「いくさんのお部屋」つぶやきNo.3

日頃の何気ない日常をつぶやいています。

悲しいクライミング事故(追悼)

2008-04-17 15:22:39 | クライミング
4月13日の日曜日、ショッキングなクライミング事故が雪彦山で起こってしまった。
通夜と昨日の葬儀に参列して、やっと今頃認めざるを得ない現実を認識し、事実を冷静に受け止める気持ちになって来た。

亡くなられたSさんは、ホシダで最初にクライミングを始められたときからのお付き合いで、私のHPやブログを良く見て下さり、どこかに行くたびにメールを下さっていた。
最初の岩場も、私と行った烏帽子岩だった。その時、太陽がいっぱい5.9をすんなり登り、私の登れていなかったジャスティス11aも2回目のトライでRPしてしまった。私は目を丸くして驚くばかりだった。あまりに吃驚して、人にも「ジャスティスを初めての岩場でOSした人がいるんやで」と吹聴したりしていた。ずっと後になるまでジャスティスはOSだと勘違いしていて、つい最近Sさんからその日の2回目のRPだと訂正された。
その後は、しばらく私の駒形、烏帽子のイレブン台のトライに付き合ってくれていた。しかし、どのルートも彼の方が早く登ってしまう有り様だった。唯一、おじいちゃんのどたどた落ち11aのみ彼が苦手で私が先にRPで来たルートだった。
その後彼はパートナーを見つけアルパインにも目覚めて行き、御在所や大台のサマコレにも足を運んではその度にメールで報告を貰っていた。

13日の早朝に、ホシダの仲間のIさんから「ネットのニュースで、雪彦でロープが切れてなくなったという事故があったけれど、それってあのSさんとちゃうかな?」と電話をもらった。半信半疑でネット検索をしてみると「ロープ切れ?ロッククライミングの男性死亡 姫路・雪彦山 」、一週間前にも雪彦へ行ったと言うメールをもらっていたので、あわててメールを受信してみると土曜日の夜遅くの日付で「 明日(日曜日)また 雪彦山にチャレンジしてきます 又報告いたします 」が入っていた。
体中の力が抜けて行くようだった。ロープが切れて…。なぜ? なんで? そんなアホな! 頭の中は疑問がグルグル巡る。彼のクライミングの能力だと、滑落など考えられない。それに、ロープまで切れるとは…。
その日は、朗読の予定が入っていたがとうとう行けなかった。一日中、「なぜ?」という言葉が堂々巡りしていた。

その日の夜、パートナー二人のうち一人の所属山岳会に知り合いのAさんがいるのを思い出し、詳細を知っているかもしれないと思い、電話して詳しく聞くことが出来た。
事故の原因は落石によるロープ切断だという。しかし、そこは右上していく所なので落石でロープが切れるという状況が納得出来なかった。しかし、通夜のときに聞いた畳1枚位の岩とSさんが落ちたというのと結び目から1メートルぐらいでロープが切断と聞いて、状況が想像出来た。岩が落ちるとき下の方が鋭角になっていて足下のロープに当たり切断されたのだろう。
あまりにもありえない偶然、不運に、ただただ驚いてしまった。そしてSさんに何のミスも無かったことに安堵しながらも、こんなことも起こるのがアルパインなのかということを思い知らされた。
この、温故知新というルートには知っている人もかなり登っている。誰の身に起こっても仕方が無かった事故だったのだと思うと、寒気がして来た。
山に行ったりクライミングをしたりすることは、こういうことも、自分にもいつ降り掛かってもおかしくないことだったんだ。私は、今までラッキーだっただけだったのかも知れない。これはSさんが犠牲になって、教えてくれたのだと思えた。

どこで出会ってもいつも誰にでもにこやかなSさんの笑顔が浮かんで来る。「いくさ~ん」と顔を見たとたんに戯けながら近寄って来た人懐っこいSさんにはもう会えない。命ははかないゆえに、ほんとうに大切だと思った。

クライミングとてもとても好きだったSさん、さようなら。ありがとう。天国で、ガンガン登って下さい。そして、私たちを見守っていて下さい。
ご冥福を、お祈りしています。

以下は、P会のSさんからの伝言です。
その折に、パートナーの方(お2人)からお聞きした話を一部お知らせして、これから雪彦山に登攀される方の注意喚起に供したいと思います。
1) 事故現場:逆くの字ルートor温故知新への取り付きルート。三峰終了後の下降路懸垂地点(ビレーステーション)を少し壁に向かって左へ少しトラバースした地点より登るピッチ。
2) 状況:ここよりトップが右上気味に登って行き、途中ハーケンにランニングビレーをとり更に右上したところで落石と共に転落。ロープ2本とも切断され、ビレーステーション・懸垂地点から約40~50mくらい下まで落ちた。
3) 上記の落石について:一人は畳一枚分くらいの大きさ。もう一人は小冷蔵庫大の大きさだったと言っていました。
4) お願い:それほどの大きな岩が落ちたとなれば、岩が抜けた場所は、まだ不安定な状態だと推察されます。このルートを登られる方、不行沢を登られる方は十分ご注意をして頂きたいと思います。
5) この状況をできるだけ多くの方に知っていただき、事故に遭わないように願っております。ホームページ等で内容をお知らせくだされば幸いです。



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4 コメント

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Unknown (youko)
2008-04-17 18:47:38
Sさんが星田に通い出された頃、ビレイについてアドバイスしたら、ずっと後になって「言われた通りビレイしてますよ!」とメールをいただき、律儀な方だなあと思いました。
昨年秋、千石岩に行ったときに偶然お会いしました。やさしい笑顔でした。
事故のあったルートは私も近々登りに行きたいと思っていただけにショックです。どこの岩場であっても起こりえることではありますが・・・
ご冥福をお祈りいたします。
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Unknown (iku)
2008-04-17 21:20:33
youkoさん、こんばんは。
最近岩場はよく千石に行かれていたようですよ。
何はともあれ、クライミングは細心の注意をしなくてはいけませんね。それでも、こんな事故が起こってしまう岩場は怖いですね。
私はそろそろ、アルパインはもう終わりにしたくなりました。

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Unknown (榊原)
2008-04-21 06:36:35
はじめまして、榊原と申します。
この事故のこと気になっていました。こういうことだったんですね。最近奈良で大学山岳部時代の先輩がクライミング事故で亡くなりました。山は事故が起こるということをいつも頭にいれて行動しないと、と改めて思ったしだいです。
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Unknown (iku)
2008-04-21 20:57:13
はじめまして。
そういえば、岩場での事故が続いていますね。
日頃つい忘れてしまっていることを、ほんとうに思い知らされました。
予測の出来ないことをも想定して行動しなさいということなのでしょうか。

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