境遇にある人の「終活」を手助けしていくなか、自分の生き方と向き合っていくというヒューマンドラマ。

尊敬していた教師の南雲先生(土居志央梨)が生徒からいじめをうけ学校を辞めてしまったことをきっかけに、不登校になってしまった女子高生の咲(岩本蓮加[乃木坂46])。

彼女は終活アドバイザーの事務所でバイトとして働くことになります。「依頼者の話を聞くだけの仕事」という仕事内容をたのみに応募した彼女は、依頼者に扮した先輩終活アドバイザーの敬三(宝田明)の相談にのるというネット広告のPR動画に出演。

仕事を終えた咲はニート状態の南雲先生のアパートに向かい、彼女の身の回りの世話をします。先生の精神状態は次第に悪化の一途をたどります。

終活相談の事務所には、次々に変わった人が相談にやってきます。遺書を書かねばならない仕事に就いたのだが、まだ健康で死ぬつもりのない自分はいったい遺書に何を書けばいいのかわからないという男。自分が経験してきた河川管理の仕事を動画に残しておきたいという男。

ある時、太平洋戦争時代に満州で暮らし終戦をむかえて日本に引き揚げてきた直後、自分も不登校児だった、と敬三から聞いた咲は・・・。
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ドミニク・サヴェージ監督「シークレット・エスケープ パリへの逃避行(原題:The Escape )」(イギリス、2017年、101分)

2024-02-13 16:39:38 | イギリス
パリの中世美術館にあるタペストリー「貴婦人と一角獣」がうつっている映画と知って、観ました。2013年にわたしはこの美術館に行って観ました。

このタペストリーは6枚からなる連作です(その一部が右下の画像)。制作年や場所は不明。パリで下絵が描かれ、15世紀末(1484年から1500年頃)のフランドルで織られたものと推察されています。

このタペストリーのテーマは不明ですが、現在では六つの感覚を示したものとされています。「味覚」「聴覚」「視覚」「嗅覚」「触覚」そして「我が唯一つの望み」(A mon seul désir)です。「我が唯一つの望み」とは何かはよくわかっていませんが、「愛」や「理解」ではないかと解釈されています。

本題に戻って、本映画作品は、夫と二人の子どもをもち、平凡な日常生活をおくっている専業主婦の女性、タラ(ジェマ・アータートン)が、その日常に飽き足らず、ロンドンの青空書店で「貴婦人と一角獣」のパンフレットみつけて購入し、めざめるという設定です。

退屈な繰り返しの生活にうんざりした彼女は夫、マーク(ドミニク・クーパー)と大喧嘩し、家を飛び出し、ひとりパリに向います。そして中世美術館を訪れ、念願のタペストリー「貴婦人と一角獣」の前にたちます。そうこうしているうちに彼女を被写体に執拗に写真をとっている男性が・・・。
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パトリス・ルコント監督「暮れ逢い(原題:Une promesse)」(フランス、2013年、98分)

2024-02-12 16:42:28 | フランス
原題は「約束」。

舞台は第1次世界大戦前後のドイツ。

孤独を抱える若妻と聡明な青年の、8年間の純愛を描いたルコント作品。

1912年、鉄道建設などで発展を遂げた初老の実業家、カール・ホフマイスタ―(アラン・リックマン)の工場で働くことになった才気にあふれる青年、ザイツ・フレドリック(リチャード・マッデン)。仕事熱心な彼は鉄道橋の部品発注の仕事を任されます。さらに心臓病で仕事が難しくなったホフマイスターの代理として、現場を任されます。

ザイツは業務報告のためホフマイスターの屋敷を行き来するうち、彼の妻ロット(レベッカ・ホール)に関心をもつようになります。息子オットーの勉強嫌いを心配する彼女。ザイツはオットーの家庭教師を引き受けました。ロットは若く頼もしいザイツに次第に惹かます。

メキシコから大量のマンガンが採掘されたことに目を付けたザイツはメキシコの土地を買い占め、採掘権を獲得してはどうかと提案。彼は今の工場の弱みが原料不足にあることを力説し、ホフマイスターをうならせます。

ホフマイスターはザイツを個人秘書に任命し、彼に屋敷の二階に部屋を与えます。フレドリックもまたロットに愛を感じるようになりますが、これは許されない恋。
直後、カールの計らいでザイツはメキシコ転勤を命じられ、これがきっかけとなって二人は変わらぬ愛を誓いますが……。
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ホリヴァー・ハーマナス監督「生きる(原題:Living )」(イギリス、2022年、102分)

2024-02-06 23:27:26 | イギリス
 
黒澤明監督「生きる」(1952年)のリメイク作品です。脚本はノーベル賞作家、カズオ・イシグロ。

舞台は1953年のロンドン。市役所の市民課課長、ロドニー・ウィリアムズ(ビル・ナイ)は堅物(かたぶつ)。他人を寄せ付けず、あたりを払う雰囲気です。

この課に、汚水まみれの小さな資材置き場を子供たちの遊び場に変えて欲しいという女性たちが陳情に来ます。彼女たちは何ヶ月も陳情書をたらい回しにされていました。無表情なまま陳情書を未決の棚に放り込むロドニー。

ある日、医者から末期ガンを宣告されたロドニー。余命は半年か長くて9ヶ月。同居の息子夫婦に話そうとしますが、できません。役所を無断欠勤し、海辺のリゾート地で酒を飲み、一時の享楽にふけります。しかし、性に合わずにロンドンに戻り、さ迷うロドニー。

ロドニーを見かけ、声をかけた元部下のマーガレット(エイミー・ルー・ウッド)。彼は、カフェに転職した彼女を食事に誘います。

それから数週間、無断欠勤を続けた末、マーガレットが再就職したカフェに来たロドニー。彼女はウェイトレスとして働いていました。マーガレットをデートに誘ったロドニーは、マーガレットに末期ガンだと打ち明けます。明るく前向きな彼女に何もかも打ち明けたロドニーは、翌朝、人が変わったようになり土砂降りの中、くだんの遊び場の現地視察に向かいますが・・・。
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セシル・デミル監督「平原児(原題:The Plainsman )」(アメリカ、1936年、113分)

2024-02-05 23:30:29 | アメリカ・戦前
西部史に名高い拳銃使いワイルド・ビル・ヒコックの後半生を描いたデミル監督の力作。

冒頭、1865年、リンカーン大統領が登場し、妻とフォード劇場へ。そこで暴漢に撃たれます。

私欲にはしる輩は、南北戦争後、売れなくなった銃器をインディアンに密売しました。その売りさばきを指揮するジョン・ラティマー。

西部へ向かう開拓民たちの警護をしていたワイルド・ビル(ゲイリー・クーパー)は親友のバッファロー・ビル・コディーとその新妻ルイザと同船、セントルイスに到着。そこで駅馬車の馭者をしていた男勝りのカラミティ・ジェーン(ジーン・アーサー)と出会います。

フォート・パイニーがインディアンに包囲され危険が迫っていることを聞いたワイルド・ビルは、そのことをカスター将軍に報告。将軍は弾薬輸送隊を編成し、道案内役をバッファロー・ビルに命じ、かつシャイアン族の酋長イエロー・ハンドを懐柔させる役を依頼します。途中でシャイアン族の虜とされていた彼女を救けようとしますが、彼自身も捕らえられ、イエロー・ハンドに「輸送隊の通路を教えろ」と脅されます。白状しない彼は、火あぶりの拷問にかけられます。

ジェーンの詭計でなんとか脱出。追撃してくるシャイアン族との激しい撃ち合い。ほぼ全滅の窮地に追い詰められたところを、駆けつけたカスター将軍の救援部隊に救われますが・・・。
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エド・エアレンベルク監督「ビハインド・エネミーライン 女たちの戦場(原題:Höre die Stille )」(ドイツ、2016年、98分)

2024-02-04 23:33:09 | ドイツ
 

第二次世界大戦下(1941年10月)、ナチス・ドイツの侵攻におののくウクライナの寒村の女たちを描いた過酷な物語。

ナチス・ドイツ軍とソ連軍の戦いが拮抗、激化するなか、本隊とはぐれたあるドイツ軍小隊が敵地の奥深い山中にある寒村へたどり着きます。そこの留守宅に居住する女性を拉致します。

恐怖に駆られたある女性がドイツ人少尉をはずみで刺殺したことで、小隊は犯人捜しと虐殺を開始。女性たちは生き残るため、逃げ惑いながら武器を手にとります。

当時、ウクライナはソ連のなかの共和国の一つでしたが、寒村にはロシア系ドイツ人が住み、赤軍からドイツの工作員の村だと疑われ、微妙な状況にありました。
女性たちはドイツ軍小隊の言うとおりになります。小隊を率いる少尉ブートヴィッヒは、まず村から武器を全て回収。更に小隊が滞在する屋敷に村の子供達を全て集め、寝食をともにします。こうすることで、大人たちの抵抗力を奪ったのです。

ドイツ兵たちには若者が多く、対して村にも年頃の人妻が多いので、年寄りは生き残るために、自らの体を差し出す覚悟をしろ、と説得します。女性たちはそれぞれ若い敵兵と交流を持ちます。そんな中、村の若い娘マータは、赤軍へこのことを知らせようと訴え、単独での村からの脱出を画策しますが・・・。
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レイ・エンライト監督「スポイラース(原題:The Spoilers)」(アメリカ、1942年、87分)

2024-02-02 23:36:06 | アメリカ・1940年~
金鉱の利権争いを描いた活劇と、一途な想いが織りなすラブストーリーをあわせもった佳作。クライマックスの対決は壮絶至極。

舞台は1900年、ゴールドラッシュにわくアラスカのノーム。

鉱山監督官・マクナマラが支配するノームの街は一攫千金を狙うあらくれ男たちが街に、そして酒場にあふれていました。鉱山の横領事件や、殺人、鉄拳と拳銃事件が日常茶飯事。

荒くれ男たちは目の色を変えて金をつかむ事に夢中で、無法状態。強い者が法律といった体です。その中心にいたのが鉱山監督官のマクナマラ(ランドルフ・スコット)でした。

ある日、この港町にシスコから船が到着。酒場女のチェリイ(マレーネ・デートリッヒ)の愛人、ロイ(ジョン・ウェイン)がこの船で帰って来る予定でした。しかし、姿を見せた彼の横には美しい娘が寄り添っていました。彼女はこの町で、マクナマラと組んで、有望なロイの金鉱を手に入れようとやって来た判事の娘。

その娘に心を傾けているロイを見たチェリイは怒りで震えます。ロイの頬を張り飛ばし一旦は絶縁しますが、彼女はロイを思い切ることが出来ません。そんなことが起こっている最中に、ロイの鉱山はマクナマラと判事の仕組んだ芝居に引っかかり、彼の手に落ちようとしていました。マクナマラの奸計を知ったチェリイは、・・・。
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