へちま細太郎

大学院生のへちま細太郎を主人公にしたお話。

細太郎の冒険

2006-12-03 23:55:14 | へちま細太郎

こんばんは、へちま細太郎です。

それは、金曜日の夜のおとうさんの、
「明日、テニスのラケットを買いに行くぞ」
というセリフから始まりました。
ぼくは、テニスをやりたいとは思いません。ちゃんとそのことを伝えたのに、おとうさんは1人で決めて1人で喜んでいます。 ぼくは、もうおとうさんの願い通りにはなりません。 だから、夜のうち準備をして、まだ暗いうちに起きて家を出ました。
初めての家出です。どきどきしました。空はまだ暗くて星がみえました。寒くて空気がひやりとしました。どこへ行くとも決めていないからほんとはこわいはずなのに、ちっとも不安じゃありませんでした。
こういうの解放感というのかな。おとうさんのこともおばあちゃんやおじいちゃんのことも、きれいさっぱり忘れてしまいました。
あ、でも、どこへ行こうかな。明日帰るっていったけど、今夜どこにとまろうかな。
なんとかなるだろう・・・。
ぼくは、てくてくと歩き駅に向かいました。とりあえずきっぷを買い、前から行きたかった上野にある科学博物館に行こうと思いました。電車の中でたっぷり睡眠をとって、上野につくとコンビニでおにぎりを買って上野公園で食べました。
科学博物館は楽しくて面白くて、何回も何回も繰り返してみました。
「あ、お昼」
ぼくは、館内の時計が2時さすのを見てお腹が空いたことに気づきました。
何を食べようかな。ぼくは、売店から外へ出ようとして歩き出した時に、
「つばさくん」
と声をかけてきた人がいました。ぼくは人違いだよ、と言おうとしましたが、
「どうしたの?みんな心配しているよ」
となおも声をかけてきました。
「あの、ぼく、違うけど」
ぼくは、おじぎをして駆け出しました。あとから考えると、それがいけなかったんです。
「つばさくん、待ちなさい」
その人はぼくを追いかけてきて、腕をつかみました。
「いいかげんにしなさい。おじいちゃんおばあちゃんに心配かけるんじゃありません」
「なんだよ~」
うわっうわっ、誘拐かあ~っ
ぼく、家出したこと、ちょっぴり後悔してきました。
あ~、どうなっちゃうの?ぼく…(@_@)