長いあいだ気になっていた食べ物が、あります。
“それ”は、ある人によると
「熱々の飯にまぶして、ショーユをたらして食うとたまらん」
と、おっしゃる。しかし、またある人は
「臭くって辛くって、食べられたもんじゃない」
と、おっしゃる。
この場合の「辛い」は、塩辛いという意味らしいですが。
どうもこの、“それ”に対する具体的なイメージが、わいてこないんであります。
しかしある日のこと。
“それ”は突然、私の目の前に現れたのです。
“それ”とは、腐乳(ふにゅう)でありました。
久しぶりの瓶詰でのご登場。分厚いガラスが、何か頼もしくも思えてくる。
さて、ふたを開けると...。
上質の酒粕のようなかほりが、あくまでも控えめに立ち昇ってきますです。
予想に反して、ずいぶんと品の良いお方なのかも、しれません。
前評判やパッケージデザインからして、もう一寸、パンチの利いた激しい気性を予想していたのでありますが。
今回は、油揚げにチーズを乗せ、そこに腐乳をまぶしてオーブンで焼くというメニューであります。
このメニューは、過日ご紹介させていただいた、銀座のロック・フィッシュの『おきつねチーズ』を真似てみたのであります。
かくのごとし。
熱々のこってりしたチーズに、塩辛い腐乳が合います合います。
その辛さが、もう、たまらん美味さであります。
しかし、原料が大豆と乳製品だけなので、若干の生臭さも欲しくなってくる。
後日アンチョビーを加えてみると、そのほうがぐっと旨味が増すようであります。
さて、この腐乳。
そのまま舐めてみると、相当に塩辛いです。辛さの度合いで比較すると、アンチョビーと同等か、もしくは上回るくらいのもの。
塩分に関して言えば、やはり相当のパンチ力を持っていらっしゃるわけです。
しかし、その塩辛さを利用すれば、実に美味いものを拵えることが出来る。とくに酒のアテにするようなメニューには、もう最高の刺客かもしれないんであります。
これから先、暑くて汗をかく時節には、塩辛いものが欲しくなるもの。今のうちに、じっくりとこの刺客を使ったメニューを考えておこうではありませんか。
内容量:300g
原材料名:大豆、食塩、アルコール、胡麻油、凝固剤(硫酸Ca)
原産国:台湾