イーダちゃんの「晴れときどき瞑想」♪

美味しい人生、というのが目標。毎日を豊かにする音楽、温泉、本なぞについて、徒然なるままに語っていきたいですねえ(^^;>

徒然その239☆ グリズリーベアーと出逢ったら ♡ ☆

2016-10-14 01:17:31 | エアガン小唄



 2010年の7月---もう6年もまえのことです---秋田の後生掛温泉を訪れた際、八幡平のクマ牧場に寄ったんですよ。
 ええ、後年の2012年4月20日、クマの管理不行届きで、従業員2人が脱走グマに喰い殺され、センセーショナルな大事件になった例のあの牧場のこと。
 僕が訪れたときには、平日だったせいか、広大な駐車場の敷地に駐車したのは、僕のクルマただ1台っきりでね、
 全然流行ってる様子がなくて、入るのを躊躇したのを記憶してます。
 でも、まあせっかくきたんだし、と入場しました。
 そしたら、入場の受付にひとが誰もいなくて---
 呼び鈴を押したらしばらくして農家の装いをしたオバちゃんが慌てた様子でやってきて、にわか作りの笑顔で切符をだしてくれました。
 入場料は500円---受付をくぐると、いきなり音楽が鳴りだしまして---

----こりゃあ、まったくお客がきてる様子ないなぁ…。大丈夫かしら?

 なんて他人事ながら心配になってもきてね。
 で、場内をいくとだいたい分かるんですが、広大な牧場内に、案の定お客は僕ひとり…。
 これは、なんというか、気持ち的に腰が引けてくるものがありました。
 最初に熊の檻がふたつほどあって、そこやりすごすと、広大な熊さんたちのいるエリアが開けてました。
 5、60頭ほどの巨大な羆さんらのご一団。
 それが、ひさびさのニンゲンを見つけて、喜びの雄叫びを、あげてる。
 そこ、観覧用の道からいくと5mほど下がった、いわゆる下からはあがれない羆さんらの生活エリアになっていて、
 つまり、上には這いあがれない構造になっちゃいるんですが、僕、正直かなりビビリました。
 だって、足のすぐ下には、もう巨大な羆の大集団。
 それが皆興奮してガーガー吠えて、歩きまわったり、僕の足下の壁に飛びついたりしてる。
 ニンゲンは…見渡すかぎり僕ひとりでしょ?
 僕、「餌」としての自分を強く認識せざるをえませんでした。
 ええ、「餌」ね---長らく眠っていた野生でのランクをふいに思いだした感じ。
 ああいうシチエーションになると、原始の直観が蘇ってくるもんなんですね。
 ニンゲン社会のルールだとか価値なんて、もう一瞬で飛んじゃう。
 野性のヒエラルキーが舞いもどってくる。
 金も地位も社会的地位なんてやつも一切無関係。
 一瞬で、本能が、もう気取るわけ。

----こいつら、途轍もなく強い…。逃げろって。

 実際、足下の巨大な羆さんら、完璧に僕のこと格下に見てましたから。
 熊囲いから見上げられる観覧用通路のとこに、熊用のエサ(固パンみたいなやつ)の販売機がありまして、
 よし、じゃあ、このクマさんたちに餌でもあげるか、と僕が小銭をだすと、
 熊スペースからすかさず多数の雄叫びがあがります。

----グオーッ! グオーッ! (そうだそうだ、早くよこせ:イーダちゃん訳)

 ふりむくと、それまで興味なさげに黙ってダラーンとしてた熊さんたちまで立ちあがって吠えはじめてる。

----グオーン! (それ早くよこせ! こっちだ。俺のとこにすぐよこせ!:イーダちゃん訳)

 ざらざらした野性臭のなかに、「殺気」の香りが立のぼりはじめます。
 この「殺気」に気圧された僕は、もうさながら即席の自動餌撒きマシーンと化しておりました。
 五つ買い求めたそれのビニール梱包をあけ、次々と足下の熊さんらの求めるまま固パンを放るのみ。
 僕、以前ある関係でアシカに魚放ったこともあるんですが、そのときはアシカとの心理的交流めいたものが味わえて、それ結構愉しかったの。
 でもね、このときの熊さんとの交流は、あんま愉しくなかった。
 というより、むしろ怖かったというのが本音かな?
 だって、羆さんら、むちゃくちゃ運動神経いいんスよ。
 コントロールが外れた固パンをも、すっと身体を流して完璧口キャッチしちゃう。
 全盛期の佐山悟ばりのガタイに似合わぬその素早さがなおさら不気味。
 噛んで、飲み下して、もっとよこせとまた吠えはじめるの。
 で、自分のとこに投げられない熊さんは熊さんで、やっぱり吠えはじめるし。
 結果、羆牧場は、もう餌強要の咆哮の渦----

----グッオーン! (なぜ、オレのとこによこさない? はよよこさんかい!:イーダちゃん訳)

 てなよなわけでこのクマ牧場をあとにしたとき、イーダちゃんは神経をすり減らし、すっかり疲労困憊していたのでありました…。






 2012年の4月20日、経営難のためクマの餌を減らしていたところ、飢えに駆られた羆6頭が、当牧場より脱走しました。
 脱走を可能にしたのは、八幡平の多量の雪---こちら、あの八甲田山の麓の部分ですから、ま、世界有数の降雪地帯なわけ。
 ハンパないその降雪はクマの居住スペースにも容赦なく降りそそぎ、結果的にクマ壁になだらかな雪の坂を作っちゃった。
 で、6頭がそこから逃げ、飢えの要求するまま従業員の女性をふたり襲った。
 ひょっとして僕の会った方だったかもしれないと思うと、これ、複雑な思いです。
 飢えたクマに襲われたら、ニンゲンなんかひとたまりもないもん…。
 僕が人類最強の闘士のひとりと思っているあのダニー・ホッジにしても、若いころプロレスのギミック・ショーで体重230キロのレスリング・ベア「テディ」と闘って、

----闘ってみて、とても人間の勝てる相手じゃないっていうのがよく分かった…。

 なあんていってる---。
 ええ、あのウサイン・ボルトより速く、横綱10人分のパワーでもって必殺の爪と牙をふりまわす、最凶のプレデターがクマなんです。
 で、このクマたちを「処理」するためには、地元の猟友会のひとらがあたったそうです。
 これは正解ですよね---警察の装備程度じゃ、とてもとても猛り狂ったクマは抑えられない。
 ハンドガンはまったくの無意味、ライフルにしても対人用のライフルじゃ、とてもクマをしとめきれません。
 熊はねえ、絶えず警戒のためアタマを小刻みに動かしてるし、頭骨自体もニンゲンとは比較にならないくらい分厚く頑丈だし、しかも、脳髄の大きさはせいぜいニンゲンの拳大とくる。
 ここをピンポイントで撃ちぬかないと、即死させることはできません。
 つまり、目と目のあいだの小さなポイントを真正面から狙うしかないわけ。
 たとえ心臓を撃ちぬいても、野性のクマは心臓が破裂しないかぎりは動きつづけるんです。
 野生の鹿だって、心臓を撃ちぬかれてもその場に崩れ落ちたるするケースはむしろ少ない---ピョンピョン跳ねて、息耐えるのは、大抵遠くの藪のなかだったりね。
 まして相手は列車と正面衝突しても、何食わぬ顔して、ノシノシと歩み去っていけるミスター・タフネスの羆さんですから…。
 そのあたりの機微を読みそこなって返り討ちにあったハンターは、わんさかいます。
 手負いにしたら、即、撃ち手が危ない。
 猟友会の名手らによって射撃は慎重に行われ、6頭全部が射殺されるまでに総計6時間あまりもかかったそうです…。


                  ✖             ✖             ✖


 で、長い枕になりましたが、ここからが当記事の本論です。

----もし野性のクマと対峙したら、どうするか?

 考えるだに怖すぎる想定とは思いますが、僕、2010年の8月に北海道放浪した際に、ニセコや知床でクマの脅威をまざまざと感じたんですね。
 ニセコでは早朝に神仙沼を訪ねたんですが、時間が早いすぎたせいか、いってみたらあてにしてたほかの観光客が誰もいなくて。
 神仙沼ってとても美しい神秘の湖なんですが、あちこちにやたら「クマに注意!」みたいな立て札が立ってんの。
 実際、早朝のあのへんを藪漕ぎしてたら、ほかの動物の気配は誰だってびんびん感じられるものなんです。
 僕、藪漕ぎのとちゅうで怖くなって、熊鈴と防御用のハンマーとをとりに一端クルマにもどりました。
 事故時にフロントガラスを一撃で粉砕できる例の脱出用の特殊ハンマー---あれ、案外重いんス。
 もっとも実際に野生のクマに出会ったら、こんなもの役に立たないってことは重々承知しちゃあいましたが、手ぶらよりはいくらか心強かったんですよ。
 夜明けの神仙沼見て、帰りの下りの道でようやくやってきた観光客らと出会えて、心底ホッとしました。
 観光客らは、僕が物騒なモノを肩に担いでるんで、皆、ギョッとしてたようですが…w

 知床でも、もうクマさん、わんさか見ましたねえ---あちら、まあ世界でも有数の羆の生息地ですから、遭遇はいわば必然。
 羅臼の道の駅では策の向こうの山の先に黒い点が動いてて、みんながクマだクマだと騒いでましたし、
 知床五湖にある電気網に守られたクマ散策路から見れる野生のクマらの佇まいは、非常にしなやかなものでした。
 知床五湖からカムイワッカの滝に向かう専用バスの車窓からも、クマの姿はやはり見られたし、
 ウトロ港発のオーロラ号からの海路から眺められる知床岬は、もうあちらもこちらもうじゃうじゃとクマだらけ…。

 都会にいるとまったく実感できませんが、わが祖国ジャパンは、実は、世界でも有数のクマ生息国だったのですよ。
 それが知識じゃなく肌感でもって実感できました。
 しかし---それはあくまで羆という種の話---たとえばカナダやアラスカには、この羆よりさらに大型の、ハイイログマという種がいるのです。
 身長3m、体重600キロを超える怪物が、あたりまえに存在闊歩してる土地が、世界にはあまたあるのです。
 このことを、ねえ、貴方どう思います----?

 




 僕はもう考えるだに怖いなあ…。
 当記事冒頭にUPした怪物をよくご覧ください---膝頭が自然と震えてきませんか?
 このグリズリーベアーの隣りに立ってる親父さん、180センチあるんスよ。
 もうニンゲン風情が対抗できる種じゃないなんてことは、この写真を見ただけで誰もが感知可能な事実かと思います。
 この地で暮らすならライフル所持は、必須です。
 実際、ライフルを撃てないと、不動産屋が部屋を貸してくれないの。
 もちろん対人用のM16アサトライフルなんかじゃダメダメよ----わるいけど、あれじゃあ、イノシシ猟もやれません。
 かの地で携帯するならば、最低.30-06クラス----いえ、このクラスですら、ときとしてレディースライフルと揶揄されるのですから。
 ええ、かの地で要求されるのは、最強の銃弾マグナム300を発射できるレミントンM700かウインチェスターM70----それが、かの地でのスタンダードな選択なのです。
 ハイイログマ、グリズリーというのがいかにしぶとくて狡猾な動物なのか----その種の逸話は山ほどあります。
 
----米軍制式ガンのベレッタの9ミリオートあるよな? あれを至近距離から全弾撃ちこんでも、グリズリーベアーの前進はとまらない。それにアンタ、至近距離に迫ってくるアイツにむかってダブルタップしたって何発撃てると思う? 口の中に1ダース撃ちこんでも奴は即死なんかしちゃくれない。しかも、そのあいだ奴はとまっていない。動いてるんだ。オレのいう意味分かるだろ? 近代のセミオート・ピストルなんて、ここじゃあなんの役にも立たない玩具みたいなもんなのさ。ここで暮らすなら、300クラスのマグナム・ライフルとサイドアームの44マグナムは絶対要るね。357じゃダメだ。ここアラスカで長年ベストセラーの座を守りつづけているサイドアームを教えてやろうか? ここじゃあ誰もが携帯してる、どのガイドもみんな保持してる。それは、ルガーのスーパー・ブラックホーク44マグナムさ…。

 というわけで、ようやくのことGUNの紹介です---スタームルガー社のスーパー・ブラックホーク44マグナム---まずはその雄姿をご覧あれ---!




 うほほ、ごっついな、アンタ----!
 ルガーのブラックホーク44マグナムは、いわずと知れたあの往年のアクション漫画「ドーベルマン刑事(デカ)」で有名になったハンドガンです。
 当時はこれ、S&Wの44マグナムM29---「ダーティーハリー」で一挙にブレイクした例のやつっス---と並んで、世界最強の GUN と呼ばれたりもしてたんです。
 コルト・ピースメーカー、いわゆる「ピーメ」と同型の、もう見るからに郷愁の濃い香りがぷんぷん漂うシングルアクション・リボルバー。
 写真にUPしたのは、安全のためのトランスファーバーが機構に組みこまれた、73年以降の後期型の「ニュースーパー・ブラックホーク」のほうですね---。
 おまけに、オール・ステンレス製---ここ、ポイント高いっス---普通のオートなんかじゃ、それこそ過酷な環境にやられて、それこそあっというまに錆び錆びの作動不能になっちゃうアラスカの地---そんな環境下であってもあくまでタフに機能しつづけられる稀有な銃---モダンで近代的な瀟洒な香り、爛熟文化の移り香なんかには欠けてるかもしれないけど、「タフネス」「パワー」「信頼性」の3点において、この GUN に匹敵しうるハンドガンはちょっとありません---これぞ、まさに対モンスター・グリズリーのために製造されたような究極GUN ではないですか!
 むろん、市街戦でブラックホークを使おうとは僕にしたって思いやしません----
 ワンマガジンで20連発近くファイアーパワーのあるグロックやシグなんかの最新鋭のセミオートと比べたら、旧式然とした6連発リボルバーのブラックホークは、いかにも分がわるい。
 弾の詰替えだけでも30秒はかかるしね---いくら威力があっても、このタイムロスはヤバすぎでしょ?
 複数が相手だったら、もうやるまえから結果が見えてる感じじゃないですか。
 つまるとこ、いわゆる市街地向きの GUN じゃないんですよ、このブラックホークは。
 けれども、ことアラスカの広大な荒野においては、この評価は完璧に逆転します。
 9ミリのセミオートをつづけざまに全弾撃ちこんだところで---たぶん、グリズリーベアーの突進は止まらない…。
 そのあたりのニンゲンVSグリズリーベアーのリアルな闘争を見事に表現した文章を、ここに少しばかり引用してみませうか。 

----その刹那、灌木の茂みからブラウンベアーが飛び出しハンター氏に飛び掛った。ウエザビーが火を噴く…はずだった! 
 ところがライフルを叩き落され、ストックがグリップの所から真っ二つに叩き折られた。
 ガイドと私はナイフを捨てそれぞれのサイドアームをホルスターから引き抜いた。 
 ブラウンベアーはハンター氏を弾き飛ばし、二人のほうへ低い姿勢で突進してきた。
 距離は15フィート。真正面なので横腹は撃てない。
 ワンハンドの抜き撃ち。ガイドはシングルアクション、私はダブルアクション。
 彼は1発、私は2発撃った。
 ブラウンベアーは正面から3発の240グレイン弾を受けけた。それにもかかわらず勢いは止らない。
 更に彼はもう1発、私は更に発撃ち込んだ。
 さすがに6発のソフトポイントとホローポイント弾の混合弾を身体に受けたブラウンベアーは転倒した。
 ガイドは傍らに立てかけてあったライフルを取り、.375SH&Hマグナムのグレイン弾で止めの1発を横腹に撃ち込んだ。
 合計7発のマグナム弾をくらってやっと動かなくなった。
 このベアーもスキニングと解体をしてみると、2発は脳天に当っていた。
 だが、いずれの弾も頭骨は貫通せず、くぼみが出来ただけで横に跳弾となっていた。
 ビッグゲームでは、正面から攻撃された場合、ファイヤーパワーを全開にすることだ…。
                                                        (ウッデイコバヤシ「野性との対峙」GUN.2014.2月号より)

 うーむ、凄すぎる…!
 至近距離から撃たれた44マグナムを2発とも跳ねかえす、戦車の装甲板みたいな頭骨なんて…。
 まさに野生の戦車じゃないですか、こいつは----。
 僕は平和主義者でして、いかなる殺生にも反対の立場取りしたいタイプのニンゲンなんですが、体内に流れる「オトコ」の血のせいか、この種の話にはどうしても魅きつけられてしまう。
 うん、抵抗できない、興味よりなにより血が騒ぐんですわ。
 このブラックホークは、たしかマルシンさんあたりがグスガン化してたはず。
 マルシンさんは贔屓じゃないんで、そのブラックホークの出来はよく分からないんですが、
 こんなの書いてたぎった僕内の野性の血は、なんだかまだ収まりそうにない…。
 夜もようよう更けました---今夜のとこは枕辺に対ハイイログマ用の空想のブラックホークでも1丁置いて、そろそろ休むことにしませうか?---アラスカはいま氷点下20度とのこと、夜風は幸いのこと今夜は凪いでます---では、そろそろ…(あくびしながら)お休みなさい……。(-o-)zzz


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徒然その165☆S&W M19コンバットマグナムとM36チーフスペシャル☆

2014-02-23 01:57:34 | エアガン小唄
            


 僕が個人的にいちばん美しいなって思うGUNは、ワルサーとパイソンなんですよ。
 1938年にドイツの制式銃となったワルサーP-38とコルト・パイソン。
 映画やドラマなんかにもよく取りあげられる、どっちとも非常に有名なGUNであります。
 拳銃なんかにまったく関心のないひとでも知ってるくらいの、これらの名銃---ワルサーのほうは、アニメの「ルパン三世」で主人公ルパンの愛銃として取りあげられたし、それ以前から世界一の名銃なんて世評が高かった。
 実際、いま出回ってる有名なGUNは、ほとんどこのワルサーのメカをパクってるみたいなものなんですよ。
 米軍制式のベレッタM92Fなんて、僕ぁ、アレ、まるごとワルサーのコピー銃じゃないかと思うんだけど。
 だって、ダブルアクション機能、セフティのデコッキングバー、9㎜パラベレム弾の使用…。
 ねっ、何から何まで瓜二つのそっくりさんじゃないですか。
 そりゃあ、1975年生まれのベレッタは、1938年生まれのワルサーにはない、最新式の機能をいくつか備えちゃいます。
 たとえば、精度---ベレッタの命中精度には、それは凄いモノがあるんだそう。(ベレッタM92は、ショートリコイルにワルサー譲りのプロップアップ方式を採用していて、そのせいで他のブローニング系のティルトバレルのモノより格段にいい命中精度を実現しているそうです)
 あと、FNブローニング・ハイパワーの複列マガジンを進化させた、15連発の多弾数収納マガジン。
 もーさー、マガジンのデザインを少々変えて、バレルの先をむきむききしさえすれば、アレ、そのままワルサーちゃんじゃないの? とまあイーダちゃんはいいたいわけよ。
 GUNの世界では、オリジナルティーを尊ぶって風潮がないのかしら?
 僕は、ひと殺しの道具としてのベレッタの優位性は渋々認めるけど、ひとつの作品としての完成度という見地からあえていわせてもらうなら、圧倒的なワルサー擁護派ですねえ。
 ワルサーP-38は、ほんっと、美しい。
 しかも、当時のワルサーの技術者たちは、美しい銃を作ろうなんてカケラも思っちゃいなかったんですよ。
 ルガーP-08のあとを継げるだけの優れた銃を作ろうと試行錯誤した結果、ああいった独創的な風貌のGUNがたまたま生まれちゃったのであって。
 いってみれば、製作途中の苦労はそれなりにあったろうけど、生まれるべくして生まれた、安産GUNだってとこ。
 「美」は、あくまで偶然の付随物なわけ。
 これって、完璧に「美」についての諸条件を満たしてるんですよね、実をいうと。
 無頼派の作家・坂口安吾はこういってます、

----この三つのものが、なぜ、かくも美しいか。ここには、美しくするために加工した美しさが、いっさいない。美というものの立場から付け加えた一本の柱も鋼鉄もない。ただ必要なもののみが、必要な場所に置かれた。そうして、不要なる物はすべて除かれ、必要のみが要求する独自の形ができ上がっているのである。それは、それ自身に似るよりほかには、他の何物にも似ていない形である。必要によって柱は遠慮なく歪められ、鋼鉄はデコボコに張りめぐらされ、レールは突然頭上から飛び出してくる。すべては、ただ、必要ということだ。そのほかどのような旧来の観念も、この必要のやむべからざる生成を阻む力とは成りえなかった。そうして、ここに、何物にも似ない三つのものができ上がったのである。
 僕の仕事である文学が、全く、それと同じことだ。美しく見せるための一行があってもならぬ。美は、特に美を意識してなされたところからは生まれてこない…。(坂口安吾「日本文化私論」より抜粋)

 ベレッタM92Fはちがいます。
 僕は、あの容姿には、明らかに広告代理店の視点が入ってると思う。
 アレは、明らかに技術陣と経営陣が、観客の眼をすべからく意識して---観客っていうのは制式銃を決める米軍だとか、ほかの政府関連組織とかの意味あいです---いわゆるウケ狙いのデザインをあらかじめ練っていたフシがあります。
 機構はワルサー、マガジンはハイパワー、容姿は○○とベレッタの伝統形式をうまくフュージョンさせて---なんて鼻歌まじりに夜毎化粧の乗りを計算して盛っている、どこぞの場末のキャバ嬢のような、安っぽい、絡め手の計略臭がしてくるの。
 だから、見た目の「カッコよさ」はまあそれなりに備えてはいるものの、観客の眼を意識した、その練りまくった損得勘定のあざとい気配、あるいは計算及び策略のそこはかとない悪臭が、GUN自体の美しさを結果として非常に貶めている、と僕は感じるのです。
 ですから、このGUNを美しいと思ったことが、僕はいままでに一度もありません。
 ベレッタM92Fは、なるほど、一見モダンでスマートな風貌をしてるかもしれない。
 でも、美しくはない---。
 あれを美銃と呼ぶことはできない、というのが、うん、いまも昔も変わらぬイーダちゃんの立場です---。

 ただ、コルト・パイソン357マグナムに関していうと、この種の説明はちと難しくなってきますね。
 僕は、パイソンは、もうむかしっから大好きでした。
 だって、言語道断にカッコいいんだもン---。 
 リボルバーのロールスロイスとときおり呼称されることもある、コルト・パイソンの美しさには、ちょっとばかし抗いがたいものがある。
 特にお気に入りだったのは、銃身が3インチのスナブノーズの「コンバット・パイソン」です。
 ついこないだまでオートにしか興味のなかった僕にしても、パイソンというのはどうにも気になる存在でした。
 ところが去年の師走、たまたま購入したタナカさんのコルト・ディテクティブ・スペシャルのおかげでふいにリボルバーの魅力に開眼したイーダちゃんは---このへんの詳細は、徒然153☆コルト・ディテクティブ・スペシャルに花束を☆に記してありますので、気になる奇特なお方は参照あれ!---ディテクティブにつづく2丁目のリボルバーとして、当然パイソンの3インチ購入も視野に入れておりました。
 けれども、ちょっと旅行にいっちゃったりしてあんまお金がなかったんで、やむなく(ホント、やむなくのつもりでした)同じタナカさんのスミス&ウェッソンのM36 チーフスペシャルを購入してみたんです。
 僕、実をいいますと、S&Wはずっと苦手な口でして…。
 ですから、今年の1月に購入したチーフスペシャルも、その種のアレルギーへの自分なりの対処薬みたいなつもりでいたんです。

----まあ、リボリバーの魅力も分かってきたんだし、今度は、苦手のS&Wもちょっと手に入れていじってみるか…。

 でもね、そんな不届きな理由で購入したチーフスペシャルが、予想外によかったんだ、これが。
 もともとタナカさんは好きだったんですけど、僕の思惑をはるかに超えて、タナカさんのチーフスペシャルは素晴らしかった。
 カタチとしては、いまでもコルト・ディテクティブ・スペシャル(僕の所有のDSも当然タナカ製)のほうが好きなんです。
 参考例として、ちょいとこの2丁をここにならべて見てみませうか----


     

 銃のプロポーションの見地からいうと、僕は、いまでもディテクティブ・スペシャルのほうに惹かれます。
 だって、どうです、このコルトのGUNの曲線と直線との見事な配合は?
 グリップのほどよい張りだし加減と、全体的に武骨でいながら、どこにおいても微妙な洒落気と遊び心があるこの感じ。
 対して、S&Wのチーフのほうは、完璧機能的な目的に沿ったデザインとなっています。

----携帯しやすいGUNとして、いかにGUNを軽く、薄くするか。

 すべてのデザインが、この支柱にむけて設計されていて。
 従って、コルトより乾いた、含みや遊びの少ない容貌となっている---グリップのでっぱりはもっとでっぱりたいのを無理やり短めにギュッと抑えた感じだし、ディテクティブに見られる「余裕」めいた佇まいがどこにも見られない。
 なんとなく、目的のために息を詰めて、身体を小さく縮こまらせた形態が、そのままGUNの容姿となって結実したような窮屈な印象です。
 でもね、実際にガス入れて、試し撃ちしてみたら、僕のなかの旧S&W観は瞬時に変貌しちゃった。

----なに、この撃ちやすさ? ぜんぜんガク引きしない。なんなんだ、このやたらスムーズなアクションは…! 

 もう、感激!---ものごっつう撃ちやすいったら---リボルバーとして、ほぼ完璧で理想的なトリガーアクションが、そこにありました。


        

 ちょっと夢中になっちゃって、いろんな距離のさまざまなものを撃ってみました。
 チーフのシリンダーは5連発で、6連発のディテクティブよりちょっと小さく、そのせいでシリンダー内にすべてのシステムを押しつめる画期的なペガサス・システムにしても、ガス容量の点でどうしても若干むりが生じてしまい、放たれるBB弾の勢いはオートにはとても及ばず、山なりの軌道を描く場合が多いのですが、それでも5発に1発くらいは、7mさきの5㎝四方の的に確実に着弾します。 
 精度において劣りまくりのスナブノーズで、この着弾率!
 ホップアップ機能を少々いじくると、着弾率はさらに跳ねあがりました。
 調べてみると、チーフをはじめとするS&W系GUNのダブルアクションは、テコが2重になっているそうです。
 トリガーアクションの軽さは、それに由来します。
 ハンマー落ちの直前にグッと粘るコルトの鈍いアクションに比べると、もー ダンチに引きやすい。
 軽くて引きやすいから、発射時にマズルがぶれない。
 したがって的に当たりやすい、とこーなるわけ。
 これには、正直、まいったね…。

 ちなみにイーダちゃんには、実銃を撃った経験はありません。
 だから、実銃のチーフとディテクティブが、このタナカ製のものとおんなじアクションなのかどうかは分からない。
 ただ、実銃のチーフとディテクティブをともに発砲した経験のある方にいわせると、このタナカさんのアクションは、感触も動作も実銃にとてもよく似ていて、金属部の触れあい動く響きをのぞいたら、ほとんど実銃そのままだと思っていい、そのくらいタナカのアクションってよくできているよ、とのこと。 
 GUN関連のほかの記事を読んでも、この種の意見は5、6件見つけられたので、この記事においては、僕は、そちら側の視点を信頼して書かしてもらうことにしませう。
 ただし、S&W系支持のこれらの方をコトバを信頼すると、今度はそれと逆の困った点が起きてくる。
 というのは、S&Wを支持するこれらの方、どういうわけか皆、僕の好きなパイソンをそろって批判しはじめるではありませんか。

----パイソンは駄目だ。アクションが古く、そのせいで当たらない。シングルアクションならバレルの精度のよさもあってよく当たるけど、ダブルアクションで撃つとなると、着弾が途端にブレはじめる。だから、GUNのコンベティションでパイソンを使う奴は誰もいないんだ。外装はいちばん丁寧に美しく仕上がっちゃいるけど、コンバット・シューティングのGUNとしちゃあ落第で、製造中止になるのも当然さ。おなじリボルバーなら、格段にS&W系のが性能が上だし、優れているね…。

 なんというトホホンな意見…。
 へへん、と無視できりゃいいけど、この手の意見、あまりに数が多すぎるんでありまして。
 ネット上でいうなら、たとえば---

 ☆キャプテン中井の「コルト・パイソン」の伝説

 なんていうのが代表的なものでせうか。
 これは、いいよ---この著者さん、プロのシューターだし、忌憚のない現場の意見を、科学的データにもとずいてバシバシいってくれる。
 彼にいわせると、パイソンの精度は、あくまでシングルアクションで撃った場合限定だとのこと。
 ダブルアクションで撃った場合---特にそれが20m超えのターゲットの場合、パイソンの精度はほとんど信頼できないんだそうな。
 うーむ、これは困ったちゃんだなあ。
 けれど、同種の意見は結構あるもんで、月刊GUN(国際出版株式会社)の93年6月号の、

 ☆ULTIMAT PYTHON パワー・アップされたニュー・タイプ by/Jack

 なんて読むと、もうパイソンは、けちょんけちょん。

----さて、全コースを戦ってきたパイソンだが、他のものよりカッコーよく、値段が2倍だが、精度もパワーもスピードも他のもの以上ではないという事だ。やはり、“伊達男、金と力はなかりけり”がパイソンのようだ。外面だけはピカピカだが、中身がタリンのだ…。(Jack氏)

 プロの方々にこうまでいわれると、やっぱり、ある程度考えちゃいますよね?
 そういえば、名著「拳銃王(全47モデル射撃マニュアル)/光人社NF文庫」の著者である小峰隆生氏も、たしかパイソン射撃の際にはなかなか当たらなくて苦労されてたんじゃなかったっけ?

----気分転換のために、射撃場の近くの空き地で空き瓶を撃つ事になった。マグナム弾の威力を目で確かめようと思ったからだ。二リットルのコーラのポリ瓶を用意する。角材の上に置く。五メートルの距離から、プローンで狙う。俺はパイソンを構えるとDAでポリ瓶を狙った。パイソンはまた、予期せぬ位置で吠えた。銃身を平行の位置に戻すと、コーラのポリ瓶は何もなかったように、無傷で立っていた。俺はなーんのために練習していたのでしょうか? ポリ瓶は威張っているように見えた…。(小峰隆生「拳銃王」より)

 この小峰氏、このパイソンの記事とほぼ同時期に、S&WのM65とM681も撃ってるんですけど、こっちは遠距離でもわりとポコポコよく当たってるのよ。
 パイソンだけが当たってない。
 というか、思い入れと練習の甲斐もあって、この小峰氏もとうとうパイソンをモノにできるようになるんだけど、パイソン独自のアクションを自在に扱えるようになるまでになんと10年かかってるんです。
 は? 10年ってどーよ?
 それじゃ、はっきりいって、まったく使えない銃だってことと同義じゃない。
 そんなこんなの前情報もあって、僕、迷った末にパイソンの3インチGUNをあきらめて、S&WのM19コンバットマグナム(タナカ製)を今月購入することにしたんです。
 そしたらねえ、これが、素晴らしかった…。

            
            

 まず、やられたのは重量感。
 店頭で手に取ったら、ずっしり重いのよ。
 さっすが、軽量小型が売りの5連発のチーフとはちがってる。
 しかも、大きさも手ごろな190㎜---これ以上でかいと、やっぱ、携帯には不向きでしょ。
 タイプ的にはチーフとおなじスナブノーズなんだけど、銃自体のフレームは、あれより1サイズ大型のKフレーム。
 特に、マズル近辺が357マグナム仕様にもっちりとぶ厚くなってるのがミソ。
 ただ、S&WのKフレームっていうのは、本来のマグナム仕様じゃないんですよ。
 本来のマグナム仕様は、Kフレームよりひとつ上のLフレームなの。
 けど、持てば分かるんだけど、Lフレームっていうのはいかにも大型にゴツすぎて、こんなんで日本の公道が走れるかって感じの佇まいなわけ。
 でかいもの好きのアメリカンも、たぶん、おんなじように感じたんでせうな。
 で、1957年に開発されたのが、この携帯可能でマグナムも撃てる、KフレームのこのM19だったの。
 一応、名銃と呼ばれている、殿堂入りの1丁なんであって。
 ちょっと手にしていじってみた第一印象は、とにかくバランシー。
 握りやすく、狙いもつけやすく、かつトリガーも引きやすい---。
 トリガーブルの滑らかさは、S&Wの場合特に大事なポイントなんで、これは何度も書かなければ…。
 そのくらい引きやすいトリガーです、これ。
 コルトの場合、トリガーはハンマーが落ちる最後の瞬間まで、ずっと重いままなんですよ。
 しかも、いつハンマーが落ちるかの綾が、シューター側にはあんま分からないんで、つい虚をつかれてガク引きになり、狙いを外しちゃうってケースが多いんです。
 ところがS&Wのトリガーアクションはほんとよくできてて、トリガーを引くと、引き代の半分くらいで「チッ」て微かな響きがフレーム内から聴こえてくるの。
 で、それが聴こえたら、トリガーはがぜん軽くなる。(2重テコメカの効果です、これ)
 でもって発射!---ただ、直前に「チッ」の予告があるから、シューターがそれを知って、銃に身をまかせていさえすれば、マズルはぶれない---従って、ターゲットにより命中させやすいわけ。
 コンバット・シューティングは0.1秒で生と死が交錯する世界ですからね。
 パイソンは美しいといまも僕は思っています---しかし、ダブルアクションの連発で、マズルがぶれまくるんなら、僕ぁ、そんな銃はいらないなあ、どうしたって。
 そのような事情で選んだS&WのM19です---エジェクターロッドを覆ったマズル下のシュラウドがグー。
 フロントサイトのポイントになってる赤ポッチがグー。
 ごっついマズルと華奢でスマートなFフレームとの対比もグー。
 うーむ、どうにもいいGUNじゃないですか…。

      ◆S&WコンバットマグナムM19 2.5インチHW(タナカ)
     全長:190㎜
     全高:134㎜
     全幅:34㎜
     重量:560g
     初速:65.9m/s 

 M19のデーター、列挙してみました。
 お。いい忘れてたけど、僕的には、このGUN、サービスタイプのグリップが仕様されてるってとこが、これまた気に入ってる点でもあるんですね。
 あのマズル部のゴツさに反比例したグリップ部の華奢さが、なんともそそるんです、コイツってば。
 もっとも、実際にこれでファルコンの357マグナムなんて撃ったら、反動、超・凄いんだろうけど。
 古残の愛銃のワルサーとならべてみると、このM19の独自の魅力、やっぱり引きたちますねえ。
 スマートでスタイリッシュであり、同時に獰猛である---というこのM19のふしぎな魅力---。
 ちなみに、このGUN、アニメ「ルパン三世」の登場人物・次元大介氏の愛銃でもあります。
 さっすが名ガンマンの次元サン、銃を見る目は伊達じゃないようで---。
 かような諸事情でもって、S&WのM19モデルは、ワルサーP-38に次ぐ、イーダちゃんのお気に入りナンバー2のGUNとなっているのでありました…。(^o^;>
(fin)


         


PS.前々記事、徒然その163☆コルト・ディテクティブ・スペシャルに花束を☆のなかで、僕は、パイソンをアメリカ野牛のパイソンとして書きましたが、アレ、間違い。パイソンは毒蛇だそうです。m(_ _)m
         
           


           
 
        
 


 

徒然その163☆ コルト・ディテクティブ・スペシャルに花束を ☆

2014-01-20 03:10:49 | エアガン小唄
           


 あけおめ!
 去年、いろいろと精力的に動きすぎた反動で、いま現在ヒッキー中のイーダちゃんです。
 どうです、皆さんは、それぞれにいいお正月をすごされましたか?
 僕あ、いまのところヒッキー中なので、あんまり動いちゃおりません。
 ただ、そのことに関しちゃあ、悲観してないな。
 というか逆に、降ってわいたような、この久々の怠けヴァケーションを、結構楽しんじゃってます。
 ヒッキー周期になると、Classic音楽にハマるか、温泉を巡るか、エアガンに凝るかの三択が、だいたいにおいて僕の生活パターンなんですが、今正月はたまたまエアガンにハマってるってわけ。
 しかも、ハマってるのは、とっても古い銃---いままで歯牙にもかけてこなかったリボルバー系の、なんとスナブノーズ属である、あのコルト・ディテクティブ・スペシャルの380ってんですから、こりゃまた自分でもビックリだ。
 なんでまた、スナブノーズなのか?
 ここで銃の知識のない方のためにひとつ付けくわえておきますと、スナブノーズ---注:この言葉の意味は獅子鼻、もしくは猪鼻、短い鼻を意味する俗語だそうです---っていうのは、50年代から80年代あたりまで、おもに米国の警察や探偵のあいだで使われていた、携帯しやすいように銃身をあえて短くした、小型で軽量の回転式拳銃なんです。
 この手のリボルバー(回転式拳銃)の利点っていえば、なにより頑丈で壊れにくいところ。
 精密なルガー・タイプのオートマチック(自動式)なんかじゃ、砂漠にいったらたちまち銃じゃなくて、ただの無能な金槌になっちゃうところなんだけど---オートは構造上砂塵に弱いのデス---頑丈なリボルバーだとそんなことはない。
 砂漠でもじゅうぶん武器として機能できる。
 そんなタフなリボルバーの泣きどころは、構造上、連発がせいぜい5、6発しかできないところ。
 5、6発撃てればじゅうぶんじゃないか、と僕なんかは思うんだけど、最近の向こうさんの犯罪事情は凄まじいモノがあるようで、犯罪者連中が最新の15~17連発のGUNをどうも当たり前のように携帯してるんだそうな。
 これじゃあ、取り締まる側の分がいくらなんでも悪すぎる。
 というわけで、いまじゃアメリカのポリスもみーんな17連発の実戦的な最新のグロックで武装してて、スナブノーズなんてほとんど博物館行きの過去の銃だって風に区分けされつつあるってことぐらい、僕だってそりゃあ分かっています。
 自分的にも、どーしていまさら白亜紀風味のスナブノーズに惹かれるのか、とんと分かんない。
 でもね、ハマっちゃったんだよなあ、これが…。

 去年の師走の末に、たまたま寄ったエチゴヤ横浜店で、つい衝動買いしちゃったんですけど、このディテクティブの380、もって帰ってきて、箱あけて、握ってみると、なんというか実にいいんですよ。
 僕は60年代の生まれなんで、少年時代に観た同時代の映画は、やっぱりニューシネマ系が多かったんですね。
 で、いささかアンチックなこのGUNのグリップをぐいと握って、かのGUNの重みを掌に感じつつ、そのスナブノーズの美しい肢体を眺めるともなく眺めてみると、過ぎ去った70年代の時代の芳しい香りが、トリガーガードのあたりから「ふうわり」とこっちに舞いあがってきたんです。
 たとえばそれは、スティーブ・マックイーンが主演した、68年のアメリカ映画の名作「ブリット」のラストの空港でのコルト・コブラ(ディテクティブ・スペシャルの軽量型拳銃)の発砲シーンだったり---あるいは、71年の米画「フレンチ・コネクション」のなかで、無骨なジーン・ハックマンのでっかな右手にしっかりと握られていた、コルト・ディテクティブ・スペシャルの記憶内映像だったりします。
 僕は、とりたててアメリカン・アクション映画が好きってわけじゃない。
 どっちかというと、そっちの方向性とは逆のベクトルの映画にばかりこだわりつづけてきた男です---エリセの「ミツバチのささやき」だとか、フェリーニの「道化師」だとか、ノルシュタインの「話の話」だとか……。
 映画の本筋はそっち側にあり、というのがまえからの持論だし、いまでもおんなじように思ってます。
 ですけど、男として生まれてきた以上、やっぱりとびきりのアクション映画なんかは、どうにも無視できない細胞内の事情があるわけでして。
 そんなわけでゆさぶられちゃったんだなあ、古くからのガンマニアの本能的な血脈を。
 それまでは僕、実をいうとリボルバーは嫌いだったんですよ。
 でもね、実際にタナカさんのコルト・ディテクテイブ・スペシャル(ヘビーウェイト)をこうして所有してみると、そのあまりの機能美に思いもかけずクラクラきゃったんですよ、はい。
 うん、機能美というのが正しいな。
 オートにはない、なんともいえないこの硬派で艶美な曲線美に、イーダちゃんの視線はじわじわと吸いこまれていきました。

----う、美しい…(ため息)…。

 シンプル極まりない回転式の弾倉、その表面に刻まれた六つのフルートの愛らしい窪み、そうして、チーフスペシャルみたいに小さすぎず、もうちょっと大ぶりに、射手にむかってやや張りだして作られている、キュートなヒップみたいなグリップ。
 それらに加えて、あまりにも特徴的な、携帯のため2インチまで短く切りつめられた、あのスナブノーズの銃身。
 僕は、S&W系の大型リボルバーはいまも苦手でありまして、手を出そうという気にはなかなかなれないんですけど、このディテクティブ・スペシャルに関してはもう例外、完璧に趣旨替えしましたね。
 たまんないですよ、リボルバーってやっぱりGUNという道具の原点なのだ、と思い知らされた感じです。
 ただね、握ってみると、このGUN、思っていたよりかなり大きかったんですよ。
 そうっスね、例としてちょっと手持ちのワルサーと並べてみませうか----


          

 ねっ、案外でっかいもんでせう?
 スナブノーズの拳銃って刑事や探偵の携帯用だから、僕は、軍用のP-38なんかに比べるとはるかに小さいんじゃないか、とまあ先入観みたいなモノをもっていたんですが、その先入観は見事に裏切られました。
 ディテクティブ・スペシャルは、結構でかかった。
 数値にしてみると、こーなります。 
     
   コルト・ディテクティブスペシャル
●ダブルアクションリボルバー
●弾丸:38スペシャル
●全長:178mm
●全高:118mm
●重量:660g
●装弾数:6発

 対するワルサーのデータは以下の通りです----

   ワルサーP-38
●セミオートピストル
●弾丸:9mm×19パラベレム
●全長:216mm
●全高:138mm
●重量:1000g
●装弾数:8発

 いくら小型の携帯用だからといってもリボルバーはあくまでリボルバー、回転式の弾倉が嵩張るせいで、やっぱりオートと比べるといくらかでっかめにできてるんですねえ。
 参照までに、イタリアのGUN・ベレッタM1934(380ACP)と一緒に撮ったフォトも1枚挙げておきませう。
 オートがいかに小さくコンパクトになりうるかという、これは、適例じゃないか、と思います。


         

 S&Wのチーフスペシャルなんかだと、ディテクティブよりさらに小型にまとまってるんです---ただし、その分装弾数は削られて、チーフの装弾数は5発がやっとです---が、それにしてもオートのあの薄さにはちょっとかなわない。
 そのへん、やっぱりリボルバーという機構の限界を感じざるを得ません。
 しかし、まあ、機構がいわば剥きだしになったこのリボルバーってタイプのガン、いままで気づきませんでしたが、なんというかなかなか魅力的じゃないですか。
 僕は好みでいうなら完璧オート派なんですが、もし護身のために銃を一丁選べといわれたら、たぶんリボルバーを選択するんじゃないかと思います。
 なにしろこのリボルバーってやつ、あまり維持に手間がかからない上---オートに不可欠なあの面倒な分解清掃が要らないんですよ、なんと!---ほとんど引き出しのなかなどに放りっぱにしてても、いざというときにはちゃんと機能してくれるっていうスグレモノなんスから。
 頑健。
 砂埃もなんのその。
 さらには、不発も怖くないし、ジャムる恐れもとほとんどないときた。
 これは、機械として優秀ですよ、どう考えたって。
 僕は以前クルマでLA近郊のオークランドの閑散とした田舎道をドライヴしたことがあるんですけど、そのときに感じたのは、

----わあ、こんなに家々が離ればなれの超・田舎に住んでいたら、ポリスなんて到底頼れないゾ…。自分で自衛しなくちゃ、うん、銃が欲しいよなあ、ガンが2丁に、あとライフルが1丁ばかしいるかなあ…?

 あんなに広大なアメリカの大自然のなかにいて、こんなことを考えるのは不謹慎かもしれませんが、皮膚感覚としてそう感じちゃったのはどうしようもないホント。
 あとになって、アメリカの田舎を旅してきたほかの知人と話したとき、彼、拳銃になんかまるで関心のないまっとうなオトコだったんですが、その彼にしてもやっぱり僕同様銃が欲しいと旅のあいだずっと感じていたそうです。
 してみると、僕等がそろって銃を欲しがったりした心情は、きっと僕等始発のものじゃない、アメリカのあの広大すぎる大自然のほうに、僕等・旅人の不安と孤独感を際立てるなんらかの要因が潜んでいた、と考えたほうがよさそうです。
 うん、僕の短い旅なんかじゃ到底結論づけるなんてムリなんですけど、あのあんまり広大すぎる大自然に対峙しているあいだじゅう、僕がふだんよりずっと「淋しさ」ってモノを意識していた、というのは事実です。
 古い西部劇なんかのなかで、旅のカウボーイが旅のとちゅう、夜の砂漠の一角で焚火しながらひとりで野宿して、毛布にくるまれて眠る間際に、何気にガンベルトのピースメーカーに触れてみる、なんてシーンがふっと思いだされもするんですが、あの心理、ものすごくアメリカ的だと僕は思うなあ。
 超・広大なアメリカ大陸のまんなかにぽつんといると、ニンゲン、なんだか無性に淋しくなってきちゃうんですねえ。
 自分って存在があまりにもちっぽけで、はかないものとして感じられてくるの。
 淋しいはコワイ。
 コワイはひとり。
 で、ひとりの淋しさから逃れようと、おもむろに手元の愛銃に手を伸ばして、なんとなくその鋼鉄のボディに触れてみる。
 アメリカであれだけS&Wやコルトのリボルバーが興隆を極めた理由ってのは、そこらへんにあるんじゃないか、とイーダちゃんは何気に思います。
 焚火が消えかけの肌寒い夜明けまえ、広大な砂漠の片隅でふと心細くなったとき、つい触れたくなるのは、絶対にリボルバーですよ。
 ワルサーやグロックがいくら高性能な名銃だからって、オートじゃダメ。
 ベレッタM92Fも、エリートのファイブセブンも失格、気取り屋のCzなんかじゃなおさらいけない。
 オートってたしかに機能的かつ合理的な完成されたメカですけど、こと人肌って見地から観ると、やっぱりどこかデジタル風味っていうか、佇まいからしてお洒落に決まりすぎてて、ちっとばかし薄情です。
 僕は、リボルバーっていうのは、バーボンやコーンスープなんかと一緒で、アメリカの「情」---いわゆるお袋の味みたいなもの?---を体現しちゃってる存在だと思う。
 だから、世界中のポリスが制式銃をオートに変えちゃっても、世界中の軍隊からすべてのリボルバー属が一掃されても、アメリカはリボルバーを手放さないんです。
 リボルバーって特別なんですよ、アメリカにとって---。
 ひょっとして、アメリカって国家のアイデンティティめいた存在なのかもしれない。
 だって、ピースメーカとならんでアメリカを代表する拳銃のひとつに、コルトの357マグナムの「パイソン」ってあるじゃないですか?
 ねえ、「パイソン」ですよ、「パイソン」!
 メイフラワー号に乗ってはるばるやってきた貧乏な移民連中が、はじめて広大な新大陸を目にしたとき、まず目撃したのは、その大陸を埋めつくすほど膨大な「パイソン」の群れだった、という話を聴いたことがあります。
 この伝説が事実だったとすると、祖先から受け継いだ遺伝子のいちばん奥深くの引き出しに隠されているような、これほど郷愁を誘うネーミングってほかにあるでせうか?
 僕は、ないと思う。
 このネーミング、たぶん、確信犯でせう。
 西部を開拓---注:僕はコレ、侵略だとずっと思ってますけど---して、いまの国歌を建国した開拓民の子孫であるところのアメリカ国民が、この馨しい単語の響きを耳にしてクールな心象を保てるはずがない。
 アメリカ国民なら誰だって、激しくゆさぶられるに決まってる。
 そういう意味あいでいくと、コルト社って命名の名人ですよ。
 だって、「ピースメーカー」でしょ? 「パイソン」でしょ? さらには「ガバァメント」でせう?
 ちょっとうますぎ---コルト社にはお抱えの詩人でもいたんじゃないの?---性能的には明らかに優っていると思われるライバルのS&Wが、最後までコルト社の牙城を崩せなかった原因は、案外そのへんにあったんじゃないかって僕は思います…。


                            ×            ×            ×

 さて、そのような視座から追っていくと、スナブノーズ属などという種は、実は、独自のアメリカ内幕史というものを問わず語りのうちに耳打ちしてくれている銃なんじゃないか、と僕なんかはつい感じちゃう。
 スナブノーズ属というのは、リボルバー系のなかでも決して花形の銃じゃありません。
 同じ銃でも、コルト・パイソン357マグナムとかS&GM29の44マグナムみたいな人気銃じゃ決してない。
 Jazz Man的にいうなら、優秀なサイドマンって役どころですかね。
 使えるやつなんだけど、なんちゅ-か、いまいち「華」がないわけ。
 立ち位置がやや地味系というか、バックの色彩が何気にいつも鈍色だったりしてね。
 このような地味めなコンシールドガンがいきなり脚光を浴びはじめたのが、かの70年前後にはじまった、いわゆるアメリカン・ニューシネマ系の映画のなかだったのであります---。
 ニューシネマというのは、60年代にはじまったベトナム戰爭による社会荒廃を反映して、いままでみたいに無邪気にアメリカン・ドリームを信じられなくなった人々によって作られた、ちょっとざらざらした手触りの、ややビターな、そして、いくらか疲れて猫背気味の、けど、リアルなタッチの、幻滅4分現実5分に夢1分の、新しいタイプの斬新ムービーなんでありました。
 具体的にいうと、「イージーライダー」だとか「俺たちに明日はない」とかあのあたり。
 いままでのクラッシクな映画術で撮られたら、スナブノーズは正直出番なんてなかったんですよ。
 だって、レンズ映えのするスターはほかにいっぱいるもの---「ピースメイカー」に「ガバァメント」に「ハイパワー」…。
 ところが、ロマンチックなハッピーエンドの映画術とは一味ちがう、まったく新しいビターなリアリズムのニューシネマ系のカメラで撮っていくと、思いのほかこのスナブノーズ属は映えたんだなあ。
 悪にまみれた市警のなかで孤立しつつも、あくまで犯人を追いつづける「ブリット」刑事とか、巨大の麻薬組織を相手にちっぽけなディテクティブ・スペシャルをまっすぐに向けて咆哮する「フレンチコネクション」のポパイ刑事だとか…。
 彼等の手に握られたいかにも地味げな風情のスナブノーズは、僕の目にはもの凄くカッコよく見えた。
 ええ、派手派手の「バントラインスペシャル」より、それに、あの「ダーティーハリー」の大ブームを巻きおこしたヒーロー拳銃の44マグナムよりもね。
 物語のラスト、苦闘の銃撃戦の末、犯人をやっと射殺した彼等ニューシネマのヒーローたちの表情には、それまでのクラッシックなハリウッド・ヒーローの顔に盛られていた喜びの輝きはかけらもありません。
 そこにあるのは、

----ああ、終わった…。

 という任務完了の達成感と、いくばくかの疲労、あと、またしてもひとを殺めてしまったといういくらかの罪悪感まじりの虚脱感だけ…。

 それに、凶悪犯ひとりを射殺したところで、現実世界での巨悪の進行と興隆とはとめどようもないくらいに圧倒的なので、ひとりの男性でしかないヒーローは自らの無力感に歯噛みしつつ、エンドタイトルの流れはじめた、夕陽側の観客席の方角を見るともなく眺めてみる---。
 ニューシネマ時代の刑事ドラマは、だいたいにおいてこんなたそがれタイプのエンディングが多かったように記憶してます。
 うーむ、いま見てもリアルですって、コレ。
 そうして、このようなタイプのヒーローの手に握られていたスナブノーズのGUNも、主人である彼等と同じように、リアルで寡黙なうつ向きがちの風情をかもしだしてました…。
 中学生の僕は、それに共感し、彼等の手に握られたスナブノーズのGUNにもおなじように共感しておりました。
 最近、ひさかたぶりに過去のニューシネマの刑事モノをいくつか見直す機会があったのですが、それらを見終えたときの感触は、中学時代のそれとあんまり変わりなかったですね。
 気がつけば、物語の同じ場面で熱くなっている自分がいる。
 ニンゲン、時代が変わっても根本的には成長なんてしないんだってことでせうか、これは?(笑)
 まあ、いいや---このへんで僕の愛好する刑事モノのニューシネマのいくつかを紹介して、このスナブノーズGUNへのオマージュ記事をそろそろ終わりにしたいと思うんですが、いかがかな?

 ひとつめは、これね---1968年、ピーター・イエーツ監督、スティーブ・マックイーン主演の「ブリット」---僕、マックイーンの大ファンなんスよ、実は。
 後期の「ゲッタウェイ」は2流アクションだと思うけど、この「ブリット」は1流です。
 やたらに安っぽくバンバン撃ちあわないところが、特によろしおす。
 そのへんのストイックな鈍色展開が後半生きてきて、ラストの空港での銃撃戦では、「これぞマックイーンだ!」と呻りたくなるくらいの、壮絶な色気を映画全体で発散させてるのが見もの----


                    

 ふたつめは、野蛮で野卑なジーン・ハックマン糞刑事の駆けまわる、71年のアカデミー賞受賞の名画「フレンチ・コネクション」----


                   

 みっつめは、ややマイナーなれど珠玉の作品、あのフレンチ・コネクション」の制作陣が企画制作した、ロイ・シェイダー主演の「ザ・セブンアップス」---超・シブいったら!---あのー 僕、このキネマ、個人的にすっごい好きなんっスよ。
 僕的には、イチ押しの作品だな---最後に凶悪犯を射殺したときのバディー(ロイ・シェイダー)の徒労色の濃い顔が、なんともたまらないんだ。
 注:ちなみに、この映画内でロイ・シェイダーが使用してたのは、S&WのJフレームのスナブノーズに、大型用のグリップをつけたものです。


                      
 

 てなよなわけで、今宵のスナブノーズ語りもそろそろお開きにしたく存じます---長らく読んでくれたひと、ありがとう---お休みなさい!---(^.-y☆




 

 

 

 
  

徒然その156☆伊GUN、ベレッタM1934について語ろうか☆

2013-11-12 21:26:43 | エアガン小唄
              


 Hello、元氣にしてはりますかぁ?
 ここのところ、あまりにもハードな記事がつづき、そのストレスで書いてるこっちのほうもどうにかなりそうになってきたので、今回は政治ネタは完全スルー---自身の息抜きとリハビリも兼ねて、だんだん肌寒くなってきた秋の夜長、愛すべきGUNの話を心ゆくまで語りたく存じます。
 まえにも書いたように、もともと僕は政治ネタなんてそう好きじゃないんですよ。
 ただ、不正選挙系はあまりも身近なジャパンの危機だから---いわゆる焦眉の急ってやつですか?---振りかかる火の粉は払わにゃならぬ、みたいなノリでやむなく政治入りしていただけの話であってね。
 でもさ、たとえばの話、貴方がいくら熱烈な John Lennon ファンだからといって、また、プラスチック・オノ・バンドの「ジョンの魂(略してジョンたま)」が疑う余地のない不朽の名作だからといって、毎日毎時あのハードなジョン節ばっかり聴いていたなら、さすがにゲンナリしてくるでせう?
 僕の場合もそれとまったくおなじ、来る日も来る日も裁判記事ばかりあんまり書きすぎて、もー いまちょっと死にそうなのよ。
 だもんで、今回は、純粋な息抜きのつもり---。
 僕的にベストな息抜きといえば、まず温泉なんスけど、いまはなんかスケジュールが押してて、温泉にはちと行けないんですよ。
 ですから、それの代理として、今回のテーマとしてはGUNを選ばしていただきました。
 うん、平和愛好家としちゃあやや不謹慎な題材かなあ、とは自分でも思うのですが、骨がらみで好きなものはしょうがない。
 毒にも薬にもならず、誰の役にも立たない、ただひたすらナンセンスなGUN談義!
 今回の記事でイーダちゃんが目指すのは、それなんであります---ではでは……カムイーン---! 


            ×            ×            ×

 えー、今回のブログのゲストは、イタリアのあの美銃 ベレッタのM1943 であります---。
 ベレッタはベレッタでも現代アメリカの制式銃であるところの、あの重ごっついM92Fじゃないんで、そのあたりは誤解なきよう。
 僕が今回紹介したいのは、1934年にイタリアの制式銃となった、380ACP弾を使用する、全長170mm 7連発弾倉の、アメリカ制式用のそれよりはずーっと古くて小ぶりのタイプの、とってもシックでクラッシックなGUNなんだな、これが。
 ベレッタって、実は、現存する銃器メーカーのなかで、最古残の会社なんです。
 アメリカの制式銃になったM92Fなんか見てるとあまりにもモダンに洗練されすぎてて、そんな歴史の重みなんて露とも浮かんでこないんですが、1934年に開発されたこのM1934なんか見てると、さっすが時代の重み、ヨーロッパの歴史の薫陶みいたものが感じられて、うーむ、ようございますなあ…。
 僕の世代からいくと、このベレッタなんていうのは、結構マイナー筋なGUNだったんじゃないかって思います。
 友人のなかでも、あのベレッタっていいじゃん! なんていってるのは、あまりいなかったかも。
 ま、でも、そりゃそうだ。
 ベレッタ、渋すぎますモン。
 そんじゅそこらの中学生風情に、これほどの大人の味わいなんて分かる道理がない。
 中学生世代の主な好みからいくと、やっぱり当時主流だったのは、マッチョ系のコルト・ガヴァメント属、あるいはインテリ・マッチョの代表格であるワルサーPー38あたり、そんでもって斜め目線のお洒落系が贔屓にしたがるのが、ルガーだとかブローニング系のあっちのタイプだったように記憶しております。
 ま、当時はリボルバーが全盛だったんで、いわゆるダーティーハリーの44マグナムみたいなS&W系に傾く連中も相当数いましたが、僕は、リボルバーがあんま好きじゃないんで、この際そっち系の叙述は外しておきませう。 
 では、当時中学生だった僕が、なぜ、それほどまでにこのベレッタM1943 に入れあげたのか?
 動機は、非常にシンプルです。

----うわあ、このGUN、いいオンナだなあ…。

 そう思ったから。
 うん、このGUN、いい女っスよ。
 全体のコンパクトなプロポーション、スライド上部にあけられた斬新な切り口からのぞいたセクシー銃身、痩せすぎじゃない、中肉中背の大人の肢体、それにグリップの黒衣のくすんだような渋い色加減、さらにはスライド両サイドの、しっとり落ちついた地味系文字群のほどよい並び具合、さらにさらに、グリップ上方のセフティーのぽっちり赤いアクセサリーなんかのアクセントも山椒のようにぴりりとよく効いてます。
 あ。こいつも忘れちゃいけない---グリップ最下部のハイヒール---これがいちばん効いてますよねえ、やっぱ!
 ベレッタのモデル1934はね、別名「ハイヒールを履いたGUN」などとも呼ばれてるんですよ。
 うん、このマガジン下部のハイヒールが、また特に似合ってることったら。
 それに銃全体の印象から感じられる、ツンとすました淑女のような、やや高ビーでなんとも色気のある佇まいときたら、どうです?
 し、渋すぎる…。
 論より証拠といきますかね---ベレッタM1934と僕の愛銃ワルサーとのこの2ショットを、まずは御覧になってください---。


                 
 
 いかがかな?
 ねっ、こうしてふたつ並べて実際見てみると、インテリゲンチャでカッコいいはずの高性能のワルサーのほうが、なんとなく野暮ったい、無芸のでくのぼうっぽく見えてきやしませんか?
 これこそ、ベレッタ・マジック---!
 さすがはお洒落の国イタリア生まれのGUNですよ。
 僕は、銃の機能性という意味では、むろんのことP-38のほうに軍配をあげることに異論はないんですけど、全体から醸しだされる美貌的見地からいうと、むしろこのベレッタのほうに高評価をつけてあげたいなあ。
 そのあたり、贔屓のひき倒しと非難されるかも、ですが、この心情ばかりはどうにも否定できません。
 コンパクトにきりりとまとめあげられた、この無駄のないデザインとシンプルな機能性は、何度見ても痺れちゃう。
 むーっ、いいGUNっスよ…。
 僕的には、白黒映画時代の、あの伝説の名女優デートリッヒなんかに握らせたい銃ですね---。
 マリーナ・デートリッヒ、ご存知ですか?
 彼女が若き日のゲーリー・クーパーと共演した「モロッコ」は名画ですよ---この場にはまったく関係ない話ですけど w
 寄り路ついでに、じゃあ、もう一点、フォト散歩としゃれこんでみませか---。


              

 今度ベレッタ嬢をエスコートしてくれたのは、あまりにも有名なあのモーゼル・ミリタリー君であります。
 うむ、でも、ベレッタ嬢の連れ合いとしては、無骨さの極みみたいな、ものごっついモーゼルのほうがワルサーより適任かもね。
 いかにも19世紀的なモーゼル---いまはマウザーと英語読みするのが主流なのかしら?---の堅物的いかつさが、逆に小粋でお洒落なベレッタにちょうどよく釣り合うってるっていうか。
 うーむ、あまりにも美的デカダン寄りに喋りすぎた感もちとありますが、このベレッタ、現実の操作性においてもむろんのこと優れた銃でありまして、故障や装填不良なんかも少なく、ルガーみたく砂塵に弱いなんて弱点もなかったようです。
 戦場において、これは大事な要素だよね。
 耐久性、持ち運びやすさ、あと、誰にでも分解修理しやすいシンプルな構造であること。
 ベレッタは、これら3拍子の鉄則をすべて満たしたGUNなのでありました。
 こうなると当然インターナショナルに人気がでてくるわけで---実際の話、第二次大戦の連合国側の兵士たちのあいだでこのベレッタ、ドイツのワルサー、ルガーなどとも並ぶ凄い人気でね、お土産に故国に持ちかえる兵士も相当数いたという話です。
 そんな彼等の気持ち、僕は、よーく分かるなあ…。
 赤毛の将校さんの軍服に、これほど似合う銃ってほかにないと思うもん。
 毛むくじゃらのごっつい外人さんのぶ厚い掌に握られたとき、ベレッタはそこが自分の安住の地なんだと案外安らいだんじゃないでせうか?
 根拠なんてまるでないんだけど、そのようなことまでつい考えてしまう。
 かようなまでにベレッタM1934というのは、男心をくすぐるツボをよく心得た、ふしぎなふしぎな魔女っこGUNなんでありました---。

 このベレッタに対する僕のイメージは個人的なものなのかなあって思ってたんですが、意外なとこで、さいとうたかお先生が、あの国民的マンガ「ゴルゴ13」のなかで、このベレッタを小道具として実にうまく使ってらっしゃるのを、ついこのあいだ見つけることができました。
 それは、レズの女殺し屋の「キャサワリー(火食鳥)」っていうのが、ゴルゴの暗殺を請け負ってどうこうする、というお話でして。
 むろん、ストーリーの必然として、物語の最後には、彼女、ゴルゴに返り討ちにされちゃうんですが…。
 で、レズのこの美女・殺し屋「キャサワリー」が物語で使用する愛銃が、このベレッタなんですよ。
 流石、さいとうたかお先生!---ベレッタって銃の華がどのあたりにあるかってことを、よく分かってらっしゃる。
 僕はそれまで「ゴルゴ13」のポエジー的側面に目を向けたことなんてなかったんですが、これを目にしてから、先生が自身の裡に脈打っている「詩人」のポエジーを、実に上手にセーヴ節約しながら、あらゆる物語のうえに注意深く霧吹きしている、という「技」をあらためて再発見することができました。
 この点に関しては、ベレッタとさいとう先生---両名に等しく感謝です。
 大家って、やっぱ、凄いっス---ええ、決してナメちゃあいけません…。

                   


◆ベレッタM1934
 タイプ:セミオートマチック・ピストル
 製造国:イタリア
 使用弾薬:380ACP
 全長:150mm
 重量:750g
 装弾数:7発

 このお洒落ガン、あの国本圭一氏の「ウエスタン・アームズ」社がトイガン化しています。
 フィールド・ストッピングこそしないものの、流石老舗のウエスタン・アームズ! と唸るくらいのいい出来です。
 特に、弾倉部のグリップが鉛入りになってて、握りの小指部にズンとくる独自の重量感がなかなか素敵。
 ただ、高いのねえ、コレ---ウエスタン・アームズの商品はみんなそうなんですが、なんでああも高価なのか…。
 僕は、このトイガン、おととしネットで思いっきしの低価格、1万2000円で購入しましたとサ。

                   ×             ×            ×

 今回の暇話は以上です---秋の夜長のあとの残りは、僕は、ウクレレの弦でも張りかえながら過ごすことにしませうか---お休みなさい---(-.-)zzz。
 



 

徒然その119☆ブローニング・ハイパワー VS コルト・ガバメント

2012-10-04 23:23:59 | エアガン小唄
                       


 コルトのM1911“ガバメント”は、かつて憧れのGUNでした。(向かって右のほうの銃です)
 カタチがまず好きでした。それから、工場からブッタ切ってきたばかりのザク切りの金属片を、そのままトリガーに組みこんで、完成品の銃にしちゃいました(これ、小峰隆生さんの表現のパクリです!)---みたいな、あのストレート極まる無骨さがとてもいい、と感じてました。
 いまの僕の立ち位置は徹底的に反アメリカだから、必然的にこのGUNから気持ちは離れちゃいましたが、このGUNの優秀性を認められないほど意固地ではないつもりです。
 “ガバメント”は、やっぱ、凄い。
 それは、もう認めざるをえない。 
 半世紀以上、世界各地で紛争を起こしつづけてきた、あの合衆国軍隊の、制式のサイドアームであったという歴史的事実が、その優秀性を何よりも雄弁に物語っている、と思います。
 ただ、おなじタイプのオートマ拳銃では、ベルギーのブローニング・ハイパワーのほうに、より強く魅かれていました。(ええ、左手の銃のほうね)
 一時、世界一の生産台数を誇っていた、このヨーロッパ産まれのシックなGUNには、コルト・ガバメント属には見られない、爛熟した文化の香りが、そこはかとなく漂っていて、そのセクシーな移り香が、僕的には、なんともたまらなかったのです。

----うーん、セクシーだなぁ。細身の、いい銃だあ。いっぺん、握って、撃ちてえなあ…。

 と常に思っておりました。
 なんというか、このGUNは、そこはかとなく飾り窓っぽい香りがするんですよ---シルクと香水と前の晩のかすかな情事の香り…。
 そんな媚薬的オーラがスライド近辺にたゆたっているこのハイパワーは、擬人化するなら、ええ、完璧「女」なんですわ。
 それも、渋い、極上級のいい「オンナ」---この銃が魔性の銃だってあちこちで囁かれてきた理由が、よーく分かりますね。
 ガバメントは、はっきりいって、そこまで複雑な雰囲気をしょった銃ではないんです。
 むろん、故障の少ない、操作性の確実な、名銃です。そのへんの要素は、ゆるがない。
 しかし、ガバメントはね、僕的には、いつも即物的にすぎる銃なんですよ。
 あえて擬人化するなら、この銃は、あまり知的じゃないタイプの、けれども頑健で、愛国心に溢れた、体育会スポーツマン系って感じかな?
 それはそれでいいキャラなんでせうけど、僕的に、魅力はあんま感じない。
 新大陸生まれの銃は、みんな、このような合理主義なんですかね? 産まれてはじめて銃に触れる初年兵が撃っても、ベテランの古残兵がトリガーを引いても、おなじ標的に当たる銃---それこそが「文明」的な銃の証だと僕は思うんですけど、ガバメントこそまさにこの定義を充分に満たしている銃なのではないでせうか。

----「文明」とは、誰が扱ってもおなじ結果が明確に得られるもの。たとえば、水道。あるいは、ガス、電気。誰が撃っても弾丸の出る拳銃なんていうのもおなじ「文明」の範疇です。異邦人にも幼児にも、誰にでも容易に分かり、誰に対してもひらかれているもの。対して、「文化」というのは、もっと不確定で、澱んでおりますね。たとえば、葬儀の風習。これは、その地方ごとの「文化」です。あるいは、礼節。これも国ごと、民族ごと、あるいは地方の村ごとに、基準やルールがちがいます。誰に対してもひらかれているわけじゃない。むしろ他所者を拒む閉鎖性に満ちているともいえるでせう…。

 これ、記憶を頼りに再現した梅原猛先生の発言なんですけど、先生のおっしゃってられてる「文明」と「文化」の定義は、たしかこのようなものであった、と思います。
 で、その視座からいうと、イーダちゃんは、「文明」の香りのするGUNはそんなに好きじゃないんですね。
 「文化」の非合理な香りがして、そして、いくらかうつ向きがちの、ええ、微妙な「翳り」と「色気」のあるGUNが好きなんです---それが、最近分かってきた。
 僕がグロックを嫌いな理由もきっとそうなんですよ---あれは、誰にでも扱える明確で優秀、極めて扱いやすい「文明的」な銃であるから---だから、たぶん嫌いなんですね。
 そう、グロックは、世界文明共通の大食堂であるあの「マクドナルド」みたいに、いくらか明るすぎるきらいがあるんですよ。
 優秀です、ポピュラーです、誰にでも簡単に使えます---うん、そのキャッチコピーの意味も効能も充分、分かる。
 むろん、紛争地帯に明日行くのなら、僕も、優秀なグロックを使いたい人間なんですが、あえて好き嫌いの基準でいわせてもらうなら、ワルサー、ルガー、それに、このハイパワーなんかのほうが、それは、もうダントツに上なんです。

 暇話休題---どうでもいい心情吐露はこのくらいにしておいて、その肝心のハイパワーの紹介にそろそろいきませうか。


                                                                                    
         ◆ FN(ファブリック・ナショナル社製)ブローニング M1935 通称“ハイパワー”
            全長 197mm
           口径 9mmパラベレム
           重量 929グラム
           装弾数 13+1発    
 
 ああ、いいなあ! この微妙に瀟洒な形態ともっちりした質感が、なんとももうたまらん。(注:フォトは、タナカワークスのガスガンです)
 ガバメントと一見似ちゃあいるけど、銃全体に付随してるムードは、かなりちがっているでせう?
 よく見くらべてもらえば分かると思うんですが、コルトのM1911は、全長217mmで、このハイパワーより2センチほど大柄なんですね。
 それは、むろん、強力な45APC弾を撃つための必然のガタイです。
 ちなみに45口径っていうのは、インチからミリ表示に置きなおせば、11.4mm。
 この20mmあまりのガバの大柄さというのは、それだけの重さのブリットを発射するのに必要な「発射台」としての堅牢さなのだ、と、ここでは解釈しておきませう。
 対して、こちらブローニング・ハイパワーの弾丸は、9mm×19mmのパラベレム弾ですからね。
 9mmパラベルム弾は、現在のGUNの主流であって、決して弱装弾ではないのですが、45APCは、なんといっても45口径=11.4mmですから、9mmよりははるかにでっかくて重いんです。
 ガバメントの堅牢さに対して、ハイパワーが華奢に見える要因のひとつは、たぶん、その口径始発の構造的ものもあるんじゃないか、と思われます。
 ただ、どう考えてもそれだけじゃないっぽい、ヨーロッパの風土がGUNに与えた影響といった要素も、やっぱりいくらかは考える必要があるんじゃないでせうか。
 なぜなら、この偉大なFNブローニングM1935とコルトM1911というふたつのGUN、実は、父親が一緒の異母兄弟の銃なんですから。
 ええ、この二丁の銃はどちらとも、あのあまりにも勇名な天才銃器設計家ジョン・モーゼス・ブローニングの設計なんです。
 このジョン・ブローニングこそ、銃設計界のエジソンとでもいうべき男なんですよ---彼は、米国ユタ州の出身、1855年1月21日、水瓶座生まれのアメリカ人でした。
 銃技師の父ジョナサンの長男として生まれたジョンは、学こそなかったものの、その生来のセンスと勘と経験とで、非凡な名銃を次々と設計して見る間に名を成していきます。
 実際、いま現在使用されているオートマチック拳銃は、ほとんどすべてこのジョン・ブローニングが発明した銃機構をそのまま受け継いでいるといってもいいのです。
 安全装置だとかセイフティーの機構とかの枝葉の部分での技術は進歩したかも分かりませんが、銃の根本のメカニズムの発想自体は、このときブローニングの頭のなかで閃いた雛形から一歩たりとも外になんか出ていません。
 そう、どこの銃器メーカーもいまだにみんな、このときのブローニングの発想した雛形のなかで、ああでもないこうでもないと相撲をとっているんですよ。
 現在、アメリカ軍の制式拳銃になっている、イタリアのベレッタM92Fしかり、「世界最高のコンバットオート」と称されたこともある、あのチェコのCz75もしかり…。


                         


 まさに天才ブローニング! そして、彼がその生涯にて設計した代表的な2大傑作拳銃が、この記事のテーマでもある、コルトのM1911の“ガバメント”であり、また、ブローンングM1935の“ハイパワー”であったのです。
 ただ、制作された時期からいうと、ガバメントのほうが、ずっと早生まれですね。
 ガバメントがアメリカ軍の制式銃になったのは、銃の名称通り1911年のことでした。
 対して、ブローニングM1935が世に出たのは、1935年のこと。
 設計者であるジョン・ブローニングは1926年に亡くなってしまったので、FN社の後任の技術者たちが、ブローニングの意思を継いでこの銃を完成させたのです。
 それまで7、8発が限界といわれていた装弾数を、マガジンを複列式にすることによって一気に13発まで増やし(通称である“ハイパワー”の由来は、当時からすると驚異的だったこの装弾数からきています)---もっとも、このマガジンの発明は、ブローニングによるものではないようですが---やがて耐久性と機能性に優れたこの銃は、世界50ヶ国以上の軍の制式拳銃となっていきます…。

 つまり、ガバメントとハイパワーの2丁の銃は、母親を異にする(ガバメントの故国は米国、ハイパワーの故国はベルギーだから)異母兄弟同士という間柄になるんでせうけど、結果的に血縁関係のあるこの2丁の銃が、20世紀を代表するコンバットオートと称されるようになっていったというのは、どういう歴史の必然でせうか?
 優れた軍用拳銃は、ほかにいくらもありました。
 たとえば、ドイツのワルサーP38、ルガーP08、モーゼル・ミリタリーにS&Wのオート、スイスのSIG……
 なかには90年代初頭まで西ドイツの制式拳銃でいたワルサーP38のような例外もありますが、この世代に生まれた大戦の香りのする銃たちのなかで、当時から80年代まで軍の制式拳銃でありつづけたのは、ブローニング・ハイパワーとコルト・ガバメントの2丁きりしかありません。
 下手したら3年もたたないうちに最前線のトレンドが変わってしまう、どこかの国の芸能界さながらの流行り廃りの多いこんな阿修羅な武器世界のなかで、何十年にもわたって制式拳銃の地位を占めつづけたというのは、ええ、これは、はっきりいって異常なことですよ。
 正式な戦闘に参加しない、基本的にサイドアームとしての拳銃だったから、といってしまうこともできますが、それにしても数十年というこの歳月は並じゃないよ。
 もちろん名銃だったから、という理由で一応の説明はつくんですけど。
 でも、僕は、それだけの要素で、ここまでこの2丁の銃が生きのびてこれた全ての説明がつくとは思ってません。
 もうひとつべつな、プラスアルファの理由が、きっと何かあったんだと思う。
 もしかしたら、それは「運」だとか「政治権力」だとかの不可知要素をも含んでいたのかもしれない。
 しかし、そうした不可知要素を加味して考慮したとしても、この2丁の銃が並の銃ではなかったという歴史的事実は、いまや誰もが認めざるをえないでせう。
 といったようなわけで、この2丁の銃は、どんな最新好みのガンマニアたちも避けて通ることのできない、一種スペシャルな地位にいまも君臨しつづけている、という次第なんですよ---。

 これほどの超・実力派のGUNですもの、我が国のトイガンメーカーも当然ガスガン化しています。
 今回、ここで僕が取りあげたいと思っているのは、タナカワークスさんの「ブローニング・ハイパワー」と東京マルイさんの「コルトM1911 MK4 SERIES’70」の2丁----


                        


 僕が所有してるハイパワーは、タナカさんのHWのいわゆるビジランティー・モデルなんですけど、これがね、実にいい出来なんですわ。
 値段は、2万とちょい---まあ高めかな。
 ミリタリータイプとちがって、スライドの後部に可変式のスケール・サイト(モーゼルM712なんかにも付いている、超アナログの香りのする例のやつです)は、付いておりません。
 いかにもタナカさんのガスガンらしく、冷えたおりのマガジンのガス漏れだとか、あまり集弾しない着弾だとか、ブローバック時(正確にはショート・リコイル時)に次のBB弾がうまく装填されないとか---問題になる要素は多々あるんでせうが、イーダちゃんは、大変このハイパワーを気に入っております。
 「グイと引いて、バキッと折れる」という実銃のトリガーフィーリングが見事に再現されているし、なんといっても、このタナカのハイパワーさん、肌ツヤがいいよ。
 肌ツヤのよさは内蔵の健康の証明ともいいますから、肌ツヤのいいハイパワーは、たぶん、内部の機構自体も良好なんじゃないかって気が自然としてきます。
 あと、スライド側面の文字の刻印ね、これが、銃全体の形態や触感とあいまって、実にシックで渋めの風情を醸成しているんですね。
 これは、このタナカ・ハイパワーの最大の長所のひとつだと思うんで、忘れないうちフォトをUPしておきませう。
 マルイさんのガバもこの点ではなかなか頑張っていまして---これ、どうやら打刻なんだそうです---今回は結構いい出来となっているので、比較のため、それもUPしておきませう。


     
 

 左上のがタナカ・ハイパワーのスライド側面、右上のが東京マルイさんのガバメントMK4のスライド側面です。
 どうです、ハイパワーのスライドの刻印、イカシてるでしょ?
 あと、艶消しのこのボディの質感は、これがまたなんともよおおます。
 文字は若干浅くて読みにくいのですが、ここには実銃の通り FABRIQUE NATIONALE D'ARMS DE GUERRE/HERSTAL BELGIQUE/BROWNING'S PATENTDEPOSE と刻印されています。
 僕は、この刻印の文字を目で追っていくうちに、どうしても自然に頬がゆるんできてしまう。
 このタナカさんの丁寧で緻密な手仕事は、マニア心をほどよくくすぐってくれます。
 うん、いい出来です---このブローニング1丁だけを肴に、僕は、酒、2、3時間は余裕でいけちゃうなあ。
 この刻印の最後にある、超ちっちゃなルガー・パラベレム弾のユニークなマークも、一種の微苦笑を誘ってくれて Goo ですね。
 さて、銃の風情といったこうした側面にあえて光をあてたのがタナカさんなら、マルイさんのスポットライトは、ガスガンとしての機能のほうに向けられているように感じます。 
 そう、マルイさんのガバメントもなかなかに美しい出来に仕上がってはいるんですが、でも、僕の目から見ると、やっぱり何かが足りてない。
 うーん、こんなことはあまりいいたくないんですが、マルイ・ガバメントからは、やっぱりちょっと「大量生産品」の香りがしてくるんですよ。
 ええ、マルイさんのもタナカさんのに劣らず、よくできた良心的なGUNだとは思うのですが。
 ガスガンとしての機能的な側面からいくと、マルイさんのGUNは明らかにタナカさんの上をいっていて、野外でのサバゲー向きなのは完璧マルイさんのほうなんですが、なんというか、マルイさんのGUNでは、僕は、あんま醉えないんですよ。
 ただ、今回入手したこのガバメントのシリーズ70では、いままでのマルイさんとはちがった姿勢がほの見える。
 それは、スライドトップはブラストフィニィッシュ仕立て、スライドのサイドはブルーフィニッシュ仕様と、実銃同様の非常に凝った仕上げをあえて選んだという姿勢からも窺える。
 でも、なんでだろう? タナカワークスのハイパワーほど、僕は、このガバメントじゃ醉えないの。
 ま、そのへんの理由は銃のサイドにではなく、僕のサイドに問題があるんじゃないかと予感してもいるんですが…(^.^;>

 おお、酔いながらキーボードを打っていたら、もはや何がいいたいのか自分でも分からなくなってきちゃったぞ。
 ラストに、下方アングルから見上げた両銃のフォトをUPして、この長ーい記事をそろそろ終わらせたく存じます。


                      


 いかが? 側面からのゴツさに反して、両銃とも意外なくらいスリムでせう?
 特に、13連発の複列断層を収納するハイパワーの(左上写真)マガジンがこーんながっちりと太いくせに、スライドの先がなんとスマートなこと!
 こんなにマガジンが太いとさぞ握りにくて狙いもつけにくいだろうと思うかも分かりませんが、このハイパワー、思いのほか握りやすいし、狙いだって意外なほどつけやすくなっているんです。
 ええ、ほんと、このGUNは狙いやすく、撃ちやすい。
 流石、世界50ヶ国もの軍の制式拳銃に選ばれた実績は、伊達じゃありません。
 ガバに関しても(右上写真)これは同様のことがいえそうですね---狙いをつけて撃つということに関して、このガバは、実に優れた道具です。ある意味、ひとつの路線の完成形といっちゃってもいいかもしれない。
 こんな毒にも薬にもならない非現実的な夢想---興味のないひとから見ると、ほとんど妄想かもね!---に明け暮れながら、イーダちゃんの宵は今日もすぎていくのです。
 阿呆だなあ、と我ながら思います。
 でも、何かを好きだというニンゲンの気持ちは、もしかしら元から非常にアホ的な様相をしてるんじゃないか、と常日頃から考えている僕なんかからすると、自身のこのエアガン熱なぞまだまだ大甘、もっともっと強烈に恋焦がれて、自分内の小狡い安全圏を溶解させ、対象と心中したいくらい超・好きにならなきゃGUNの本質になんて到底届けないぞぅ、と改めて省みたりもする、ハイパワーときめきイーダちゃんなのでありました…。(^o-)y☆彡
 


 

                       

徒然その116☆ワルサーP38 vs ルガーP08☆

2012-08-29 22:45:25 | エアガン小唄
                      


 先日、イーダちゃんは、タナカのルガーP08の2代目を購入してきました。
 写真でいうと右の銃ね---これね、実は、結構高いんですよ、なんとね、18、000円もすんの!<(xox;>彡
 しかもね、イーダちゃんは、高田馬場「アンクル」で買った、先代のルガーP08をすでに持ってんの。
 なのに、おなじ商品を再び買ってきたってわけ。その理由は如何に?
 答えは非常にシンプルです---マガジンのガス漏れゆえ。
 タナカさんのルガーのマガジンのガス漏れがひどいという評判は、以前よりよく耳にしていましたが、たまたま僕の買った中古ルガーのマガジンのそれがあまりにもよくなく、(といっても、これは中古ガン・ショップ「アンクル」さんへの非難では全然ありませんので念のため。事実、同時期に「アンクル」さんで購入した、マルゼンの中古ワルサー-写真左のごつい銃-は、いまも好調で、最近購入した新品のマルイ・ガバメントよりむしろ調子のいいくらいなんですから)修理しても修理しても致命的な重度ガス漏れをこれでもかと頻繁にくり返すので、これはダメだあ、と見切りをつけ、いよいよ新品を購入することを決意したという次第。
 そしたらねえ、さっすが新品---もって帰ってきて、さっそくのこと撃ってみたら、全弾、完璧なアクションで撃ちつくすことができたんです!
 あーん、1マガジン分、なんのトラブルもなく撃ちつくせる、なんて初めてだよー。(ToT)
 しかも、撃ちつくしたあと、トグルがちゃんとアップしたまま立ってるの。(注:これ、ホールド・オープンという射手に弾切れを知らせる当たり前の機能なんですけど、これさえ先代ルガーはできなかった。もうほとんど故障品クラスだよねえ)
 というわけで、ちゃんとアクションする、立派な良い子のルガーを前にして、イーダちゃんは、いま歓喜の極みにいるのです。
 
---あー、いい、やっぱ、ルガーはいいわ…。

 とトグルの冷たい金属部に何度も頬ずりしてみたり。
 もう超・阿呆の親バカ状態とでもいいますか。
 ガス漏れで致命的に駄目駄目だ、とか、もう博物館入りの古い銃じゃないか、とかいってさんざんけなしたりクサしたり、なんとか嫌いになろうと努力したけど、結局駄目でした。
 完璧に作動するタナカ・ルガーの魅力をまえにして、イーダちゃんは、もう Dizzy Miss Lizzy 状態…。
 脱帽ですね---ルガーって、やっぱ、ため息モンのカッコいい銃ですわ---。
 ここで、ルガーのなんたるかを知らないひとのために、パラベレム弾を撃ちつくしたあとの、ホールド・オープン時のルガーを、ちょっち見てもらいませうか---。


                         


 いかが? 美しいっしょ? 超・凛々しげな風情あり、とお思いになりません?
 このエアガンのモデルとなった実銃のルガーP08が、ドイツ軍の制式銃になったのは、なんと、1908年のことでした。
 もー 大昔のお話ですよ---あの第一次大戦のころだもの---ええ、ルガーってね、実は、100年以上むかしの銃なんです。
 オートのスタンダード銃、あのコルトのM1911より、さらにはコンシールドガンの草分けである、あのブローニングM1910よりさらに古いのよ。
 改めてそう意識すると「えっ?」て感じだけど、あんまそんな白亜紀風味は感じられないっしょ?
 それはね---このルガーP08という銃が、独自の機能美に満ち満ちている、スペシャルなガンだからです。
 たしかに機能一辺倒の、最近のグロックなんかと比べると、クールなドライさっていうのは、いくらか不足しているかもしれない。
 でも、トグル・アクションというやたら複雑なショート・リコイル方式に徹底的にこだわったドイツ職人---これのもとになったボーチャード式を考案したのはアメリカ人でしたけど---の胸底にあるゲルマン魂が、見ているだけでびんびん伝わってくるじゃないですか。
 第二次大戦がはじまって、ドイツ軍の制式銃がルガーからワルサーに変わったとき、多くの将校がワルサーへの持ち換えを拒み、ルガーを持ちつづけることに固執したってエピソードがいまもなお残っていますけど、僕あ、彼等の気持ち、なんとなく分かるなあ。
 かくいうイーダちゃんのもっとも愛するフェバリエット・ガンは、記事冒頭フォトの左銃---ワルサーP38なんですが、純粋な「美」という見地からのみ判断するなら、ひょっとしてルガーの美しさというのは、ワルサーのそれすら凌駕しているかもしれません。
 事実、このルガーは、戦時中の米兵のあいだでも大人気で、故国への土産としてこのルガーを持ち返る兵士も大勢いたそうなんですよ。
 さて、そのように人気のある、稀代のビューティー銃だったルガーなのでありますが、機構が複雑すぎて大量生産に向かなかった点、それに、砂漠の砂や埃に対して弱く、精巧な機構が故障しがちだった点などが憂慮され、1938年よりドイツ軍の制式銃は、冒頭フォト左手の、ワルサーP38にとって変わられることになります。
 ワルサーP38---これも、また超・有名なガンですよね?
 僕が中学のころには、ルガーP08とこのワルサーP38、それに、コルトM1911の“ガバメント”を交えた御三家というのは、もう別格の凄玉トリオなのでありまして、ガン好きの青少年は、皆、この御三家に一途な憧れの念を募らせたものなのでありました。
 最近のガンマニアさんとお話しすると、みなさん、何気に「あ、それはやっぱりアニメの<ルパン三世>の影響ですか?」とか尋ねてこられるんですけど、それだけではないわなあ。なにより、僕等が青少年のころには、<ルパン三世>は、いまみたいにビッグなアニメじゃなかったんですよ。
 まあ人気はそれなりにあったけど、当時のアニメってね、いまみたく誰もが見るようなモンじゃなかったんですよ。
 市民権もそんなになかったし、子供向けのものと馬鹿にして見ない奴も大勢いました。
 しかし、その馬鹿にするフフン系「人種」のなかにも、このワルサー・ファンは大勢いたんですよ。
 ですから、ワルサーP38の魅力というのは、人気アニメの影響といった絡め手系からのうがった見地からだけじゃなく、ガンそのものの能力筋から必然的に派生したものと読むべきではないのかなあ、と思います。
 まあ、あの大ドイツの制式銃であったわけですし、優れた拳銃であったのは誰もが認めるところであった、このワルサーP38というガンのことを、いい機会ですので、このあたりでざっと検証してみることにしませうか。


                          


    ワルサーP-38(西ドイツ)
  ●口径:9mm
  ●弾薬:9mmパラベレム
  ●全長:21.4cm
  ●銃身長:12.5cm
  ●重量:780g
  ●装弾数:8発

 むきーっ! いいなあ。書いてるだけでもう興奮してきちゃったよー。
 ●弾薬:9mmパラベレムという響きが、ことにいい。
 ルガーとワルサーがともに使用している、この9mmパラベレム弾っていうのは、これは、いまのアメリカの制式拳銃・ベレッタのM92なんかも使用している弾丸であって、第二次大戦後、半世紀以上の年月が経過したこの現代において、いまや最新型拳銃の弾丸は、この9mmが主流になりつつあるんです。
 つまり、ドイツは、70年ばかり時代を先んじていたわけなんです。
 9mmパラベレム弾っていうのは、それくらい優れた弾薬なんですわ。
 弾丸としての優良性を見極めるには、さまざまな見方があります。弾丸として大量生産しやすいかどうか。さらには、連発するにあたっての、反動の加減。反動がきつすぎないかどうか。これによって、サブマシンガンに投入できるかどうかも関わってきますから、このへんの見極めは、非常に大事なところです。
 9mmパラベレム---ちなみに、このパラベレムは、ラテン語、“平和のため、戦争に備えよ”という意味だそうです---は、これらすべてのテストをクリアしました。
 さらに9mmが優れていたのは、銃弾としての初速でせうか---9mmパラベレム弾の初速は、平均350m/秒。
 これ、拳銃弾のなかでは、比較的速いほうなんです。速さだけでいえば、あの44マグナムにも匹敵するほどの初速。
 対して、最後までこの9mmパラベレム弾に抵抗していた、拳銃の本場アメリカの45口径(11.43mm)の45ACP弾の初速は、これが意外と遅くて、247m/秒。
 45ACPなんて、あのドングリみたいな外貌から、もっと速そうなイメージがあるんですが、弾丸自体が重い分スピードを損なうのか、速さ的にいうなら、これが、あまり大したことないんですよ。
 もっと単純で小粒な、22 SHORT だとか 22 LONG(どちらも口径は5.6mm)のほうが、初速でいうならずっと速い。
 (注:22 SHORT の初速は、334m/秒、22 LONG の初速は、378m/秒です)
 ブレッド自体の重みが、総計でほぼ10対1くらいの差があるので---45ACP弾の重さは、14.9gです---単純な威力比較はやりにくいんですけど、これが、45ACP弾とそれほど大きさの変わらない9mmパラベレム弾(ちなみに、9mmパラベレムのブレッドは、9.0gです)となると、最終的なアタック・エネルギーの数値差は、さあ、分からなくなってくる。
 アメリカではフロンティアに使われたコルト・ピースメーカーが45口径だったせいもあって、歴史的に「45口径信仰」といったようなものが政府筋・民間にわたって根強く残っており、そのプライドまじりの信仰が、ヨーロッパ主流の9mm弾の上陸を長らく妨げていたんです---「45口径以外のガンなんて、みんなオカマが使うもんだ!」といったようなワイルドで油ギッシュな意見が非常に多かったわけ---が、最近、多くの実験の結果、45口径ACP弾と9mmパラベレム弾とのアタック・エネルギーがほぼ等しいということが数々のデーターからつぶさに実証されまして、1992年、あの米軍が、とうとうイタリアン・ベレッタ社のガンを制式に採用した、というこのほどの流れに繋がっていくのです。
 なんと、誇り高い米軍があの「ガバメント」を捨てて、9mmの、外国製のベレッタを制式銃に採用したなんて!
 僕はこれ、アメリカという国家の根幹に関わる、途轍もない変革だと思うんですけど。
 黒人大統領の誕生、あるいはサブプライム・ローンの破綻だって、この伝統の「45口径信仰」を捨てたことに比べたら、うん、ぜーんぜん小さいよ…。

 おっと、話が飛んじゃったい---ワルサー話に回帰しませう。
 あのー 前述した高性能の9mmパラベレム弾を使用する、このワルサー38というガンは、歴史上初めてダブル・アクションを採用したオートマチックであったという機構面も含めて超・素晴らしいんですが、それよりも何より、この銃は、まずフォルムが美しいよ…。
 重量を軽くするために、アウターバレル付近のスライドを思いきって取っぱらっちゃったとこ---
 それに、カートリッジ排出がやりやすいようにと、イタリアのベレッタみたいにスライド上部に大きな切りこみを加えたとこ---
 それらの職人的配慮の総合的な堆積が、このガンのこれほどまでに独創的な風貌を生みだしたんですね。
 優雅さにおいてはルガーのほうが優っているかもわかりませんが、ストイシズムの風情においては、むしろ凌駕しているのは、こっちのワルサーのほうでせう。
 ルガーはワルサーに比べると、ずっと南方系の香りをさせています。
 そこいくと、ワルサーの生誕の地は、もっと北寄りの気配がしてるじゃないですか。
 僕は、そこはかとないその「北方」の香りに魅かれ、このワルサーP38というガンの引力圏に徐々に引きこまれていったのですから。
 あと、この銃、ちょいとばかし不機嫌そうなしかめっツラをしてるでしょ?
 ルガーは、南方系の血が少々入ってるんで、ときおりしどけない風情で肢体を伸ばしたりして、いい意味での色っぽさというか、一種の艶やかさがあるのですが、ワルサーはもっと気難しくて、なんか真面目くさった仏頂面をいつもしている、みたいな風情を、貴方は感じませんか?
 僕は、感じちゃうんだけどなあ。
 そして、そのビミョーな不機嫌さが、底のほうでなんとなく知的な印象に結びつくのが、ワルサーというガンの特別に面白いユニークな個性なんだと思う。
 一言でいうと、ルガーP08は、美形の女性であり、歌手なんですよ。
 女性だから砂漠の砂や埃なんかは、あんまり好きではない。
 軍務も、責任を果たすべきことも一応やるけど、真の自分の自己実現は、軍務のうえにはないと思ってる。
 うーん、いくら腕が立っても、これじゃあ、まあ解任されるわけですねえ。
 ワルサーP38はちがう---彼は、女性じゃなくって男性です---しかも、芸術家の気風を宿した、悩める青年将校みたいな、インテリゲンチャ独自の苦悩の香りをそこはかとなくふり撒いている男性です…。
 彼は、その存在の底部に、ルガーにはない、隠し味みたいにビターな苦味をもっている---それは、恐らく「近代」の苦味なんじゃないでせうか---僕は、ワルサーP38のトリガーに人さし指をかけるたび、その複雑でビミューな苦味が、鼻腔のあたりからほのかに這いのぼってくるのを常に感じます。
 照準をあわせようと照門の中央に照星をもってくるとき、自分のなかの罪と罰とが一刹那邂逅します。
 架空のものであっても、僕が銃口から飛ばそうとしているのは、まちがいなくある種の「殺意」なんですから。
 トリガーを絞る、グワンと大きなアクションでスライドが後退する。
 その瞬間、筆舌に尽くしがたい、なんともいえない苦い痛みが背筋をすっと走りぬける。
 そのへんがねえ---イーダちゃんにとってのワルサーP38というガンのまあ醍醐味なわけなんですよ…。

 暇話休題。
 ワルサー狂想曲みたいな内容についなっちゃったんで、いくらか軌道修正---そろそろ現実世界に回帰しませうか。
 実銃でなく、エアガン本来の話をしませう。
 さて、この名銃ワルサーP38のエアガンを作成したマルゼンさんは、なんと、あのドイツのワルサー社と提携契約を結び、実銃のワルサーの設計図面をもとに、これほどの質の製品を仕上げていたんですって。
 うーむ、道理で---と、誰もが唸るほど、マルゼン製のワルサーはいい出来です。
 無条件の推薦印。細部の仕上がりも、表面のシックな色合いもともに good---。
 エアガンとしての性能も結構いいほうなんじゃないのかなあ。
 僕的にいわせてもらうなら、このワルサーP38は、手持ちのガンのなかで、いちばんよく当たるガンのひとつなんです。
 ええ、8mくらいの距離からだと、大抵手のひらサイズの円形内に、そう苦労もなく集弾できちゃいますから。
 たしかに弾速は、東京マルイさんの製品なんかのほうがずっと強力で、野外でのサバゲー向きなのは、やっぱ、マルイさんのほうなんだろうなあ、とも思いますけど、こと10mくらいでの距離での命中率の話になりますと、僕は、マルゼンさんのワルサーのほうに軍配をあげたいですね---。

 その見地でいくと、タナカさんのルガーP08もとっても見事です。
 タナカさんって、元モデルガン・メーカーなんですよ。
 ですから、各部の刻印や細部の形状の仕上がりは、もうこのルガー、いうことなんかなんもないって領域までいっちゃってる。 
 最初の部分でもちょっと書きましたが、まさに惚れ惚れして頬ずりしたくなるほどの、ほぼパーペキな仕上がりといってもいいんじゃないでせうか。
 アクション的にも、あの難関---<ショートリコイル ぷらす トグルアクション>というのを、エアガンのアクション内に完璧に再現できちゃってますもん。
 ま、そのぶん、エアガン自体の弾速とか命中率とかは必然的にいくらか落ちゃってるんですが、これほどのアーティスティックなルガー・アクションを間近で見せられて、そのようなBB弾的些末事に目くじらを立てるようなルガー・ファンは、恐らくいないでせう。
 ただ、このタナカ・ルガーには、知っての通り、マガジンからの重度のガス漏れという、致命的な欠点があるんです。
 これは、どうも構造上の問題らしい。
 それはね、実銃のルガーはストライカー方式であるのに、タナカ・ルガーにおいては、トグル・アクション式の再現のために、あえて内蔵ハンマー方式というのを採用している、そのためのメカ・トラブルのようなんですわ。
 この内蔵ハンマーっていうのが、いうなれば、タナカ・ルガーのミソなわけ。
 こいつがダウンしてると、マガジンは挿入できない。この内蔵ハンマーをアップすればマガジンは挿入可能なんだけど、それをすると、マガジンを挿したまま、内蔵ハンマーは常にダウンしてる状態---その際、マガジンについているバルブは押されっぱなし! ってことになる。
 これじゃあ、バルブかバルブのOリングかが馬鹿になって、いつかガス漏れがはじまるのは必然じゃないですか。
 しかし、まあ、これが、タナカ・ルガーのガス漏れの、基本的な構造なんですわ。
 で、僕は、2代目の当ルガーを入手する際、ある程度のガス漏れは覚悟していたんだけど、このルガーの購入時、購入先のエチゴヤ横浜店の店長さんから思わぬ「裏ワザ」を教わったんです。
 それは、内蔵ハンマーを、マガジンのバルブに触れさせない状態のまま、ルガーを保存する方法でした。
 これが、実際的にどれほど有効な手段なのかはまだ分かりませんが、これを実行して以来、いまのところ、僕のルガーの状態は非常に快調です。
 そこで、店長伝授のその「裏ワザ」を、この場を借りて、ここに公開しちゃおうと思うんです。


               


 そのやりかたはですねえ---

1. BB弾を撃ちつくしたあと、ホールド・オープン状態になったルガーのトグルを引き、銃をガチャリと再び弾丸発射OKの状態にする。(ただし、この状態ではマガジンの中身は空なので、ここでトリガーを引くと、空砲ガス撃ち、すなわち、トグル・アクションが再度始動し、トグルがまたまたホールド・オープンすることになる)
2. マガジンキャッチのボタンを押し、マガジンをグリップから7mm ほど出す。(この状態になると、ガスと銃との通路が遮断されるわけだから、トリガーを引いても銃は作動しない)
3. その状態のまま、銃のトリガーを引く。すると、カシャリという、内蔵ハンマーの落ちる音が聴こえるはず。
4. この内蔵ハンマーの落ちるカシャリを確認したら、左手で銃身の銃口部を銃本体に向けて押し、ショートリコイル初期の状態を、まあ人工的につくっちゃう。
5. そうして、その人工ショートリコイルの状態を維持したままで、さらに空いた右手のほうで、今度は、トグル・ジョイントを「少しだけ」作動させる。このとき、注意しなければいけないのは、トグルを指で動かすのは、あくまで「少しだけ」であるという点。ある一点をこえてトグルを引きすぎると、それはすなわち弾丸の装填となり、内蔵ハンマーがマガジンのバルブにかかった状態、いわゆる発射1秒前の通常の状態となってしまう。
6. 左手で銃口を押し、右手ではトグルを3分の1ほど「引きかけた」この中途半端なショートリコイル状態を維持したまま、空いた腹、もしくは壁や床とかを使って、今度は、さきほどグリップから7mm ほど引き出したマガジンを、再び、銃本体に押しもどしてやる。
7. タナカ・ルガーの通常の機構でいうと、トリガーを引いて内蔵ハンマーが落ちたこの状態では、マガジンをグリップ内に押しこめることは通常ならできない。しかし、このハーフ・クラッチのような「人工ハーフ・ショートリコイル」の状態を経過させると、すんなりとマガジンをグリップ内に完全に押しこめることができちゃう。しかも、内蔵ハンマーは「発射準備」の体勢に入っていず、トリガーを引こうにも引けない状態になっている。

 これが、僕がエチゴヤ横浜店の店長から伝授された一連の「裏ワザ」なんです。
 実際、この状態にしておくと、ルガーのセーフティー・レバーは、もう使えんのですよ。
 ということはすなわち、マガジンのバルブと内蔵ハンマーとのルートの接触を、ここで一度断つことができた、ということになるんじゃないですか。
 ということはつまり、タナカ・ルガーの構造上の弱点---マガジンのバルブに常に内蔵ハンマーが接触しており、その日常的な圧力がやがてバルブ自体を痛め、構造的欠点ともいえるマガジンのガス漏れ状態を招く---といった一連のリスキーな危険を、一時的といえども、遠去けることができたということです。
 要するに、これは、ガス漏れの危険から、愛銃を守るための防災アクションになりうるテクなんじゃないか、と僕なんかは思うわけなんですよ。
 まあ、僕は、本来メカにはメチャ暗い男だし、メカに関する理解も正直深くないほうなんですが、タナカ・ルガーの魅惑にとりつかれた同好の士に、少しでも役に立てばいいなあと思い、これらの文章を綴ってみた次第です。
 このどーでもいいような駄文が隠れルガー党の誰かさんの役に立てるなら、一介のルガー好き---正直、ルガーとおなじくらいワルサーも大好きなんですが---として、これ以上の誉れはありません…。(^.^;>

 


 




      
 
 
 

徒然その53☆THE GUN☆

2011-02-18 19:59:12 | エアガン小唄
                             

 平和を愛し、戦争を憎むことでは人後に落ちないつもりのイーダちゃんですが、幼少のみぎりより、なぜか拳銃だけは非常に好きでありました。
 団地の谷間の夕暮れの公園で銀玉鉄砲の撃ちあいをやったり、あるいは、友達の兄ちゃんがモデルガンを買ったと聴いたら、さっそく見物にいかせてもらったり、生まれてはじめて買ったブローバック・モデルガンを試し撃ちしたら、予想より勢いよく飛びだした薬莢でガラスを割っちゃったり---ガンに関するメモリアルはいくつもありますね---ま、いろいろやったもんです。
 ストイシズムをそのまま形象化したみたいな、あの黒光りした、鋼鉄の武器の冷たーい魅力! うーむ、あれを、どう表現したもんでせう?
 銃のグリップを握ったとき前腕に感じる、あのなんともいえないずっしりした、ふしぎな力感。
 小学校のときから、TVドラマの撃ちあいシーンでは、いつも敵味方相方の右手に注目してたもんです。
 当時のドラマは拳銃の考証なんてそうとういいかげんでしてね、「なんじゃ、あの玩具は!?」と一見して分かるようなチャチいものが多かったんですが、たまにそうじゃない、ちゃんと考証して選ばれた拳銃が使われてるのを見たときなんかはもうドキドキしちゃってね、翌日、学校で同好の友達とそのことを熱く語りあったりしたものです。
 むろん、あれは人殺しの道具でせう---ちげえねえ!---ええ、否定する気はさらさらありません。
 いままでつきあった女性で、この趣味に対して理解を示してくれたひとはあまりいませんでした。女性は、だいたい銃が嫌いなようですね。
 僕自身もほかの趣味とちがって、こいつだけはうまいこと打ちあけられませんでした。
 もしかして、打ちあけたくなかったのかも…。なんちゅーか、女性と共有したくない世界っていうのも、やっぱりそれはあるじゃないですか? まあ世界って呼べるほど大したもんじゃありませんが、僕とGUNとのあいだには、長いことそのような関係がありつづけていたのでありますよ…。

 えーと、拳銃には大きく分けて、ふたつのタイプがありまして---。
 ひとつは、西部劇なんかでよく出てくる、撃鉄のとこにレンコンみたいな回転弾倉がついた回転式、いわゆるリボルバーといったタイプです。アメリカの刑事ドラマなんかで刑事さんがもったりしてるのは、だいたいがこっちのタイプ。スミス&ウエッソンのスナップ・ノーズなんかが、ひょっとして皆の最大公約数的な回転式のイメージなのかな。
 ありていにいって故障が少ないんですよ、このリボルバー・タイプの拳銃って。
 拳銃の弾丸って、ごくたまに不発弾が生じることがあるんです。撃ちあいのさなかにそんな目にあって、そのときもっていたのが、たまたま古いタイプの自動式拳銃だったとしたら、お気の毒ですがあなたはまず確実にお陀仏です。
 でも、リボルバーだったらそんなことはない、トリガーを引けば、次の弾は瞬時に発射できます。
 それに、砂塵の舞う砂漠で銃撃戦をやっても、故障しにくい頑丈なメカニズムをもってるんですね。
 だから、いつのまにかアメリカの開拓時代の精神的象徴にまでになっちゃってね、その影響からかアメリカはいまでもリボルバーの需要が大変に多いんです。そういえば、まえにいっぺん訪れたカリフォルニア州オークランドのスーパーでも、ガラスケースのなかにこの手のリボルバー、いっぱい売ってましたっけね---。

 映画「ダーティーハリー」、あと、漫画の「ドーベルマン刑事」の影響なんかもあって、僕の中学時代は、リボルバー派閥がえらく幅を効かせていたんですね。僕も、リボルバーのモデルガンはずいぶん買いました。
 でも、最終的にどっちが好きかと問われれば、僕は、いつでも圧倒的に自動式に票を入れるひとでした。
 要するに、とってもオートマチックびいきのガン・マニアだったわけなんですよ、少年時のイーダちゃんは。
 リボルバーは野性味があって、素朴で、力強いんだけど、やっぱり、いささかほこりっぽくて、最終的にはカントリー風味なんですよ。バッファローの群れをを馬で追っかけていって、後ろからバーンみたいな。
 そこいくと、ブローニングやルガーなんかに代表されるヨーロッパのオートマチックは、なんというか、もうちょっとインテリ風味にひねくれた香りがしてるんです。軍服を着た将校だとか、世紀末の共産党崩れの青年だとかがもってると似合うような、ちょっとばかり退廃的な、ノスタルジックな歴史臭がほのかにたゆたっている、とでもいいますか…。
 そう、自動式の拳銃には、安全装置の瀟洒で淫微な細工のあたりに、なんとなく罪の香りが貼りついてる気がします。
 いささか倒錯っぽい感傷だっていうのは自分でも分かっちゃいるんですが、この自動式拳銃の独自の吸引力には、僕は、いまだに抗いがたいものがある。
 その代表ともいえるガンが、ページ冒頭にUPしたドイツの名銃---あのワルサーP-38なのでありまする。
 これは、瀟洒です---そうお思いになりません?
 瀟洒でいてシック、しかも、怜悧なまでに機能的とくる---僕あ、ワグナーよりワルサーのがはるかに好きだなあ。
 ゲルマン魂の根本を見せつけられてるみたいな、これ、魅惑の極上品ですよ。
 ダブル・アクションのショート・リコイル式というのは、当時の最先端のメカニズムだったんです。
 装弾数は8+1発。口径は9ミリ。杉板を9枚撃ちぬける、強力なルガー・パラベラム弾を使用。
 うーん、何度見てもセクシーなかたちなり---。(^o^;>
 ひとことでいって、これ、実に色気のある銃なんです。
 あの「ルパン三世」の愛用拳銃として有名になった銃でもありますね…。

                
                     
 で、2番目のこの写真は、ワルサーあたりとくらべると超マイナーな拳銃---。
 ぱっと見て、もう風情がないっしょ? スポーティーでつるんと乾いてて、ええ、お察しの通り、これ、アメリカの銃なんです。
 コルト社の自動式拳銃、コルト・ウッズマンですね。
 これ知ってるひとはマニアだと思うな。
 これ有名にしたのは、なんといっても漫画家の望月三起也じゃないですかねえ。いまの若い世代のひとはもう知らないかなあ。ちょっとむかしのアクション漫画に「ワイルド7」っていうのがありまして、その物語の主人公の「飛葉ちゃん」が愛用してたのがこの銃だったんですよ。
 ええ、たしか「飛葉ちゃん」は、この長い銃身を切りつめた改造仕立てにして使っておりました。
 ホルスターから抜き撃ちしやすい、接近戦むけの改造だったんでせうね。
 あと、このガン、ストッピング・パワーの劣る、22口径なんですよ---もっとも、そのぶん引き金も軽いし、反動もほとんどないらしいんですけど。
 ただ、命中率だけはとってもいいみたい。
 でも、考えてみれば当然の助動詞で、もともとこれはコルト社が、少年の射的競技向けに開発した銃だった、ということなんですよ。
 おっと、もひとつドン・ファゲッ!---大藪春彦の傑作「野獣死すべし」の主人公・伊達那彦の愛用銃もたしかこれでありました。
 なんで? といいたくなるけど、なにか、ああした大家たちの想像力を誘うものがある銃なんでせうんね、恐らく。
 たぶんの予測でいわせてもらえるなら、この銃のキーワードは「少年」なんだと思いますよ。
 なんというか、ふしぎな青っぽさを感じさせる、スマートな銃なんですよ。ホモとか少年愛とかあえていうつもりはないんですが、もしも腐女子趣味のある方がいらしたら、自分の物語の主人公にこのガンをもたせたら結構いいかもしれない。
 コルト・ウッズマン---しなやかで、手足の長い、俊足な小鹿みたいな逸品です---口径は22LR、装弾数は10+1ですね---。
 
 そうして、3番目の最後の銃はね、こいつ---

                            

 たぶん、知らないひとはまったく知らないんじゃないかな。ええ、超・地味めの銃なんですが。
 ベルギーの天才設計士ブローニングが設計したクラッシックな名銃、ブローニングM1910です。
 ただ、勘のいいひとなら、特に銃のことなんかなんにも知らなくとも、ぱっと見ただけで、これがヨーロッパ製の銃だってことが察せられると思うな。
 実際、僕の知りあいのある女の子なんて、服の産地をあてるみたいな気安さで、このガンの出生地をばっちり見事に当てちゃいました。ガンの知識なんてゼロに等しい子にもかかわらず---。
 でも、彼女いわく、この拳銃の産地をあてるなんて簡単なんですって。
 第一、この銃には、はなからそういったヨーロッパ精神の燐紛がこびりついてるじゃない? 誰がどう見ても南米産じゃない、アフリカ産でも中東産でもなさそうだ、ロシア製みたいなずさんな大柄さも見えないし、アメリカ製みたいに「つるん」としてもいない、じゃあ、ヨーロッパで決まりじゃないか---なんて。
 とにかく風格のあるいい銃だと思いますよ。
 ひとことでいうなら「渋い!」の極致。
 ちょっと餓鬼には扱えないんじゃないかな。こんな大人っぽい佇まいの銃っていうのは、寡聞にして僕はほかに知りません。
 拳銃自体は非常に抑えられた、シックで禁欲的なデザインをしてるんですが、その背後に、とてつもなく爛熟した文化が花開いていたっていうのが、なんとなく感じられるんですよね。
 なんか、ふしぎな銃なんだよなあ---FNブローニングM1910---口径380ACP。全長152ミリ。装弾数6+1発です。
 イーダちゃんは中学のときにモデルガンでこの銃を購入し、分解掃除のときにまちがって破壊してしまった、ほろ苦い前科をもってるんです。
 僕は、機械類の整備とか苦手で、愛すべき自分のモデルガン・コレクションも、分解掃除するたびに部品を失くしたり、バネを折ったりして、それこそかたっぱしから破壊してしまったのでありました。
 だから、結局、モデルガン・フリークだった時期は、比較的短かったように記憶してます。
 しかし、なんちゅーか、週末の夕べに、自室でモデルガンをかしかし分解清掃したりするのは、あれは、けっこう愉しかったですね。
 ほかの娯楽とはちょっと比較できない、一時代まえの職人気分の、いい宵をすごせたといまでは思っています。
 
 ねえ---こんな拳銃みたいな小さな分野においても、やっぱり21世紀に入って、いろんな傾向が変わってきましたよねえ。
 アメリカ軍がベレッタを正式拳銃に採用したって聴いたときは、僕は、マジびっくりしました。アメリカが自分の歴史的アイデンティティを捨てたように感じられ、機能と偏差値一辺倒の、ずいぶんつまんない無味乾燥の国になっちゃったんだな、と思ったのを覚えています。
 本来ならもっと銃の機能的な側面に光をあてるべきなんでせうが、つい茶器とか美術品を見るような目で銃を見てしまって、あい失礼---。
 ま、ロシアくんだりまでバズーカを撃ちにでかけるようなマニアの友人なんかとはちがって、僕は、ただの平凡な拳銃ファンにすぎないんだから、とりあえず今日のところはこれくらいの出来でいいのかも。
 もっとも、銃好きなのはホントです---いつか、カスタムのワルサーP38を手に入れて、懲りもせずまた分解清掃にチャレンジしたいなあ、なんてちろっと思ったりもしています…。(^^;

                                                                                      fin.