缶詰blog

世界中の缶詰を食べまくるぞ!

スイートコーン缶も進化してるゾ

2012-12-30 14:11:47 | 穀物

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いなばの収穫当日・食塩無添加コーン
見かけたらぜひ試してほしい缶詰だ

 地味で、目立たないけど、みんなに好かれてる。
 そんな人物が、読者諸賢の近くにもきっといると思う。
 人の好みは千差万別。何となれば、誰にでも好かれる存在というのはとても珍しいと思う。
 そんないい奴が、缶詰業界(略して缶界)にもいるんであります。
 その筆頭が、スイートコーン缶なのであります。




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スイートコーン缶料理2種
手前はコーンとトマトのサラダ。奥はコーンと鰯のキッシュ

 地味なコーン缶も、実はすごい進化を遂げている。
 今回取り上げているいなばの収穫当日・食塩無添加コーンは、その名の通り、コーンの実をもいだ当日(夜間なら翌朝)にパックしている。
 コーンは収穫後、呼吸をするために自分の糖分を使ってしまう。そして消費した糖分はでん粉質に変化していくと言われている。
 だから、収穫後なるべく早く茹でるなり、生のまま缶詰に入れて加熱しないと、もぎたてコーン特有の甘さが失われてしまう。さらに食感も、でん粉が増えたことによって
「もっちり、ねっとり」
 してくるんであります。
 何となれば、いなば食品だけでなく、各メーカーが作り出すスイートコーン缶は、収穫後すぐに缶詰にされているのだ。
 さらに“食塩無添加”というのもミソ。
 スイートコーン缶は、食塩や砂糖を足して、味の調整を行っているものも多い。
 しかし
「製法がよければもぎたての味が再現できるはず」
 と、味の調整なしで作られる缶詰も存在するのだ。
 今回の缶詰もそのひとつだけど、実は今年9月に発売されたばかりのニューフェイス。
 皮はプチッとした食感が残り、噛むと中から甘い汁が弾け出てくる。
 今まで食べたスイートコーン缶とはレベルが違う。実にフレッシュな風味なんであります。




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コーンと鰯のキッシュ、断面図

 かくのごとし。
 全卵にスイートコーン、細かくほぐしたオイルサーディン、パセリみじん切り、塩・コショウ、ナツメグを加えて、耐熱皿に入れてオーブンで焼き上げてみた。
 コーンの食感が愉しく、イワシのうま味と相まって、なかなかに美味。
 本当にウマい缶詰を見つけると、
「これ使って何か料理したい!」
 自然とそんな欲求が湧き上がるんであります。




 固形量:155g
 内容総量:200g
 原材料名:スイートコーン(遺伝子組み換えでない)
 原産国:アメリカ(輸入者・いなば食品







宇和島水産高のぶりだいこん

2012-12-16 12:15:02 | 魚介

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ほのぼの癒し系デザイン。校歌の歌詞も書かれている

 年の瀬であります。
 師走であります。
「年末年始を挟む関係で、原稿の締め切りが通常と違ってきます」
 などという連絡が入ってくる。
「年賀状のリストはどこ?」
 家人が問いかける。
「大掃除は終わりましたか」
 テレビからも諸事を催促される。
 よせばいいのに、毎日わざわざ日付を確認しては
(もうすぐ年が暮れるゾ)
 確認している。
 まったく慌ただしい月であります。
 そんなときに最適なのが、ほのぼの系缶詰の代表・ぶりだいこん。
「何が最適なの? 意味わかんねーし」
 などと突っ込まないで欲しい。
 あくまでも雰囲気で申し上げてるのであります。雰囲気!

 


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 開缶!
 大きく切り割った大根と、同じ大きさに揃えたブリの切り身が、風車のように美しく配置されている。
 そこから、醤油の利いたノスタルジックな匂いが立ち昇ってくる。
 缶に表記してある通り、これは宇和島水産高校で作られたものだ。
 各地の水産高校では、授業の一部として、生徒たちが缶詰を作っている学校がある。それらは催事や、地元の道の駅などで発売され、一般の人も買うことが出来るのであります。
 中身を深皿に移して、電子レンジで1分、加熱してみた。




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 かくのごとし。
 実は温める前に、どうにも待ちきれなくて、ひと切れのブリを食べてしまった。
 冬の低い気温の中でも、ブリは歯の間で柔らかく崩れた。脂が充分に乗っているのだ。
 しかも、香りがいい。血合いの多い部分を食べたのに、臭みは皆無。
「ではでは... 」
 温めたブリをあらためて、ひと口。
 やっ。常温よりもやや固くなっている。加熱しすぎたかも知れない。
 電子レンジの加熱は難しい。均一に温まらないし、火加減がよく分からない。
 とはいえ、このブリは素晴らしくウマい。きっといい原料を使っているのだと思う。
 ブリのうま味が染みた大根もまた、たまらない。

 それにしても...。
 この缶詰は高校生が作っているのだ。
 その作業中には、きっと
(いろんなドラマがあったろうなー)
 推測してしまう。
 ブリを逞しく切り分ける男子を、熱い眼差しで見守る女子も、いたかも知れぬ。
 女子の家庭的な一面を見せられ、思わず恋に落ちた男子も、いたかも知れぬ。
 ああ、若いって、いいなぁ。




 固形量:120g
 内容総量:170g
 原材料名:ブリ、大根、しょうゆ、砂糖、水あめ、みりん
 原産国:日本(愛媛県宇和島市・宇和島水産高校水産食品科 )




木の屋石巻水産のサバ缶が復活!

2012-12-07 15:02:37 | 魚介

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底抜けに明るい営業・鈴木氏(左)と広報・松友氏(右)
しかしあの3.11の大震災を生き延び、今も闘ってる2人だ



 宮城県は石巻市にある木の屋石巻水産
 金華さばを使ったサバ缶やクジラ須の子缶漢方牛大和煮缶などで人気だった缶詰企業だ。
 その社屋や工場は、一昨年の東日本大震災のときに、大津波で流されてしまった。
 やがて海水が引いた後には、石巻港から押し寄せた大量のヘドロ、泥、がれきが堆積していたが...。
 その合間に、きらりと光るものがあった。
 それが、在庫の缶詰だったのであります。




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震災後の5月の様子。強烈な臭気と刺激性ガスが発生していた



 このヘドロまみれの缶詰を掘り出し、丁寧に洗って、中身が無事なものを販売しようと提案したのは、世田谷区経堂の人々だった。
「どうして経堂なの?」
 こう思われる御仁も、いらっしゃると思う。
 実は、経堂北口の外食店の一部では、09年頃からサバ缶を使ったメニューを提供し、「サバ缶の町」として話題になっていたのだ。
 中でも木の屋の金華さば缶は、その味に心底惚れ込んだ店主や客が多かった。
 だから
「今まで木の屋さんにお世話になった。今度は我々が助ける番だ」
 この一念があったのであります。
 毎週、経堂と石巻を往復する車を手配し、ボランティアの人々が往復した。
 往路は冷蔵庫や水食料、ストーブなど寄付品を積み込んで。
 復路はヘドロまみれの缶詰を満載して。



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 こうして東京に持ち帰った缶詰は、試行錯誤して作った洗剤で洗いあげた。
 これは大変な作業だった。
 重油や海水が混じり合ったヘドロは容易に落ちず、しかも異臭を放っている。
「なるべく匂いが発散しないように...」
 周囲に気を配りながら、イベントカフェ[さばのゆ]を中心に洗浄を行った。
 また、洗いあげたのはいいが、紙巻きだったラベルはもちろん、剥がれ落ちている。
 ラベルには原材料名、販売者名などが書いてあり、これがないと商品として売ることは出来ない。
 そこで方便として
「復興義援金をいただければ、この缶詰を差し上げます」
 こういう形をとっての販売だった。
 缶詰を洗ったボランティアの延べ人数、およそ4,000人。
 この運動は、やがて「希望の缶詰」と呼ばれ、メディアでも話題になった。
 さばのゆ店主の須田泰成氏によって、同じタイトルの絵本としても出版されているのであります。



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ついに復活した木の屋さばみそ煮缶

 さて、そんな木の屋さんは現在、新工場の建設が進んでいる。来春には竣工予定だという。
 商品も少しずつ再販している。12月1日には、一番人気のあったさばみそ煮缶が販売されたのだ。
 ただし現段階では、自社工場がないため、同じ石巻の缶詰企業(サンヨー食品)に製造を委託しての販売であります。
 同じ缶詰企業同士、協力しあって前に進んでいるのだ。



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サバ缶復活を祝う[さばのゆ]のイベント
缶詰deゆる薬膳著者・池田陽子さんもやって来た

 今年は海水温が高かったこともあり、金華さばの水揚げがほとんどなかったという。
 だから今回は「石巻港水揚げ、脂の乗った旬さば使用」というみそ煮缶だ。



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 久しぶりに開缶!
 香ばしさと甘さを感じる味噌の匂いが立ち昇る。
 生サバを使い、高砂長寿味噌と喜界島粗糖で仕上げるなど、基本的な作り方は金華さば缶と同じだそうだ。



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かくのごとし。
缶汁を切って白髪ネギ、ゴマ油、白ゴマをトッピング



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 残った缶汁は、熱湯を注げば一人前の味噌汁になる。
 ネギを散らすだけでもウマい。サバの出汁と脂が溶け出ているからだ。




 かくのごとく...。
 木の屋さんは、少しずつではあるが立ち上がっている。
 その闘いはまだ続いている。しかし、まずは同社がサバ缶を再販できたことに快哉を叫ぼうではないか。




 固形量:120g
 内容総量:170g
 原材料名:さば、砂糖、味噌、食塩、でん粉
 生産国:日本(販売・宮城県石巻市/木の屋石巻水産 製造・宮城県石巻市/サンヨー食品