学習障害と英語指導を考える

特別支援の視点から。
どの子もハッピーになるような指導を。

METS in Kansai /2016 February 感想レポート

2016年02月07日 | 講演会・勉強会
今日は隙間の時間をやりくりして、
なんとか行きたかったMETS in Kansai /2016 February (英語を教える教師の集う会)行ってきました。

大教大で小学校外国語活動の最前線を走っておられる柏木先生の
「小中連携の英語-音声から文字へのゆるやかな5ステップ-」は
「担任教員がここまでやってるんだ!」という驚きの連続、
とってもインスパイアリングでした。

 

”5ステップス”の内容は以下です。
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①音を体で感じる、絵本に耳を傾ける
②アルファベット大文字の形、名前読み、絵本の音声を真似る
③アルファベット小文字の形、仕事読み、絵本の音声を真似る活動
④アルファベット大文字と小文字の一致、先頭音の聞き分け、9つの音素、絵本の短い文を眼で読む活動、9つのサイトワード
⑤語尾音の聞き分け、9つの音素、母音の聞き分け、絵本についている短い文を読む活動、身の回りの単語を見つける活動、短い単語の写し書きを楽しむ活動、9つのサイトワード
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今回とても見たかったのは、
「気づき」をどう促すのかでした。

だって、①~⑤だけだとそんなに難しいとは思いませんよね。
でもそれを先生が「一方的に教える」のではなく、
個人の認知的な活動としての学びを重視した取り組みとして
大人数の生徒を抱えた教室でどう実現できるのかな、
ととても興味がありました。

それを担任の先生がされる。
すごいことだと思います。

たとえば通常のアルファベットの順序を教える場面では、
ABCの歌を歌うで終わってしまうかもしれません。

そこで、先生が特定の文字になったらそこだけ歌わずに手を叩こうといった指示をすることで、
子どもは文字の1つ1つをより強く意識します。
すると、ぼんやり見てるだけよりもずっと覚えやすい~はず。

細部に意識を向けるしかけやしくみは、ほかにもありました。

小文字は形状が似ているため多くの子どもが混乱します。

そのため、bやdなど、
棒が高く伸びている文字を読むときは「立つ」、
gなど下に下りる文字のときは、「床をさわる」。

動作と文字の形状と音を結びつけることで
形状の違いに意識を向けやすい効果があるだけでなく、
体を使うからより形の特徴を習得しやすいですよね!
(そしてこういうことがどれほど大切か!)

ライムへの気づきは歌を聞きながらチップを置いたり
ペアで一緒に手を叩いて数を数えたり。
音節分解は、ペアで向かい合いながら1音節ごとに手を叩いたり、前後にステップを踏んだり。

有声音と無声音の違いを、自分の喉に手をあてながら発音することで気づかせるようなアクティビティは、
”なんとなく”発音していた音を、より意識的に聞いたり発したりするきっかけにつながるだろうと思いました。

またこうした個人活動以外にグループで取り組む活動も紹介されていました。

例で見せて頂いたのは、馴染みのある絵カードを用いてのカルタです。
「s, s, snake」というように、
先生が語頭の音を先に発音し、
つぎに単語全体を発音するのですが、
そこまでは個人で音を聞き、絵や文字と結びつけて認識する活動ですが、それをグループで取り組むと、
「それじゃないんじゃない?」「これじゃないかな?」といった会話がなされるとのことでした。
そうすることで、おそらくですが、音の感度の低い子にも良い刺激になったり、気づくきっかけになったりといったことにもつながりそう~~。

また、サイトワードでも特にshやwhなどダイグラフを含んだ語は中学生でも苦手なため、すこしずつ、小学校から馴染むのは大切ですよね・・・。

柏木先生の取り組みは音から文字だけでなく、
CLILなども含むコミュニケーション全体を伸ばし、
文構造の気づきにつなげる包括的なものなのですが、
いくつか印象に残った言葉は・・・(多分こんな感じでおっしゃったかと・・間違っていたらすみません)

① コミュニケーション活動を大きな木としたら、そこに、一本の枝のように、音から文字の指導を(入れる)。

② teachabilityを考慮することが大切。担任の先生方が取り入れやすい活動であることは大切。

③ 子どもたちがグループで取り組むことの利点は大きい

④ 自分が学んでいることが「絵本が読めた」といった、具体的に目に見える、感じられる達成感につながることは大切。

これを小学生だけではなく中学校でもスパイラル的に行うことも盛り込まれ、”確実に身につけさせる!”という意欲が伝わってきました。

1時間弱の発表でしたが、私のように小さいグループを対象にしているのではなく40人弱の大人数を相手に音韻意識からフォニックスへつなげる取り組みはとても重要だと思います。

今回は、背景の理論についてはまったく触れられず、
活動のみを紹介して下さいましたが、
それぞれの活動には理論的な背景があるのを感じました。

教員が細かなステップをどう評価して次の段階に進む判断をするかなどは、お聞きしたかったところです。(でも時間の関係で質問できず)

また、今回の発表には、
「なんでそこまでするのか」「不要じゃないか」
と思われる人もいるだろうなあ、と思って見ていました。
(わたしもきっとそう思われてるから・・・)

ですが!ここでちょっと偉そうに書いてしまってすみませんが、
「見る」「聞く」は、本当に個人的な、
本人にしかわからない体験であることを、知って欲しいです~。

先生が「見てる」と思っていても生徒が同じ所を見ているかというと、必ずしもそうではない。

先生が「聞いてる」と思っている部分を生徒は意識していないかもしれない。

例えば同じ歌を聴くのでも、ボーカルを聞いている子もいれば、ドラムの音、ギター、ベースの音を聞いている子もおり、
同じ歌でも、どこに集中しているかは、
第三者にはわからないのです。

そのため、それ(見たり聞いたり)を前提とした活動では、かなり明示的に指示しなければ、ついていけない生徒がでます。

(ですから特別支援教育では、指示の出し方、示し方などにとても配慮していますよね)

普段の外国語活動で、
「英語の歌を聴く」とか「会話の大量のインプット」は、
生徒まかせの聴き方となるため、
個人格差がどんどん広がる(はず)。

全体の中の細部に確実に意識を向ける必要がある活動は、
「どこを聞くのか」「どこを見るのか」を明確にすることが
とても大切だと常日頃感じています。

そのためには、「意識させるしくみ」を多感覚にすることはもちろん、グループでのやりとりなども大切だと思います。

これこそユニバーサルデザインの視点をたっぷり含んだ外国語活動だなあ、と思ってみていました。

こうした取り組みがもっと高く評価されますように。

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