一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

カロリーナ女流3級を倒すには

2016-07-06 20:08:43 | 将棋雑考
女流王座戦二次予選で私の目を惹く記譜があった。中澤沙耶女流初段とカロリーナ・ステチェンスカ女流3級との一戦で、後手カロリーナ女流3級の三間飛車に、居飛車の中澤女流初段が急戦策を採ったのだ。現代は「スキあらば穴熊」だから、この作戦が珍しい。
中澤女流初段、27手目に▲4五歩。次の手、振り飛車党なら、ノータイムだが…。

図からふつうは△4二飛だろう。攻められたところに飛車を回る、は振り飛車の常識だからだ。
余談だがFuj氏とこの将棋の話になった時、Fuj氏は△4二飛を「手損になる」と言った。
以前私とFuj氏との対局で、やはり似た局面になった時、私が△3二飛を△4二飛と寄ったら、彼は感想戦で「(△4二飛が)手損になっちゃいましたからね」と言ったものだ。
どうもFuj氏は、この類の飛車の動きを「手損」と認識しているらしい。
中澤―カロリーナ戦に戻るが、カロリーナ女流3級は図から△5五歩と突いた。以下▲同角△6三金▲8八角△7四歩▲2四歩△同歩▲4四歩…と進んだ。
以下は中澤女流初段が自然に指し、優位を拡げる。最後はちょっと気付かぬ手順で、カロリーナ玉を即詰みに討ち取った。最後まで△4二飛は出現しなかった。

以前書いたと思うのだが、角道を止める振り飛車には、急戦が効果的だと思う。だって定跡書を見れば、「これにて居飛車よし」の変化がいくつも見られる。これを拝借しない手はないだろう。私も時々飛車を振るが、居飛車の急戦には分が悪い。今回の中澤女流初段の作戦に、私は我が意を得た思いだったのである。
しかもカロリーナ女流3級は外国人であり、日本語に弱い。相振り飛車や対居飛車穴熊の対策はしていても、対抗形の定跡書までは読んでいなかった気がするのだ。
それでもカロリーナ女流3級が女流棋士の資格を得たのは、本人のセンスはもちろんだが、急戦を指す相手が少なかったからだと思われる。
あらためて、カロリーナ女流3級を倒すには、急戦がよい。ただし、現代の女流棋界では急戦派の女流棋士が圧倒的に少ない。付け焼刃の知識で仕掛けても、居飛車は囲いが薄いから、一息ついたら反撃に遭って、うっちゃられることも多い。結局居飛車側も、万全の準備が必要なのである。
とはいえカロリーナ女流3級だって、急戦の定跡が頭に入ってなければ不便であろう。この際だから、急戦の定跡を覚えてしまえばよい。聡明な彼女のことだから、すぐに頭に入るだろう。
次のカロリーナ女流3級の対局は、8月13日のマイナビ女子オープンが予定されている。
対局者の棋風にもよるが、両者の作戦に注目したい。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする