Dr. WAKASAGI at HEI-RIVER(閉伊川ワカサギ博士)

森川海をつなぐ学び合いの活動を紹介します

東日本大震災プロジェクト研究

2011-06-18 | 里海探偵団
県漁連会長を訪問。被災状況の説明を受けながら,復興対策についての話に及ぶと,これからの漁業権,漁協の在り方についての話題になった。
漁業は古くからの伝統を守るためそして,自然を守るためになくてはならないものである。森,川,海のつながりによって育まれた水産資源をいかにして持続的に利用するか,とてもよく運用されている。世界に誇れるものである。また,漁協が核となることによって公正な資源の活用ができるのである。さらに,漁獲,買受け,流通,加工が一体となってはじめて水産業である。漁業者だけが補助を受けても買受け,流通,加工が十分でないと機能しない。こうしたことを国も理解してほしい。

その後,カキ養殖をいち早く再開した漁業者にインタビューした。北海道から取り寄せた埋込式アンカーが170のうちほとんどが生き残っていることが分かり,早期再開を決めた。種ガキも調達できた。ちょうど訪れたときは種ガキのはさみ込みと沖合での設置作業をしているところであった。カキは買い取ってもらうが,むき身10kgで3500円である。むき身10kgを作るためには100kgの殻付きカキを水揚げしないといけない。しかも,水切りが悪いとして11.5kgを拠出する必要がある。「15%の上乗せをとるというのはあまりにもひどい。10個で1個分が儲けになる。ぜひ,個人販売に取り組んでほしい。コツコツやることも大切であるが,かき小屋をぜひやるべきである。わずかな努力で大きな価値をつけることができる。」とアドバイスをした。

感想 国は公正公平を考えて,予算を決定する,したがって水産業全てを補償の対象とすると他の産業に対しても同様となり,予算規模が膨らむ。漁協も公正な資源管理を重要視して,漁民から生産物を買い受ける。したがって,公共性の高いと判断されたものが一番の価値基準であり,漁業者のニーズ,地域のニーズ,は後回しになってしまう。

復興,振興のためには新しい価値基準が必要であり,その基準とは住民ベースであり,地域ベースであり,そしてそれらがベースとなることで価値を生み出すためのプロジェクトデザインが必要になってくるであろう。そのためには,今の制度ではあまりにも個人に負担がかかりすぎている。もっと,個人の負担を軽減し,新しい価値を生み出すための支援をいかにするかが求められている。