桜がおわり、時期はずれと思われるこの時節に、ここ哲学の道を散策してみようと思う観光客はそう多くはあるまい。
桜、紅葉ともなれば多くの人で賑わう哲学の道ではあるが、さすがにこの頃になると閑散としている。
それも早朝ともなるとなおさらである。朝の陽ざしに包まれる道では、ウオーキングをする人と行き交うだけである。
シーズンの谷間ともいえる時期ではあるが、哲学の道が落ち着きを取り戻し、とても素敵な表情を見せるのがこの新緑の季節である。
堤を覆うように茂る新緑が疏水に映える様はまことに美しく、歩むに従い青紅葉が堤を深く深く飾って行く。
桜、紅葉も捨てがたいが、この時期に哲学の道が漂わす風情が一番好きである。
東山の麓にあり、閑静な道を鳥のさえずりを聞きながらのんびりと散策をすると実に心が癒される。近代において、京大生や文人達に愛され、文人の道と呼ばれた所以がよく分かる。
いつしか哲学者が好んで歩いた事より哲学の道と名が変るが、おそらくその歩みとしては雑踏に紛れる時節より、この時期が一番よいのではなかろうか。