教育相談室 かけはし 小中連携版

ある小学校に設置された教育相談室。発行する新聞「かけはし」が、やがて小・中3校を結ぶ校区新聞に発展しました。

○中生がたばこを吸ってます?・・・行ってみると

2008年03月13日 | 生活指導
 【学校への通報電話】
 会場準備で忙しい卒業式前日の3月12日。4時半ごろ中学校に一本の電話がかかってきました。「北千里ピーコック裏で○中生6人が喫煙し、ゴミを散らかしているので何とかしてほしい。」荷物の搬入に来たトラックの運転手を名乗る方からの通報でした。今日の卒業式予行での真剣な様子、世話になった先生方にサインを書いてとせがみにきている様子を見た直後なだけに半信半疑ながら、すぐに○○と私が現場に駆けつけました。
 
 【つかまえてみれば】
 ピーコック裏手の荷物搬入口近くに学生服を着た6人の男子を発見。やはり見知らぬ生徒。まっすぐに近づく私たちに気づき手に持ったタバコを隠す。「イマドキこんなんあり?」と思うような『長ラン』(コートのように長い学生服)に耳にはピアス、足元にはタバコの吸殻と買い喰いしたゴミが散乱しています。私「君ら、どこの中学生や。」生徒A「○○○中学校です。」(やはりS市の中学生か)私「持ってるタバコ出せや。」生徒A「これで全部です。」と2本しか残っていないタバコの箱を出す。こんなやり取りをしながら食い散らかしたゴミを片付けさせました。最後に「君ら、ウチの中学生を名乗ったやろ。」と言うと、「いいえ、言うてません。」「誰からも注意されてません。」「今初めて注意されました。」と口々に答えていました。「分かった。明日、君らの中学校も卒業式やろ。エエ卒業式にせなアカンで。」中学生たちは「はい。」と答えたものの先生に迷惑かけること間違いなしと思われました。○○○中学校の生徒指導担当者に電話をかけると「ウチの生徒です。お世話になりました。」との返事。「明日の卒業式は頑張って下さい。」と激励するしかありませんでした。

 【私たちの心のモヤモヤ】
 現場のゴミは片付けさせたものの、私たちの気持ちは晴れません。逮捕されたときは顔写真入りで報道されたのに、真犯人が別にいて無罪が証明されたときには何の記事にもならなかった、そんな思いです。「○中生がタバコ吸ってる」という通報者は名前を名乗らなかったため事実を伝えようがありませんし、なぜ彼らを○中生と思ったのかも知りたいと思いました。(過去に○中生が迷惑をかけていたのならお詫びせねばならないし)
 学校がどんな指導をしたのかを通報していただいた方に伝えることが大切です。通報内容がたとえ間違いでもかまいません。連絡先を教えていただければ、訂正もできたのにと悔やまれました。

暗闇から人を撃つ 

2008年02月16日 | 生活指導
 『暗闇から人を撃つ』とは、自分は安全な場所に身を隠しながら無防備な人を不意に攻撃するという卑怯(ひきょう)な行為を表す言葉です。

例えばくつ箱。みなさんがくつ箱に安心してくつを入れられるのは、お互いが勝手に人のくつを持ち出さないという前提があるからです。もしもその前提が崩れたら、生徒のみなさんは毎日くつを持って帰らなければなりません。そんな学校があるとすれば、不便だと感じませんか?

 ところがくつ箱から他の人のくつを勝手に持ち出すというできごとが続いて起こりました。くつを持ち出した人は、毎日自分のくつを持って帰っているのでしょうか。そうではないようです。自分のくつを取られないよう家に持ち帰っている人は○中にはいません。ということは、くつを持ち出した人は、自分以外にはそんな卑怯な行為をする人がいないということを知っているからです。自分はみんなの善意に守られて安心してくつを置いて帰る。しかし自分はみんなの善意を踏みにじり誰かのくつを隠す。想像して下さい。あたりを気にしながら、コッソリと他の人のくつを持ち出す姿を。みっともないとは、そんな姿を言うのです。

 私が○中学校に転勤してきた時、教室に鍵がかかっていないことに驚きました。同時に○中では生徒みんなが信頼されているんだとも思いました。今、みんなが手にしている自由は、全て先輩たちが築き上げてきたものです。全員がくつを持って帰らねばならない学校、みなさんはそんな学校を目指してはいないはずです。

下校する子どもたちの安全確保のために~生徒指導部だより『千里馬』116号

2008年01月18日 | 生活指導
【危ない!歩行者専用道路でのバイク走行】
 5月に入り中学校東門前歩行者専用道路(かしの木橋~近隣センターの間)を少年たち(本校卒業生を含む高校生)がバイクに乗って走り回るというできごとが何度かありました。特に先週の11日(木)と12日(金)は、生徒が下校する4時ぐらいからバイクに乗った少年たちがもくせい公園周辺に集まりました。11日は私が出張だったため、校長先生をはじめ他の先生方で指導していただきましたが、12日の様子は次のようなものでした。

 4時頃、東門スロープをキックボードで滑り降りていく金髪少年が職員室から見えたので私が駆けつけました。すると東門の階段下にバイクにまたがった少年が数人いるのが目に入りました。その中に、タバコを手に持った卒業生A君(34期生:高校1年)がいたので、「こら!A!調子にのんな!」と怒鳴りながら階段を下りると、A君はとっさに手に持ったタバコを捨てました。見渡すとA君以外にB君C君D君(いずれも33期生:高校2年生)、E中学を卒業したF君(高校2年)、G中学を卒業したH君(高校1年)、それと見知らぬ金髪ロン毛少年2人の合計8人の少年と5台のバイクがありました。顔見知りの少年たちは移動し始めたのですが見知らぬ金髪少年は私を無視し、バイクにまたがっていました。

【子どもたちの安全を考え警察に連絡】
 私「ここはバイク通行禁止や。バイク押してどけろ。」金髪「何でそんなこと言われなあかんねん。」私「ここにバイク通行禁止の標識があんの知らんのか。」金髪「何者や」「中学校の教師や。生徒指導の○○って言うんや。お前こそ誰や。」金髪「何でお前に答えんなあかんねん。」私「自分の名前もよう言わんかったら来るな。」金髪「教師にそんな事言う権利あるんか。」私「あるんじゃ。うちの学校の門の前をお前らがバイクで走ったら、うちの生徒が危ないんじゃ。」金髪「お前がどっか行ったら帰るわ。」私「今すぐ帰れ。よう帰られへんのやったら、今から警察に連絡する。」と言って千里中央交番に連絡しました。

 電話の後すぐに現場に戻ると、バイクも金髪少年たちもいなくなっていました。しばらくして千里中央交番から警察官がやってきました。一時間ほど門の前で安全確認した後、運動場のクラブ活動の様子を見に息ました。6時になり生徒達を下校させ、もくせい公園に行くと先ほどの少年たちはサッカーをしていました。バイクは見あたりませんでした。

 公園の様子が気になるので一度帰宅して食事をした後、22時過ぎに学校周辺を巡視に回ると少年たちはパトカーに乗せられているところでした。
(2000年5月15日)

 数年前にはこのような『攻防』のあった公園も、今ではすっかり静かになり不審な動きを見かけることがなくなりました。しかしこのような対応を通じ中学校では危機対応の力を培ってきたのだと思います。

命をもてあそぶ非常ベルのイタズラ~生徒指導部だより『千里馬』151号より

2008年01月17日 | 生活指導
 「非常ベルが鳴ったらどうする?」小学生にも分かる質問です。「安全な場所に避難する」それが答えです。非常ベルが鳴れば避難するという当たり前の行動ができなくなると命を落とす重大な事故につながります。そのため中学校では、どんな場合でも非常ベルが鳴れば避難行動に入ります。

 昨日はその非常ベルが鳴りました。私は「ただいま非常ベルが鳴りました。生徒の皆さんは静かに教室で待機し、次の放送の指示を待ってください。非常ベルを押した生徒はすぐに職員室に連絡しにきなさい。」という放送を入れました。職員室の非常ベル受信機には、どの校舎のどの非常ベルが押されたか表示されます。それを見て各先生方は現場に駆けつけ、異常を調べました。しかし異常が認められず、また非常ベルを押した生徒も現れなかったため原因不明のまま2度目の放送で全員避難を呼びかけました。

 全員避難と全校集会に時間が費やされたため授業の終了が20分ほど延長しました。放課後のクラブ活動だけでなく、様々な活動への影響があったと思います。病院の予約時間に間に合わなかった人もいたかもしれません。しかし何よりも恐れていることは、非常ベルが鳴っても「どうせイタズラや」と皆が思うことによって本当の事故が起きたときの避難行動ができなくなるという事です。今、私たちの中学校には耳の聞こえにくい生徒が通学しています。去年までは車椅子を使っている生徒もいました。様々なハンディーがある生徒も含めみんなの命を守らなければなりません。非常ベルのイタズラは決して許されるものでないのです。(2001年2月20日発行)

 「非常ベルが鳴ったら避難させるというのは生徒に対する懲罰ではないか」という意見がありました。しかし鳴り響く非常ベルの向こうには、みんなに緊急事態を知らせようという生徒の善意があると信じることが大切だと私は考えます。「生徒を信じる」とは、そういうことではないでしょうか。雨に打たれながら避難行動に入ったこともありました。しかし非常ベルのイタズラをしてはいけないという事は生徒の間にも浸透し、今では何年間も非常ベルが鳴らない状態が続いています。

忘れ物の2つの結末…考えてみて下さい

2006年12月19日 | 生活指導
先日行なわれた中学校見学会のときに4つの忘れ物がありました。そのうちの3つは筆箱。残りの1つは傘でした。筆箱の3つは持ち主に帰ってきました。しかし傘は持ち主には戻りませんでした。

持ち主の手元に落し物が帰ってくるかどうかは、その社会の信頼度と深くつながっていると思います。失くしたり落としたりした物が持ち主に帰ってくる社会は、善意が感じられます。3つの筆箱は、みなさんの善意に支えられ小学生の手に戻ったのです。筆箱を手にした小学生は温かな気持ちになったのではないでしょうか。

落としたり置き忘れたりしないよう気をつけなければいけないのはもちろんです。しかしみんなの善意が当たり前のことのように行われる、学校というものはそんな場でなければいけないと思います。そうであればなおさら傘が戻ってこなかった小学生は悲しい思いをしたのではないでしょうか。

中学生のみなさんは、誰もが1~3年前に不安な思いを抱えながら東町中見学会に参加したはずです。入学から3年目を迎え3年生はもっと不安な気持ちを抱えながら高校見学会に参加したのではないでしょうか。みなさんが小学生を温かく迎えるということと、みなさんが高校見学会で先輩たちから温かく迎えられること、この二つは無関係ではないと思うのです。

東町中校区一斉巡視の報告

2006年10月27日 | 生活指導
東町中学校ではテストでクラブ活動のない10月20日の午後4時~5時に一斉校区巡視を行いました。職員が北町・東町・新田・千里中央の4グループに分かれ、校区を巡視しながら子どもたちの遊び場や危険箇所を点検しました。

私と○○の二人は千里中央コースの巡視でしたので、その内容を報告します。

《店舗の入れ替わりが目立つせんちゅうパル》東町公園を通り過ぎせんちゅうパルから巡視を始めました。千里中央ではここ数年店舗の入れ替わりが激しく(3階の時計屋さんがなくなり修理を頼めず困っています)、特にパルの3階・4階部分にはシャッターが閉まったままの店もあり、人通りの少ないのが気になりました。ゲームセンター「こどもの国」ではプリクラを撮っている小学校6年~中学1年ぐらいの女の子が5人ほどいましたが、あとはお客さんもまばらでした。店員さんに挨拶をしようと思って顔を見たら、23歳になる東町中の卒業生。後輩が迷惑をかけていたらすぐに学校へ連絡するようにお願いしました。

《高校生のたまり場になりやすいセルシー屋上》次に向かったのがセルシーの屋上。ここは以前から高校生たちのたまり場・喫煙場所になることが多かったので、警察や補導センターの巡視コースに入っています。屋上でエレベータを降りると、すぐ向かいのベンチでこちらを見つけ笑っている女子校生2人を発見。よく見ると高校2年生になる卒業生でした。少し離れたベンチでその2人に声をかけようと騒いでいる制服姿で髭ヅラという見慣れない男子高校生が3人。近づいてみると、テーブルの上にはタバコの箱とライターが1つあったので取り上げました。(変な髭ヅラ高校生に引っ掛けられるな!)

《千里中央のトイレを安全点検》今回の巡視では、東町3丁目小学校の地区懇談会で話題になっていたマクドナルド横のトイレを含む千里中央の多くのトイレの安全チェックをしました。マクドナルド横のトイレは、通路から入り込んだところにあり、セルシー屋上のトイレと並び死角になりやすい場所です。子どもたちが使わない方がいいと思いました。

巡視が終わって学校に戻ろうとすると、来春に大学を卒業する22歳の卒業生3人にセルシー広場で遭遇。そのうちのA君はいつもと違うスーツ姿。就職活動の帰りでした。大量退職時代を迎え就職の門が広まっているとはいえ、秋風が吹き始めるこの時期になっても就職先が決まらない学生もいます。大学生活を支えるため、居酒屋で深夜まで働いているA君。頑張れ!「また飲みに来て下さいよ。」可愛い教え子のためなら、喜んで!

欠席者への対応について~基本方針

2006年10月10日 | 生活指導
Ⅰ目的
1.欠席者や所在不明者の状況把握を学年、学校として行う
2.欠席傾向にある子どもたちに対して、学校としての支援体制を組む

Ⅱ方針
1.欠席理由の把握を強めよう
①欠席黒板の記入
②欠席者の対応
保護者からの欠席連絡あり→問題がないと判断する
生徒からの欠席連絡あり→問題がないと仮定し他の欠席者との関連に注意
努力目標:その日中に「お見舞い電話」を入れる=所在確認のため
保護者と話しができればなお良い=「え、休んでたんですか!」ということも過去にある
無届け
担任・副担任・学年+不登校担当・生徒指導主事・教頭・校長の連携で1時間目終了までに電話等で所在確認
③2時間目開始時点で欠席理由が不明な場合
家にいるが電話を取れない、取らない=問題が発生している!
家から出たが学校に着いていない=どこに?
昨夜から家に帰っていない=どこに???
家庭訪問を行う→発見できれば担任・関係職員・生徒指導主事で指導
発見できない場合は保護者の勤務先等に連絡する

2.欠席が目立つ生徒への指導
①3日間続けて欠席があった場合(保護者からの欠席連絡がある場合も含む)
家庭訪問を行い本人の健康観察・配布物手渡し・連絡などを行う
不登校担当者に報告を行う→全体に報告
大阪府下の中学生の年間平均欠席日数は3日と言われています。月に3日の欠席は十分に注目せねばならない日数と思います。
②欠席累計が10日を超えた場合
その子どもの指導にかかわるケース会議を持ち方針検討を行う
メンバー:不登校担当者・生徒指導主事・担任・校長・教頭・関係職員

鍵のない教室

2006年09月08日 | 生活指導
私が転勤して東町中に来たとき、様々なことで驚きました。広大な運動場、広々とした中央廊下、2階建てを基本とした贅沢な校舎配置がそうです。でも私が一番大切に思ったことは、教室に鍵をかけないということでした。

東町中は、木工室や理科室など様々な器具や薬品が保管されている特別教室には鍵をかけていますが、皆さんが日常的に使う教室には鍵をかけていないのです。前任校では、盗難防止のため教室に鍵をかけていました。朝夕だけでなく、音楽や体育の授業のたびに日直が鍵の開け閉めを行っていました。日直の生徒が教室に戻ってこないので、他の生徒がずっと廊下で待っている、そんな光景をよくみかけました。 

「東町中生は、信頼されているんだ。」私は、そのことがとても大切に思えました。

しかし、私が勤めている12年の間に何度か盗難事件や持ち物を隠すという事件がありました。そんなときに「教室に鍵をかけたい」という意見が出ました。私たちは、その度に盗難防止を呼びかけ、鍵をかけない教室に象徴される『信頼』を大切にしたいと願ってきました。今まで鍵がなくても教室やみなさんの持ち物が守られてきたのは、先輩たちが『信頼』を大切にしてきたからなのです。

ところが、今回、学校で持ち物がなくなるという残念なできごとが起こりました。私は、物を盗られたり隠されたりした人の悔しく腹立たしい気持ちがよく分かるつもりです。それと同時に、物を盗んだり、隠したりする人の寂しい気持ちも考えてしまいます。

人の目を気にしながら、友だちの物を盗む、隠す、そんなときの表情を思い浮かべて下さい。せこく、ずるく、友だちへの悪意がこもる、一瞬であっても、そんな表情が東町中生の誰かの顔に浮かぶ瞬間があるとすれば、それはとても残念で、悲しいことだと思うのです。誰かが嫌な思いをし、不幸になれば、自分が幸せになれるのでしょうか。人は他人を陥れても、決して幸せにはなれないのです。

人の命を奪う『うわさ』と『デマ』~始業式での生徒指導の講話

2006年08月18日 | 生活指導
関東大震災が起こったのが76年前の今日、1923年9月1日です。この地震では14万人以上の人々が命を失いました。しかしこの中には地震による災害で亡くなったのではない人々がいます。中学の歴史の教科書には、こう書かれています。

…この混乱のなかで「朝鮮人が井戸に毒をなげこんだ」「社会主義者が暴動をおこす」などのうわさが、警察などによって広められた。そのため、数千人の朝鮮人や数百人の中国人が、軍隊・警察、住民などがつくった自警団によって虐殺された(日本書籍『中学社会・歴史的分野』P240)

不確かな情報に踊らされた結果、数千人の朝鮮人、数百人の中国人が命を奪われたのです。これは76年も昔のことで、今ではこんな事件が起こるわけがないと言えない状況が私たちの前にあります。

昨日、北海道で高校2年生の男の子が殺されたという事件がありました。その日のうちに15歳から18歳の5人の少年少女が容疑者として逮捕されました。警察の調べによると、逮捕された5人のうちの一人が、「あいつは生意気だ」といううわさをを聞いたので少年を呼び出し、5人で殴る蹴るの暴行を行った末に、殺してしまったということでした。逮捕された5人のなかには、殺された少年とは全く面識のない者もいたということです。

 人を傷つけるうわさ、他人をおとしいれるデマ、それが人の命を奪ってしまうことがあるということに、今も昔もかわりありません。私たちが歴史を学ぶということは、過去のできごとを知ることによって、そこから私たちが生きていく教訓を導き出すということです。(千里馬85号1999年9月4日号)

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この始業式での講話から7年の月日が過ぎました。しかし今も命をもてあそぶ「うわさ」や「デマ」は後を絶ちません。1学期には大阪の大学生が「俺の女にちょっかいをかけた男は暴力団関係者」という話を信じ、2人の学生を生き埋めにして殺してしまいました。被害者とは何の面識もない大学生も加害者として参加していました。国連の場で建物やトラックの写真を見せ、「これが大量破壊兵器の動かぬ証拠だ」と言って戦争を始め、何十万人もの命を犠牲にしている大統領がいます。歴史を学ばない人たちによって不幸な歴史が繰り返されます。

手錠と腰縄

2006年08月11日 | 生活指導
この夏のことである。街頭補導で何度か声をかけたことのある市内の中学生に、偶然出会った。T警察署の中で、手錠と腰縄を打たれ、左右を二人の刑事に挟まれてである。本人にとっては予想もしない事態の急変に、顔色は無く表情はこわばっていた。1mと離れていない私に彼は気づきもしない。

彼と最初に出会ったのは、去年の10月のある日曜日のことだった。校区の文房具屋さんでの万引きが原因だった。店長さんに捕まったが反省の姿勢が見られない。名前をたずねると「東町中のAや」と答えたので、すぐに学校に電話がかかってきた。たまたま出勤していた私が迎えに行くと、実在する「東町中のA」とは別人の、小学生のような半ズボンの少年がそこにいた。それが○中のB君だった。東町中生ではないので私が引き取るわけにいかず、○中に電話をかけたが日曜日で誰もいない。その日はT警察に引き渡した。それが「縁」となり、千里中央のゲームセンターで見かければ声をかけるようになった。

彼は今回こそ自分の犯した罪に気づくことができるだろうか。少年鑑別所に面会に来る、あるいは家庭裁判所の審判に出席する家族の悲しむ顔を見て、二度と過ちを繰り返さない決意を胸に刻むことができるだろうか。外からの力で規制されるのではなく、自分の中に善悪の基準を持つことができるようになってほしい。彼の後姿を眺めながら、そう願った。

遊びの中で子どもたちの心が癒されます~大阪少年鑑別所研修会

2006年08月10日 | 生活指導
6月29日にT地区生徒指導主事連絡協議会が大阪少年鑑別所で開催されました。施設見学を行った後、所長の藤原さんから次のような講話をいただきました。

大阪少年鑑別所は日本で一番忙しい鑑別所で、現在186人の定員に対して、187人の少年が入所しています。これは東京鑑別所(練馬にあるため『ネリ鑑』と呼ばれた)が定員100人に対して、だいたい50人ほどしか入所していないのに比べても大阪が際立っていると思います。大阪の少年犯罪の特徴は①ひったくりと②暴走族にあると言われます。ひったくりは同じ関西でも京都や神戸では少ないのに大阪だけが突出しています。ひったくりを犯した少年たちの罪の意識が薄いのですが、ひったくりのときに相手を脅せば強盗、ハンドバック等を奪おうとして相手が転倒しけがをすれば強盗致傷となり、凶悪事件となるため大変重い罪になります。また暴走族がらみの事件も、恐喝や対立グループとの暴力事件、時には殺人や車を使った強姦事件にもつながります。

大阪少年鑑別所には、一年間で約2500人の少年が入所しますが、昨年は開所以来始めて小学生の入所がありました。中学生の入所も365人にのぼっています。少年犯罪の低年齢化を象徴するような数字です。鑑別所に入所する少年の特徴として、「遊ばない」ということがあげられます。自由時間にグランドに出る少年はわずかで、だるそうにじっとしている少年が多いのが気になります。心理学の立場から言うと、遊びには心を癒す治療的な効果があると考えます。しかし少年たちの多くはテレビやファミコン等の機械に遊んでもらうことはあっても、自分たちで遊びをすることができなくなっているように思います。

刑務所(少年刑務所も含む)が懲罰機関あるのに対し、少年院は少年を社会に送り出すための教育機関です。退院するときには卒業証書も渡します。一方、少年鑑別所は懲罰機関でも教育機関でもなく、ありのままの少年を観察するための場で、その少年に最も適した処遇を家庭裁判所に通告します。鑑別の結果少年院入所が望ましいという結論になることもありますし、学校や地域に戻すという結論になることもあります。少年院や鑑別所に対してまったく違った期待を持たれその期待が外れたからと言って不満を述べられることもあります。しかし少年院や鑑別所に課せられた役割を正しく知っていただくことが、連携を深めるために必要だと思います。
東町中学校生徒指導部だより「千里馬」17号1998年7月2日

就寝4原則と入浴5原則

2006年05月27日 | 生活指導
修学旅行では、学校毎に様々な約束事があると思います。私からは皆さんに就寝と入浴についてのルールとマナーについて説明とお願いをします。

就寝4原則
 ①電気を消す(懐中電灯をつけ遊ぶなど絶対にダメ)
 ②部屋から出ない(就寝準備時間に歯磨きやトイレなどをすませる)
 ③部屋から声がもれてはいけない
 ④寝ている人を起こさない
修学旅行に参加した皆さんの中には、様々な体調の人がいるのです。起床時間をどのような体調で迎えられるか、それがその後の活動に響くのです。寝不足は、事故・体調不良・車酔いなど様々な状況を派生させます。「俺は大丈夫」という人がいるかも知れません。確かに徹夜で遊んでも、翌日も元気という人がいるかもしれません。しかし一緒に盛り上がってしまった人の中から翌日体調を崩す人が一人も出ないと言い切れる人は、いないと思います。参加した全員の健康を守るため、ぜひ守ってほしいルールです。

入浴5原則
 ①かけ湯をする
 ②タオルは湯につけない
 ③浴室を出る時はタオルを絞る
 ④脱衣場の床を濡らさないため体を拭く
 ⑤使った洗面器などは片づける
北町・東町から銭湯が消え、20年近くになるでしょうか。家族以外の人と一緒にお風呂に入ることがなくなりました。そのため入浴のマナーについても、皆さんに知っておいてもらいたいのです。

校則自由化について考える

2006年05月02日 | 生活指導
《先輩たちが残したもの、それは鍵のない教室と靴下の自由化》

東町中学校で靴下の自由化が実施されたのは今から8年前です。それまで東町中の靴下は白だけとなっていました。靴下の色を自由にするだけのことですが、試行期間を設け、生徒・保護者・職員からアンケートをとり、三者協議会(生徒代表・PTA代表・職員代表で校則を話し合う会議)で話し合いを行い、校則が改正されました。今年の生徒会執行部の中にも、校則自由化の意見があります。8年前の生徒指導部だよりを紹介しますので、校則の自由化についてみなさんなりに考えてみて下さい。

《靴下自由化に向けた試行期間始まる》

5月11日から20日まで靴下の自由化へ向けた試行期間が行われます。試行期間とは、試してみるということです。今の東町中で靴下の自由化を行うのか、今のままで行くのかを決定します。

考えてみれば、私がT市の中学生だったころ、靴下の色を指定している中学校は一校も無かったと思います。ところが私が教員になり、同じT市で中学校に勤めてみると、靴下や靴の色は白、カバンやサブバッグは学校指定となっている中学校がほとんどでした。私が中学校を卒業し、教員になるまでの8年間の間に(わずか8年!)T市の中学校の校則、もっと言えば全国の中学校の校則が大きく変わったのです。

《自主の力が自由の元になる》

大人と子どもの間で自由が保障されているかどうかは、お互いの信頼関係があるのかどうかにかかっています。そしてその信頼関係の基礎となるのは、「自主の力」です。周りの大人に言われなくても正しい判断や行動ができる、それが自主の力です。そしてみんなの地価だが集まり「自治の力」になります。自治の力があれば、自由は多くなります。

中学生となったみなさんは、自分が幼かったころのことを覚えていないと思いますが、3~4歳のころは一人で公園に遊びに行く自由さえも皆さんには無く、いつもお父さんやお母さんに連れられて外に出かけていたはずです。迷子にならないように、誘拐あれないように、様々な危険から身を守ることができる(赤ちゃんは煙草を食べようとしたり、知らない犬の口に手を突っ込もうとしたり、とんでもないことをするのです)力を身につけることのよって、みなさんは一人で公園に遊びに行くという自由を手に入れたのです。

ところが自分の力ではできないと判断されると、大人たちは、いつまでもみなさんに干渉しようとするのです。かつて自由だった靴や靴下が規制されるようになった背景には、中学生が自治の力を失ってきたからではないでしょうか。

《学校に自主と自治の力を》

自由とは素晴らしい言葉で、自由が大嫌いという人はあまり見かけません。しかしその元になる自主や自治の力が、この東町中でどれだけ根付いているでしょうか。

毎朝担任の先生は、みなさんに貴重品を預けるように呼びかけています。学校でものがなくなるという問題があるからです。ナイフを使った中学生の事件がおきたときに文部大臣が学校で持ち物検査をするように発言し、これに対して賛否両論の意見が新聞紙上をにぎわせました。しかし私たちの東町中で、みなさんのカバンの中を調べ、貴重品を抜き取るという『持ち物検査』どころではない問題がおこったのです。

さらにクラスの様子を見てください。クラスの中で孤立していたり、学校に来にくい仲間がいないでしょうか。日直や掃除など、嫌な仕事を人に押し付ける、そんな関係がクラスの中にないでしょうか。持ち物がなくなったり、仲間が嫌な思いをしている学校が、自由な学校であるわけがありません。

T市内の少なくない学校で、教室に鍵をかけています。私は東町中に転勤してきたときに鍵がかかっていない教室を見て、良い学校だなと思いました。しかし靴下の自由化が取り上げられているときに、先輩たちが作ってきた伝統、すなわち教室に鍵をかけなくても安心して過ごせる学校生活が崩れようとしているとしたら、それは大変なことです。

靴下自由化に向けた試行期間でためされているのは、みなさんの自主の力であり、自治の力なのです。みなさんの取り組みが成功するのを期待しつつ、私は今日も生徒のパンが抜き取られないよう、購買部の前に立っているのです。(東町中学校生徒指導部だより1998年5月12日号)

あれから8年が経ちました。東町中学の教室は、今も鍵をかけていません。

「人を外見で判断する」ということ

2006年04月29日 | 生活指導
中学3年の担任をしていたときの懇談の一場面です。ある高校の見学会への参加をすすめたところ、こんな返事が返ってきました。生徒「○○高校って、アホばっかしなんやろ。オレ、あんな高校に行きたくないわ。」私「○○高校のことを誰がアホやと言うてた。」生徒「みんな言うてる。先生も知ってるやろ、髪の毛は茶色で不良ばっかりや。」私「夏休みのお前と一緒や。」生徒「オレは、ちゃんと黒くした。」私「中学卒業したら、どうする。」生徒「茶色にする。」

自分は髪の毛を茶色にしたい。しかし、自分のいく高校が茶髪の生徒ばかりではいやだ、というわけです。他人に対しては人を外見で判断し、茶髪=アホ=不良というレッテルをはるのに、自分が髪を染めたときには「外見で判断してほしくない」という身勝手さには驚かされます。

服装や髪型の自由化が困難なのは、私たち大人の頭が古いだけでなく、中学生の皆さんの中にも、「外見で人を判断する」という物の見方があるからだと思います。