イーダちゃんの「晴れときどき瞑想」♪

美味しい人生、というのが目標。毎日を豊かにする音楽、温泉、本なぞについて、徒然なるままに語っていきたいですねえ(^^;>

徒然その84☆日本一臭い!? 越後 「西方の湯」探訪記☆

2011-10-07 22:08:08 | ☆湯けむりほわわん温泉紀行☆
 
                       


 越後の果ての日本海沿いのとある僻地に、日本一臭いといわれている名湯がある---といった噂は、まえから聴いて、ずーっと気になってました。
 なんでも、そこは、温泉チャンピオンのあの郡司勇氏が、かつて日本一に選んだこともあったくらいの名湯なのだとか。
 ただ、そこはたしかにまじりっけなしの「名湯」にはちがいないんだけど、敷地のなかに全長40メートル大の親鸞聖人像がドーンと立っていて、湯浴みにくるひとを高みから睥睨しており、そのために施設全体には非常に宗教がかった、不可思議かつ玄妙なオーラが常にたちこめていて、その雰囲気というか逆パワースポットのような一種ぬらりとした位相の香りが、フツーのスーパー銭湯気分で安易にそこを訪ねるひとの湯浴み意欲を強力にくじくのだ---とのこと…。
 ネットなんかで検索すると、施設全体の評判はたしかにそのような感触です。
 ただ、あくまでネットはネットですからね---足を使った事実確認には、やはり及ばない。
 というわけで先日---9月の末に、転職以来初の3連休を取ることのできたイーダちゃんは、超ひさびさの温泉検証の旅にでたのでありました。(^o^;/
 今回のテーマは、くさーいお湯、いわゆる「異臭湯」というやつであります。
 狙うは越後の国---新潟の中条市(現在は合併して胎内市となったようです)にある、総合施設「西方(サイホウ)の湯」!
 ええ、イーダちゃんは東京から新幹線でバーッといってきましたよ。
 5月の自損事故で現在はクルマなしの状態なので、今回の旅は、電車の旅とあいなりました。
 電車だと好きな音楽を大音響で鳴らしつつ、感興のままにアクセルをべた踏み、みたいなわけにはいきませんが、なに、窓際に頬杖をつきながら、ぼんやりと旅情を楽しむ列車の旅も、これはこれで味があっていいもんです。
 まして、これは、去年の夏の北海道旅行以来、長いこと自制していた、遠方へのひさびさの旅ですからねっ。
 しかも、空は、これ以上はないってくらいの秋晴れとくる、これではしゃぐなってほうがどうかしてますって。
 実際、イーダちゃんはとてもはしゃいでおりましたよ---もっとも、あくまでひとり旅ですから、その感興をなんとか自制してはおりましたが。
 東京から新潟まで新幹線で約2時間---そこから鈍行列車で中条駅まで1時間半ってとこでせうか?---中条駅に到着したのは、昼の2時すぎのことでした。
 思っていたより田舎です、食事できるお店が駅前にまるでない。
 それに、中条市にはバス、1日に2本くらいしかないんです。
 しかも、郊外にいくバスの路線は、もう過疎化から営業してなかったりするの。だから、バスのない地元の方々が利用してる、乗合予約タクシーの「のりんす号」っていうのを、イーダちゃんはあらかじめ調べて予約しておいたのです。
 で、それに乗って---こちら、運賃は300円なの、安ッ!---なーんももない田舎道をどこまでも行くと---6、7キロ走ったころからなんとなく磯の香りが濃くなってきて、黄金色の草っぱらのゆらめく葉先のさきに、あの親鸞聖人の巨像のアタマ部分がだんだんに見えてまいりまして、

----うおっ、あれがそうなのか!?  と、心が一瞬波立ちます。

 覚悟はしていたものの、予想を超えたインパクトがありましたね。
 凄いとか厳かとかいうんじゃなくて、ひとことでいうなら「なに、コレ?」っていう拍子外れの感じ。
 のちほど僕はこの像の作者さんと出会ってインタヴューを敢行し、作者の製作意図とかを知ることもできたのですが、正直いって、仏像としての藝術的完成度はそう高くないように見受けられました。
 この印象はいまも変わってはいません。
 こちら、美術的に洗練された像ではまったくありません。しかし、だからといってインパクトがないわけじゃない、稚拙さや幼稚さがかえってごっついインパクトをもたらす、といったことだって結構ありがちなもんですし。
 こちらの親鸞聖人の像は、まさにそれの典型でした。
 失敬な表現になっちゃうかもしれませんが、ややグロイんですよ---「おっ」というより「ウゲッ」って感じ。
 あまりにも広大な無駄じみた駐車場といい、そこにクルマ1台も見当たらない様子といい、「わあ、大変なとこにきちゃったなあ」というのが、僕の「西方の湯」到着時の第一印象でしたね---。


 

 だってねえ---いかがです、イスラムの尖塔の亜流みたいな、このうさんくさげな建築様式は---?
 それに、内部の装飾ときたら、右上ですよ---右上のフォト!
 油絵、日本画、仏像、彫刻、子供の玩具の電車や消防車、オセロゲームに一輪車---などの多々のオブジェが、なんと無秩序に並べられていることか。
 こちら、実は、ここの社長さんであるところの佐々木さんのご趣味なんですが、この浮き世離れしたカオス的センスは、いま的にいうなら、あまりにも濃すぎるモノがあるのではないでせうかねえ?
 ご夫婦でこちらの温泉に湯浴みにやってきたものの、奥さんのほうが中に入ってからむずがりだして、なにがあってもあたしはここの温泉には入らない、入りたいならあんたひとりで行ってきて、あたしは帰る! みたいなことを断固としていいはって、そのまま帰っちゃった方もひとりやふたりじゃなかったようなんですが、そのむずがり奥さんの気持ちもまんざら分からないじゃない、一種別格なすっとんきょうさ、あるいはグロテスクさが生きている施設なんじゃないか、と思いました。
 ただ、いささかグロイけど、ここ、決して下品じゃあないんですよ。
 ええ、ある意味、なんだか素直でしてね、子供心を純粋に発展させていったら、たまたまこうなった、みたいな平明な投げ出し感が全般的に漂ってるんですよ。
 嫌いなひとはまったくダメかもしれないけど、イーダちゃん的にはこちらの施設のB級加減、ちょっとたまんないモノがありました。
 着いてすぐ、僕、宝探しみたいなノリで、館内中をくまなく探検しちゃいましたからね。
 イーダちゃんはここに2泊する予定なのです。1泊3000円ですから、こりゃあ安いよって感覚でした。
 ただ、通された部屋が28畳の大部屋だったことには、ちょいとびっくり---あまりにも広くて、しかも、もともとが休憩室の作りなんで廊下からガラス張りになってるんでね、どうもそれが落ちつかなくて、最初は部屋のまんかに敷いていた布団も、とうとうこーんな部屋のはしっこのほうまで移動しちゃいました---うん、その写真もこちらにUPしておきませうか。


         

 で、無人の館内をあちこち散策して、ひと息ついてから、胸のわくわく感を抑えつつ、いよいよこちらのお風呂に向かったのでありますよ。
 いや、着替処で服を脱いで、風呂場のガラス戸をがらりとやったら、なんとも芳しい、強烈な芳香がくわーんと鼻を叩いてきました。
 おお、いかにも効きそうなまっくろけのお湯じゃないですか!
 そして、なんというこの香り---くちゃー! 
 東鳴子の高友旅館の「黒湯」の油臭に、ちと似てる。
 石油の香りと尿素の香り。あと、あのー これ、ひょっとしてトイレットのアンモニアの香りも混じってるような気がちょっとするんですが。
 でも、温泉マニア的にいうなら、これ、ほとんどベストの芳香かも---クサイは旨い、旨いはクサイ、みたいにね。
 いずれにしても並のお湯じゃありませんや。
 ジモティーっぽい先客がふたりいらっしゃいまして、なんとなく余所者の僕のことを意識してる風が窺われましたので、挨拶して、掛け湯して、足先からゆーっくりお風呂に浸かってみたなら、

----うわ。す、凄え…。 と、イーダちゃんは、なんか黙りこんじゃいました。

 ええ、これほどの名湯の感触を表現する言葉なんて、ありっこないですもん。
 それっくらいのクラスのお湯です、こちらの湯---臭いといえばまあたしかに臭いんだけど、幾重にも重なった和風ダシに直接煮込まれてるような、ここ独自の入浴感は、時間を経れば経るほど、体内の針が快楽サイドの方に傾いていくのです。
 最初は引いちゃうくらいのスゴイ匂いと違和感なんですけど、それすぎたらジワーッとね、なんというか、チョー気持ちいいのよ。
 ひさびさの名湯にイーダちゃんは、もう恍惚……目をとじて、両掌で顔にお湯をぽちゃりとやれば、焼き魚のシッポに染みついた焦げ醤油みたいな濃ゆい香りが、鼻筋のあたりでぱーっと散るの。
 それとともにイーダちゃんの心もよろめいて、ひとことでいって、超・カ・イ・カ・ン---。
 足先も爪もうなじも耳たぶも、もー あったかくって臭くて全部気持ちいい。
 ま、論より証拠---とにかくまずは実物のお風呂をご覧あれ、ですね。
 


           

 こちらのお風呂にすっかり魅入られたイーダちゃんが、恍惚として、ニコニコと延々出たり入ったりをくりかえしていたら、やっぱり温泉好きってことが伝わったんでせうね---先客のおふたりが話しかけてこられました。

----お兄さん、どっから来たの?

----ああ、僕はね、ヨコハマからです…。

----ヨコハマ!? えらい遠くから…。ここのお風呂はどうですか? 臭いでしょう?

----いやー 最初はびっくりしましたけど、ここ、すっごくいいお湯ですよ…。ほら、ちょっと入ってただけなのに、僕、もう汗かいて、ハーハーいってますもん。その点、皆さんは慣れてるせいか、やっぱりお強いですねえ…。

----そりゃあね、我々(常連さん同士で目くばせして)は毎日のようにここきてるからね。

----いいなあ…。こんなお風呂が近くにあったら、僕も絶対毎日のようにきてますよ…。あっ。あと、こちらのお風呂、湯華が凄いですね……ほら、あっちもこっちもあんなにまっ黒で……。

----ああ、ここの源泉はね、もともと天然ガス採掘の穴から湧いた温泉なんですよ……。ここの源泉は、ほら、道路のあっちにあったでしょ? でっかい工場の「ジャパン・エナジー」ってとこ---あそこの所有なの。その工場はね、このまっ黒の湯華から、工業用のヨウ素を採取してるのよ…。だから、この湯華の成分はヨウ素なんだってさ…。

----ほう、ヨウ素ですか…。それは、凄い…。
 
----うん、ふしぎなお湯だよねえ…。でも、ほんとにここの効きは凄いのよ。腰痛や切り傷なんて、ほんと、下手したら1日で治っちゃうんだから…。

----ほーっ、それは…たった1日でですか……。

 湯気湯気、もくもく。
 もうひとりの湯浴みのおっちゃんが、桶で背中にお湯をばしゃっとやる音が、BGMみたいに浴室いっぱいにしゃばーっと響いて---。


             

 これほどのお湯ですもん---イーダちゃんはお得意の源泉での目洗いと源泉の鼻腔吸い、さらには飲泉も、むろんすべて敢行させていただきました。
 躊躇なんてかけらもなかった、ただ、飲泉の際のこちらのお湯の塩辛さには驚かされました。
 ええ、熱海や伊東のお湯より、こちらのお湯は、なんとはるかに塩辛かったのです。
 あと、幾重にも溶け重なった、複雑玄妙な「ダシ」の香りがマジ凄かった! ええ、猛烈なダシ臭ですよ、これは。このダシでこのままグラグラと煮込まれて、まる2日もたったなら、僕等湯浴み客は、それこそ料亭に出されてもおかしくないほどの味に仕上がるんじゃないか、なんて思ったりもしましたねえ---。(^o^)/


                            ×           ×


 しかし、温泉以外は、ここ、ほんとになーんもないところでしたよ…。
 僕は地元の乗合予約タクシーの「のりんす号」を利用してここにきたので、まあ、いってみれば自前の「足」がまったくなかったってわけ。
 で、おまけに素泊まり1泊3,000円の世界でせう? 食料は現地調達のつもりでしたが、いざきてみたら、あらら、ここ、マジでなんにもないんです。
 ジュースの販売も、ビールの販売機も、タオルも剃刀も、まったくもってなんもなし---。
 フロントで聴いてみたら、ここから3、4キロほどさきの村松浜海水浴場というところに、コンビニ一軒があるという情報を聴けたので、仕方ない、例によって、いつかの鹿児島の栗野岳温泉のときみたいに、クルマ通りの多いR113を西へ、トコトコとひたすら歩きましたよ。
 
                      

 僕の居住する「西方の湯」近辺はまったくなんにもなかったのですが、コンビニのある村松浜海水浴場の付近には、小規模な新興住宅地ができてまして、そこの美人の姉ちゃんが犬を連れて海岸をひとりで散歩しているのが遠く見えました。
 よーやくたどりついたそこのコンビニで、ビールとカップ麺をしこたま仕入れまして、なんとなく姉ちゃんのあとを追って村松浜の海岸へとむかい、無人の砂浜でひとりアイスをかじりつつ、日本海に沈みゆく夕陽を長いことぼーっと眺めておりました。
 旅情ほろろん日本海…。旅っていい、やっぱりいい---旅のとちゅうでいつも味わう、一種胸苦しいような、ひとりぼっちの流浪の孤独感---あるいは、嗚呼、この土地のこの場所にはもう二度とくることはないんだろうな、と思うたびに覚える、なんともいえないやるせない無常観---それらの底に流れている切なさの気配が、イーダちゃんはとっても好きです…。(^.^;>

   

 


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