へちま細太郎

大学院生のへちま細太郎を主人公にしたお話。

オーストラリアのおみやげ

2006-12-13 23:02:02 | へちま細太郎

こんばんは、へちま細太郎です。

例によって、藤川先生がやってきて、
「細太郎、うちの(仮)亀梨軍団からのみやげだ」
と、袋にいっぱいのおみやげを持ってきました。
「え?ぼくに?」
ぼくはびっくりしました。
「だって、ぼく、サッカー部の練習見に行ったり合宿に行ったりしただけなのに…」
「気にするな。あいつらの中には、あれでも教師や保育士志望がいるんだ」
「えっ…」
あの人たちが、保育士って…(・_・;)。
第一、ぼく、幼稚園児じゃないし…。
「ま、そう言うなよ、いいやつらだろうが」
「そうだね」
ぼくはおばあちゃんと中身を出しました。
カンガルーとコアラのぬいぐるみ・コアラのマカロニ・アボリジニのブーメランの形をした飾り・TIMTAMという名前のチョコレート・ゼリービーンズ?のおまけつきのカエルのぬいぐるみ・コアラのペン・ナッツ入りのチョコレート・ビーフジャーキーなどなど。
「ビーフジャーキーは酒の肴だな」
とおじいちゃんが取り上げましたが、
「なんだこりゃ
おじいちゃんは、袋を藤川先生に見せました。
「あ、こりゃ、カンガルージャーキーだ」
「カ、カンガルー?
「カンガルーって食べられるの
ぼくとおばあちゃんは顔を見合わせました。
「食えるから、ジャーキーになったんだっぺよな」
おじいちゃんは袋をべりっと開け、中から1本取り出してかじりました。
「よくわかんねえけど、カンガルーの味っちゃ、こんなもんだっぺなあ」
ぼくは、カンガルーのぬいぐるみを両手で持ち、
「こんなにかわいいのに…」
とつぶやきました。
「俺にはエミューのジャーキーもってきたぞ」
「エミューって?」
「簡単に言えば、ダチョウのちっちゃい版」
…(・_・;)。
日本に生まれてよかった、ぼく…。 と、しみじみ思った時、
「ちょっと何で俺にはみやげないのっ
と、おとうさんがぶつぶつ文句を言い始めました。
「おまえね、女子生徒から“綾小路~”とか言われてみやげもらってたろ」
おじいちゃんとおばあちゃんの呆れた視線が、おとうさんに向けられました。
「あやのこうじだあ~?」
「きみまろだろ」
おばあちゃんが言い捨てました。
「手をだしてんじゃないだろな」
「あのなっ
真っ赤な顔をしておこりだしだおとうさんでしたが、分が悪いと知ってTIMTAMを1本丸かじりしました。
藤川先生はいやそうな顔をしています。理由はぼくもわかります。 甘いにおいが、さっきから鼻についていました。
「俺は日本の食い物がいちばん好きだ」
藤川先生は、ふんと鼻をならしました。
ぼくは、カンガルーをだっこしてほおずりしました。
「ふかふかして気持ちいい」
なんとなく、しあわせ、ぼくはそう思いました。
おみやげ、ありがとう。


藤川先生のぼやき

2006-12-12 22:15:45 | へちま細太郎
ちきしょう、成績つけるの忘れてた。
うちのサッカー部の1年ども(仮)山下軍団は、2年の(仮)亀梨軍団に負けず劣らずバカだった(・_・;) 。
俺は平和主義者だ。『1』は10人にとどめといてやらあ。
…って、そんなに出しませんてヾ( ´ー`)。
あとが大変

美都田吾作

2006-12-11 18:05:22 | へちま細太郎
藤川だみょ~ん

細太郎が家出の夢をみたり、わがサッカー部の亀梨軍団が修学旅行に行き、と平和でのんびりとした一週間だった。
細太郎の夢の中に出てきた『美都田吾作』というのは、まぎれもなく俺のご先祖様のことで、徳川の世になりこの地方に領地を与えられ3代目の殿様になる。
初代はもちろん織田信長に仕えていた藤川飛騨守孝盛のことだ。
ほれ、嫁さんと喧嘩して、秀吉と前田利家の女房に枕をけっとばされた大バカ野郎のことだ。
それ以来、家訓の中で、
「腹が減っては戦はできぬ」
「女は大事にせよ。とくに女房(正室)殿は」
俺はこの家訓を気に入っていて、女には優しく飯も食う。
いい子孫ではないか。
んで、『美都田吾作』だ。
こいつは、畑仕事に精を出し、領民に米をばらまいたことで知られている。
女よりも飯が好き、という食いしんぼうで意地汚い殿様だったんだな。
こいつがなんでテレビ時代劇の主人公になり、ゴールデンタイムの長寿番組になっているのか理解不能だ。
おっと、これからさきは、テレビを見てくれよな。
え?見られない?
田舎モノめ。


あ~~

2006-12-10 22:48:27 | へちま細太郎

こんにちは、へちま細太郎です。

ぼくたちが玄関前で騒いでいると、中の方に女の人が立っているのがみえました。暗くて顔がはっきりわかりません。
ぼくはどきどきしました。あの女の人は、きっとおかあさんなんでしょう。
ぼくはつばさくんじゃないとバレるんじゃないかと、顔を伏せました。
「ほら豆太郎、おかあさんだよ」
おじいちゃんが言いましたが、ぼくはますますうつむきました。さっきからばくばくいっている心臓が口から飛び出しそうになりました。おかあさんが近寄ってきました。
「豆太郎…」
優しいやわらかな声でした。 ぼくが夢の中できいたあの声でした。細くて白い指がぼくのほおにふれました。
「細太郎」
突然、おかあさんが名前を呼びました。
「翔」
ぼくは顔をあげました。
「おかあさん」ぼくはじわっと涙があふれてきて、顔がおぼろにしかみえません。
「どうしてわかったの?」
「細太郎、おかあさんだからよ」
「おかあさん」
ぼくはほおに添えてあるおかあさんの手に、ぼくの手を添えました。
「おかあさんおかあさん」
が、その時です。
「細太郎、テニスのラケットを買いに行くわよ」
「えっ
ぼくは涙をふいて目の前のおかあさんを見ようとしました。いっしゅん、おかあさんの顔がみえた気がしました。が、みるみるおとうさんの顔になっていきました。
「え
周りを見回しました。すると、おじいちゃんとおばあちゃんの顔が、一緒に住んでいるおじいちゃんとおばあちゃんに変わりました。
「細太郎、ラケットを買いに行こう。テニスをしような」
「ええ~っ
ぼくは、にぎっていた手をふりほどこうとしました。でも、ふりどけません。
「さ、行くぞ」
「いやだあ~っ
ぼくは大声で叫びながら、目を覚ましました。 目を開けると、自分の部屋でした。
「え?え?」
夢?夢だったの?家出のことも、つばさ豆太郎君のことも…。
ぼくはがっかりしました。 みんなみんな夢だったなんて…。
おかあさん、ぼく、夢なんかじゃなくてほんとにおかあさんに会いたい。
ぼくは涙が出てきました。
なぜいつも夢なんだろう。
なぜ夢は、覚めると悲しいんだろう。ぼくが涙をふいているときでした。
「細太郎、起きろラケットを買いに行くぞ
おとうさんがドアを開けて、意気揚々と入ってきました。
「いやだあ」
お願い、夢なら覚めて~(◎ ̄ロ ̄◎;) 。。。

 


ね、細太郎君

2006-12-09 23:16:07 | へちま細太郎

こんばんは、にがうり豆太郎です。

ぼくは美都駅前で、二人のかっこいいおにいさん(おじさんと言ったら、すごい目でにらまれた)に事情を説明しないといけないかな、と思いました。
なぜならぼくの名前がつばさと知って、ぼくをはなしてくれそうにないからです。 もちろん、家出したなんて言えません。そこのところははしょって、
「ぼく、電車を乗り過ごしてしまって、ほんとは孟宗学園の中島教授に会いにいくつもりだったんです」
「なに
銅像の人がいやあな表情を浮かべました。
「あ、こいつ、孟宗学園の高校の先生」
「ほんと?中島教授を知っているの?」
「知っているも何も、あのおっさん、変人だぞ」
「え?」
ぼくは、ぐうぜんにおどろきましたが、変人という言葉にはもっとおどろきました。
「あのきれいな蘭を咲かせる中島教授が変人なんて、信じられないな」
ぼくは、尊敬する中島教授のことを同じ学校の先生が言うなんて、許せないと思いました。
「きれいな蘭…」
銅像の人はますますいやな表情をしました。
「全く、細太郎といいこのガキといい、近頃はあんな不気味な花がきれいにみえるんだな」
細太郎…かける君も中島教授が好きなのかな。やっぱり、植物採集が好きなのかな。
なんか、細太郎…かける君、君に会いたくなっちゃったよ。
このおじ…じゃなかったおにいさんたちとどんな関係?君も家出したの?理由はテニスだったら笑っちゃうな。
おとうさんはいるの?どんな人?君を探しているの?
いいなあ、ぼく、おとうさん欲しかったんだよ。
君のかわりにあってみてもよいかな。


つばさ君へ

2006-12-06 21:55:24 | へちま細太郎
こんばんは、へちま細太郎です。

ぼくを乗せた車は、東京からそんなに遠くない都市につきました。そして、1軒のわりと大きな家の前に停まりました。
車が停まった気配がしたのか、中からおじいさん?とおばあさん?が飛び出してきました。
「豆太郎
へっ? ぼくはびっくりです。つばさ…じゃないの?
「どうしちゃったの豆太郎…」
「あ、あの…」
ぼくは、人違いだと言おうとしましたが、おばあさん?がぎゅっと抱きしめてきたので何も話せません。なぜかというと、なんかこの抱きしめられた感じが、妙になつかしいんです。
「おかあさんに一緒に謝ってあげるからね」
「あ、あの…」
ぼくは口を開きかけてやめました。 おじいさんらしき人が、怖い顔をしています。
「おかあさん、心配で倒れたんだ。わかっているだろう」
「ごめんなさい」
自然にそんな言葉が出てきました。なんでだろう…。
そして、ぼくはこの時、ぼくにそっくりだという“つばさ=豆太郎”という子のことを考えていました。
つばさ君はぼくと同じように家出をしたんだね。理由はなんだろう。テニスだったら笑えるな。きっと今頃は、ぼくが最初に味わった解放感でいっぱいなんだろうなあ。もしかしたらぼくと間違えられて“かける”とか“細太郎”とか、呼ばれていておばあちゃんや広之お兄ちゃんにどなられ、藤川先生にはなぐられ、おとうさんには…おとうさんにはまた涙目をして見られているかもしれない。
つばさ君、ぼくはね、おとうさんが大好きな人の子供だから、おとうさんにとっては宝物みたいなんだよ。それが最近はうっとおしいんだけどね。ぼくじゃないとわかった時は、おとうさんショックだろうなあ。
つばさ君にはおかあさんがいるんだね。いいなあ、ぼくにはいないんだよ。ちょっとだけ、ぼくにおかあさんを貸してくれないかなあ。ちょっとだけ、ちょっとだけならゆるしてくれるよね、つばさ君。

にがうり豆太郎

2006-12-05 20:03:17 | へちま細太郎
こんばんは、ぼく、にがうり豆太郎といいます。
はじめまして。

ぼくは小学校4年生です。
家族は、おじいちゃんとおばあちゃん、そしておかあさんです。
ぼくのおかあさんは、とても美人です。35歳ですが、とても若くみえます。自まんのおかあさんです。
おかあさんは、おじいちゃんおばあちゃんといつも喧嘩をしています。原因は、お医者さんにならなかったことと、お医者さんと結婚しなかったこにあるみたいです。
ぼくのおとうさんは残念ながらお医者さんではなかったみたいです。
どんな人かあったことがありません。おかあさんが好きになる人だから、きっと男らしくてかっこいい人なんだと思います。
でも、結婚を反対された時、かけおちしたみたいですけど、最後までおかあさんを守って欲しかったと思います。
どんな人かなあ、おとうさん。 会いたいなあ。 ぼくと野球やってくれるかなあ。大好きな植物採集も一緒にしてくれるかなあ。
おかあさんはテニスが好きで、ぼくにテニスをしようと言うのですが、ぼくはテニスが嫌いです。おかあさんはほんとははげしいスポーツはしちゃいけないはずなのに、すぐ熱を出すのにテニスだけは健康のため、と言って時々やっています。
壁打ちだけどね。
先週の金曜日に、ぼくの学校で持久走大会がありました。がんばったら好きなものを買ってくれると約束したのに、
「豆太郎、テニスのラケットを買いに行くわよ」
と、いきなり言い出して、ぼくはびっくりしました。
「おかあさん、ぼくテニス嫌いだよ」
と何度も言いましたが、
「豆ちゃんはテニスをやるの」
ときいてくれません。ただでさえ、うるさいおばあちゃんが、
「豆太郎は医者になるの。絶対にならなくちゃだめなの」
としつこく言うのでうんざりしているのに、おかあさんまでそんなことを言うなんてひどい。
ぼくはぼくでやりたいことがあるんだ。
ぼくはおとうさんに会って、ぼくの話をきいてもらうのが夢。そして、ぼくは植物学者になるんだ。いつかネットでみた孟宗学院大の中島教授みたいに、きれいな蘭の花を咲かせることが夢なんだ。
だからぼく、金曜日の夜から準備をして家出をしたんです。孟宗学院大の中島教授に会いに行こう、と決心をして…。
ところが、電車を乗り過ごしちゃって、美都駅というところに着いちゃった。どうしていいかわからなかったから、まずはごはんを食べてから移動しようと考えました。
駅前のへんな銅像の下でおにぎりを食べました。この銅像は、ここの殿様だった人らしく、そういえばテレビでも『美都田吾作』というタイトルで時代劇やってました。山盛り茶わんとお箸を持ったへんな殿様の銅像です。
そして、高速バスに乗れば直通で孟宗学院大にいけることがわかったので、バス乗り場に行こうとしました。
そしたら、
「細太郎
と、誰かに声をかけられていきなりおこられちゃった。
「ぼく、かけるじゃないよ、つばさだよ」
そしたら、かっこいいお兄さんの方がびっくりしてぼくの顔を見たんです。 もう1人の変な銅像によく似たハンサムなおじさん?は首をかしげていました。
「ぼく、つばさだよ」