To be continued.

                   
アイリスの気ままに紡ぐダイアリー

スカイ・クロラ ★★★☆

2008-08-04 23:21:55 | 映画(劇場)
押井守監督の新作アニメーション
スカイ・クロラ The Sky Crawlers を観てきました。



 戦争の無くなった時代
 人々は平和を実感するために「ショーとしての戦争」を求めた
 戦うのはキルドレと呼ばれる子供たち
 彼らは大人になることはなく、思春期の姿のまま永遠に生き続ける
 空で死なない限りは・・・
 
 ~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~

これって、プロペラ機でのスターウォーズ?!
空中戦のスピードある動きに追いつけなくて頭がクラクラ、見応え充分。

戦いの場でしか、生きている実感が持てないキルドレたち。
子供とはいえ、煙草や酒、恋愛、セックス、出産を経験している者もいる。
特に喫煙シーンは多い。
絶対になれない大人への憧れ? それとも子供であることを際立たせるために吸わせているのだろうか。
それにしても、地上では、何をしても、どこか虚しい。

ある意味、恋愛映画でもある。
主人公のパイロット・函南優一(カンナミ・ユーイチ)は女性司令官・草薙水素(クサナギ・スイト)を救うために、無謀と思われる戦いにひとりで挑む。
しかし、見せるための戦争であるため、ティーチャーと呼ばれる敵方パイロットには絶対に勝てないルールがある。

空で敗れれば死ねるのかと思いきや、完全なる死は訪れない。
そして、また繰り返される空虚な生。

押井守監督は、言う。

 この映画を通して、
 今を生きる若者たちに声高に叫ぶ空虚な正義や紋切り型の励ましではなく、
 静かだけれど確かな「真実の希望」を伝えたいのです。

この映画のラストで、希望は見出せるのだろうか。
エンドロールの後でダメ押しするまでもなく、この状況では希望は見えない。
終わりのない連鎖を断ち切るために、何らかの変化の兆しが現れるまで、無謀無駄と思われる行動を繰り返すのか。

最後のユーイチのモノローグが、生きていく上での希望?
それ、詰まらない・・・ すでに他の誰かが言ってるんじゃ・・・

そもそも、若者に何かを言ってあげたいという理由で、映画を作って欲しくなんかないよ。
『GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊』『イノセンス』と比べると、ヌルい感じがしてしまう。
映像美や世界観に圧倒され、なかなか抜け出せなかった覚えがある。

この映画で考えたのは、「大人になる」って、どういうことなんだろう?と。
今の子供たちは、大人になんか、なりたくないだろうね。
子供のままの方が自由気ままで楽しいし、周りの人間も優しくしてくれるもの。
大人、詰まらなそう~ 大変そう~

ポニョのように「宗介が好きだから、人間になりたい」と真っ直ぐな思いを抱けるうちは幸せだ。

そういえば大人になるのを自分の意志で止めてしまった少年を描いた「ブリキの太鼓」という名作があった。
あの男の子は、何をきっかけに、また成長をし始めたんだっけ?

自分にしても、いい歳なのに、大人なのかと問われても、良く分からない。
子供がいないと責任がないし、人としての成長も遂げていない気がする。

それと、どうも違和感があったのが、菊地凛子。
スイトは子供の姿をしているとはいえ、知識も経験も持ち合わせ、実社会の大人たちと直接渡り合うほど。
それなりに長く生きているから、他のキルドレとは違っている。
恋も別れも沢山あって、女としての喜び、悲しい思いや諦め、絶望感も味わっているはず。
それなのに、あのぶっきらぼうな話し方では、繊細さに欠ける。

とはいえ、地上での虚無感が漂う雰囲気と、緊張感のある空中戦の対比は見事だと思った。

近くのシネコンで上映がなかったため、銀座の「丸の内TOEI 2」で鑑賞。
360席もある映画館は久しぶりだ。
若い人がほとんどかと思っていたけれど、おじさんおばさんも結構観に来ていたのには驚いた。