えーと、今回のページは、前回の徒然その84☆日本一臭い!? 越後「西方の湯」探訪記☆の続編です。
イーダちゃんは、そう、つい先月---2011年9月の末ですね---新潟中条市(胎内市?)にある、日本一臭いともいわれている、マニア向けの噂の名湯「西方の湯」を訪ね、連泊したのです。
そこがもう評判通りの、まさに呻るしかない名湯であった、という内容は前ページでだいたい述べているので、まだ未読の方はそちらのほうを参照してもらえれば、と思います。
ただ、あっちの現地では、実は温泉外でも面白い話が多少ありましてね、今回のページではそちらがわの面にもズームをあててみようかな、とまあ目論んでる最中ってわけ。
なーんだ、温泉とカンケーない話か、なら、いいや、とソッポをむきたいひとは、残念ながらここで、さようなら。
でも、そうはならず、フムフムそれで? と斜め目線で瞳がキラリ☆の方は、ぜひこれの続きも読まれてほしいなあ、と思います---。
× × ×
さて、ここでイーダちゃんの恥ずかしい性癖のひとつを、いよいよ告白せねばなりません。
それは…暗がりが怖いということ。
ええ、だから、僕は、たいていの場合、寝るときに電気を消しませんのです。
温泉旅行なんかで泊まる部屋は、例外なく、一晩中もう煌煌ですね---イカンとは思うのですが、どうもこの癖は矯正できんのですよ。見知らぬ部屋でまっ暗闇にして眠るなんて、いまだにできません。
というわけで、滞在時の「西方の湯」のこの28畳部屋でもそうしていたのですよ。
だって、おっかないんですもの---夜になったら、館内中は異物ごたごたの化け物屋敷みたいでせう?
外を見ると、巨大・親鸞像がゴーンと睥睨でせう?
で、ひろーい大部屋の片隅に泊まり客は僕ひとりとくる---貴方だってこうしたシチエーションにいきなり放りこまれたら、ここはひょっとして浮遊霊の通り道なんじゃなかろうか? といったビクビク心理にきっと陥っちゃうと思いませんか?
まあ、ちょっと現物の写真なんぞを見て、当夜のイーダちゃんの心理をどうか察してやってくださいな。
ねっ、怖いでしょ怖いでしょ?
だもんでイーダちゃんは28畳部屋の片隅の布団のなかでまーるくなって、電気を煌煌とつけっぱなして、恐怖の艶消し用にコンビニで購入した四コマ漫画のコミックなんぞをぼーっと流し読みしていたんですよね。
そしたらね---大部屋のガラス戸を暗がりからふいにノックするひとがいる…。
誰かと思ったら、管理人のおじいさんでした。
28畳全部の電灯がついてたら電気代がかかってたまらないから、つけるならせめてあなたのいる一筋だけにしてくれ、とのこと。
僕、ビールも入っていたし、ええ、うるさいなあ? と、やや憮然と対応したように覚えています。
それが夜の9時頃のこと。そしたらね、このおじいさん、10時半になってまたくるの。
仕方ない、窓際の一筋だけ残して、電気を消しましたよ---ああ、貧乏くさいなあ、なんて失敬な台詞を胸中でグチりながら…。
すると翌朝の8時頃のこと---8時に到着する「のりんす号」を部屋で待っていたら、やはり大部屋のガラス戸をノックする方がいる。昨晩の、あの管理人のおじいさんでした。
昨日はどうも失礼した、いまからコーヒーでも入れるが、ご一緒にどうか? とのこと。
嬉しいお誘いじゃないですか。むろんのこと、僕に異論のあろうはずがありません。
お誘いをお受けして、フロントのほうへお邪魔することにいたします。
で、こちらのフロントというか、事務所みたいなとこでおじいさんの入れてくれたインスタント・コーヒーを飲みつつ、お話をはじめたというわけなんですが、そうして判明したのは---このおじいさんは管理人なんかじゃなくて、この施設「西方の湯」の社長さんだったということです。
これだけでも僕はかなりびっくりしたんですが、さらにびっくりしたことには、この方があの「親鸞聖人大立像」の建設者でもあったということ---。
これには、イーダちゃん、マジびっくりしちゃいました。
その昼の湯浴みのお客さんたちとさんざん噂してた社長さんがまさかこの方だったとは---正直、この施設全体のセンスから見て、もっと奇人で成金みたいなひとかと思っていたのですが、実際の社長さんはぜんぜんそんなんじゃなかった---こりゃあお話をうかがわなきゃ損だと思い、実は僕、プライヴェートでネットのブログっていうのをやってるんですが、それに社長さんのことを乗っけてもいいか、と唐突に尋ね、快くそれの許可をいただくこともできました。
そうかね、僕は、PCというのはまったくやらないんだが、と社長さん、笑いながら、だんだんほぐれてきた感じです。
それでは、ここらでそろそろ正式な紹介といきませうか。
この社長さんの名は、佐々木明男さん---。
温泉施設「西方の湯」の社長であり、さらには「親鸞聖人大立像」の発起人・兼設計者・さらに同時に建設者でもあられる方であります---。
僕は、芸術家の知り合いとかはあちこちにいるのですが、企業人の知り合いというのは、自分の懐具合のこだまを外界に無意識に投影しているせいか、あいにくのことまったくおらんのですよ。
ですから、この佐々木氏が見せてくれる経済誌「プレジデント」やら「経済人」、あるいは「日本の仏像」とかいった多くの書物に、この佐々木氏の記事が多く寄せられているのを見て、またまたびっくりさせられちゃいました。
なんだー じゃあ、このひと、地元の名士さんじゃないのよー! といった種類の驚きですか。
地位も名誉も財産もなーんもないイーダちゃんにとって、ええ、この佐々木さんの発する企業人オーラはまったく新鮮でした。
質問するこちらの声にも自然と気合が入ります、
----しかし、なんでまた親鸞聖人だったのですか? 日蓮とか空海さんとかじゃなくて。
----それはね、やっぱり鎌倉時代、この越後に実際に親鸞聖人が流罪で流されてきて、この極寒の未開の地で、何年も布教したという事実があるからですよ…。そういった地縁めいたものに啓発された部分もあると思う…。
----すると、まえから信者さんみたいな面があったわけですか? あの歎異抄なんかを読んで…?
----うん、そういうのもあるけど、もっとストレートにいうなら、ある日、突然、親鸞さんが突然、私の夢枕に立ったんですよ。で、仏像を作ろうと思いたった…。
----思いたったって…? 思いたったといっても、実際にそれを作るとなるとまた別でせう? 思うのは簡単だけど、作るのは大変だ…。
----ええ、賛成してくれる人間は、どこにもいなかったですな…。
----はあ、どこにも、ですか…。
----ええ、私、金がなかったですから…。合併前の当時の市長も、会社の従業員も、とにかく顔見知りの人間はみーんな反対しましたな…。バカバカしい、そんなのできっこないじゃないかってね…。
----…あの…やや聴きづらいんですが、身内の方の反応は、どうでした…?
----ははは…身内なんて外よりひどいよ。完全な気○がい扱いでしたね……。
----うーむ、そりゃあ…。しかし、それにメゲないなんて…凄いですね……?
----そんなことないでしょう? その程度でメゲるなんて、そもそも自分の夢中が足りなかったってことじゃないですか…。自分が夢中にならなきゃ、ひとは決してついてきてくれませんからね…。
----すると、佐々木さんは、夢中だった?
----ええ、意識のあるときは、いつもそのことだけ考えてましたね…。とりあえず仏像建立の発起人になって、賛同者を集めるとこからはじめました。俳優の三国連太郎さんなんかにも声をかけてね…。
----ほう…。
----で、どうにかとっかかりがついたら、いよいよ仏像の製作ですよ…。実は、あの親鸞さん、もとは作者不明の民間の古い彫刻なんですよね…。それを、私がね、苦労して40メートル版まで拡大したの…。いや、凹凸を平らに均す3Dの技術って言うのは、専門の業者さんにしかできなくて、その部分だけは依頼してやってもらったんだけど、あとの部分は、アレ、全部私がやったんですよ…。もともと建築の会社をやっていたわけだから、そう難しくはなかったです。そうだ、それ御覧になってみます? これは実は、「プレジデント」の記者さんにしかいままで見せたことないんだけどね……。
と佐々木さんがテーブルにばさっと取りだしてくれた資料の束は、僕を絶句させました---。
だって、こーんな手書きの執念の束を見せられちゃあね…。
僕は門外漢なんで建築の細かいとこまでは分かりませんが、この資料の図面を手書きで書くことの大変さはくらいはよーく分かるつもりです。
ええ、僕は、このとき、佐々木さんの放つパッションの熱い香りにKOされちゃったのでした。
どうぞ、皆さんも現物のコレを御覧になって、是非にもKOされてほしい、と思います---。
いかがです? どうよ、コレ---凄いっしょ?
ちなみにシャンプーハットみたいに丸くなってる図面は、佐々木さんによると、親鸞さんのアタマの部分だそうです。
執念っていうのは、恐らくこういうのをいうんでせうなあ?
いままで執念というと、僕は、ネガティヴな通り一編のイメージしかなかったんだけど、この佐々木氏の提示してくれた執念は、とてもいい意味で僕を驚かせて、洗ってくれたようでした。
実際の建立工程にしても、最期の仕上げこそ専門の業者を呼んでやらせたものの、像の基礎的な部分は、佐々木さんを含めた3人だけでほとんどやってしまった、というエピソードには仰天しました。
だって、あの巨像をたった3人で、なんてねえ---それこそため息モンですよ…。
まえにもいったように、イーダちゃんはこの「親鸞聖人大立像」を決して高く評価してはおりません。
藝術的には、たぶん失敗作、下品な見せ物的な存在にまで落ちてしまっている、とすら思っています。
しかし---「西方の湯」滞在の最後の朝---予約の「のれんす号」の迎えを待ちつつ、この親鸞聖人大立像のまわりをウロウロしていたら、なんだか胸にこみあげてくるものがあったんですよ。
だって、佐々木さんのパッションの象徴たる親鸞さんは、ここにこうして未来永劫実際に立ってるんですから。
むろん、永遠ってわけじゃない、でも、あと10年や20年くらいなら、大地震や戦争なんかでやられないかぎり、この親鸞さんはあくまでこの土地のこの場所に立ちつづけ、40メートルの高みから、我々の世界を超然と眺めつづけてくれることはまずまちがいないのですから…。
仮に佐々木さんが亡くなられて、この像の作者が誰だか分からない世の中になったとしても、あいかわらずこの親鸞さんは我々の世を見つづけてくれることでせう。
それは、なんというか、やっぱり凄いことなんじゃないかなあ?
おお、迎えの「のれんす号」がやってきました。
いざ、さらばなり、「西方の湯」! なんて胸中でひとり見栄なんか切ってみせて---。
「のれんす号」の座席に乗りこんでクルマの後部ドアを閉めるとき、「西方の湯」の駐車場のまえの大きな水たまりの上の青空を、雄雌で繋がった赤とんぼの番いが数組、くるくると遊ぶように飛びまわっているのが見えました…。
東京で音楽活動をしているバクザンと申します。
このたび西方の湯に魅せられ、西方の湯の歌を作りましたので
ブログで西方の湯を取り上げているイーダ様にも是非きいていただきたいとおもいまして、メールいたしました。
西方の湯 PV
http://youtu.be/uhX19O9KEDU
浴槽でパラパラも踊ってみました。
http://youtu.be/tf3FV5N_hJE
こちらがその動画になります。
是非御覧ください!
す、素晴らしい! あそこへいって、あのご主人に許可をもらい、オール・ロケを敢行したのですね。もー、たまらん。
見てみたら出来もサイコーじゃないですか。
僕も学生時代アクション映画と関わったことが一時あるので、アクション撮影の大変さは身に染みてわかるつもりです。
超・大変だったと思います。
でも、出来が、すべてを凌駕してますね。
面白く、かつ懐かしく、なんかシュールでもあり、3度つづけて見ちゃいました。バックの女のコたちのノリもグー
あー、あの素晴らしき西方の湯よ!
バクザンさん、ソウルフルな動画紹介、ありがとうございました。
音楽活動のほうも頑張られてください(^o^)/
ご主人と長く語らったようで、そちらのほうがうらやましいです。笑
しかもあの場所に泊まるなんて!かなり勇気がいりますよ?
アクション映画にかかわっていたことがあるんですね。なんたる偶然!
自分はアクション風は初めてやったのでよくわからないのですがとにかく時間に追われていたということだけは覚えています。
しかしご主人、けちでした。笑 大広間で撮影しているシーンがあるのですがここで撮影したいといったら
「ここ全部電気つけると電気代かかってしょうがないから!」と結構念を押されていわれまして。イーダさんとおなじこと言われました。笑
僕もまた西方にいく予定ですがイーダさんも行く機会があれば是非行ってネタを仕込んでいただきたいです!
「のりんす」ではなく、「のれんす」です。
「乗っていきなよ」のこちらの方言です。
さっそく記事、訂正させていただきます。
方言の「のれんす」号だったのかあ。
全然分からなかったですぅ---。m(_ _)m