へちま細太郎

大学院生のへちま細太郎を主人公にしたお話。

藤川先生の家族

2006-12-02 23:49:27 | へちま細太郎
はあい、明日から亀梨軍団が修学旅行でいないから、ゆっくりすごせそうだよ、子猫ちゃんたち。藤川だよ~

って、のんきなことを言ってる場合じよない。朝からこ~いっちゃんのバカがどなりこんできやがって、家中大騒ぎだ。
「翔を出せ」
「あ?」
俺は寝ているところを無理矢理起こされ、わけがわからん。なんの騒ぎだ、と家族がのぞきにきた。
「あら、光一君、朝から寝込みを襲いにきたの?」
姉妹中未だ唯一独身の長姉が、ベッドに寝ている俺に馬乗りになっているこ~いっちゃんに言葉を投げかけた。姉ちゃんは、すっけすけのキャミソールのまんまだ。 恥じらいってものがないのか、この女は…。
「翔が家出したんだ、おまえしか入れ知恵するやついないだろ」
あ~?細太郎が家出? 俺は髪をかきむしり、しかし、気を取り直すと、じっとこ~いっちゃんの顔をみた。 こいつが、細太郎を“翔”と名前で呼ぶ時には、かなりスイッチが入っている。
ヤバいな…。
俺は、ため息をついて頭をかくと、
「人んちに朝っぱらから乗り込んでくるんじゃねえ」
と叫んで、こ~いっちゃんを思いっきりぶん殴りベッドから叩き落とした。 いきなり殴られて、こ~いっちゃんは気絶しちまいやがった。
「相変わらず、へなちょこなやつだ」
朝から竹刀を振り回していたじいさんが、足元に転がったこ~いっちゃんを竹刀でつつく。
「後で鍛え直さないといかんな」
「介抱するわよ」
姉ちゃんが、こ~いっちゃんをひょいと抱き上げると、自分の部屋に連れていってしまった。どんな介抱するつもりやら想像がつくだけに、目覚めた時のこ~いっちゃんを気の毒に思うが、自業自得だ、バカやろう。
俺は、こ~いっちゃんの家に電話を入れ、ことの次第をお袋さんからきいた。朝起きたら細太郎の姿はすでになく、広之のところにもいないそうだ。他に心当たりがないので、俺のところに来たらしい。
試しに棒斐浄寺に電話してみると、
「来てないわよ」
と、あっさりと言われた。
「ほんと?」
「仏に仕える者を疑う気?」
…(・_・;)。
「孝禎(たかよし)さん、朝からなんの騒ぎでいらっしゃるの?」
身仕度を整えて、大おばあさまに朝の挨拶にいくと、こっちにまで騒ぎが伝わったとみえる。大おばあさまの部屋は、奥の奥にある。
大おばあさまとは、またキャラにあわないとは言わないで欲しいね。そう呼ぶにふさわしい人で、唯一俺が大好きな女性なんだから。
細太郎の家出の話をすると、
「あらあらまあまあ、それはまた光一さんもおかわいそうに…。細太郎さんとは赤ちゃんの時にお会いしたきりでしたわね。もう家出する年になりましたのねえ」
と、想像した通りのんきな返事である。
「先だって孝禎さんが、養子にしたいなんておっしゃるからいつか連れてきていただけると楽しみにしていましたのに」
大おばあさまの浮き世離れは、やんごとない育ちだから仕方がない。
でも、細太郎、おまえ、俺のところにもこないなんて、少し寂しいぞ~、とトンチンカンなことを考える俺は、大おばあさまのDNAがなせるワザか?
じゃねぇ、マジでどこに行ったんだ?何が原因なんだ?
細太郎…。

ところで、こ~いっちゃんは、姉ちゃんに添い寝された状態で目が覚め、しばらくパニックを起こして騒ぎだし、今度はじいさんの竹刀で殴られてまたもや気絶した。 再び目覚めた時はすでに夕方だったんだとさ。
バカなやつだ