Dr. WAKASAGI at HEI-RIVER(閉伊川ワカサギ博士)

森川海をつなぐ学び合いの活動を紹介します

美しい国土,庭園の島を目指した五全総の理念はどこに

2012-02-02 | 水圏環境教育

1998年に,戦後5度目の全国総合開発計画が発表された。五全総は21世紀の国土のグランドデザインとして美しい国土の創造を掲げている。2015年を目標年次として基本目標を「歴史と風土の特性に根ざした新しい文化と生活様式を持つ人々日本人が住む美しい国土,庭園の島ともいうべき世界に誇りうる日本列島を現出させ,地球時代に生きる我が国のアイデンティティを確立する」としている。

ここで強調されているのは美しい国土,庭園の島ともいうべき世界に誇りうる日本列島である。

グランドデザインは,これまでの太平洋工業ベルト地帯を中心とした工業地帯を拡大することではなく,気候・風土・文化・地理的条件を巧みに活用して東北北海道,日本海側,と南の太平洋側の3つのブロックに分けて生活空間に合わせて開発するというものである。

つまり,地域の特性を巧みに活かした国づくりを目指したのである。2015年が目標年次であるが,今どれだけ進んでいるのであろうか。

目標に書かれている庭園の島の原点は古事記にさかのぼるという。島には庭という意味があったという。平安末期には作庭記という世界最古の造園技術書がある。この思想の原点は「人の立てたる石は生得の山水にはまさるべからず」というものである。つまり,庭を作るときは自然に逆らってはいけない,というものであり,庭を作るときは自然のごとく表現するというのだ。

もし,これを今回の被災地域に当てはめる。人工的なコンクリートで14.5mもの防潮堤を作るということは,日本古来の考え方に相反するものであり,日本人が千年以上もこよなく愛した人工でない自然のような庭の美しさの価値意識に反するものではないか。

日本人は自然の情景を大切にして生きてきたことが,面影を大切にする文化,美しい文化を形作った。日本の歴史,そして美しい庭園の島を目指した五全総を見直し,もう一度原点に立ち返り将来の行く末を再考することが必要なのではないだろうか。

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