教育相談室 かけはし 小中連携版

ある小学校に設置された教育相談室。発行する新聞「かけはし」が、やがて小・中3校を結ぶ校区新聞に発展しました。

-学びの学校づくりを目指す犬山プラン-平成13年度  犬山市教育委員会

2007年02月22日 | 教育資料
犬山の3つの目標
1 教室の改革
 ◎ 自ら考える力を養う「学び」の実現
 ◎ 「総合的な学習」の工夫
 ◎ ティームティーチング・小人数授業の導入
2 学校の改革
 ◎ 子ども・教師・保護者・地域が学び合う場としての「学びの共同体」の実現
3 新しい学校経営
 ◎ 授業を中軸にした学校経営を進めるための校務分掌の見直し、学校運営の効率化、地域住民の学校運営への参加

はじめに
○ 教育は子どもの知的能力の発達とともに、心と身体を健全に育てることを目的とするものであり、社会全体がそれを支えている。そのなかにあって、学校の主たる目的は、子どもの知的能力の発達を保障することにある。また、すべての子どもに知的教育を保障できる場は学校以外にない。つまり、学校の最も重要な役割は、授業を通じて子どもに「学び」を保障することによって果たされることにある。
○ 平成14年度から実施される新学習指導要領は、学習内容や授業時間数が大幅に削減されることなどから、深刻な学力の低下を招くのではないかと懸念されている。そこで、犬山市教育委員会は子どもに基礎的・基本的学力を保障するとともに、それを応用して自ら考える力を保障するために、「学びの学校づくり」を当面の最重要課題と位置づけ、このプランを策定した。このプランの推進は学校・保護者・地域・教育委員会が一体となって取り組むことによって可能となる。
○ 平成14年度からの完全学校週5日制の実施に向けて、中学校における土・日曜日の部活動を地域の指導者の協力を得て、実施できるよう条件整備に努める。
○ 学校の主要な役割が知的教育にあることは前述のとおりであるが、学校は同時に、子どもの成長・発達を支えるために、広範な領域にわたって多種多様な教育活動を展開していることは言うまでもない。「学びの学校」づくりを目指す本プランは、小人数授業などの導入を通じてこの4月から実施に移されることになるが、ここで取り上げられなかった事柄についても、各学校・地域などで議論を起こし教育委員会にご意見を寄せてくださるよう期待している。「生きる力」を培う「学び」をめざすこのプランをより充実したものにするために、学校・保護者・地域の皆さんや児童生徒の皆さんが、ご提案・ご意見をお寄せくださることを切望する。

Ⅰ 犬山の8つの目標
1 教室の改革を推進する。
 ・自ら考える力を養う「学び」の実現
 ・「総合的な学習」の工夫
 ・ティームティーチングや小人数授業の導入
2 学校の改革を推進する。
 ・子ども・教師・保護者・地域の人々が学び合う場としての「学びの共同体」の実現
3 新しい学校経営を推進する。
 授業を中軸にした学校経営を進めるための
 ・校務分掌の見直し
 ・学校運営の効率化
 ・地域の人々の学校運営への参加

Ⅱ 具体的な施策
1 ~自ら考える力を育む「学び」へ~
 教室改革とは、知識を教え込みがちであった「勉強」から、自ら考える力を養う「学び」への授業改革を中核とする。
「学び」を実現するには、子どもの個性・発達段階に応じて教育課程を工夫し、指導方法を改善する必要がある。とりわけ、総合的な学習を工夫する。さらに、ティームティーチングや小人数授業の導入による利点を生かした授業改善を進める。

(1) 教科と「総合的な学習」
 ア 「基礎・基本」の定着を図る
 教科教育は、各教科の知識・技能の系統的な学習を通じて、人類の文化的な遺産を受け伝える営みであり、子どもが社会の一員として自立して生活を営めるように、その基盤となる能力を育てる営みである。しかし、教科の系統性の過度の重視や受験準備の要請の中で、教科教育はややもすると無味乾燥な学習に陥りがちであった。このような反省の上に立ち、どの子も抱く「わかりたい」、「できるようになりたい」という強い願望を踏まえ、「基礎・基本」の徹底的な指導を通して事物や事象について自分なりの意味を読み解き、新しい知の世界を切り開いていく力を育てることが大きな課題である。
 イ 応用力を育成する
 「総合的な学習」の時間は、主として教科教育を通じて育成する「基礎・基本」を総合的に応用して事物や事象の意味を読み解き、それらが自分自身にとってどのような意味を有するか、自分はそれにどのようにかかわっていくかについて、子どもたちが自ら考える力を養い、生きることと一体化した「学び」の場である。
 「総合的な学習」は、観察・調査・実験・議論等の体験を通じて互いに多様な発想・発見を提供しあい、個の学習を保障すると共に、それらを仲間同士で共有することにより、その効果が高まる。
 ウ 「学び」を「生きる力」へ
 自らの生に喜びを感じられない者に他者を大切にする心を育てることは難しい。いま子どもたちは日々生きることに十分な喜びを感じているだろうか。子どもたちの様々な生活場面がそれぞれより充実したものになるよう努力するとともに、子どもたちが「学び」を通じて生の喜びを感じられるようにし、自らの生を切り開く力と展望を獲得できるようにすることは、我々おとなが総掛かりで取り組むべき課題である。

(2) 「学び」の学級づくりのための指導方法の改善
 教育課程の編成は、校長の裁量である。したがって小人数授業、ティームティーチングの導入にあたっては、学校の実情に応じて校長が決定する。
 指導対象とする教科は、校長が判断するが、原則として学力差の生じやすい国語、英語、算数(数学)、理科とする。
 平成13年度は、別紙「(資料1)平成13年度小人数授業実施計画」及び「(資料2)平成13年度ティームティーチング授業実施計画」により実施し、今後改善充実を図る。

 ア ティームティーチングの導入
 ティームティーチング方式(TT)の授業は、非常勤講師を補助指導員として加え、学級担任或いは教科担任と共に指導する協力指導である。
 各学校は、教科の特性、児童生徒の実態、学校の実情を十分踏まえた「ティームティーチング年間計画」を作成し、学校経営に位置づけて教職員の共通理解を図ると共に、小人数授業と同様に家庭や地域への啓発に努める。
 ① TTの目的に応じた集団編成(課題別・方法別等)をする。
 ② 時間割を工夫して、事前の打合せや準備ができるようにする。
 ③ 研究課題を設定して、研究的にTTを進め、評価をしていく。

 イ 小人数授業の導入
 小人数授業は、現在の40人学級を20人程度に再編成して、新たに配置された非常勤講師により、指導をする。
 各学校は、教科の特性、児童生徒の実態、学校の実情を十分踏まえた「小人数授業年間計画」を作成し、学校経営に位置づけて、教職員の共通理解を図る。
①)学習集団の編成・・原則として、男女均等、能力均等とし、人間関係を考慮する。
② 時間割の編成・・・教師間の打合せの時間を確保する。
③ 指導方法の工夫・・集団編成や個別指導の工夫をする。
④ 教材の工夫・・・・小人数指導に適した教材を開発・検討する。
⑤ 評価の工夫・・・・評価方法の共通理解を図る。
⑥ 研究課題の設定・・各学校において小人数授業を研究的に取り組む。
⑦ 保護者・地域の人々の理解・協力を得る。


2 学校改革 ~「学びの共同体」~
 学校は、子どもたちが学び合う場所であると同時に、教師自身も授業の工夫・創造を通して学び合うとともに、保護者や地域の人々が参加して学び合う「学びの共同体」である。
                                        
 (1) 教師たちが学び合う場
 学校は、教師たちが互いに専門家として高め合うために、校内研修として定期的に互いの授業を公開したり、評価をし合うことにより、指導力の向上を図る。

 ア 校内研修の充実
 ① 校内の現職教育(全体研修会)
  学校の年間研究テーマに沿って、積極的に研修会を開催し、教師としての資質を高め合う。

注 【学校訪問及び・研究指定(委嘱)校の改善】
  学校訪問と研究指定校制度は、どちらも教職員にとって実際の授業を公開しながら研修する機会である。今後は、研修の質を一層高めるために、参会者全員が同じ土俵に乗り共同で研究する本来の「学び合いの場」とするために、次の点について改善する。
 ① 公開授業は、日常的な授業を公開する。
 ② 印刷物を簡素化する。
   ・要項等の印刷物を極力削減する。
 ③ 資料等では、「自主性」等の不明確な用語の使用を避け、誰にも分かる平易な言葉で表現する。

 ② 学年・教科研修会
   学年・教科に応じて、関係者で独自に研修会を開き、指導者としての力量を高め合う。

 イ 研修への支援
   市教育委員会に指導主事及び指導主幹を配置し、支援体制を築く。

 (2) 保護者や地域の人々が参加して学び合う場
  学校は、子どもの学びを支援するために、保護者や地域の人々が参加して学び合う場である。
 ア 子どもの教育活動に参加して学び合う
 保護者・地域の人々が教育活動に参加することは、保護者と地域の人々が学校と共同して子どもを育てることである。保護者や地域の人々が学校の教育活動に参加することは、次のねらいをもつ。
 ・保護者と教師の連帯を生むための連携作業の場とし、我か子中心の保護者の意識を我が子を含めた学校改善に向けていく。
 ・授業の活性化を図り、質の高い体験的学習や探究活動を子どもにさせるために、学校の教育活動や部活動の指導に参加してもらい、子どもだけでなく、保護者や地域の人々にも学ぶ機会とする。
 イ 学校施設を活用して学び合う
  学校を地域における生涯学習の拠点の一つとして考え、地域の人々が学校施設(学校図書館やスポーツ施設)を活用できるように改善して、施設を地域に開放する。

3 学校経営 ~学びの視点からの見直し~
  学びの視点から学校を見直すとは、学校経営の中軸に授業を置くことである。そのために、「校務分掌の簡素化」「学校運営の効率化」「部活動の指導技術向上と活性化」「地域の人々の参加」を進める。
 (1) 学びの視点より校務分掌の簡素化を図る
 校務分掌全体を「学び」の視点から、単純化して教職員の専門性・自律性が発揮できる時間の確保を図り、「授業づくり」「カリキュラムづくり」に専念できる体制をつくるために、校務分掌全体を簡素化し、現在ある各種の組織の見直しをする。
 (2) 学校運営の効率化を図る
 会議・委員会を削減したり、各種行事の準備を簡素化したりして、学校運営の効率化を進める。
 (3) 中学校部活動の指導に社会人を活用することにより、部活動の充実を図る。
 中学校の部活動の指導に社会人を活用することにより、生涯スポーツとしての部活動の充実を目指す。
 (4) 地域の人々の学校運営への参加を図る(学校評議員制の実施)
 地域ぐるみの教育を進めるために、地域の有識者、保護者、子供会の指導者、学校関係者で構成する組織(学校評議員)を設置し、子どもたちの成長を共に考える支援体制を築く。

注 シンポジウム「教育のまち」の開催
 「学びの共同体」としての学校は、教職員、保護者、教育委員会の三者が一体となった協力と連帯によって実現する。そのために、三者が地域の人々も交えて話し合う場がシンポジウムである。


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