「派遣切り」などで住まいを失った人たちに東京・日比谷公園で食事と寝場所を提供した「年越し派遣村」。その「村長」を務めた湯浅誠さん(39)が2月11日、大津市内で「貧困大国ニッポンを斬る」と題して講演した。
自治労県本部などでつくる実行委員会の主催。県内でも「派遣切り」や人員削減のニュースが相次ぐ中、約400人が会場を埋めた。
湯浅さんは活動の経験から「雇用保険に入っていたら派遣村に行く必要はないはず」といった誤解に言及。「会社都合の離職票はすぐにはもらえない。待っているうちに寮から追い出され、申請に必要な住所もなくなり、雇用保険に行き着かない」と話した。また生活保護の申請に行っても門前払いされ「セーフティーネットは働かず、一度落ちると貧困から抜け出せない『すべり台社会』になっている」などと解説した。
さらに「追いつめられノーと言えない労働者が増えて(賃金を抑えられるなど)労働市場が壊れている。それが循環し、貧困が拡大する。循環を断ち切るにはセーフティーネットとともに、正規、非正規の枠を超えて『自分の雇用を守るには、あいつの雇用も守らなければ』という動きも必要だ」などと訴えた。会場からは今後の活動方針などを尋ねる質問がでた。
(2月12日付け朝日新聞:同日付け毎日・中日の電子版も報道)
【「すべり台社会」に警鐘/大津で「派遣村」の湯浅氏講演】
失業者や貧困層を支援する「反貧困ネットワーク」の湯浅誠事務局長が11日、大津市のピアザ淡海で講演した。
湯浅さんは30代の男性が「生きていけない」と電話相談をしてくる実例を紹介。非正規労働が拡大し、雇用保険や失業者用のつなぎ融資も機能しない現在の社会を「すべり台社会」と説明。親の世代が子どもに教育費を掛けられず、貧困が再生産されていると訴えた。
貧困層の現状について「社会のすべり台を落ちた人は実家に帰るか、自殺、犯罪、ホームレス、劣悪な環境のノーと言えない労働者になるかの5つの道しかない」と解説した。
自身がかかわった東京・日比谷の「年越し派遣村」について「集まってきた本人に問題がある」と批判があったことに、「社会から余裕が失われ、ほかの人のことを考えられずに自己責任論が強くなっている。突き詰めれば、貧困に生まれたその人が悪いということになってしまう」と警鐘を鳴らした。 (小西数紀)
(2月12日付け中日新聞・電子版)
http://www.chunichi.co.jp/article/shiga/20090212/CK2009021202000014.html
【講演:反貧困ネット・湯浅事務局長、派遣村から見た日本社会を語る/大津]
年末年始に東京・日比谷公園に開設された「年越し派遣村」村長を務めた反貧困ネットワーク事務局長・湯浅誠さんの講演が11日、大津市であり約450人が参加した。
湯浅さんは「派遣村から見た日本社会」のテーマで講演。▽非正規労働の拡大▽不況下の派遣切り▽生活保護費の受給を制限する行政の「水際作戦」--などを挙げ、「現代社会は一度滑り出したら止まらずに貧困に陥る『すべり台社会』」と分析。「教育費をかけてもらえない家庭では、貧困が世代間連鎖し、『貧困の再生産』を繰り返す」と指摘し、「正規雇用者と非正規雇用者が一体となり、不器用な人も守ることのできる社会にしなければならない」と話した。【豊田将志】
(2月12日付け毎日新聞・電子版)
http://mainichi.jp/area/shiga/news/20090212ddlk25040208000c.html