先週末は、英語のユニバーサルデザイン研究会の定例勉強会でアセスメントについての発表でした。
といっても、「アセスメント」について話すのは初めてで、
「とにかく全体像を!」と張り切りすぎ、詰め込みすぎた感いっぱいですが、
私の考え方は示せたかと思います。
一部紹介します。
わたしが普段アセスメントをするのは、すでに授業に遅れが見られ、
LDの診断があったり、そうではないかという疑いのあるお子さんです。
大抵は、国語で既に問題が表出しているので、
小学生であればローマ字が全然できていませんとか、漢字が書けませんといったことから
「中学校で英語でつまずくのではないか」と心配されています。
中学生であれば、他の科目はなんとかがんばれても英語だけはお手上げです、
英語が嫌いで学校に行けなくなりましたというような、そういうお子さんです。
どこで躓いたか、あるいは躓くだろうか、という予想を立てて指導計画を作るのですが
その際に、アセスメントは欠かせません。
単語が読めない躓きは、「単語が読めないだけ」では終わりません。
「英語は積み上げていく科目」と以前どこかで書きましたが、
これは算数などと同じで、
ある学習内容が次の学習内容の前提となっているので、指導目標を立てる際は、
それ以前のスキルや知識が身についている、
つまり学習のレディネスが育っているということが前提となります。
もし単語が読めなければ、語彙も、表現もなかなか増えません。
また、語彙がなければ文法の理解が難しくなるだけでなく、なかなか定着が進みません。
文の構造がわからなければ、文を読んでも正しい意味がわかりません。
読解にはある程度の読みの流暢さが必要ですので、読解の経験も増えない、
そのように、学習の問題はつながっています。
口語では、まず文レベルでのコミュニケーションがあります。
構造や表現は文脈の中で気づきとともに発達するということもあって
トップダウン的なコミュニケーション重視のアプローチが自然だと思いますが
読み書き習得においてはそうではなくて
学習初期の子どもであるほど、ボトムアップ的に
基礎と言われるスキルから徐々に指導する必要がありますね。
別に英語だけではなくて、私たちの母語である国語でも同じです。
言語を問わず、読みの発達は一般的に下のような図に沿って発達すると考えられています。
私は日本の英語教育では、単語を読む以前の、
「音韻意識」と「デコーディング」の指導を全く行っていないことが
躓きの大きな原因となっていると考えています。(図)
(*デコーディング(decoding)とは、文字を音声化することで、通常フォニックスを用いて指導します)
この図に従ってみると、
語彙の獲得には、「単語が読める」ことが必要で、
そのためには文字の形を正しく捉えその音を知っていることや、
文字と音の対応規則、文字の単位での音韻意識が育っていることが必須です。
ですから、「単語が読めない」「文法がわかっていない」「読解がさっぱりだめ」
という問題があるのなら、どうすれば良いでしょう。
生徒が「読解ができないから読解練習」の根拠としては
「経験をつめばできるようになる」という仮説のもとでのみ成立します。
単語が読めていない子に「単語は100回書いて覚える」というのも同じです。
読解ができる準備が整っているのかな、
単語が読める準備が整っているのかな、
まだだったら、1つ2つ前段階の状況をチェックしよう。
もしそれも不十分だったら、その1つ前の段階も見てみよう!
というように、理論的には、下位項目を順に遡りながらどこで躓いたかを確認し、
躓いたところからのスタートとなります。
身近な生徒さんは、教科書の音読はできているでしょうか。
単語はデコーディングができているでしょうか。
「音韻意識」「デコーディング」「文字認識」の3つの領域の
どこかで躓いていないでしょうか。
LDのあるお子さんはともすれば、
「やる気がない」「努力不足」「頭が悪いのでは」といった判断をされがちかと思います。
支援を考えるのであれば、WISCなどの心理検査だけでなく、
国語での状況なども合わせて、
本人の潜在的な能力を正しく評価することが大切です。
そして発達を踏まえたアセスメントを行い、
躓きの箇所からの指導スタートに結びつけられれば、
あとは軌道に乗っていくだけ!・・・となりますね。
なかなか一斉授業では難しいと思いますが、
中学校の通常学級でもアルファベットが全部書けないお子さんが沢山います。
デコーディングに至っては、フォニックスを知らなければ暗記しかありません。
学校が、アルファベットの段階からもう少し丁寧にアセスメントを行い、
アセスメントの結果が意味することをよく分析し、
実態に則した指導を取り入れるだけでずいぶん落ちこぼれは減るのになあと思っています。
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