心の風景 認知的体験

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介護保険

2010-07-03 | 心の体験的日記
自分はすでに3年くらい、保険料を支払っている
7月からは妻も保険料を払うように通知がきた
65歳以上は強制加入
あわせると、年15万は超える
結構の額である
使わなければ人助け
気持ちよく支払うことにしよう

海保の著作集

2010-07-03 | 心の体験的日記


単著本
●ミスに強くなるーー安全のためのミスの心理学(中災防新書)
●ミスをきっぱりなくす本(成美堂文庫)
●集中力を高めるトレーニング(あさ出版)
●学習力トレーニング(岩波ジュニア新書 
●心理学ってどんなもの (岩波ジュニア新書  
●くたばれ、マニュアル 書き手の錯覚、読み手の癇癪(新曜社)
●一目でわかる表現の心理技法—文書・図表・イラスト(共立出版)
●自己表現力をつける(日本経済新聞社)*
●説明を授業に生かす先生(図書文化社)
●失敗をまーいいかとする心の訓練 (小学館文庫)
●連想活用術—心の癒しから創造支援まで ( 中公新書 )*
●パワーアップ集中術 (日本実業出版社)*
● 読ませる・見せる表現のコツ—わかりやすい文章・図表の書き方からイラスト・地図の描き方まで(日本実業出版社)
●こうすればわかりやすい表現になる—認知表現学への招待(福村出版)*
●「誤り」の心理を読む ( 講談社現代新書)*

共著本
●「発想支援の心理学」(松尾と共著) 培風館 
●ワードマップ ヒューマンエラー(田辺と共著)  新曜社
●人を動かす文章づくり—心理学からのアプローチ(山本と共著)(福村出版)
●Q&A 心理データ解析(服部と共著)(福村出版)
●人に優しいコンピュータ画面設計—ユーザ・インタフェース設計への認知心理学的アプローチ(加藤と共著)日経BP社
●1認知的インタフェース—コンピュータとの知的つきあい方 ワードマップ(黒須、原田と共著)(新曜社)

編集本、監修本は省略

ヒューマンエラーのさまざま

2010-07-03 | ヒューマンエラー

○やってはいけないことをしてしまう(「使命の取り違えエラー」)
  例 ノルマを達成するために手順を無視して効率化をはかってひやり

○勝手な思い込みをしてしまう
(「思い込みエラー(ミステイク)」
  例 モニターの警報が鳴った。いつも
    の警報の不具合と思い込んでいつ
    もの操作をしたが、圧力が限界点
    に達してしまいひやり。
○やるべきことをしない/余計なことをしてしまう(「うっかりミス」)
  例 同僚と話をしながら、機械操作を
    していたら、あやうく機械に巻き
    込まれそうになった。
○やるべきこと/やったことを確認しない(「確認ミス」)
  例 確認「行為」はしたものの、きちんとしなかったために、工具を置き忘れ
    てしまいひやり。

消費税10%、議員定数10%削減、キャリア公務員退職金10%削減で突っ走れ

2010-07-03 | 心の体験的日記
菅さんもだめかなー
ここで
ぶれてはダメ
あれこれもダメ

このトリプルイッシュウだけで闘え
あれこれ条件をつけるない
それでだめなら、それは、国民が悪い
それくらいの覚悟が今の日本の総理には必要


突然、画面が真っ暗

2010-07-03 | 心の体験的日記
検索をしていた
突然、画面が真っ暗
電源を押しても応答なし
松本さんにきたもらった
まさか、とおもいながら、
2mはなれた電源のコンセントを入れ直した
ついた
こんなことってあるんだなー
IT守護神・松本さん
ありがとうございました

振込み詐欺その2

2010-07-03 | 認知心理学
●さて、いかにお金を振り込ませるか

 「ただ、ハラダさんが、もし道代さんには過失はないと認めれば、10日間の拘留で済みます。けれども、道代さん側が保釈金を払えば、今日、出られます」
 《話を聞いてすぐ、道代が最近出張から帰ってきたばかりで、今仕事から手が離せないほど忙しいと言っていたのを思い出しました。また、会社に知られたら良くないとも思い、今日のうちに、と思いました》
「おいくらですか」
 「200万円です。出せますか?」
 「はい」
 「現金ですか、振り込みですか」
 「現金を直接、そちらへ持っていきます」
 「第一審は11時半にあります」
 「そちらへ向かうには、2時間近くかかります」
「お宅はどちらですか」 「小平駅です」
「解説」
①相手を思いのままに操る最終段階である。ここを失敗すると、なんのためのそれまでの苦労かということになる。
まず、娘の苦境を救うために解決策を示してやる。これが相手を動かすには必須である。
よくよく考えれば、世の中で発生している苦境の解決には、多彩な解決策があり、しかも時間がかかるのが普通である。しかし、ここでは、相手に考えさせるのではなく、こちらからお金だけ払えば解決です、とずばり提示してやる。そうすれば、あれこれ考えたり迷ったりする必要がない。言うとおりに動きやすい。その程度で済むなら、かわいい娘のためにやってやろうという気持ちになる。
②もう一つここで使われている手法は、時間切迫、つまりあせらせる、というものである。「あと10分で」「できるだけ早く」とかいうセリフを使う。これによって、深く考えずに相手の言うとおりに動いてしまう。
これは、広告宣伝の手法として良く知られている「アイドマの法則」の一つを利用したものである。アイドマの法則とは、次の5つの趣向の頭文字をとったものである。
・Attention 注意を引きつける
・Interest 利益に訴える
・Desire 欲求に訴える
・Memory 覚えてもらう
・Action 買いにきてもらう
時間切迫は、このうちactionを引き出す技法の一つなのである。「先着100名に豪華景品を差し上げます」という定型的な惹句はよく目にするはずである。あれと軌を一にする説得技法である。

●囲い込みをする
「それは無理ですね。それでは、電車に乗られる前に、こちらへ電話をしてください。私の連絡先は、(携帯電話の番号)。お金は、普通預金から出されるのですか?」
 「定期預金です」
 「普通預金ではだめですか」
 「お金がほとんど入っていません」
 「いくら残っているのですか?」
「……」
《このやり取りのあたりでさすがに、どうもおかしいな、と思い始めました》
 「では、お金を降ろしたら、連絡をください」
「解説」
 思い込みの世界に囲い込んだままにしておくことも必要である。このケースでは、お金を早く振り込ませたいために、詐欺師があせったようである。物語(思い込みの世界)の一貫性、必然性を疑わせるようなセリフを連発してしまう。さすがに、大切なお金の話になると、被害者のほうにも警戒心が沸いてくるようである。
 このケースのもう一つの失敗は、電話を無造作に切ってしまったことである。これで、相手を思い込みの世界から一時的に離脱させるきっかけを作ってしまった。「心配ですので、携帯で逐一、そちらの状況をお知らせください。それに対応できるようにしておきますから」とでも言ってから電話を切るようにでもされたら、思い込みの世界に囲われたたままの状態だったかもしれない。

●土壇場で、詐欺に気がつく

 電話が切れた後、陽子さんは急いで道代さんの名刺を探し出し、道代さんの職場へ電話をした。
 あいにく、道代さんの姿は今見あたらない、とのことだった。道代さんの夫に連絡し、状況を話すと、そんな話はおかしいですよ、と笑われた。念のため、地元の警察署に電話をかけ、板橋区大和町に事故があったかどうか、品川の拘置所に道代さんがいるかどうか、調べてほしいと頼んだ。
 2階にいた夫が、1階で陽子さんがバタバタしているのを聞きつけて、「どうした?」と聞いてきた。
《けれども、すっかり私は慌てているので、「ちょっと待って」とこたえるので精いっぱいでした》
 すると、ナカヤマから、前の電話から5分を待たずに、次の電話がかかってきた。
「定期口座ですと、お金を降ろすときに銀行から理由を聞かれます。このように(内容覚えておらず)理由をこたえてください」
 その後、すぐに地元の警察から電話があり、板橋区の事故も拘置所の件も、実際にはない、とのことだった。
 5分後ほどに、再び電話があった。「ハラダというものです」。被害者の夫を名乗った。「待ちに待った子どもだったんです。謝罪をしていただきたい」。泣き声だった。
落ち着きを取り戻した陽子さんは初めて、その演技臭さを感じた
「解説」
 土壇場での解決である。ここで注意してほしいのは、解決は自分一人の力ではなかったところである。
詐欺師たちは、自分だけで解決しよう/しなければという気持ちにさせるような物語を作り出して、思い込みの世界への囲い込みをしようとする。アダルトサイトの接続料だとか、痴漢事件、交通事故のもみ消しなどを持ち出す。このケースでも、事故が娘の会社に知られたら大変、200万円で片がつくなら夫にも内緒、自分の気持ちを娘にこんな形で示せるなら、という気持ちにさせる。したがって、夫が「どうした?」と聞いてくれても、事をつまびらかにしない気持ちを責めることはできない。
それでも、職場や警察や義理の息子への電話が詐欺被害から陽子さんを救ってくれた。
思い込みの世界からの脱出は、自分一人では無理である。ましてや、そこに閉じこめておく力が強力に働いている時には。そんな時の助けは、周囲の人々である。

●振り込め詐欺対策のいくつか
さて、こうした振り込め詐欺に引っかからないための対策を考えてみることにする。
やっかいな事には、思い込みには、「思いこんだら地獄まで」というところがある。ひとたび架空の物語の世界に入ってしまうと、そこから自力で脱出するのは極めて難しい。周囲の人々の助けが必要である。
 となると、詐欺に引っかからないためには、思い込みの世界へと誘導される前に、そのおかしさに気がつくこと(水際対策)、最後のお金を出すところでの工夫(出口対策)しかない。
1)水際対策
①犯罪に関する知識を豊富にしておく
 マスコミが流すニュースは犯罪情報が実に多い。これを自分には関係ないよそ事として見る人もまた実に多い。安全性バイアスと呼ばれている現象の一つである。いろいろの危険情報を得ても、人は自分だけは安全という奇妙な状況認識を強く持つ。とことんまでいかないと危険との認識をしない。
それはさておくとしても、やはり犯罪に強くなるには、どんな犯罪がどのような手口でおこなわているかについて、できるだけ情報を収集し、知識としてもつに越したことない。なんといっても「知は力なり」である。その際、できるだけ自分に引きつけてそうした情報を収集するように心がけておくと、いざという時に役立つ。
②大所高所から状況を眺めるようにする
 思い込みの世界に入ってしまうのは、局所的な手がかりだけに強く依存してしまうからである。普段から、全体や一段高いところから状況を眺めるようにしておくと良い。
たとえば、一つの仕事をするにも、その仕事は全体のどの部分なのか、それは仕事全体にとってどんな意味があるのかなどを考えるよう習慣づけておくことである。
③多角的に見る
 一つだけの限定された見方をしてしまうことから、思い込みがはじまる。もっと別の見方はないかと自問自答してみるようにすると良い。懐疑精神、批判精神を持つことと言ってもよい。
④即断即決をしない
 とりわけ、感情が高ぶってしまっているような時には、それが治まるまで大事な決断はしないようにする。可能ならその事態から一時的に離脱する。トイレに行ってみる、人と相談してみるなどが有効である。
③考えていることを周囲の人が聞いてくれる環境を作る
 思い込みは頭の中で発生する。したがって、自分から話さなければ、誰も何が起こっているかわからない。自分の思いを普段から周囲の人に話せるようなコミュニケーション環境にしておく。話すことでみずから気がつくということもある。

2)出口対策
①間合いを入れる
「即断即決をしない」と軌を一にする対策だが、いざ行動に移す際に、一度、深呼吸でもして、さらには、これで大丈夫かの点検をしてから、行動に踏み切るようにする。
②大金の支払いはフールプルーフで
 ATMの利便性が、振り込み詐欺を支えているもう一つのIT技術である。簡単に100万、200万の大金が見知らぬ人に瞬時に送れるからこその犯罪である。
金融機関もようやく送付金額の上限設定の対策を取るようになったが、個人でもそれなりの対策を考えておいたほうが良い。
そのポイントは、フールプルーフ(fool-proof)である。大金を振り込む(動かす)際には、いつもよりやりにくくしておくことである。
フールプルーフとは、うっかりミスの防止策の一つである。無意識に何かをしてしまってついうっかりとなるのを防いだり、危ないことをしてもただちには事故につながらないようにする仕掛けである。
たとえば、ガスを使うには、ガス栓を押してから回す、ポットからお湯を出すには「解除」を押してからでないと出ないようにする仕掛けである。
我が家でも、10万円以上のお金の移動は、一言、その旨を相手に言う、という取り決めにしている。

●関連した余話を3つ
1)振り込め詐欺の被害者にみる日本人のメンタリティ(心性)
「その1;母/父子密着」
 アメリカで活躍していて20年ぶりに帰国したある教授によると、こういう詐欺事件はアメリカでは聞いたことはなかったし、起こり得ないのではないかという。
 その理由は、2つ。
 一つは、母子/夫子分離がきちんと出来ているので、成人した子供の尻拭いを親がすることはありえないというのが理由の一つ。
 もう一つは、金銭決済の方式が小切手なので、お金が決済されるまで時間がかかるというのがもう一つの理由。
後者についてはフールプルーフの話につきるのでさらなる話はないので、前者についてさらに一言。
北海道のある新聞の記者から、自分の母親が振り込め詐欺にあいそうになった。ついてはコメントを、と言われた。彼の母親いわく。「振り込め詐欺ではないかとは思った。でも、200万円で片が付くなら、安い授業料だと思って振り込むつもりだった」。
「その2;リスク感覚の欠如」
 関西人は、振り込め詐欺にあまり引っ掛らないらしい。また、もっぱら、専業主婦や高齢者が被害者になってしまう。
 そこには、リスクに対する感受性の欠如があるように思えてならない。商売をしている人なら、そんなことはまずありえない。金銭の移動に関しては最大限のリスク感覚を発揮するように習慣づけられているからである。
100万円単位のお金の振り込みには、崖から飛び下りるようなリスクがあると思うのだが、いかに大切な人のためとはいえ、いとも簡単に振り込んでしまう。

2)なぜ何度も振り込んでしまうのか
 セールスなどの技法の一つに、「段階的要請法」というのがある。小さいことをまず受け入れさせてから次第に大きなもの(本物)を買わせるのである。まず低い障壁を越えさせるのである。
 昨日の新聞には、28歳の女性が、12回にわたり、1200万円を振り込んだ詐欺が報道されていたが、そのテクニックがまさに段階的要請法だった。最初から1200万円振り込めと言われれば、誰しもが逡巡してしまう。まずは、手付けとして10万円、と言われれば、それならとなる。

3)思い込みをしやすい人
思い込みをしやすい人とそうでない人とがいる。チェック欄でみずからの思い込み度をチェックしてみてほしい。
無論、詐欺被害にひっかるのは、その人にだけ責があるというつもりはまったくない。被害にひっかりそうな人と状況とをうまくかみあわせて、一人の人を追い込むのが詐欺犯罪である。蛇足であるが、付け加えておく。

チェック「自分の思い込み度をチェックする」*******
次のリストに従って、自分の思い込みやすさを判定してみよ。

1)直感的判断に頼ることが多い( )
2)理詰めで考えるのは嫌い( )
3)判断に迷うことはあまりない( )
4)人と相談することはあまりない( )
5)何ごとも自分なりに納得しないと我慢ならない( )
******************************
(事例の引用を許可していただいた朝日新聞に対して、謝辞を表します。)

「なぜ大金を振り込んでしまうのかーー詐欺の心理学」

2010-07-03 | 認知心理学
「なぜ大金を振り込んでしまうのかーー詐欺の心理学」

   海保博之  東京成徳大学教授  

●はじめに
 警察庁によると平成17年の1〜11月までの振り込め詐欺被害額は、226億円にもなる。
架空請求による振り込め詐欺は自分も一度、ひっかりそうになった。法律用語びっしりの請求メールをもらってびっくり仰天してしまった。すぐに学生にこんなものが来ているのだが、というと、さすがに学生はしたたかで、「自分にも来たことがあります。無視が一番です」と忠告してくれて、ほっとしたことを思い出す。
その後、こうした事件報道が多くなった頃、マスコミ関係で働いている娘宛に、葉書で同じような趣旨の請求手紙が来たこともある。娘に見せると、「思い当たるふしがある。電話してみる」と言う。「馬鹿なことをするな。無視が一番」と偉そうに忠告したやったことがある。これほどマスコミで騒がれるようになっても、事が自分に及ぶとあたふたとしてしまう。実に巧みな心理戦略が使われているからである。
本章では、まず一つの実例を追う形で、振り込め詐欺の心理戦略を解剖してみることにする、
以下、小活字ゴッシク体が事件の詳報である。その後に「解説」としたものが、筆者による心理学的なコメントである。なお、これは、朝日新聞朝刊生活欄2004年10月8日付け記事のための朝日新聞東京本社生活部・山田史比古氏による筆者へのメール取材原稿に基づくものである。
この事例分析の結果をふまえて、最後に、振り込め詐欺にあわないための対策のいくつかを提言してみる。

●まずは、発端の電話から

 受話器を取ると、相手は、落ち着いた声の男性だった。
 「今野道代さん(仮名;64)のお宅ですか。品川警察署の者です」
「解説」
①警察という権威をよそおうことで、相手より心理的に優位に立つ。説得事態では、何より大事なことは、いかに相手より心理的に優位な立場に自分を置いておくかである。名刺も、もらうと、名前よりも先に肩書きのほうに目がいくのも、自分と相手との心理的優劣関係を確認しようとの気持ちがあるからである。
②ここで、電話というメディアが使われているところにも注目されたい。電話では相手が見えない。おまけに、耳からだけしか情報が入ってこない。情報伝達手段としては電話はかなり信頼度の低いメディアである。
「泣き声で話したので、本当に息子からの電話だったと思った」(ある被害者の証言)も、電話の信頼度の低さゆえである。
したがって、この信頼度の低さを受信者側は自分なりに補う必要がある。つまり、電話は、感情的、知的な心理的介入があって成り立つホットメディアである。クールメディアの代表であるTVと比較されたい。

●びっくり仰天、目が点、頭真っ白

 9月中旬の平日午前11時半ごろ。小平市の主婦今野陽子さんは、自宅にかかってきた警察の電話で突然、次女(28)の名前を聞かされ、驚いた。
「本日、板橋区大和町の10号線で、道代さんの車が接触事故にあいました」
「エッ、道代は?」
「解説」
①「娘の事故」と聞いただけで、母親は認知的にパニック状態になってしまう。頭真っ白、目が点。正常な思考、判断ができなくなる。これがねらいである。
 まっとうな判断ができる状態なら、簡単に話のおかしさに気がつくはずなのに、認知的パニック状態では、それができない。そういう状態にさせるのが、彼らのとりあえずのねらいである。
②心理学の問題ではないが、プライバシー情報の遺漏問題も深刻である。コンピュータを使えば、断片的な個人情報をいとも簡単に寄せ集めて、個人情報バンクを作ることができてしまう。それが詐欺師の手に渡れば、話(物語)の信憑性を作り出す一つの貴重なお膳立てとして使われてしまう。

コラム「説得にかかわる心理学用語」*****
ここで、説得にかかわる心理学用語のいくつかを、「現代用語の基礎知識」(自由国民社)より抜き出しておく。
○説得的コミュニケーション
人をその気にさせるために行うメッセージの提供である。広告やセールスではとりわけ重要である。これを効果的なものにするには、四つの考えどころがある。(1)提供者側の専門性や信頼性、(2)コミュニケーションの内容のつくり方、例えば、長所のみ(1面提示)か長短あわせてか(両面提示)など、(3)受け手の何に訴えるか、例えば、不安や恐怖など、(4)メッセージの提示方法、対面しての話術や各種メディアの活用など。
○説得への抵抗
榊博文によると、説得への抵抗の高い人(説得されにくい人)とは、自分に自信のある人、不安傾向の低い人、攻撃性の高い人、そして女性より男性である。しかし、説得の仕方や状況によってあっさりと説得されてしまうことも、また逆に、説得とは反対の方向に変わってしまうブーメラン効果も知られており、説得も一筋縄ではいかない。
○段階的要請法
セールスでは、ともかくドアの中に入れてもらえたら勝ちである。ささいなことを受け入れてもらたら、もっと大きなことも受け入れてもらえる可能性が高くなるからである。少額の入会金を納めさせてから次第に高額の買い物をさせる商法がこの例である。
○特典除去法
最初に割引きなど客にとって優利な条件を提示して購入を決めさせてから、都合で割引き率を下げざるをえないと伝えて強引に購入させてしまう。逆に、購入を迷っている人に特典を提示して購入を決断させてしまう特典付加法もある。
******************************

●相手のペースに乗せられる

 「これから順序立ててお話します。お気持ちは分かりますが、落ち着いてよく聞いてください」
《道代はどうなっているのか、私はそれをまず知りたかったのですが、相手はたたみかけるように話を続けてきました》
「解説」
①「たたみかけて」一気に自分たちのペースにのせるのは、「バナナのたたき売り方略」である。説得方略の一つである。話のつじつまが合わないところや不審なところをどんどん新しい話を展開することで覆い隠して、自分のペースに巻き込んでしまう。疑問、質問を封じてしまう効果もある。
②「お気持ちはわかりますが」の一言も見逃せない。これも、「慰め方略」と呼ぶにふさわしい説得方略の一つなのである。
 過度に長時間、心理的に優位に立ったままだと拒否や反発や逃避をくらうこともあるので、その緩和をねらう。さらに、相手への共感を示すことで、説得事態を親和的な雰囲気にする効果もある。

●物語を作る

 「相手は自転車に乗っていて、ハラダカツヨさんという28歳の女性です」「道代さんは会社やお友達に連絡するより、まずは実家の連絡してくださいとのことでしたので、ご連絡しました。お母様ですね?」
 「はい」
《相手の説明に、はいはいと答えるしかありませんでした。ただ、道代は車の運転が好きではありません。話を聞きながら、半信半疑でした》
 「道代さんはムライアイコさんの白いバンに乗って運手していたそうです。アイコさんはお友達ですか、同僚の方ですか。アイちゃん、と呼んでいるそうですが」
 「アイコさんは同乗していたのですか?」
 「今は分かりません。道代さんは、アイコさんをかばっているのか、お話しません」
《聞いているうちに、本当に道代が運転していたのだと思い始め、だんだんドキドキしてきました》
「もう一度、詳しく話を聞かせてください」
「解説」
①詐欺は、いかにして相手を架空の物語の世界に導くかが最大のポイントである。これに成功すれば、あとは、その思いこませの世界で、相手を自由自在に操れる。
この事例では、架空の物語を相手に作り出させる(思いこませる)ための仕掛けが巧みである。
個人情報に加えて、確認できない情報、一つは友人の車を運転、もう一つはその友人の名前を使って、物語の真実性を高めている。これなら、嘘がばれる心配はない。
 一般に、物語作りには、次のような心理的な効果がある。
1)全体に一貫性を与える
 ・事の真実性を高める
 ・細部のおかしさを覆い隠す
2)よくわかる話しで、相手の知識を活用する
 ・巻き込み効果を狙える
 ・細部を相手(被害者)が勝手に補ってくれる
3)感情を揺さぶる
 ・感情を揺さぶって、冷静な判断をさせない
 ・感情移入をさせる
・納得させることができる
②思い込みが起こるのは、目の前の状況がどうなっているかについての認識と解釈がすばやく求められる時に発生しがちである。たとえば、
・知らない土地でのドライブでどっちにまがったら目的地につけ
 るか
・火災報知器が鳴っている原因を知りたい
・名刺をもらえない初対面の人がどんな人を推測する
こんな場面に遭遇すると、その時その場での顕著な手がかりだけに基づいて、頭の中に状況の解釈のためのメンタルモデルを作り出し、それに基づいて自分なりの状況認識をしてしまう。これが思い込みである(図参照)。


それが、いつも不適切というわけではないが、誤ってしまうことも多い。なぜかというと、状況の中で目についた顕著な部分的な手がかりによって触発された頭の知識の一部を使った認識だからである。
振り込め詐欺では、自分たちに都合の良い思い込みの世界を強制的に作り出させる手がかりを物語の形で提示しているである。

●物語作りのだめを押す

「私は警察の者でお知らせをしています。今後は、検事からお聞きくださって、相談してください」
 「ちょっと待って。道代はどこにいますか」
 「品川の簡易裁判所に拘置されています。相手のハラダさんが東京海上火災の国選弁護人を雇われたので、電話を代わります」
 陽子さんの耳に、遠くの方で、「今野道代さんのお母さんです」と電話を代わる声が聞こえた。電話口に出てきたのは、警察官と同じ高めの声音で、やはり穏やかな口調の男だった。
「弁護士のナカヤママサシといいます。道代さんはとても優しく、まじめな方で、大変なショックを受けています。お気の毒です」

 道代さんは制限速度で走っていたが、自転車に乗ったハラダカツヨさんが横断歩道でないところを飛び出してしまった。幸い、車の正面ではなく横にぶつかったので、大けがではなかった。倒れただけだった。道代さんが車の窓を開けて「大丈夫ですか」と聞き、ハラダさんは「大丈夫」と答えた。道代さんは車から降りず、そのまま去った。
 しかし、実は女性は妊娠6カ月で、縁石におなかをぶつけたため、念のために病院へ行った。すると流産だった。本人には本当のことは知らせていないが、夫は大変ショックを受けている。結婚して4年目で待ちに待った赤ちゃんだったらしい。夫は、「妻も悪いが、心からの謝罪をしていただかないと困る」と言っている」。
 《女性が妊娠、と聞いた瞬間に、私の頭は真っ白になってしまいました。相手が道代と同じ28歳、ということも、ますますひとごとでないと思わせました》
ナカヤマの話は続いた。
「道代さんに非はなかったとはいえ、車から降りず、走り去ってしまったのでひき逃げになります。過失致傷で6年の刑が執行されます」「裁判は第一審、第二審というのがありまして、今日が第一審です」
《ずいぶん急展開な話、とは思ったのですが、すでに気が動転していますので、問いただすこともしませんでした》
「解説」
①もはやこの段階になると、多少の疑問や不審も役に立たない。見事なまでの物語がこの主婦の頭の中に出来上がってしまっている。「相手が妊娠」の一言も物語に迫真性を加えている。
②法律用語は、法律の素人に対しては事態の真実を隠すめくらましの道具としては最適である。ある程度は意味がわかるが、かといって本当のところはわからない。何か大変なことが起こりそうとの予感を持たせるのに効果的である。さらに、そんな言葉をあやつる人は権威の象徴のように思えてしまう。これも心理的に優位に立つ仕掛けの一つである。