一韶の俳句ブログ

俳句を詠うのは自然・私・家族・夢や希望・社会など。読む時はどんな解釈が浮かぶか読み手の経験や生活によって様々

2280  尺取虫急ぎ足するボンネット  吠冲

2022年08月02日 | 

 尺取虫は、天敵の野鳥やカマキリなどの昆虫から身を守るため、木の枝とそっくりに擬態したり、襲われた時に糸を出してぶら下がることが知られている。そこで、車のボンネットに落ちたらさあ大変。ボンネットが太陽に熱せられていたら、あっという間に干からびてしまうだろう。

 この句の場合、それほど熱くないようだからなんとかなりそうだが、とりあえず鉄板の上を急いで走る他に尺取虫に生き抜く術はない。しかし、これからどうやって近くの植物にたどり着くのだろうか。

人間の作り出した様々な構造物は、尺取虫のような小さな虫たちにとっては、地獄と死を意味している。

ハギ(萩)

 

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2279  道をしへ仙厳園の観音岩  黄玉

2022年07月29日 | 

  「道をしへ」とは、ハンミョウ科の昆虫のハンミョウ(斑猫)の俗称。人が近づくと飛んで逃げ、1〜2m程度飛んで着地し、度々後ろを振り返る。往々にしてこれが繰り返されるため、その様を道案内にたとえ「ミチシルベ」「ミチオシエ」という別名がある

 さて、仙厳園は、鹿児島にある薩摩藩、島津家の別邸で、現在は一般に開放されており、御殿、レストラ、尚古集成館、薩摩切子工場、観音岩などがある。

オオバギボウシ(大葉擬宝珠)

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2278  納涼やしたたかに凛と咲く花よ  洋子

2022年07月23日 | 

「納涼」は、「のうりょう」と読み、「納涼祭」「納涼船」など。又、「すずみ」とも読み「涼み」とも書く。「夕納涼」「門納涼」など。さて、今年の梅雨明けは、観測以来過去二度目の6月中だった。今年の夏は、長くてかつ猛暑が続きそうである。

 さてこの句、何の花だろう。つまり、敢えて花の名前を言わないのが、この句の味噌である。そこでヒントになるのが、「したたか」で、漢字は「強か」である。「凜」とは本来、「寒い、寒さがきびしい」ことであるから転じて、厳しい、りりしい、凄まじい。身や心がひきしまる、などと言う意味にも変化していった。

 夏の暑さや乾燥にも負けない丈夫な花を検索してみた。洋花の中の和花が少しある。キキョウ(桔梗)とオダマキ(苧環)である。又、琉球朝顔も入っている。私としては、ヤマユリ(山百合)やヒオウギ(桧扇)、ギボウシ(擬宝珠)、なども入れておきたい。読者に想像を任せると、地域それぞれ、人それぞれ、色々の花の名前が出てくるのだ。

キンシバイ(金糸梅)

 

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2277  雨止みてせせらぎ音頭蛍舞う  イヨ

2022年07月12日 | 

 「せせらぎ」は、「せせらき」「せぜらき」「せせなぎ」「せらぎ」などとも言われ、動詞「せせらぐ」の連用形の名詞化である。 浅瀬などに水が流れる音。また、音をたてて流れる小さな、あるいは浅い水の流れ、浅瀬そのものをいう。

 この句の面白いのは、小川のせせらぎを「音頭」としたところだろう。音頭とは本来、雅楽の主奏者、声明や民謡の主唱者を指した。先頭に立って指導することを「音頭を取る」などと言うようになったことを踏まえると、この句の「音頭」がなかなかの選択であったことが分かるだろう。せせらぎの音頭に乗せて、蛍たちが乱舞している、というのだ。

オオバギボウシ(大葉擬宝珠)

 

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2275  遠き日の破滅派いずこ桜桃忌  鯨児

2022年07月03日 | 

「破滅派」とは、フランスのまだ何者でもなかった若者たちが、安アパートに集って安いワインに酔いながら、まだ予算さえ確保できていない映画の計画について無謀な思い付きを塗り重ねていた頃から始まった、という。その後、ゴダールやトリュフォーたちが映画監督になり、ヌーベル・ヴァーグの旗手として新しいフランス映画を立ち上げていった。

  一方、桜桃忌は、入水自殺した太宰治の忌日であり、坂口安吾、石川淳、織田作之助らと共に、「無頼派」と呼ばれている。太平洋戦争後の混乱期に始まった、破滅へ向けての生活無頼であり、又旧態を打破し新しい文学の追求も視野に入れていた。私は、割腹自殺した三島由紀夫も無頼派に入れても良いのではないか、と思っている。

 いずれにしても、破滅派も無頼派も、どうやら消滅した模様である。六十年代、七十年代の日米安保闘争の戦士達も、悲しいかな安穏とした老人生活を送っているのであろう。

 ところが、最近の日本では、作家の高橋文樹が、二〇一〇年ウェブサイト上に無頼派の流れを汲む第二の「破滅派」を立ち上げた。乞うご期待である。

ヒメツルニチニチソウ(姫蔓日々草)

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2274  ふんわりと産毛残して巣立ちたり  歩智  

2022年06月14日 | 

(ふんわりと うぶげのこして すだちたり)

  以前私は、野鳥のための巣箱を作った時山雀が入り、その子育てを遠くから見守ったことがある。又、犬柘植など、木を剪定していて巣を発見したこともある。しかし、巣立ったばかりの鳥の巣を驚かしてはいけないと思い、覗いたことは、一度もない。

 さてこの句、産毛を残した動物はなんだろうか。鳥類と考えるのが普通だろうが、毛のある哺乳類なども候補ではある。一応鳥類として考えると、第一候補は燕、二番目は雀、三番目は鴉、つまり私達の身近にいる鳥達である。つまり、こういう俳句が作れるのは、身近に野鳥がいるということだ。

 最近は、巣箱に小型カメラを付けて、パソコンで観察できるようになったらしい。便利になったものだ。

タツナミソウ(立浪草)

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2273  五月雨や熊本城の天守閣  沙会  

2022年06月12日 | 

 この句、作者は「五月雨」「熊本城」「天守閣」という名詞を、助詞の「や」と「の」でつないだだけである。副詞も形容詞も動詞もない。作者の感情や理屈など一切の修飾や説明がない。

 しかし、読み手である我々は、数年前熊本地震があり、熊本城が大きな被害を受け、最近ようやく天守閣の修復が終了したのをニュースで観て知っている。作者が、その復旧した天守閣を仰いで、熊本市民の安堵の気持ちや加藤清正の築いた城の歴史などに思いを馳せたであろうことが、想像されるのである。そして、修理された屋根に、滂沱たる五月雨が降っている。

 6年前の2016年4月、熊本地震が発生した。震度7が1回、6強が2回、6弱が3回。計測震度は、東日本大震災(6,6)を上回り、熊本は(6,7)だった。関連死を含めて273人が亡くなっている。負傷者2800人、避難者18万人。被害額4.6兆円という大災害だった。

 俳句は、短詩であり省略の文学と言われるが、この句のように作者の言わんとすることを具体的な物だけを提示して、読者にその投げかける。これが俳句の原点なのだ。

タツナミソウ(立浪草)

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2272  第309回 岩戸句会   五月 

2022年06月04日 | 

五月雨や熊本城の天守閣         沙会

濃淡の阿蘇の新緑描く筆         〃

 

ふんわりと産毛残して巣立ちたり     歩智

梅雨どきとはいえ昨夜の豪雨かな

  

あじさいやエンディングノート書き直す  洋子

夏みかん唇指もしたたりて 

 

夏空や右折車線は渋滞中         光子

蜥蜴居て一オクターブ上がるキャー    〃

 

鶯もお国訛りや三千院          凛

ガーベラに見つめられてる昼下がり    〃 

 

トマトの輪切りボヘミアガラスの皿    炎火

紫陽花の国道を切る配管工 

 

遠き日の我と行きかふ夕焼雲       さくら

回り道して万緑の中に入る         〃

 

蝶の口出水の後の土を吸う        薪

販売車の弾む音楽万緑へ

 

さえずりに揺れて応える若楓       鯨児〃

麦嵐波涛につるむ風の神 

    

野原でスキップランラン夏来たる     一煌

花間近為朝ユリの息づかい

 

夏の蝶屋根越す毎に裏返る        豊春        

万緑や森に溶け込む石仏         〃

 

静けさの万緑の寺鐘の音         イヨ

穀雨来て野道賑わい風渡る        〃

 

初夏になり鮎川戻り海静か        鞠

一面に蜜柑の花や香水瓶         〃

 

公園の泉水跡に八重桜          余白

妻拝す月下美人に何願う

 

日が暮れて命のかぎり蝉時雨       忠人

雨に濡れ香り色付く牡丹かな       〃

 

万緑や赤傘野点沢求め          黄玉

野薔薇道越えて歓声溢れけり       〃

   

逃げ延びた金魚を売って下さいな     雲水

新茶汲む二煎三煎八雲もち        〃

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2226  二波三波波乗りジョニー五波六波   鯨児

2021年08月18日 | 

「波乗りジョニー」は、桑田佳祐の作詞作曲。歌詞に「同じ波はもう来ない、風が水面に帆を立てる、遥か遠く秋が目醒めた、せつない胸に波音が打ち寄せる」などの言葉が目を引く。2001年、オリコン週間1位(通算2週)ソング・オブ・ザ・イヤー、オリコン7月度月間1位、年間ではオリコン4位だった楽曲。かなりヒットしたらしい。

 オリンピックのサーフィン競技で、五十嵐カノア君が銀メダル、都筑有夢路ちゃんが銅メダルと大健闘して記憶に新しいが、この句のジョニーは只今第4の波に乗っているらしい。

おっとっと、ところが作者によれば、この句はコロナ感染の波のことを言っているそうである。そうであるならば、現在の日本は、幸か不幸か新型コロナの感染第5波に乗っていることになる。

サルスベリ(百日紅)

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2225  積乱雲胸のなかにも立つ日あり  いふり山麓

2021年08月17日 | 

 積乱雲が胸の中に立った、という。さて、読者である私は、作者の胸の中を覗こうとする。積乱雲は、入道雲ともいう。➀遠くから、例えば砂浜から眺めていれば、海上の入道雲は白く雄大で美しい。➁入道雲が近づいて来たら危険である。土砂降りの雨や落雷があるから、早く屋内に退散すべきであろう。③入道雲の中に入ってしまったら、正に豪雨、突風、落雷と身が危険である。

 さて、作者の胸中はいかなるものか、➁が作者の意向かもしれないが、想像が難しい。そこで私は➀を採りたいと思う。気分でいうとイライラした、ムカムカした、ハラハラした、ドキドキした、モヤモヤした、ワクワクした、ウキウキした気分などが考えられる。

 私は、ワクワクした気分を採りたいと思う。きっと、何か良いことがあってほくそ笑んでいて、海で泳ぎながら積乱雲を眺めているに違いない。

ムクゲ(木槿)

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2224  廃屋の庇傾き苔の花  さくら

2021年08月16日 | 

(はいおくの ひさしかたむき こけのはな)

 2018年の日本の空き家は846万件。空き家率は13.6%。県別でトップは和歌山県の18.8%。徳島、鹿児島、高知、愛媛と続く。過疎化が進んでいる県であろう。一方、空き家率の低い県のトップは、沖縄県の9.7%。埼玉、神奈川、東京、愛知と続く。沖縄を除けば、大都市圏の人口密集地である。

 空き家の中には、所有者不明で税金も払わず朽ちて危険な廃屋も多い。これらは、急ぎ法律を作り撤去して更地として、土地を国有化するべきだ。こういった問題を放置するのは、政治家の怠慢である。

ミントの花

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2220  搜索犬泥のままなる外寝かな   裕

2021年08月07日 | 

 熱海市伊豆山で土砂崩れがあってから一と月経った。現時点で死者は22名、私のテニス仲間も亡くなった。更に、行方不明者が5名いて、未だに捜索が続けられている。崩落の原因となった盛土は、我が家から二キロほどしか離れていない。この不法な盛土を行った業者と、それを見逃してきた市や県、国の行政責任は重い。明らかな人災と言われる所以である。

 捜索は、自衛隊、消防隊、警察など150人態勢で連日行われていた。そして、人間の入ることのできない危険な建物の中を探す、脚が埋まり泥まみれになったシェパードがTVに映っていた。人間と犬の深い信頼関係は、埋葬された骨が同じ場所から発見された縄文時代に遡るそうである。

 さて、夏の涼しさの中の「昼寝」は、心地よく健康的である。一方「外寝」は、どちらかというと夜、外で寝ることを指す。この句の捜索犬の眠る様子は、見るものを十分に感動させる。

キンシバイ(金糸梅)

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2219   第299回 岩戸句会 7月

2021年08月06日 | 

搜索犬泥のままなる外寝かな     裕

ドローンのゆっくり巡る処暑の山

 

山気満つ蜩繁き伊豆の森       豊春     

カナカナは過ぎし日手繰る糸車

    

砂日傘ひとつひとつの日影あり    歩智         

来年も生きてるつもり種を採る

 

人二画支え合いたし日々草      さくら

廃屋の庇傾き苔の花

 

蚊帳の中電気を消して歌合戦     パピ

あららまあポケットから扇風機 

 

朝蝉や音合わせ無くてんでんに    凛

現し世にいましばらくは端居して

 

お決まりの髭と帽子に白い靴     沙会

接種して病人擬や夏の暮

 

暑を避けて宵の散歩や百日紅     光子

用心の隙間の転倒夏の月

 

二波三波波乗りジョニー五波六波   鯨児

火取虫ワクチン打って五輪中

     

しかられし端居の寝顔そっとなぜ   イヨ

湯上りの端居な夕べ風渡る

 

日の本の名のむくげ活け凛として   鞠

夏盛りハマナスの赤海を見る

 

梅雨明けて自粛は明けず窓掃除    貴美

端居して信濃の風や旅の宿

 

端居かけ汽笛ききながら初島へ    黄玉

紫の七月場所に呂の着物

                   

砂日傘ひとつひとつの日影あり    歩智         

来年も生きてるつもり種を採る

 

山盛りのえさ日盛りの野良猫に    稱子

毎日が日曜の暮らし夕端居

 

白日傘ファッショナブルな黒日傘   炎火

木洩れ日と羽蟻のゆれる露天風呂 

 

庭垣根炎昼避けて剪定す       余白

痩せ胸にブラジャーまとう老女の夏

 

いびつなるぐい飲みが好き冷やっこ  洋子

百日紅天の明るさ奪いおり

 

晩夏光虔十林に誘われて       雲水

皺枯れのジョニーキャッシュと夕端居

オオバギボシ(大葉擬宝珠)

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2216  琺瑯質の卵を拾う青葉闇  薪

2021年07月06日 | 

 この句、作者に聞くと、拾った卵は青かったという。野鳥研究家によると「青い卵を産む鳥は、イソヒヨドリ、コルリ、アオサギ、ムクドリなどで、青い卵を産む鳥は、樹上に営巣する鳥が多く、空の色にカモフラージュしている。光が卵に反射して、青い空と同化して、見つけられ難くなっている」しかし、卵は大抵上から見えるのだから、青い空は下から見上げるのだから、辻褄が合わない。

 又「ほとんどの野鳥の卵は、ボルフィリンという物質が卵の表面に模様を形成している。どうして一部の鳥だけ青い卵を産むようになったのか、現段階では解明されていないのが現状だ」 ちなみに、卵の青はブルー、青葉闇の「青」は、グリーン、緑である。

オオバギボウシ(大葉擬宝珠)

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2215  弥次郎兵衛今日は梅雨入か真夏日か  歩智

2021年07月04日 | 

(やじろべえ きょうはついりか まなつびか)

「弥次郎兵衛」とは、振り分け荷物を棒の先に吊るして肩に担いで運ぶ、十返舎一九の東海道中膝栗毛の登場人物の弥次郎兵衛に由来する。最近はあまり見ないが、多くは人物を象っており、しばしばドングリと竹ヒゴを使って作られ、支点は足、左右のバランスをとる部分は腕である。ヤジロベエ全体の重心が、支点(中心)よりも下にあるため、ヤジロベエは安定的に立つことができる。

 さて作者は、今日は梅雨入りか、はた又真夏日か、と問うているが、梅雨入りなのか、真夏日なのか、それとも両方なのか、それとも両方そうでないのか、弥次郎兵衛の斡旋によって、作者が判断できない状況にあることを示している。結局、テレビや新聞の天気予報士に問うているのかもしれない。

ヤブカンゾウ(藪萱草)

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