教育相談室 かけはし 小中連携版

ある小学校に設置された教育相談室。発行する新聞「かけはし」が、やがて小・中3校を結ぶ校区新聞に発展しました。

特待生制度を考える…不公平の是正とは?

2007年05月04日 | 進路保障
《高校を巻き込む「野球と金」》
プロ野球西武球団が行った高校生に対する裏金問題は、高校野球のあり方を根底から問い直す特待生問題に発展しました。高野連(日本高校野球連盟)の調査では全国382の高校で日本学生野球憲章が禁じている特待生の制度があることが判明しています。(5月3日現在)高野連は野球部員であることを理由として授業料や生活費などの金品を受け取ることを禁止していますが(憲章13条)、入学金・授業料などを免除する特待生制度はそれに違反するとし、①該当者は5月中の対外試合自粛②部長(部を代表する教員)交代といった是正措置を行うことを条件に③夏の甲子園出場を認めるという方針を発表しました。

《憲章は時代遅れ?》
これに対して各高校は高野連の措置を受け入れる記者会見を行いました。一方で、私立学校の連合体である私立中学校高等学校連盟は、「サッカーや陸上など他の競技では特待生制度が認められているのに野球だけが認めないのは不公平」と主張し、憲章が時代遅れになっているとの記者会見を行いました。私立高校の本音が見えた気がしました。ニュース解説者の声のなかにも同様の意見が目立ちました。

《推薦入学と特待生制度は違う》
「勉強で頑張った者が評価されるのと同じように野球で頑張ったことも評価すべき」という意見は推薦入学と特待生制度とを混同させた意見のように思えます。入試合否を入学試験の点数だけでなくクラブ活動や特技なども考慮に入れ総合的に判断することに対しては異論がないと思います。○○中学校の中にも、クラブ活動での実績を評価され高校進学をした生徒が多数います。
しかしだからといって高校側が欲しい生徒の入学金や授業料だけを免除するという特待生制度に対しては、中学校側は以前から再考を要請してきました。

《免除された授業料は誰が負担しているのか》
中学校側が問題にしてきたのはこのことです。特待生の存在は、授業料負担に対する不公平感をもたらします。不公平感は友人関係や保護者同士の関係にもひびを入れることにもなりかねません。「特待生の出場だけを辞退させると誰が特待生か生徒の間でわかってしまう」として春季近畿大会への出場自体を取りやめた高校もあります。
「他の競技との不公平」を言う前に、「他の生徒や親との不公平」こそ問題にすべきだと考えます。

《私立学校の授業料補助と奨学金制度の充実こそが大切》
私立高校の年間授業料は80万円を越え、保護者の負担になっていることは確かです。しかし高校側が子どもたちへの経済的支援を考えるならば、私立学校への授業料補助の拡充と、経済的な必要度を基準とした奨学制度を充実させるべきだと思います。