どうしても捨てきれなかった文庫本が、まだ相当残っている。また読むかも知れないとも思っていたが、最近では手に取ることも殆どなくなった。
先日の日曜日のことだった。
小学校6年生の孫が、「おじいちゃん、小説ってある?」と入ってきた。
「ゲーム買って」と言うんだったら気にもならないが、予期しない言葉に一瞬戸惑った。
「どうして?」「学校で先生に読むよう言われたん?」
「ウーン 違う。この前、小説読んだら面白かったから」
「どんな本がいいの?」
「面白い本!」
「面白いかどうかはわからんが、いろんなジャンルの本がある」
書棚をみせながら、
「『竜馬がいく』(司馬遼太郎)って本、どう! 坂本龍馬って有名な人やで」
「知ってる。長州とか土佐藩とかいうやつ」
「そうか、知ってるか。読んでみる?」
「ウン、読んでみる」
「8巻ある。1巻持って行って、読んだらまた取りに来たら」
「そうする」
「しおり」も渡した。
今まで家族の誰もが見向きもしなかった書棚が、孫によって日が当たるかも知れないと思った嬉しい出来事だった。棄てなくて良かった。