イーダちゃんの「晴れときどき瞑想」♪

美味しい人生、というのが目標。毎日を豊かにする音楽、温泉、本なぞについて、徒然なるままに語っていきたいですねえ(^^;>

徒然その38☆独断と偏見の Beatles ベストテン! PART1☆

2010-12-25 09:11:31 | ☆ザ・ぐれいとミュージシャン☆
                                  

 あのー あらかじめ断っておきたいのは、これはあくまでイーダちゃん主導の遊びのランキングだということです。
 ですから、あまり本気になって怒ったりされませんように。4人グループなのにポールの曲が1曲もないのはどういうわけだ! とか、後のロックの礎となった後期の曲が少ないのはどうにも解せん! とか---むきにならないようお願いしたいと思います。
 むかしっから僕は骨の髄までのジョン・レノン・フリークなんですから。
 死んだってこれは矯正できないと思う。でも、とどのつまり、批評の主軸は、主観をよりどころにするしかないですからね。
 客観的たろうとするのはいい。しかし、そのために主観を捨てたら、これは本末転倒というものでせう。
 完璧な客観なんて哲学的にいってもギャグ以外の何物でもないですしね。
 異論があるのははなから承知---しかし、どうでもいい能書きはあとまわしにして、そろそろ本番いきますか。はい。

----じゃーーーーん! (トここでア・ハードデイズナイトのイントロのG7sus4が鳴ったつもり)

<No.1 I Want To Hold Your Hand >
 さんざん迷ったんですが、ナンバーワン・ソングは、やはりこれ以外にないでせう。
 何度聴いても歌いだしが覚えられない謎のイントロといい、C→G7→Am→Em という影を含んだやや無茶でふしぎな展開といい、それらの音楽の展開のうえに安々と大股で乗っかって、極上の張りに満ちた声を心もちかすれさせながら、青春の喜びと苦みとを同時にふりまきつつぐいぐいと強引に邁進していく、若きジョン・レノンの味わいここに極まれり、の一品です。
 これ、ジョンのベスト・ヴォーカルのひとつだと思うな。
 書の名人でもときどきいるじゃないですか---筆を紙からもちあげる際の、ほんのわずかな墨の歪みですら表現として光り輝く、みたいな。
 この時期のジョン・レノンがまさにそれですね。小林秀雄流にいうなら「吐いた泥までが輝く」---明るい場所から暗い曲がり角(Am→Emの部分)に入るときの声の一瞬の翳り具合が、全力でシャウトする直前の声の一瞬のため加減が、首をふってロングトーンの雄たけびをあげるクライマックスの声の爆発が---すべてが極上の表現としてここに結実している。
 これはどうやっても、狙ってできるような類いのものじゃありませんや。
 アタマ始発のプロジェクトじゃぜんぜんない。頭と身体が同時進行で進んで、最終的におんなじエクスタシーを共有してる。
 まれにみる奇跡といってもいい。そういう意味でイーダちゃん的には、このころのビートルズは、後期の「サージェント・ペパー」や「リボルバー」も及ばないはるかな高みにいたような気がします。後期のはある程度狙ってやってますからね。少なくともまるきりの無心じゃない。ところが、このころのビートルズはまっさらの無心ですから。その差はでかいと思います。
 そんなジョンの極上ヴォイスをさらに際立たせるように鳴ってる、ポールの声もとてもいい。いい仕事してます、ポール。ポールの声はいつでもジョンをよく引きたたせてくれます、極上のトロを引きたたせるワサビみたく。
 あと、リンゴのドラム。これが極めて並じゃない。何度聴いてもうまいとは思えないんだけど、ビートルズのドラムはやっぱりこのひと以外はないでせう。
 ブラックで、後ノリでいて、しごくシンプルなんだけど、いかにもハート・ウォームであり、ときとしてほんのりキュート、あと、立ちあがりの上りの部分がちょいとシャイでいて---。
 いずれにしてもグーなコンビネーション、いいバンドで、いい曲ですよ。
 青春期特有の青さと苦さの両面を、これほどみずみずしく表現した曲って少ないんじゃないかな。
 そういう意味でこれは、イーダちゃんにとって「恩寵」みたいな、いまも特別な1曲となっています。唯一無二の凄い曲ってわけ。
 最後のコーダ前のE7---I Wanna Hold Your Hand~! の ~の伸ばし部分では、いつでも聴いていて心ごとぐにょりとよじれます。ああ、胸がイタイ…。フルヴェンやマリア・カラスより上かもね。ほかの曲と同一線上で比べることのできない、一期一会の、スペシャルな王冠ソングです---。

<No.2 She Loves You >
 No.1 が「抱きしめたい」でNo.2 が「シー・ラブズ・ユー」となると、月並すぎてがっかりするひとがあるいはいるかも---。
 でも、御免なさい、この2曲だけはどうあってもちょっと譲れません。
 僕がこの曲をはじめて聴いたのは中学の昼休みの校内放送だったのですが、校内スピーカーからの極悪モノラル音だというのに、ジョンとポールのイェーイ、イェーイに、心、ざわざわ震えましたもん。
 聴いた瞬間のインパクトの強さに限っていうなら、この曲、抱きしめたいより上かもわかりません。
 いま思ったんですが、60'Sを吹きぬけたビートルズという現象を誰かに説明する場合、もっともふさわしくて分かりやすい名刺代わりになるのは、もしかしてこの曲かもしれませんね。
 そのくらいこの曲には、ビートルズというバンドの魅力がみっしり詰まってます。
 爆発寸前なくらい、ギチギチに詰めこまれている、といってもいい。
 前のめり気味に駆けだすドラムロールに、いきなりかぶってくるジョンとポールの全力コーラスがまずたまらない。
 ほんの5、6秒の、イントロぬきのこの歌のはじまりに、すべてを賭けちゃってるんですからねえ。この関を切ったみたいな熱気と尋常じゃない勢い---ペース配分まったく無視のこれだけでも相当に無茶な試みなのに、それが歌の終りまで萎むことなく、うねるように疾走しつづけるんですからあきれちゃう。普通、こんなことやれませんって。
 ビートルズの上り調子の爆発的ベクトルを象徴するような、極めつけの1曲---。
 これ聴いて、胸がイタなくならないのは、ひととしてどこかまちがっている気がします。(^.^;>

----ぜんぜん関係ないんですけど、RCサクセションの「トランジスタ・ラジオ」のなかで主人公が屋上で聴いていた曲って、たぶんビートルズの初期ナンバーじゃないですかね? 僕は、「抱きしめたい」か「シー・ラブズ・ユー」あたりが臭いと思う。ストーンズも考えたんだけど、初期のストーンズに青空はちょっとばかり似合わんでせう? 「フロム・ミー・トゥー・ユー」や「プリーズ・プリーズ・ミー」でもむろんありなのですが、やっぱり「抱きしめたい」系であってほしいなあ。

<No.3 I Feel Fine >
 イーダちゃんは、この曲、中学のとき、TVかなんかのCMで偶然聴いたんですよね。
 一瞬でブッ飛びました。
 なんですか、これ? 以来、ずーっとブッ飛びっぱなしです。
 まじめな話、これだけ「翔んだ」曲に出会ったことはあれ以来いちどもないんですよ、残念ながら。
 なんというか、これ、幻視者の曲ですよね---僕は、これ聴くごとにランボーの「見者の手紙」なんかを連想するんですよ---だって、明らかにこの曲、常軌を逸してますもん。ジョンの後期の「ア・デイ・イン・ザ・ライフ」とか「ルーシー」より翔んでるんじゃないかな。ジョンはもともと幻視者一族の末裔のような立ち位置の詩人なんですが、いま挙げた2曲では、まだ書こうという意志が結構感じられたりするじゃないですか。レコーディングという仕事に対する、一種の息苦しい義務感みたいな。いうなれば計画出産みたいな、役所の香りがかすかにするんです。
 でも、この曲は、なんか天気のいい日に、プール際でクスリをキメながらギターをいじっていたら、たちまちポカンと1曲できちゃいました、みたいな安産の気配がするんですよ。つくった、というより、できちゃった、というような---ある意味、とっても南国的な---。
 そういった自由気ままな風情が、たまらなくカッコいい曲です。
 国籍不明のリンゴのラテン・ドラムがまた実によく効いてます。
 この曲でジョンが見せてくれる、いなせな歩きっぷりの見事さときたら!
 音楽の定石に絡めとられたベテラン・ミュージシャンには絶対生みだせない曲でせう、これは。
 イントロの落下フレーズは、強いていうならブルース・コードのブレイク・パターンの変形と読めないこともないのですが、ジョン・レノン独自の超・半音階が(あれ。なんか、ここの部分モーツァルトの記述みたいだゾ)無茶苦茶に多用されているせいで、ブルース的世界からはるけく隔たった、サイケデリック・ワールドみたいな白日の異世界を現出させちゃってる。
 この曲は、まぶしいです。
 サングラスをかけても、レンズの隙から漏れてくる夏日がぎらぎらとまぶしい、あの感じ…。
 この日差しは、季節も、時間も、世間のルールも超えて、貴方の魂をまるごと照らしだします。どんな嘘も隠れられない。この日差しから隠れる場所って、たぶん、ないんじゃないでせうかねえ。
 あらゆる意味で、天才ジョン・レノンを実感できる怖い曲だと思います---。

<No.4 Rock And Roll Music >
 天性のヴォーカリスト・ジョン・レノンを味わうのに、これは格好の1曲です。
 元々は恩師チャック・ベリーの曲なんですが、チャック・ベリーのオリジナルがどこかスカスカのしょぼい印象が否めないのに対し、ジョン全盛期のこのカバー・ヴァージョンは、もう硬質硬派の極みみたいな見事な出来に仕上がっています。
 この路線のカバー名曲はそれこそビートルズ初期には腐るほどあって、「ユー・リアリー・ガット・ア・ホールド・オン・ミー」とか「デイジー・ミス・リージー」とか、どれを選ぼうか少々迷ったのですが、結局これにしました。「ツイスト・アンド・シャウト」もなかなかに捨てがたかったんですが、まあ、たまたま今日はこっちの「ロックンロール・ミュージック」のほうを選んじゃった。けど、本来的には日替わり順不同ということとで処理してくれれば、それでいいかも。
 だって、ここでのジョン、ぴかぴかにきらめいてるんですもん。
 なにをやっても決まっちゃう---歌いながら含み笑いすれば、そこがカッコいい。音程がじゃっかんフラットすれば、今度はそこに投げっぱなしみたいな、かすかにニヒルな風情が生まれてみたり。
 いうなれば自由自在。これだけできれば、そりゃあ歌ってて楽しいだろうと思います。それに加えて、ジョン独特の、ナイフみたいな攻撃性が加味されるわけでせう? これは、やっぱりロック・ヴォーカルの教科書とでもいうしかないですよ。
 この曲を歌うジョンは、ええ、さながら光の国から脱藩してきた不良王子のごとし、です。
 しかも、これ、ワンテイクのみの、ほぼぶっつけ本番のレコーディングだったというんですから、びっくりの二乗です。
 イーダちゃんはよく思うのですが、ジョン・レノンのベスト・ヴォーカルって、自分の声を見せびらかすように歌っていたこのころに尽きるのではないかなあ。後年になると、このひと、自分の声を加工しはじめるじゃないですか。ちょうど「リボルバー」のあたりからでしたっけ? これだけいい声してるのになんで? と僕なんかは思うのですが、どうやら話を総合してみると、ジョンはどうも自分の声が嫌いだったようですね。
 むーっ、もったいなすぎ---天才の考えることはよく分からん…。(xox;>

<No.5 Tell Me Why >
 アルバム「ア・ハードデイズ・ナイト」のなかの1曲---。
 作者であるジョンは「NYの黒人ガール・グループみたいな曲」といっていたそうですが、なーるほど、いわれてみればたしかにそっち系のニュアンスもままありますね。ただ、いちどこのビートルズ・ヴァージョンを聴いちゃうと、団子状の音のインパクトがあまりに強すぎて、NYのガール・グループのことなんて<のほほん>と連想している余裕はまずないですね。
 トリプル・トラックのジョンのひとり3重唱の歌いだしだけでも、これは相当のインパクト---。
 というか、うるさいくらいにパワフルなんです。中学生の僕は、最初にアルバムでこの曲を聴いたときは心底たまげました。
 ロックがうるさい、とはたぶんエルヴィスのときなんかからいわれていた一般的意見だったんでせうが、それでも当時の白人ロック・シンガーは、やっぱり過去の Jazz Vocal の伝統をはみださないように、意外と丁寧に、滑らかに歌っているんですね。ヴェルベット・ヴォイス的に声にまずよそ行きの衣装を着せて、さあ、舞台で歌ってきなさい、みたいなニュアンスといいますか。
 そういったリスナーへの上品な配慮といったものが、この曲においてはかけらもない。
 地声で思いっきりがなりたてる、ジョンの声のこの無礼な轟きを聴け! とでもいいたいですね。
 特に後半部、If there's anythin' I can't do のところの裏声の3声スキャット---ねえ、これ、まったく揃ってないんじゃないの、ジョン?
 プロの歌でこんなハチャメチャなのを聴いたことがなかったイーダちゃんは、これ聴いたときは、マジびっくりでした。
 で、またレコードをとめて---レコードって単語に泣けますね、嗚呼、レコード時代!---針をもどして、もう一度この曲を聴きなおしたもんです。そしたら、またまたびっくりした。2度目なのにね。いまじゃもう300何度目あたりになるんでせうが、いま聴いてもまだちょいびっくりしますもんね。ここに封じこめられた音楽パワーは凄いもんですよ。
 まったくもって耳に優しくない---そのあたりの感性がとっても素敵です。
 いまでこそラップとかオルタナティヴとかさまざまな音楽ジャンルが生まれてきましたが、ここまで尖っている音楽はそうないように思います。音楽が商売になってしまってからというもの、シンガーはまずスポンサーやらレコード会社やらに配慮するようになっちゃいましたから---あと、PTAとか都条令とかにもね。
 それじゃあいかん、いかんぞう、とイーダちゃんは心から世情を憂います。
 管理された、誰の耳にも優しい、誰の立場も傷つけない、甘口の、お利口な音楽に未来はありません。
 本当の自由がつまっているのは、ジョンのこの< Tell Me Why >のコーラス部みたいな、ハチャメチャな音楽のなかじゃないか、と思います…。
 
                                                               (第一部、了) 
  P.S.ちょい遅れたけどハッピー・クリスマス。 (^.^;>