イーダちゃんの「晴れときどき瞑想」♪

美味しい人生、というのが目標。毎日を豊かにする音楽、温泉、本なぞについて、徒然なるままに語っていきたいですねえ(^^;>

徒然その165☆S&W M19コンバットマグナムとM36チーフスペシャル☆

2014-02-23 01:57:34 | エアガン小唄
            


 僕が個人的にいちばん美しいなって思うGUNは、ワルサーとパイソンなんですよ。
 1938年にドイツの制式銃となったワルサーP-38とコルト・パイソン。
 映画やドラマなんかにもよく取りあげられる、どっちとも非常に有名なGUNであります。
 拳銃なんかにまったく関心のないひとでも知ってるくらいの、これらの名銃---ワルサーのほうは、アニメの「ルパン三世」で主人公ルパンの愛銃として取りあげられたし、それ以前から世界一の名銃なんて世評が高かった。
 実際、いま出回ってる有名なGUNは、ほとんどこのワルサーのメカをパクってるみたいなものなんですよ。
 米軍制式のベレッタM92Fなんて、僕ぁ、アレ、まるごとワルサーのコピー銃じゃないかと思うんだけど。
 だって、ダブルアクション機能、セフティのデコッキングバー、9㎜パラベレム弾の使用…。
 ねっ、何から何まで瓜二つのそっくりさんじゃないですか。
 そりゃあ、1975年生まれのベレッタは、1938年生まれのワルサーにはない、最新式の機能をいくつか備えちゃいます。
 たとえば、精度---ベレッタの命中精度には、それは凄いモノがあるんだそう。(ベレッタM92は、ショートリコイルにワルサー譲りのプロップアップ方式を採用していて、そのせいで他のブローニング系のティルトバレルのモノより格段にいい命中精度を実現しているそうです)
 あと、FNブローニング・ハイパワーの複列マガジンを進化させた、15連発の多弾数収納マガジン。
 もーさー、マガジンのデザインを少々変えて、バレルの先をむきむききしさえすれば、アレ、そのままワルサーちゃんじゃないの? とまあイーダちゃんはいいたいわけよ。
 GUNの世界では、オリジナルティーを尊ぶって風潮がないのかしら?
 僕は、ひと殺しの道具としてのベレッタの優位性は渋々認めるけど、ひとつの作品としての完成度という見地からあえていわせてもらうなら、圧倒的なワルサー擁護派ですねえ。
 ワルサーP-38は、ほんっと、美しい。
 しかも、当時のワルサーの技術者たちは、美しい銃を作ろうなんてカケラも思っちゃいなかったんですよ。
 ルガーP-08のあとを継げるだけの優れた銃を作ろうと試行錯誤した結果、ああいった独創的な風貌のGUNがたまたま生まれちゃったのであって。
 いってみれば、製作途中の苦労はそれなりにあったろうけど、生まれるべくして生まれた、安産GUNだってとこ。
 「美」は、あくまで偶然の付随物なわけ。
 これって、完璧に「美」についての諸条件を満たしてるんですよね、実をいうと。
 無頼派の作家・坂口安吾はこういってます、

----この三つのものが、なぜ、かくも美しいか。ここには、美しくするために加工した美しさが、いっさいない。美というものの立場から付け加えた一本の柱も鋼鉄もない。ただ必要なもののみが、必要な場所に置かれた。そうして、不要なる物はすべて除かれ、必要のみが要求する独自の形ができ上がっているのである。それは、それ自身に似るよりほかには、他の何物にも似ていない形である。必要によって柱は遠慮なく歪められ、鋼鉄はデコボコに張りめぐらされ、レールは突然頭上から飛び出してくる。すべては、ただ、必要ということだ。そのほかどのような旧来の観念も、この必要のやむべからざる生成を阻む力とは成りえなかった。そうして、ここに、何物にも似ない三つのものができ上がったのである。
 僕の仕事である文学が、全く、それと同じことだ。美しく見せるための一行があってもならぬ。美は、特に美を意識してなされたところからは生まれてこない…。(坂口安吾「日本文化私論」より抜粋)

 ベレッタM92Fはちがいます。
 僕は、あの容姿には、明らかに広告代理店の視点が入ってると思う。
 アレは、明らかに技術陣と経営陣が、観客の眼をすべからく意識して---観客っていうのは制式銃を決める米軍だとか、ほかの政府関連組織とかの意味あいです---いわゆるウケ狙いのデザインをあらかじめ練っていたフシがあります。
 機構はワルサー、マガジンはハイパワー、容姿は○○とベレッタの伝統形式をうまくフュージョンさせて---なんて鼻歌まじりに夜毎化粧の乗りを計算して盛っている、どこぞの場末のキャバ嬢のような、安っぽい、絡め手の計略臭がしてくるの。
 だから、見た目の「カッコよさ」はまあそれなりに備えてはいるものの、観客の眼を意識した、その練りまくった損得勘定のあざとい気配、あるいは計算及び策略のそこはかとない悪臭が、GUN自体の美しさを結果として非常に貶めている、と僕は感じるのです。
 ですから、このGUNを美しいと思ったことが、僕はいままでに一度もありません。
 ベレッタM92Fは、なるほど、一見モダンでスマートな風貌をしてるかもしれない。
 でも、美しくはない---。
 あれを美銃と呼ぶことはできない、というのが、うん、いまも昔も変わらぬイーダちゃんの立場です---。

 ただ、コルト・パイソン357マグナムに関していうと、この種の説明はちと難しくなってきますね。
 僕は、パイソンは、もうむかしっから大好きでした。
 だって、言語道断にカッコいいんだもン---。 
 リボルバーのロールスロイスとときおり呼称されることもある、コルト・パイソンの美しさには、ちょっとばかし抗いがたいものがある。
 特にお気に入りだったのは、銃身が3インチのスナブノーズの「コンバット・パイソン」です。
 ついこないだまでオートにしか興味のなかった僕にしても、パイソンというのはどうにも気になる存在でした。
 ところが去年の師走、たまたま購入したタナカさんのコルト・ディテクティブ・スペシャルのおかげでふいにリボルバーの魅力に開眼したイーダちゃんは---このへんの詳細は、徒然153☆コルト・ディテクティブ・スペシャルに花束を☆に記してありますので、気になる奇特なお方は参照あれ!---ディテクティブにつづく2丁目のリボルバーとして、当然パイソンの3インチ購入も視野に入れておりました。
 けれども、ちょっと旅行にいっちゃったりしてあんまお金がなかったんで、やむなく(ホント、やむなくのつもりでした)同じタナカさんのスミス&ウェッソンのM36 チーフスペシャルを購入してみたんです。
 僕、実をいいますと、S&Wはずっと苦手な口でして…。
 ですから、今年の1月に購入したチーフスペシャルも、その種のアレルギーへの自分なりの対処薬みたいなつもりでいたんです。

----まあ、リボリバーの魅力も分かってきたんだし、今度は、苦手のS&Wもちょっと手に入れていじってみるか…。

 でもね、そんな不届きな理由で購入したチーフスペシャルが、予想外によかったんだ、これが。
 もともとタナカさんは好きだったんですけど、僕の思惑をはるかに超えて、タナカさんのチーフスペシャルは素晴らしかった。
 カタチとしては、いまでもコルト・ディテクティブ・スペシャル(僕の所有のDSも当然タナカ製)のほうが好きなんです。
 参考例として、ちょいとこの2丁をここにならべて見てみませうか----


     

 銃のプロポーションの見地からいうと、僕は、いまでもディテクティブ・スペシャルのほうに惹かれます。
 だって、どうです、このコルトのGUNの曲線と直線との見事な配合は?
 グリップのほどよい張りだし加減と、全体的に武骨でいながら、どこにおいても微妙な洒落気と遊び心があるこの感じ。
 対して、S&Wのチーフのほうは、完璧機能的な目的に沿ったデザインとなっています。

----携帯しやすいGUNとして、いかにGUNを軽く、薄くするか。

 すべてのデザインが、この支柱にむけて設計されていて。
 従って、コルトより乾いた、含みや遊びの少ない容貌となっている---グリップのでっぱりはもっとでっぱりたいのを無理やり短めにギュッと抑えた感じだし、ディテクティブに見られる「余裕」めいた佇まいがどこにも見られない。
 なんとなく、目的のために息を詰めて、身体を小さく縮こまらせた形態が、そのままGUNの容姿となって結実したような窮屈な印象です。
 でもね、実際にガス入れて、試し撃ちしてみたら、僕のなかの旧S&W観は瞬時に変貌しちゃった。

----なに、この撃ちやすさ? ぜんぜんガク引きしない。なんなんだ、このやたらスムーズなアクションは…! 

 もう、感激!---ものごっつう撃ちやすいったら---リボルバーとして、ほぼ完璧で理想的なトリガーアクションが、そこにありました。


        

 ちょっと夢中になっちゃって、いろんな距離のさまざまなものを撃ってみました。
 チーフのシリンダーは5連発で、6連発のディテクティブよりちょっと小さく、そのせいでシリンダー内にすべてのシステムを押しつめる画期的なペガサス・システムにしても、ガス容量の点でどうしても若干むりが生じてしまい、放たれるBB弾の勢いはオートにはとても及ばず、山なりの軌道を描く場合が多いのですが、それでも5発に1発くらいは、7mさきの5㎝四方の的に確実に着弾します。 
 精度において劣りまくりのスナブノーズで、この着弾率!
 ホップアップ機能を少々いじくると、着弾率はさらに跳ねあがりました。
 調べてみると、チーフをはじめとするS&W系GUNのダブルアクションは、テコが2重になっているそうです。
 トリガーアクションの軽さは、それに由来します。
 ハンマー落ちの直前にグッと粘るコルトの鈍いアクションに比べると、もー ダンチに引きやすい。
 軽くて引きやすいから、発射時にマズルがぶれない。
 したがって的に当たりやすい、とこーなるわけ。
 これには、正直、まいったね…。

 ちなみにイーダちゃんには、実銃を撃った経験はありません。
 だから、実銃のチーフとディテクティブが、このタナカ製のものとおんなじアクションなのかどうかは分からない。
 ただ、実銃のチーフとディテクティブをともに発砲した経験のある方にいわせると、このタナカさんのアクションは、感触も動作も実銃にとてもよく似ていて、金属部の触れあい動く響きをのぞいたら、ほとんど実銃そのままだと思っていい、そのくらいタナカのアクションってよくできているよ、とのこと。 
 GUN関連のほかの記事を読んでも、この種の意見は5、6件見つけられたので、この記事においては、僕は、そちら側の視点を信頼して書かしてもらうことにしませう。
 ただし、S&W系支持のこれらの方をコトバを信頼すると、今度はそれと逆の困った点が起きてくる。
 というのは、S&Wを支持するこれらの方、どういうわけか皆、僕の好きなパイソンをそろって批判しはじめるではありませんか。

----パイソンは駄目だ。アクションが古く、そのせいで当たらない。シングルアクションならバレルの精度のよさもあってよく当たるけど、ダブルアクションで撃つとなると、着弾が途端にブレはじめる。だから、GUNのコンベティションでパイソンを使う奴は誰もいないんだ。外装はいちばん丁寧に美しく仕上がっちゃいるけど、コンバット・シューティングのGUNとしちゃあ落第で、製造中止になるのも当然さ。おなじリボルバーなら、格段にS&W系のが性能が上だし、優れているね…。

 なんというトホホンな意見…。
 へへん、と無視できりゃいいけど、この手の意見、あまりに数が多すぎるんでありまして。
 ネット上でいうなら、たとえば---

 ☆キャプテン中井の「コルト・パイソン」の伝説

 なんていうのが代表的なものでせうか。
 これは、いいよ---この著者さん、プロのシューターだし、忌憚のない現場の意見を、科学的データにもとずいてバシバシいってくれる。
 彼にいわせると、パイソンの精度は、あくまでシングルアクションで撃った場合限定だとのこと。
 ダブルアクションで撃った場合---特にそれが20m超えのターゲットの場合、パイソンの精度はほとんど信頼できないんだそうな。
 うーむ、これは困ったちゃんだなあ。
 けれど、同種の意見は結構あるもんで、月刊GUN(国際出版株式会社)の93年6月号の、

 ☆ULTIMAT PYTHON パワー・アップされたニュー・タイプ by/Jack

 なんて読むと、もうパイソンは、けちょんけちょん。

----さて、全コースを戦ってきたパイソンだが、他のものよりカッコーよく、値段が2倍だが、精度もパワーもスピードも他のもの以上ではないという事だ。やはり、“伊達男、金と力はなかりけり”がパイソンのようだ。外面だけはピカピカだが、中身がタリンのだ…。(Jack氏)

 プロの方々にこうまでいわれると、やっぱり、ある程度考えちゃいますよね?
 そういえば、名著「拳銃王(全47モデル射撃マニュアル)/光人社NF文庫」の著者である小峰隆生氏も、たしかパイソン射撃の際にはなかなか当たらなくて苦労されてたんじゃなかったっけ?

----気分転換のために、射撃場の近くの空き地で空き瓶を撃つ事になった。マグナム弾の威力を目で確かめようと思ったからだ。二リットルのコーラのポリ瓶を用意する。角材の上に置く。五メートルの距離から、プローンで狙う。俺はパイソンを構えるとDAでポリ瓶を狙った。パイソンはまた、予期せぬ位置で吠えた。銃身を平行の位置に戻すと、コーラのポリ瓶は何もなかったように、無傷で立っていた。俺はなーんのために練習していたのでしょうか? ポリ瓶は威張っているように見えた…。(小峰隆生「拳銃王」より)

 この小峰氏、このパイソンの記事とほぼ同時期に、S&WのM65とM681も撃ってるんですけど、こっちは遠距離でもわりとポコポコよく当たってるのよ。
 パイソンだけが当たってない。
 というか、思い入れと練習の甲斐もあって、この小峰氏もとうとうパイソンをモノにできるようになるんだけど、パイソン独自のアクションを自在に扱えるようになるまでになんと10年かかってるんです。
 は? 10年ってどーよ?
 それじゃ、はっきりいって、まったく使えない銃だってことと同義じゃない。
 そんなこんなの前情報もあって、僕、迷った末にパイソンの3インチGUNをあきらめて、S&WのM19コンバットマグナム(タナカ製)を今月購入することにしたんです。
 そしたらねえ、これが、素晴らしかった…。

            
            

 まず、やられたのは重量感。
 店頭で手に取ったら、ずっしり重いのよ。
 さっすが、軽量小型が売りの5連発のチーフとはちがってる。
 しかも、大きさも手ごろな190㎜---これ以上でかいと、やっぱ、携帯には不向きでしょ。
 タイプ的にはチーフとおなじスナブノーズなんだけど、銃自体のフレームは、あれより1サイズ大型のKフレーム。
 特に、マズル近辺が357マグナム仕様にもっちりとぶ厚くなってるのがミソ。
 ただ、S&WのKフレームっていうのは、本来のマグナム仕様じゃないんですよ。
 本来のマグナム仕様は、Kフレームよりひとつ上のLフレームなの。
 けど、持てば分かるんだけど、Lフレームっていうのはいかにも大型にゴツすぎて、こんなんで日本の公道が走れるかって感じの佇まいなわけ。
 でかいもの好きのアメリカンも、たぶん、おんなじように感じたんでせうな。
 で、1957年に開発されたのが、この携帯可能でマグナムも撃てる、KフレームのこのM19だったの。
 一応、名銃と呼ばれている、殿堂入りの1丁なんであって。
 ちょっと手にしていじってみた第一印象は、とにかくバランシー。
 握りやすく、狙いもつけやすく、かつトリガーも引きやすい---。
 トリガーブルの滑らかさは、S&Wの場合特に大事なポイントなんで、これは何度も書かなければ…。
 そのくらい引きやすいトリガーです、これ。
 コルトの場合、トリガーはハンマーが落ちる最後の瞬間まで、ずっと重いままなんですよ。
 しかも、いつハンマーが落ちるかの綾が、シューター側にはあんま分からないんで、つい虚をつかれてガク引きになり、狙いを外しちゃうってケースが多いんです。
 ところがS&Wのトリガーアクションはほんとよくできてて、トリガーを引くと、引き代の半分くらいで「チッ」て微かな響きがフレーム内から聴こえてくるの。
 で、それが聴こえたら、トリガーはがぜん軽くなる。(2重テコメカの効果です、これ)
 でもって発射!---ただ、直前に「チッ」の予告があるから、シューターがそれを知って、銃に身をまかせていさえすれば、マズルはぶれない---従って、ターゲットにより命中させやすいわけ。
 コンバット・シューティングは0.1秒で生と死が交錯する世界ですからね。
 パイソンは美しいといまも僕は思っています---しかし、ダブルアクションの連発で、マズルがぶれまくるんなら、僕ぁ、そんな銃はいらないなあ、どうしたって。
 そのような事情で選んだS&WのM19です---エジェクターロッドを覆ったマズル下のシュラウドがグー。
 フロントサイトのポイントになってる赤ポッチがグー。
 ごっついマズルと華奢でスマートなFフレームとの対比もグー。
 うーむ、どうにもいいGUNじゃないですか…。

      ◆S&WコンバットマグナムM19 2.5インチHW(タナカ)
     全長:190㎜
     全高:134㎜
     全幅:34㎜
     重量:560g
     初速:65.9m/s 

 M19のデーター、列挙してみました。
 お。いい忘れてたけど、僕的には、このGUN、サービスタイプのグリップが仕様されてるってとこが、これまた気に入ってる点でもあるんですね。
 あのマズル部のゴツさに反比例したグリップ部の華奢さが、なんともそそるんです、コイツってば。
 もっとも、実際にこれでファルコンの357マグナムなんて撃ったら、反動、超・凄いんだろうけど。
 古残の愛銃のワルサーとならべてみると、このM19の独自の魅力、やっぱり引きたちますねえ。
 スマートでスタイリッシュであり、同時に獰猛である---というこのM19のふしぎな魅力---。
 ちなみに、このGUN、アニメ「ルパン三世」の登場人物・次元大介氏の愛銃でもあります。
 さっすが名ガンマンの次元サン、銃を見る目は伊達じゃないようで---。
 かような諸事情でもって、S&WのM19モデルは、ワルサーP-38に次ぐ、イーダちゃんのお気に入りナンバー2のGUNとなっているのでありました…。(^o^;>
(fin)


         


PS.前々記事、徒然その163☆コルト・ディテクティブ・スペシャルに花束を☆のなかで、僕は、パイソンをアメリカ野牛のパイソンとして書きましたが、アレ、間違い。パイソンは毒蛇だそうです。m(_ _)m
         
           


           
 
        
 


 

徒然その164☆イーダちゃん、平家の里・湯西川温泉をさすらう!(栃木篇Ⅰ)☆

2014-02-21 11:18:16 | ☆湯けむりほわわん温泉紀行☆
              


 Hello、ひさびさの温泉チャンネルです。
 僕はね、なにが好きって温泉ほど好きなものはないんです。
 でもね、諸事情から、去年の金沢行以来めぼしい温泉にはあんま行ってなかった。
 それが、先月中盤、久々に休みが取れる運びとなりまして…
 そうなればやることは決まっちょる---で、2014年の1月19日から22日にかけて、イーダちゃんは、骨休めもかねた温泉旅行にいってきました。
 真冬の奥日光---泣く子も黙る、栃木の平家の隠れ里である、有名なあの「湯西川温泉」であります(^o^)/
 実は僕、温泉巡りに燃えていたころに---前の仕事をしてるとき、それと、それ以前に友達なんかとで---かつて何回か、ここ、きてるんですね。
 いま、nifty温泉さんの自分のクチコミを見直してみたら、それ、2008年の1月22日と7月21日とのことでした。
 奥鬼怒の「加仁湯」さんなんかにいったときにもたしかお邪魔したりしてますから、ま、6、7度は湯浴みさしていただいている、勝手知ったる旧知の湯西って感じでせうか?
 つまり、湯西川っちゅーのは、それだけ僕の心を魅きつけるモノをもってる、求心力のある、いい温泉地だってことですよ。
 僕はねえ、湯西川温泉って超・好きなんだよなあ---。
 かつて、平家の隠れ里だった、という秘密の香りのする歴史がまずいいっしょ?
 それに、湯西川の流れに沿ってならんでいる家々の、藁葺き屋根のならび、あの古めかしく、またどことなく隠者めいた村全体の佇まいもいい。
 さらに、とどめとなるのが温泉ね---あのねえ、こちらの温泉って出色なんっス。
 基本は無色透明の単純泉なんですけど、こちらのお湯、底のほうにかすかな硫黄臭がほんのり香ってる感じなの。
 僕的にいわせてもらうなら、ここのお湯、別府さんのとこのお湯をどこか彷彿させるものがあるんですよね。もちろん、別府のお湯に特有の、あのかすかな硫黄の芳香にまじった「別府臭」とでも名付けるしかない、あの独自の個性的な触覚は、そりゃあありませんとも。
 でも、僕は、湯西川の湯につかるたび、なぜだか別府のことをつい連想してしまう…。
 湯煙に目を細めながら、はるかなる別府を夢見つつ入る温泉ってのも、案外これはオツなもんなんですってば。
 
 というわけで、1月の20日、ハマを出て、埼玉の春日部で用事をすましたイーダちゃんは、連休の残りを極上の温泉ですごそうと逸る気持ちを抑えつつ、栃木行きの電車にいそいそと乗りこんだのでありました。
 クルマでいくと<ヨコハマ---栃木>間って結構あるように思うんですが、驚いた、浅草から電車を使えば超・スグではないですか。

 浅草から東武のスカイツリー特急に乗り鬼怒川温泉まで100分→んでもって、鬼怒川から東武鬼怒川ラインに乗りかえて約19分。

 龍王峡、川治温泉など懐かしの駅々をこえてようやく辿りついた湯西川の駅は、見事な雪国の様相でした。
 川治とか龍王峡は、そんなに雪積もってなかったんですよ。
 でも、湯西川前の長いトンネルを抜けたら、そこはまさに「国境の長いトンネルを抜けたら雪国であった」の世界でありました。

----ふわぁ、寒ィ…。

 と、思わず身体を縮めて、両肩も抱えこんで。
 口からたちのぼる息も、いつのまにかまっ白な冬の色。
 そして、駅のまえの国道のむこうには、滔々たる鬼怒川の流れが見えていて。
 旅情っスねえ…。
 バス待ちのあいだ煙草をもつ指先が凍えてかじかむのも、ちょっといい感じです。
 バスで30分ほどゆられて---いつもはクルマで走っていたこの道をバスでいくのは初めてで新鮮でした---6年ぶりに訪れた湯西川。
 懐かしかった。
 湯西川は、記憶のまんまの佇まいでした。
 あたりまえの話だけど雪が凄い。
 雪の湯前橋を注意しいしいゆっくり渡り、湯西川の全景をまず見てみます。
 お。湯前橋下の湯西川公衆浴場も、対岸の橋下の野湯「薬研の湯(やげんのゆ)」も健在。
 ただ、おめあての「薬研の湯」まわりの積雪がやたら凄いなあ。
 ここ、入れるかしら? と一瞬心配になっちゃった。
 人気は、なし。
 対岸の雪に埋もれた、あの有名な藁葺の平家集落の家々は閑散としてる。
 まえに食したことのある有名な会津屋豆腐店さんも斎藤商店さんもみんな閉まってる。
 あとで聴いたら、1/25からかまくら祭りっていうお祭りがあるから、お客は25日以降に集中してて、僕の訪れた1/20なんかは、年度でも有数の閑散期だとのこと。
 すわ、ラッキー、とかじかんだ胸奥で心がちょいと踊ります。
 湯西川駅からあらかじめ℡で予約を入れていた、懐かしの「金井旅館」さんにむかいます。
 こちら、以前から立ち寄りではそーとーお世話になってるお宿なんですけど、正直、泊りは初めてなんです。 
 ひとのよさげなおかみさんにこんにちはーって挨拶して、お喋りして、宿帳なんかも書いて、お茶飲んで、ぼーっとして、部屋の窓からの真冬の湯西川の風景をしばし堪能タイム…。
 では、このあたりで僕が宿泊した湯西川温泉「金井旅館」さんのご紹介、いってみませうか---


        

        

            ◆湯西川温泉「金井旅館」
           〒:栃木県日光市湯西川温泉822
           ℡:0220(98)0331 

 先にあげた写真が「金井旅館」さんの正面玄関であります。
 いかが、こじんまりとしてて、なかなかいい感じでしょ? 
 高級志向なお方からしたら、なんだい、こんなオンボロ宿は? となるのかもわかりませんが、ここ、温泉が極上なんですって。
 下の写真の左手---湯前橋のこっちにある、囲いで隠されてる露天---が、こちら「金井旅館」さんの露天です。
 湯前橋の左手の袂のとこにある小屋が、有名な混浴の「湯西川公衆浴場」。
 その反対側の橋の袂の下手にあるのが、イーダちゃん贔屓の混浴露天「薬研の湯」---。
 こちらの野趣たっぷりの野湯、「金井旅館」さんの管理されてるお湯なんですわ。
 僕は何度かこちらの湯を湯浴みさせていただいたことがあるんですけど、今回のイーダちゃんのお目当ても、やっぱりこちら「薬研の湯」だったんですね。
 何度入っても極上湯は屋上湯ですモン。(源泉は、天楽堂乃湯といいます)
 ですから、案内されたお部屋でくつろいで、少々身体があったまってきたら、さっそくこちらのお湯に入りたい旨を、宿のおばちゃんに伝えます。

----お客さん、「薬研の湯」はいいですけど、寒いですよ…。それに、川へ下る階段が雪まみれだから、滑ってちょっとアブナイよ…。

----いや~ 僕はまえからここのお湯のファンでしてねえ、日が暮れるまでになんとしても「薬研の湯」に入りたいんですよ…。ええ、なんとしてもね(思い入れをこめて)…。

 すると、宿のおばちゃんにも僕の熱意が伝わったのか、おばちゃん、それならばと雪歩き用の長靴とプラスティク籠とを貸与してくれました。
 「薬研の湯」には、着替処も景観を覆おう柵もな~んもないんです。
 だから、長靴とプラ籠とは、宿なりの酔狂客へのサービスだってこと。
 嬉しかったなあ---この心づくしを無にしちゃいかんでせう---長靴履いて、イーダちゃんはしっかり雪まみれの階段を下りましたとも---足まわりを一歩一歩たしかめて、それでもときどき滑り落ちそうになるから、必死こいて階段の手すりに掴まりながら(後背筋ずいぶん使ったな)…。
 で、だいたい夕の4:30頃から5時すぎまで、イーダちゃんは湯西川きっての極上湯「薬研の湯」を堪能させていただいたってわけ----








 
 もー これは、はっきりいってコトバでどーのこーのいえるレベルじゃなかったな。
 めっちゃ…(5秒ほど沈黙)よかった…。
 というか、よすぎた。
 湯西川の「薬研の湯」は、黙って噛みしめるしかないタイプの、稀有の名湯でありました。
 だって、すぐ目の前を流れているのは真冬の湯西川の清流よ---ふっと顔の向きをかえれば、目に入ってくるのは、雪化粧をした平家の里のアンテックな歴史的家並---そんでもって、川沿いの小ぶりな僕の湯船に滔々と流れこんでくるのは、源泉掛け流しの湯西川の天然湯でしょ…?
 これで染みなきゃ、そのひとってどうかしてるって。
 お湯に身体を沈めていると、温泉効果で超あったかい湯舟内身体の部分と、真冬の吹きっさらしの空気をキンキンに感じる肩より上の裸の部分とに、身体が区分けされてね。
 要するに、身体ぽかぽか、耳たぶキンキンってやつですか。
 中国の故事のいう、いわゆる「頭寒足熱」の生の体感が、もー ひたすらたまんない。
 目をつぶって、ちょっとしてまた目をあけて、そこにひんやり美しい湯西川の冬がおなじように広がっているのが、なんだかふしぎに感じられて、何度かまぶたをぱちぱちやりました---目をあけたら、ひょっとしてこの素敵すぎる光景が消えてるんじゃないかと思って。
 でも、消えてない---それは、ちゃんとそこにある。
 湯けむりと藁葺屋根の集落とが川の瀬音にあわせてゆらゆらしてる---現実が、目の玉に染みるほどきらめいて見える、夕暮れどきのこのふしぎな温泉手品。

----きて、よかったぁ…!

 と、ひとりごちて、両手ですくったお湯を顔面にぽちゃっとやれば、ああ、鼻腔に散り砕ける淡い硫黄の香り…。(ToT;>
 湯西川のお湯って透明湯なんですけど、底のほうにかすかな硫黄臭を隠しもっているんです。
 お湯自体の鮮度も凄いしね、要するにただ者じゃないお湯なわけなんです。
 僕ぁ、基本的に硫黄好きですからねえ---目をとじて、しばし恍惚として、湯西川の美しい冬と温泉とをゆるやかに堪能するしかなかったな……。


                                      


                     X          X           X

 翌朝の21日、「金井旅館」さんで朝食をいただき、雪道をてくてく歩いて「平家の里」へ行きました。
 朝イチ、10時からの入園です。
 平日のこんな時間に入園する奇特な客は僕だけかと思ったら、ひとり旅の若い女の子が僕同様入園待ちをしてられるじゃないですか。
 あまりの寒さに缶コーヒー買って両手でそれ握ってたら、グーゼン彼女もおんなじようにしてたんで、見知らぬ者同士つい顔を見あわせて「寒いですね」なんていって。
 白い息を吐きながらまわった、ひとのいない平日朝の雪の「平家の里」は素敵でした。
 ここってなにか、隠者の気配が土地自体に染みついているんじゃないのかな?
 雪景色の上を流れるBGMの平家琵琶のべんべんいう音が、もの淋しくてよかった。
 花の都暮らしから一転してこんな秘境の雪国に移ってきたんだもの---お嬢さん暮らしの上流の平家の女たちには、ここの暮らし、キツかったでせうねえ。
 いったい、どれだけの数のドラマがあったんだろう?
 この軒下から、氷の張った池を何人の女が泣いて眺めたんだろう?
 そんなことを思うともなく思いながら、小1時間ばかり散策しました。
 最後にはもちろん、こちらの氏神さまにご挨拶して---「平家の里」、とてもよろしゅうございました。


                

                

 そんな感じで、イーダちゃんの奥日光放浪の第一日目は、つつがなく終了したのであります。
 しかし、奥日光の旅・第二部は、さらなるドラマを懐中に隠しもち、イーダちゃんの訪問を待ち受けているのでありました……。(栃木篇Ⅱへ続く)