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2015年の2月中旬、イーダちゃんはひさびさの温泉旅にいってまいりました---。
いままでは試験があるから自制してたんですが、試験が終わってしまうと、もうどうにも自制ききませんでした。
休みに入るやいなや---ためてたもんが爆発寸前、急いた手つきでリュックに荷物をかろうじてつめて、いざ、旅電車へ!
行き先は? なんも決めてない。
方角も…決めておりやせん。
三輪山に行こうかと最初は思ってたんですよ。
ただ、試験明けにいい温泉を味わいたい気持ちがあまりにも強くて、関西行きは---関西は調べないでいくと塩素湯にあたる確率が高いんで。関西在住者、あい失礼---直前になって中止、結局、イーダちゃんは上野経由で北にむけて進路をとったのです。
目指すは北! とにかく北へ---!
で、車内でポテチを喰いながら、浅草から東京スカイツリー電車に乗って、一路、栃木の鬼怒川温泉へ---。
鬼怒川温泉に到着したのは、お昼の2時過ぎでありました。
最初は、鬼怒川から恒例の湯西川でも行こうかなあって思ってたんですけど、お気に入りの湯西川の金谷旅館さんにTELしてみたら、ごめんなさい、今日はお休みにしちゃったの、とくる。
仕方ねえ、なら鬼怒川のかけ流しの宿でも狙ってみるか、と駅前の観光協会にいって尋ねると、いやあ、すみませんが、基本的にうちで紹介してるのは、循環のお湯だけなんです、というトホホな返答…。
----あ。そうなんですか。じゃあ、結構です…。
というわけで、イーダちゃんは、鬼怒川温泉からさらに野岩鉄道(会津・鬼怒川線)を乗り継いで、前回行きそびれた、川治温泉をめざすことにいたしました。
宿の予約は、あいかわらずしてません。
ぶっつけ本番、でたとこ勝負が醍醐味の温泉旅なりき。
で、まあ、ごとごととのんびりペースでいったわけですが、鬼怒川公園駅あたりじゃそうでもなかったのに、龍王峡をこえたあたりから、いきなり雪の降りがもの凄くなってきたんですよ。
川治についたときは、なんちゅーかもうほとんどブリザード状態!
ただひたすらに、さ、寒いっ…。
川治温泉駅から川治温泉街までは、だいたい徒歩20分あまりうの距離なんですけど、吹雪のなか、革靴で歩くその道中の長いことったら。
リュックから傘をとりだすのが面倒だったので、ポケットに手をつっこみながら歩いていたら、川治温泉街についたころには、イーダちゃんはほとんど雪ダルマ状態---超・寒かったですねえ。
電線の上にもすでに雪が積もりはじめてるし、身体の芯まですっかり凍えきっちゃってるし、いちばん目立つ○○閣さんの豪奢なロビーにすかさず飛びこんで、
----あのー、予約ないんですが、今日ひとりで宿泊は可能でせうか?
と、まあ避難民のフィーリングでいつものようにやったわけです。
こちらの○○閣さん、お部屋とかはよかったんですが、残念ながら塩素湯でして、僕は、夕べのいちどっきりしかここのお風呂入らなかったんだけど、今回僕が書こうと思ってるのはこちらさんじゃない、べつのお宿のことなんですわ。
さて、2月13日の晩、雪はしんしんと降りつづきまして、翌朝、目が覚めたら、外は一面の銀世界---
お見事って感じです---朝早くから町の中心部を貫くルート121を、除雪車が2台、しきりに走りまわってました。
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で、転倒に注意しいしい、イーダちゃんが121の通りを何気にぶらぶらしてたら、○○閣さんのすぐ近くに、ずいぶんと古風なお宿があるじゃあありませんか。
昨日は、吹雪があんまりすぎて、まったく気づきませんでした。
道路から奥まった場所に建ってるせいで、気づきにくかったっていうのもあるかもしれない。
でも、僕、ここのお宿になんんとなくビビビってきたんです。
見れば、奥のほうに雪かきしてる男性がいる---ひょっとして宿の方でせうか?(写真奥に写ってる方がそうです)
ものは試しに聴いてみることにしました。
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----こんにちはーっ。昨日はずいぶん降りましたねえ。大変ですねえ…!
----ああ、こんにちは…(ト雪かきとちゅうの手をとめて)…。ええ、降りましたねえ。でも、まあ、いつものことですから…。
で、なんとなく世間話がはじまって---僕等、雪の積もった玄関前で、しばし白い息ながら立ち話をいたしました。
僕は、いい温泉に入りたくて鬼怒川温泉までやってきたんだけど、観光協会にいったら鬼怒川はほとんど循環湯になっちゃってて、やむなくここ川治温泉までやってきた経由と、けれども、昨日泊まった宿は、部屋と食事はよかったけど、あいにくの塩素消毒湯でがっかりしたことなんかを正直に話しました。
すると、こちらの宿関係らしき方、
----そうなんですよ…。実をいうと、いまねえ、鬼怒川さんのほうは、お湯が枯れかけてるんです…。地震のせいか、お湯の湧出量ががくんと減っちゃってね、まあ、でも、その点じゃうちのほうも一緒かな? ここ川治でも、いまじゃ源泉掛け流しの、無塩素でやってるとこは、うちと、あと○○さんと、もう2軒きりしかないんですよ…。
----そう…なんですかぁ…。
と思わぬ内部情報にたじろぐ僕。
しかし、こちら「登隆館(とうりゅうかん、と読みます)」さん、実は、川治でいちばん古い歴史ある宿であり、全国区で有名な川治の露天「薬師の湯」へお湯を提供してるのもこちらのお宿なんだとか…。
さらにはこの方、静かな自信を目線にこめて、こうもおっしゃりました。
----ええ、うちの湯は、源泉そのままのお湯ですよ。源泉自体の湯温が41度なんでいくらかぬるめのお湯ですが、塩素も循環もしていない生のままの湯ですから、ゆっくり浸かっていれば、効能はもう保障つきです…。
こうまでいわれちゃ、温泉大好き人間のイーダちゃんとしては、これはもう捨ててはおけません。
気がついたら、即刻、こちらのお宿「登隆館」さんに、その日の宿泊を申しこんでおりました。
あとになって、僕、この自分の決断と、この朝、この宿のおじさんに巡りあわせてくれた運とに、非常に感謝することになります---。
× × ×
ですが、まあ、そのときはまだ朝の9時まえでして、宿には3時からしか入れないわけだから、僕は、このおじさんに3時の再訪を約束して、川治温泉の駅まで雪道を歩いて、電車に乗って、鬼怒川温泉のほうにまた戻ったんですよ。
で、鬼怒川温泉近郊の栃木銀行でお金おろして、3時ちょっとすぎにこっちの川治温泉にまたもどってきて、宿の手続きして、「いまなら誰も入ってないから、入るといいよ。気持ちいいですよ」と宿のひとにいわれて、さっそくこちらの自慢のお風呂にいってみたわけ。
それがね、記事冒頭のフォト。
ちょっと震えるでしょ? 僕も震えた。
なんちゅーか、予測してたよりずっといいお風呂なんだもん。
名湯のオーラがわんわんしてるの---露天はなしの内湯だけ---そのへんの潔さも、なんか、いい。
で、若干うわずり気味の心をいなしつつ、掛け湯して、ちゃぽんとこちらのお風呂に身体を沈めました。
そしたら、僕、黙っちゃった。
「神の湯」です、ここ…。
なんちゅー綺麗なお湯だろうか。
入ってすぐ鹿児島・川内(せんだい)の紫美温泉の「しび荘」の湯を連想しました。
あれとじゅうじゅう匹敵できる、とんでもない名湯です、ここ!
基本は、PH8の、くせのない素直な湯なんです。
なんともいえない柔らかさと、あと、ちょっとこれは表現しがたいんだけど、ほかのどの湯にもない、一種特別な繊細さがあるんですよ。
なにより凄いのは加温してないとこ。
こちらの湯、源泉温度が41度だから、そのままだとこの季節はちとぬるいのよ、でも、むりに加温したら、たぶん、この極上の繊細さは脆く壊れちゃう、それを見越して、こちらのお湯をあくまで生のままの姿で管理されている、宿の方の慧眼とこだわりには、心底敬服しました。
----やられたぁ、仕事人だわ…。凄え、凄えや…!
と半ば白痴のように呆けた顔で、イーダちゃんは、湯のなかで蕩けてぶくぶく…。
ただひたすら嬉しくってね、この瓢箪型の広いお風呂のなかを、にこにこしながらあっちにいったりこっちにいったり、鼻孔からの源泉吸いを敢行したり、お湯のなかで阿呆みたいに両掌をいつまでもゆらゆらさせたり、両手ですくったお湯を何度も顔にぱしゃーっとやったり、もーねー、ほとんど幼な児のような、至福の1時間半をすごせていただきました---。
まさか、九州でも岡山でもない身近な関東の近郊に、これほどハイレベルのお湯があったとは…。
認識不足でしたねえ、ええ、午前中にいった露天の「薬師の湯」もむろんよかったけど、その御本家たるここ「登隆館」さんの湯処は、それ以上の奇跡の天上湯なのでありまして。
味はなし、香りも特別になんかの香りが目立ってるってわけじゃありません。
この先の湯西川だと硫黄の香りが底のほうに潜んでいるんだけど、川治の湯はちがう、基本的に無味無臭で、塩気もありません。
で、最初にここのお湯に入った感触はたしかにぬるいのよ---たぶん、39度くらいなんじゃないのかな?---でもね、そのまま極上の湯の肌触りを愉しんでいると、5分ほどして、予想をはるかに上回る至福感がゆーっくりやってくるの。
この感触、特に女性の方に知ってもらいたいですね。
僕なんかより肌の繊細な女性がこの湯にふれてどう感じるのかは、非常に興味深いところです。
おお、窓の外では、大粒の雪がまたごんごんと降ってきてるじゃないですか。
----こりゃあ、積もりそうだなあ…。
なんて眠たげな声でいってみる。
すると、掛け流しの多量の湯が、排水溝に吸いこまれ、ごお、という音をたててそれに答えて。
うーむ、凄いや、まるで青森・碇ヶ関の「古遠部温泉」みたいじゃないですか。
ええ、こちらの温泉ね、あったまったら、湯船からこぼれた多量のお湯でもって、タイルの床にごろりとなってなんと寝湯まで楽しめるんですよ。
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これほど素晴らしい湯っこを堪能させていただけたら、僕としては、もう感謝以外いうことはありません。
あ。こちらの「登隆館」さん、宿自体は古びた木造の感じだったんですが、お客さん、ずいぶん泊まってられました。
これだけのお湯だもの、やっぱり、人気のあるお宿なんですねー。
夕餉も、美味しかった。
イワナの塩焼きに、湯豆腐に、刺身に、豚の味噌焼き、ご飯に、お吸い物に、あと、山の歓待の最たる料理「ごたごた鍋」---。
これ、里芋とか地元のキノコなんかがメインの鍋なんスけど、これがまた絶品でしした。
いつも銭を浮かすために素泊まりが身についている僕なんかからすると、サイッコーのご馳走でしたねえ、この夕は。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2d/69/89c60a6fb22674e54b6fbbb87285d4e9.jpg)
というわけで、栃木・川治温泉の名宿「登隆館」を推薦します---。
川治温泉登隆館
栃木県日光市川治温泉高原41-2
TEL 0288-78-0006
お値段は、朝、夕食コミで、7710円---安ッ!
女遊びなんかいいの、カラオケいらない、酒もほどほどでいい、男鹿川の滔々たる流れを聴きながら、ただ、静かに、いいお湯につかりたいだけなんだ、と希う御仁にとっては、こちら、最上の憩いの宿となってくれることと思います…。
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P.S. あ。近々、「イーダちゃんの日本全国特上温泉12選!」という特集をやるつもり。乞うご期待---!