一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

藤井八冠、ついに敗れる(第9期叡王戦第5局)

2024-06-20 23:44:53 | 男性棋戦
第9期叡王戦(主催:不二家、日本将棋連盟)第5局がきょう20日、山梨県甲府市で行われ、挑戦者の伊藤匠七段が18時32分、156手まで藤井聡太叡王に勝ち、初のタイトル「叡王」を獲得した。藤井八冠のタイトル戦連勝記録はついに「22」で途切れ、七冠に後退した。

では、時を戻して見て行こう。きょうも私は、ABEMAでの観戦である。ただ、一日中雑用があるので、ヒマを見つけての観戦となった。
藤井叡王のフルセットは第6期叡王戦に続いて2度目だが、前回は豊島将之叡王に挑戦する立場だったから、防衛側としては初のケースとなる。
将棋は藤井叡王の先手で角換わりになったが、しばらく経ってABEMAを見ると、なんと藤井叡王が穴熊に潜っていた。金銀は雁木のような形で、むかし私が「東大将棋」で遊んでいたとき、このソフトがよく、雁木から穴熊に組んでいたことを思い出した。そのココロは「玉の遠さ」で、藤井叡王も同じ狙いだったと思われる。
それからしばらく経って見ると、形勢バーが「藤井66:34伊藤」となっていた。
ABEMA解説陣は、早くも伊藤玉を寄せている。やっぱりな。いろいろあったが、最後は藤井叡王が勝つんだと思った。
だが伊藤七段は、玉を金銀のある窪地に逃げ込み、反撃とばかり、銀頭に歩を打った。これがなかなかの手で、伊藤七段もまだ戦えるのではないかと思った。
またしばらく経ち、ABEMAを見る。すると、伊藤七段が藤井陣にけっこう攻め込んでいた。飛車を下ろし、と金を2枚作っている。しかも形勢バーが「藤井30:70伊藤」となっていた。藤井叡王有利(優勢)の局面から不利になるとは、珍しいことがあったものだ。
だが問題は深刻で、局面はすでに終盤だから、双方が最善手を指せば、即伊藤七段の勝ちになる。
伊藤七段、藤井叡王が自陣に引いた竜に当てて、金を打つ。藤井陣のこの竜はどこから出てきたのかと思うがそれはともかく、これで藤井玉は受けなし。ただ伊藤七段が打ったこの金が一枚入手できるので、それで伊藤玉が詰むかどうかだ。もっとも、それで詰むなら伊藤七段が金を打つわけがない。
ということは、伊藤七段の叡王奪取なのか!?
藤井叡王はうつむいている。これは相手玉が不詰みということを示している。藤井叡王、敗勢のときは、けっこう顔に出るのだ。
藤井叡王、金の王手に、伊藤七段が玉を左に逃げる。これが好手で、伊藤玉はどうしても詰まない。むろん藤井叡王もそれは分っているが、なおも王手を続ける。このあたり、藤井叡王も人間なのだと、ちょっとホッとした。
藤井叡王、いよいよ王手が尽きた。「負けました」と投了。ここに伊藤七段の初戴冠が決まったのだった。
いやいや、まさか伊藤七段が叡王を奪取するとは思わなかった。だってこの五番勝負の前までは、藤井叡王の10戦全勝(1持将棋)だったのだ。しかも第1局に藤井叡王が勝ったのだから、誰だって藤井叡王が防衛すると思うではないか。そこから伊藤七段が3勝1敗で乗り切った。これは本当に恐れ入った。
大殊勲の伊藤新叡王は、終局直後のインタビューでも、神妙な面持ち。
いっぽうの藤井竜王・名人は、「(八冠が崩れるのは)時間の、問題だと思っていた」と、サバサバしたように見えた。もちろん負けたことは悔しいが、悔しいのはその内容についてだけで、「22連覇でストップ」「七冠に後退」は、さして重要なことでないように見えた。これも藤井竜王・名人らしい。
伊藤匠叡王。いい響きだ。おめでとうございます。おふたりとも、お疲れ様でした。熱い戦いを、ありがとうございました。
コメント (3)
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