県が今後10年間の財政収支の見通しを試算したところ、財源不足は最大で年間470億円に上ることが明らかになった。社会保障分野での支出や造林公社の債務返還などで歳出は膨らむ。一方の歳入は米国発の金融危機の影響で税収が落ち込み、収支は悪化の一途をたどる。財源不足を穴埋めする基金も底を尽きつつあり、10年度まで取り組む「新たな財政構造改革プログラム」のあとも、県の台所は火の車だ。(高久潤)
県は、国の名目経済成長率をもとに二つのシナリオで試算した。一つは、不況が長期化して法人2税など県の歳入が13年度まで減り続けると想定。財源不足は09年度が276億円、18年度には470億円に達する。景気が早期に底入れし、10年度以降は税収が増えるとしたもう一つのシナリオでも、不足は220億~380億円を見込む。
歳出では、義務的経費の「扶助費」の増加が顕著とされる。高齢者の医療費や介護保険費の県の負担分にあたる費用だ。過去の伸び率から計算すると、18年度は540億円と09年度から4割以上も増える。
県財政課によると、増加した負担分は、国から地方交付税として一定程度は補填(ほてん)される。しかし、法人2税の大きな増加が見込めない現状では完全な穴埋めはできないという。
県の貯金は底が見えてきた。財源不足を補うため、09年度に取り崩した基金は141億円。残高は約50億円にすぎない。試算では来年度に125億円を取り崩す計画だが、現実は全く足りない状況だ。県担当者は「来年度はさらなる歳出削減と税収確保を図らないといけないが、非常に厳しい。財政再生団体への転落だけは避けたい」と話す。
嘉田由紀子知事は6月23日の定例記者会見で、「絞れるところは絞り切っている」と歳出カットが難しいことを説明。歳入については「国からの税財源の移譲を、全国知事会と一緒に強く求めていきたい」と地方分権の実現を訴えた。
■深くかかわる国巻き込み解決を
県財政に詳しい北村裕明・滋賀大教授(財政学)の話
このまま放置していくと、財政再生団体への転落も視野に入ってくるほどの危機的状況だ。財政構造改革プログラムで歳出削減を進めてきたが、実施する事業を絞り込み、ある事業は数年間凍結する、というところまで踏み込む必要も出てくるだろう。事業凍結という強い姿勢を示すことにより、国から求められる直轄負担金を一部支払わないこともありうる方法かもしれない。「三位一体の改革」で地方交付税額が削減されるなど、地方自治体の財政難は国の制度と深くかかわる。国を巻き込まない限り、問題解決は難しいだろう。
【関連ニュース番号:0906/148、6月17日など】
(6月25日付け朝日新聞・電子版)
http://mytown.asahi.com/shiga/news.php?k_id=26000000906250004