イーダちゃんの「晴れときどき瞑想」♪

美味しい人生、というのが目標。毎日を豊かにする音楽、温泉、本なぞについて、徒然なるままに語っていきたいですねえ(^^;>

徒然その129☆塩原雪紀行--最愛の「岩の湯」を訪ねて--☆

2013-02-06 23:53:02 | ☆湯けむりほわわん温泉紀行☆
                    


 2013年の1月27日、ひさびさにレンタカーを借りて北のほうにいってきました。
 僕のブログに何度か訪れてくれた方はご承知でせうが、イーダちゃんは2011年5月の福島の温泉行のとちゅうに愛車の全損事故をやってしまい、以来ずーっとクルマ抜きの足なし状態だったんでありまして。
 いまもまだ、いろんな理由から新車は購入していないんですよ。
 クルマがないとなると行ける温泉も結構限られちゃうんですが、ま、電車乗り継いでいけばいいや、とか自分的には思っていたんですね。
 で、近場の熱海とか伊東とか箱根、たまーに新潟とかにも足を伸ばしたりしてたんです。
 それでいい---充分じゃないか、と思っていたんですけど。
 ところが2013年になったら、なぜか急に、その状態に耐えられなくなった。
 なにがなんでも遠くの温泉---特に北のほう!---に行きたくてもうたまんない。
 理窟じゃなくて、心も身体も漂泊の風に煽られて、ぶるぶるとむずがる感じなの。

----ああ、舞い踊る雪つぶてを見上げながら、きんと冷えた空気のなか、極上の北の露天にたっぷりと浸かりたい!

 それは、麻薬の禁断症状に近いもんだったかもしれない (^o-)w
 というわけで温泉好きのやむにやまれぬ頑強な生理に誘われて、イーダちゃんはスタッドレス付きのレンタカーを都合して、27日、那須高原にある最愛の宿「北温泉」さんに予約を入れていたんですね。
(ちなみに「北温泉」さんについては、僕のブログの前記事・徒然その44☆北温泉逗留物語☆を参照下さい)
 ほどよく冷えた山の夜、心ゆくまで修験道の湯である「天狗の湯」に浸かり、湯冷ましのあいまあいまに、あの「天狗の湯」脇の石段の上の温泉神社にちょいちょい上り、真摯な祈りを捧げよう、なーんて風にひそかに楽しみにしていたりしたんです。
 ところがなんと、その前日の26日、とてつもない大雪が関東全般に降ってきたじゃありませんか!
 ええ、この夜、関東は、前例のないくらいの超・爆弾低気圧に、ずもーっと覆われてしまったのでありました。
 
----ああ、僕の神聖な夢も、これでかなわなくなっちゃうのだろうか?

 と子供みたく不安になって、なかなか寝つけませんでした…。

 さて、翌朝の27日、目覚めてみると、横浜は天頂までカコーンと晴れ抜けた、極上日和ではないですか。
 やったー、と思いましたが、神奈川と栃木とじゃ、そもそもの気候からちがいます。
 まして、那須高原は、栃木の山奥とくる、これは、かえって大雪が降った印なんじゃないか、なんて感じられてもきます。
 ま、ものはためし、クルマが東北自動車道に乗ったところで、北温泉さんに確認の電話を入れてみます。
 しかし、何度かけても応答がないんです---20回、30回、コール音がむなしく鳴るばかり---お宿のひとはだーれも出ない。
 途中のSAで何度かかけているうちに、やっとどうにか繋がったんですが、その宿のひとのいうことにゃ、

----お客さん? ああ、わるいけど今日はダメですよぅ…。昨晩、那須じゃもの凄い量の雪が降りましてねえ、特にウチのある湯本からさきの山はもー メチャクチャ…。塩原とかはそんな降らなかったみたいなんだけど、那須はねえ、もっと山寄りだから。スタッドレスにチェーン巻いててもキツイですね。今日はこれないよ。だから、お客さんも今日は誰もいないんですよ…。

 ガーン! しかしまあ、これじゃあしようがないっスねえ…。

 というわけで那須のふたつまえのインターで急遽途中下車して、懐かしい那須塩原に向かうことにしました。
 塩原は、那須高原にくらべるとまだ南で、とはいうもののインター下車後も結構山を登ったところに位置していますから、雪の状態はやっぱり心配です。何気に料金所のおじさんに聴いてみたりして安否確認。すると、奥塩原や塩原元湯以外は午後なら大丈夫じゃないかというんで、ま、その後の塩原行きを続行したって次第。
 塩原はね、でも、やっぱ、雪、それなりに積もってました。
 道路はクルマのタイウ跡と除雪車の作業の甲斐もあって、一応通行できるようになってはいましたが、ひとの行かない観光案内の施設とか---この日は日曜のせいか、ほとんどすべての観光案内施設がお休みでした!---は、もう完璧雪国でしたね。
 雪道運転に自信のないイーダちゃんからすれば、白い領域に入っていくことすら恐ろしい。
 (注:イーダちゃんは、かつて11月の八甲田山で、愛車の全損事故を経験したことがあるのです!)
 だもんで、行きたかった奥塩原は早々に断念し、塩原温泉福渡区にある共同湯「岩の湯」さんに入っていくことにしました。
 塩原の共同湯「岩の湯」は、塩原を貫いて流れる箒川沿いに作られている、ジモティーのための素朴な共同湯で、なんと、足元湧出のすンばらしい湯っこなのであります。
 イーダちゃんの「全国の温泉ベスト20」のなかに食いこんでくること確実の、もー 超・大関級のドッシリ実力派。
 そして、なおさら人間味溢れていることに、ここ、混浴なんっスよ。
 改めていうまでもないことかもしれないけど、僕、混浴大好きっしょ?
 というのも混浴温泉はほとんどの場合、名湯ですから。まんず例外はないですね。足元湧出の湯っこは、もともとそんなにベラボーな湯量じゃないところが多く、そのお湯のたまる場所は自然男女混浴の湯として発展していった、というのが、まあ、混浴の歴史的なあらましなんであって。それに、もともと温泉って自然の恵みなんですから、男女差の区別なんてツマラナイ垣根なんかどこにもないんです。
 そんなものを後生大事にしてるのは、都会の、汚れた人間風情ばっかりでね。
 ほんとの極上温泉では、そんな下らない性差なんて全然ないんスよ。僕は、ここのお湯にはもう数えきれないほど入ってるんだけど、女性の方と混浴したことも何度かありました。一度は掛け湯のために洗面器をお借りしたりしてね、それをきっかけにずいぶん長話したりして…うーん、いい湯あみの記憶しか残っていないような、ここ、僕的にはとびっきりの温泉なんですよ。
 ただ、この日は、あまりの雪のせいか、箒川上の道路脇に駐車してるクルマ、ありませんでしたね。
 いつもだったら日曜の午どきなんていったら、それこそ5、6台の路肩駐車はあたりまえの人気の湯っこなんですけど。
 やっぱり、そのへんんは突然の雪の影響らしかったです。
 さて、クルマを降りると、おお、襟元がぎゅっと寒ッ。
 道路に降ろした足首がいきなり雪の層にズボッと埋もれます---でも、不快じゃない---なにせ、これから極上湯に向かう高揚の途中なんですから。
 箒川沿いの雪の石段を用心しいしい降りて、川沿いの遊歩道をこれまた用心しつつトコトコ歩いて---ああ、見えてきた、見えてきた---超・懐かしいったら---!


            

 橋を渡って、左写真の金属筒のなかに入浴料の200円を入れて、積もった雪に足をとられないよう注意しいしい行くと、おお、お湯には初老の男性さんがひとり先客でいらっしゃいました。

----こんにちはーっ、地元の方ですかあ…!?

 と挨拶しつつ雑談を少々すると、その方、地元の、クルマで15分ほどのとこからこられた方だとおっしゃってました。
 どうした弾みか、僕、その方に洗面器をお借りして、それで掛け湯して、さあ、ひさびさの「岩の湯」に足首からぽちゃりといくと、

----ぷ・は-っ!

 もー 歓喜の溜息がつい唇から漏れでちゃいましたっけ。
 抑えきれないよー、超・いいお湯なんですもん。
 ふっと見上げた背中側は崖になってて、雪がいっぱい積もってる。 
 で、反対の正面サイドは、真冬の箒川の清流が滔々と流れてるわけでしょ!
 冷えた手足が湯のなかでじわーっとぬくもってきて、手の指先が一時ちょっと痺れたようになって、それをお湯のなかでひらひらとほぐすように泳がせて、それから、両掌でお湯をすくっておもむろに顔に掛けてみると、
 ぽちゃり---。
 ああ、すると、なんともいえない硫黄のかすかな香りが、顔いっぱいに、超・ビミョーに散り広がるのです。
 さっきもいったように「岩の湯」は野湯でして、必然的にいろんな葉っぱや小枝が湯のなかに入っていて、特に足元なんかは天然の砂地で、そこから源泉のぶくぶくが直接湧いてきてるわけですから、お湯のなかは厳密にいうと、足元から舞いあがった砂粒やら葉っぱのかけらなんかで結構いっぱいになっているんですね。
 顔にお湯をぽちゃりとかけると、天然のお湯といっしょに、それらの砂粒や葉屑も顔にかかってきてしまうので、稀には汚いとかいうひともいるんですけど、イーダちゃんにはそーゆーの分かりませんでしたねえ。
 というか、葉屑も砂粒も、僕にいわせれば「岩の湯」の一部なんですから。
 うん、湯のなかの砂粒も葉屑も、それから目の前の箒川の雄大な眺めも、さらには川向こうからこっちにぴゅーっと飛んでくるこの雪つぶても、みーんなこの「岩の湯」の一部なの。
 これを味わえずしてなんの温泉好きよ、と僕はいいたい。
 けれども、まあ、そんな理窟はこの際どうでもいいや、マジ、ここ、気持ちいいんだもん。
 きて、よかったなあ、としみじみ思っちゃう。
 箱根のお湯もいいけど、やっぱり僕のフェバリアットは東北ですねえ。
 お湯に浸かっていて身体がホットなのに、お湯から上の首と頬は超・ひんやりってのもまた格別の味わいなり。
 贅沢だなあ、と思い、湯のなかで思いきり伸びをしてみたり。
 すると、お尻の軟部あたりになにやらぶくぶくっと、中央写真のようなあったかい温泉あぶくがご到来。
 これがねえ、真冬の湯あみでは春や夏の湯あみとは別モンみたいに、ぷくぷくと、極・気持ちいいんですよ。 
 
----うほーっ…、うわーっ…!

 なんていってひとりではしゃいでいると、ただのイカレ親父みたいなんですけど、僕は、どうにもはしゃいじゃったなあ。
 ええ、この午後の「岩の湯」での湯浴みって、それっくらいサイコーだったんっスよ…。(^o^;>


                            
 

                      ×           ×           ×

 しかしねえ、宿探しの見地からいえば、この日はややアンラッキーだったかもしれません。
 お湯からあがって携帯で聴いてみると、お湯のなかのジモティーさんが杞憂してくれていた通り、ああ、塩原元湯の贔屓の「ゑびすや」さんはあまりの雪のため到着不可能だとか!
 それならと気を取りなおして、イーダちゃんの定宿のひとつ「八峰苑」さんに問うてみると、なんと、あの「八峰苑」さんはつい先日営業を取りやめてしまったばかりとか。これは、ショック! 家族ぐるみでやっていた、お風呂も雰囲気も値段も手頃で良質の、あんなにいいお宿だったのに…。
 ずっと下のほうに降りていって、やっと開いていた観光案内所で尋ねてもみたんですが、何度か泊まった「塩原山荘」さんは予約でいっぱい、1泊したことのある塩原上湯の「湯荘白樺」さんは料金の都合でこちらから断らせてもらったんで、うーん、しゃあない、じゃ、今日のとこは塩原はいいかって感じで、わりと諦めもよく、その午後、イーダちゃんはスパッと塩原をあとにしたのでありました。
 その後、郡山までたまたま私用がありまして、その日は、夕遅くまでまあドライヴに時間を取られちゃったんですね。
 用事が済んで、雪の郡山から引きかえしてくると、那須はもう日暮れがはじまっていました。
 おなじ塩原に取ってかえすのも芸がないんで、今度は那須インターで降り、那須湯本を目指してみます。
 郡山で凄まじい雪道路を経験してましたんで注意しいしいいくと、ああ、やっぱり、このへんの那須は山のせいか雪が凄いの。塩原の上のほうより、ひょっとして積もっていたかも。前のめりにエンブレ効かしながら慎重に運転して、なんとか湯本に到着してみると、湯本…なんか、廃墟みたいでした。
 開いてる店がひとつもないの。
 雪のなか、どの家も窓を閉ざしてシーンと静まってる。
 人気もクルマもありません---観光客も絶無---超淋しい夜の入りなんです。
 せめていいお湯に入りたくて、あの名湯「鹿の湯」さんを訪ねてみたら、なんと、「鹿の湯」さんも営業しておられない!
 ガーン、ショック! 宿、どうしよう?
 と、通りごと全部閉まっているような旅館通りの道すがら、どうにか開いていた地元の酒屋さんが一軒ありましたので、そちらで宿のことを問いあわせてみることにしました。
 そしたら、どうにか素泊まりのお宿を紹介してもらうことができまして。

     那須高原「旅人宿カントリーコネクション」0287-76-6881

 なんでも、ここ、旅のライダーのための宿ということで、1泊3000円とか。
 うぐっ、安ッ---!
 ただ、うちには温泉ないですよ、それに、ユースみたいな相部屋だけど、それでもいいですか? というんですが、なに、こっちに異存のあろうはずがありません、喜んでお邪魔してみることにしました。
 場所は、こちら、那須サファリパークのすぐ近くの、結構大きな、一見山小屋みたいなログハウスです。
 夜の底の、深い森の奥の雪のなかに、しーんと建ってられました。
 入っていったら息子さんを抱っこしたご主人が歓迎にきてくれて、なんか、お風呂なんか入れてくださって。
 すげー アットホームなお宿なの。
 雪のドライヴをしてきたあとですから、そのような親切が身を切るようになおさら染みて、ちょっと嬉しかったですね。
 で、ご主人とちょっとお話ししてたら、なんだか、そのご主人が只者じゃないっていうのが、だんだん分かってきたの。
 自分からはおっしゃらないんですよ、謙虚な方ですから。でも、いろんな状況証拠から尋ねていくと、やっぱり、そこのご主人、有名なモトクロス選手だった方なんです。
 ホンダとヤマハのチームにおられた方で、ヨーロッパ、アメリカなんかも転戦してたっていう、凄いひと。
 こりゃあ面白い、僕だってそっちの世界にはいささか興味があるし、手応えのある話を聞かなくちゃ、と尋ねる目線にも自然と力がこもります。
 で、美味しいコーヒーをいただきながら、さまざまなモトクロスのお話を聴くことができたんですが、そのなかでも特に印象に残ったことを、せっかくですからいくつかここに挙げておきませうか---。

 1.モトクロスの練習は4、5才からはじめるのが理想。(このへん、ヴァイオリンなんかと共通しますねえ。超実力・才能の世界だってこと。実際、このご主人の息子さんは、まだ4才だけど、自宅の庭で子供用のバイクにもう乗っているそうです)

 2.驚いたのが練習の質。モトクロスのバイク(125cc)はガスが7リッター入るそうなんですが、それが1日で平均3回は空になるっていうんですから。どういう追いこみか。これは凄いよね! さらに練習後のバイクの掃除に整備、そんなかんやで気づいてみたら夜の11時なんていうのが、あたりまえの日常なんだとか。早朝に起きて、怪我の恐れがあるアブナイ練習をめいっいぱいやって、さらに整備やら練習の復習やらいろいろやって…プロの世界は厳しいもんだなあ、と思いましたね。

 3.さらにビックリこいたのは、技術の繊細さ。モトクロスのシーンでよくバイクがばーんとジャンプしたりするの、あるじゃないですか。ご主人にいわせると、あのジャンプのときがライダーはいちばん忙しいっていうんです。僕的にいったら、わあ、気持ちよさそー、てなもんなんですけど、実像は全然ちがうらしい。素人さんはあの滑空の瞬間、アクセル全開のまま翔ぶそうなんですけど、プロはちがうっていう。ジャンプの瞬間、アクセルは全閉にするそうなんです。そうしないと、空中でバイクがジャックナイフ形にのけぞっちゃうっていうの。そうすると、遅くなるんですって! さらには空中でブレーキをかけてタイヤの回転をとめることによって、実に微妙にバイクの傾斜が変わるらしのです。で、着地の瞬間、後の走りのことをいろいろと計算しながら、空中のバイクの姿勢をしきりと「より早く走れる着地状態」にもっていけるように操作するっていうんだから、もー あまりの彼岸の超絶話にイーダちゃんは絶句です。

----いやー、空中で飛んでるときって、忙しいんですよ。あれに比べりゃ、がたごとしたコースを走っているときのほうが、なんも考えないでいられるぶん、ずっと楽ですね…。

 と、ご主人は愉しげに笑ってみせて…。
 あの笑い、カッコよかったなあ---。
 というわけで、ひとり旅好きなライダー諸君には、是非にも紹介したいなあ、と思って記事に挙げてみた次第。
 お勧めですよー 那須湯本の「カントリーコネクション」!---そうだ、写真も1点ばかし挙げておきませうね。


                        

 いずれにしても那須、温泉には泊まれなかったけど、予定もぜんぜん変わっちゃったけど、味わい深きよきところです。
 翌朝早く、またしてもイーダちゃんは塩原の福渡地区にいき、最愛の「岩の湯」で2度目の湯浴みをほっこりとたしなみ、それから世知辛い首都圏への帰還をようよう果たしたのでありました…。(^o^;>