yamanba's blog

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博多陥没事故~福岡市地下鉄七隈線建設技術専門委員会

2016-12-09 16:15:16 | 博多駅前陥没

連日のNHK福岡のスクープ報道で、陥没事故に至るまでの経緯が少しずつ見えてきた。NHK福岡は、今年8月30日に開かれた「福岡市地下鉄七隈線建設技術専門委員会」の議事録を入手し、その内容を明らかにした。それによると、この日の会議で、地下水を多く含む軟らかい地層を避けるため、トンネル上部の深さを当初よりおよそ90センチ下げる設計変更について議論されたという。その際、専門家の1人が「掘削に伴って地盤沈下が起きればかなり危ない。設計を変更し、トンネルの位置を下げたとしても心配だ」と懸念を示し、別の専門家は「地盤に脆い部分があり、工事でどのような亀裂が入るか予測するのは難しい。亀裂によって地下水が流れ込めば地面の沈下につながる」と指摘している。他にも、現場の地層は平らではなく複雑な形をしていると注意を促す意見もあったが、慎重に工事を進めるということで設計変更は承認されたという。地盤沈下の恐れがあることを繰り返し指摘されながら、福岡市と事業者は耳を貸さなかったのだ。

さらにNHK福岡は、陥没事故後、大成建設が実施していたボーリング調査の結果報告書を入手したと報道していた。それによると、岩盤の一部に風化が進んで、硬さを示す数値が付近の岩盤の半分程度にとどまり、指で押すと簡単に崩れるほど脆くなっている部分があることがわかったという。(下写真)まさに2か月前に専門家が指摘していたことが実証された形だ。そこを山岳部などの硬い岩盤にトンネルを掘る工法として開発されたNATMで掘削した。土木の専門家でなくとも危険であることは想像がつく。それでもNATMで掘った理由は何か。それは今後、明らかにされる(?)だろうが、九大元助教下山正一氏(地質学者)は、「現場の岩盤に十分な硬さや厚みがあったかどうかを中心に原因調査を進めてほしい」とコメントされている。また、下山元助教によると、陥没場所の軟らかい地層と接する地層は、およそ40万年前の地殻変動で隆起したあと、一定の期間、空気に晒されたため風化したものと説明されている。

それにしても、これらの情報が報道からしか得られないというのは如何なものか。福岡市は、「福岡市地下鉄七隈線建設技術専門委員会」の議事録はもとより関連資料を一切ホームページに掲載していない。事故後に削除したのか、あるいはもともと掲載していなかったのか定かではないが、当然、市民に公開されるべきものだろう。今回の陥没事故で、またしても福岡市の隠蔽体質が露呈した。先月30日には、福岡市議会交通対策特別委員会が開催され、市は議会に陥没事故の報告をしている。そこで提出された資料の中身を見てみると、殆どが周知されている内容で、目新しいものはなかった。まるで議員を見下しているかのようにも思えるのだが、これで議員が怒らないようなら、そちらのほうが問題だろう。そもそも福岡市の場合、議会がチェック機能を果たしていないところが、最大の問題なのだが。

 

 

NHK報道で使用された、事故前日の現場写真

事故前日、現場を視察した調市議が偶々撮影したもので、この時点で異常はなかったという。この撮影から約14時間後、重機がある付近で先進導坑を拡幅している際に崩落した。尚、崩落直前の写真はこちら(NHK福岡が今月20日に放送したもの)

  

以下、NHK福岡放送より(2016.12.9)

事故直後、大成建設が行った地質調査の報告書 

 

 

陥没場所の地質は風化が進み、指で押すと簡単に崩れるところだった 

 

 

黄色部分が濃いほど軟弱

 

 

 

《関連記事》

博多の大規模陥没 2か月前に地盤沈下の懸念指摘(NHK全国ニュース 2016.12.8)

地盤沈下の可能性 専門家指摘(NHK福岡ニュース 2016.12.8)

岩盤風化 指で崩れる部分も(NHK福岡ニュース 2016.12.9) 

博多陥没:事故前日、市幹部や市議ら視察(毎日新聞 2016.11.12) 

 

《関連資料》

・福岡市議会HP。特別委員会資料。