教育相談室 かけはし 小中連携版

ある小学校に設置された教育相談室。発行する新聞「かけはし」が、やがて小・中3校を結ぶ校区新聞に発展しました。

小中一貫教育研究発表会での報告②~異文化を発見し楽しむ

2007年12月14日 | 小中連携
【飛び込んでわかる「文化の違い」】
 私は○○中学校に10年間勤めた後に、隣接する○○小学校に兼務配置となりました。10年間、隣の中学校から見続けていて見えなかった事が、小学校に行った1週間で見ることができました。それは小学校入学式の式場準備の場でした。中学校に勤めていた私の常識では、2クラス80人程の生徒を集め会場準備を行うものと思っていたのですが、小学校の体育館に集まったのは僅か7人の6年生と4人の教員でした。当時6年生は全員で26人。他の19人は新入生2教室や下足室の清掃や机搬入を行っていたのです。私は何時間かかるんだろうかと絶望的な気持ちで会場準備を始めたのですが、シート運び・椅子出し・長机運び・体育館トイレ掃除といった作業を子どもたちはわずか1時間で終えたのです。中学校教員の目からすれば、中学1年生は手間がかかると思っていたのですが、その中学1年生よりも小さい小学6年生がこんな力を持っていたのです。これは衝撃でした。小学生の力を見くびってはいけない、そう思いました。

 更に1週間たつと、もっと驚く出来事に出会いました。小学校の1年生の教室に自習監督で行き、「絵本を読もうね。何の本がいいかな。」と聞いた途端に喧嘩が始まったのです。「○○の本をよんで。」「おまえずるいぞ。このまえもその本よんでもろたやろ。」「△△がいい。」「△△なんておもんない。」と口々に言い合い、同時多発テロのようにあちこちで殴り合いが始まってしまったのです。すぐに手が出る小学一年生に、本当に驚いてしまいました。○○中学校は子どもたちが落ち着いた状態で日々生活を過ごしていたため、生徒同士が殴り合う喧嘩が起きることは、1年に一度も起きないので、小学校に行くと天使のような子どもたちが集まっているのかと勝手に思いこんでいたのです。それは大違いでした。この暴力的に見える小学1年生が5年経つと会場準備をした6年生になれるのかなと思うと、改めて小学校教育の大切さを感じたのです。

 6月には5年生の林間について行きました。2泊3日の林間の間に、喧嘩が起きたり、誰かが泣いていたり、係りがサボっていたり、様々な事件が絶え間なく起き、その度に行事はストップし『学級会』が始まるのです。キャンプファイヤーができなくなるのでは・・・と私は心配しているのですが、「なぜ○○が泣いているのか」「なぜ片づけができないまま遊んでいるのか」といった追求が始まり、子どもたちは反省の言葉を考えていくのです。それでも「今の謝り方で、気持ちが通じたと思う?」「何が悪かったのか、今の謝り方やったら分からない。」と指摘され、子どもたちは謝罪の仕方、喧嘩の仲直りの仕方を学ぶのです。待ちに待ったキャンプファイヤーでの子どもたちのスタンツでは、どの劇も喧嘩をしても最後は仲直りするというもので、中には誘拐犯と誘拐された子どもが仲直りして一緒に遊んでしまうものまでありました。1クラスしかなく、クラス分けができないなかで、子どもたちは「仲良くしなければならない!」とずっとずっと言い続けられてきたのだと劇を見ながら思ったのです。

 同じ『教育に携わる』といっても、小学校では『教』の部分より『育』の部分が深いのだと思うとともに、この粘り強い教育が子どもたちを変えていくのだとわかりました。
(つづく)