缶詰blog

世界中の缶詰を食べまくるぞ!

なめ茸(桜町荘セレナーデ) 

2004-09-30 05:33:12 | 連載もの 桜町荘セレナーデ
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~太字部分をクリックすると画像が表示されますです~

「どーしたんだよ、悩みがあるならいえよ」
 川崎が鼻毛を引き抜きながら訊いた。
「何でもないっス」
 隼人が答える。コンポからはオフコースの『Yes No』が、切なく流れていた。
「俺達のほかに誰もいねえんだからや、いってみろ」
「いや、そのう...」
「ほれ」
 川崎がショートピースを差し出した。二人で深々と一服する。
「予備校行くために東京に来たのに、バンド活動ばっかりやっていていいのかなって」
「そうか...」
 東京は小金井市の、桜町荘。
 男4人が共同生活しているアパートである。
 居間にいるのは川崎と隼人の二人だけだった。夜の五日市街道を走るダンプの鈍重な響きが、部屋の中まで聞こえてくる。
「やっぱ大学は受けるんだろ」
「はい」
「造形? 武蔵美?」
「まだ分かんないっす」
「家庭教師のバイトはどうなの? 教え子は調子いいの?」
 川崎は気を遣い、明るい口調で訊いた。
「はい。こないだのテストで成績上がってたから」
「そっか...」
 実際はバンド活動などと言えるようなことはやっていなかったのだが。ただ単に、受験勉強をさぼっているだけなのだが。
 青年というのは、時折、わざと悩んでみたりするのである。
「つうかれたあ~っと!」勢いよくドアが開き、優が帰ってきた。
「飯食いましたか何食いましたか」
「おめえは情緒もクソもねえやつだなあ!」川崎がいう。
「まだ食ってねえよ。腹ぺこだよ」
「今夜の炊事当番、誰でしたっけ?」
「犬丸。でもあいづ、先輩のとこに飲みに行ってんだよな。ったくよう」
「あっそうだ。昨日、家から食料送ってもらったんですよ」優が台所でごそごそと物音をたて、勝ち誇ったように宣言した。
「ほうら皆さん、なめ茸でっす!」
「おっし、そいつで飯食おう! 隼人、飯炊け。4合だぞ」川崎が朗らかにいった。
「やっぱ勉強が第一だよ。オレらに付き合って無理にここにいること、ないんだぜ」
「ナンですか誰がここにいるんですか」優がベンジャミンを撫で回しながら言った。
「うるっせえなおめえは。あっそうだ。ババロア買ってこいよ。おごってやるぜ!」
「やったあ! ババロアですね。プリンではないんですね」優が嬉しそうに確認した。


 昭和59年、武蔵小金井にて つづく
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妙高なめ茸、信濃高原なめ茸
内容量:160g(120g)
原材料名:えのき茸、醤油、糖類(砂糖、ブドウ糖果糖液糖)、食塩、酵母エキス、調味料(アミノ酸等)、クエン酸、増粘多糖類、酸化防止剤(ビタミンC)・(原材料の一部に小麦を含む)
原産国:日本

信濃高原なめ茸のほうが、甘みが強いようである


ローザ スパイシーツナクリアカリー

2004-09-24 19:33:17 | 汁物
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 本日は粋人dii-chaiさんからいただいた缶詰さんでディナーである。タイ出張の際に、缶詰ブログ用に現地の缶詰を買ってきてくれたのだ。
 なんと心温まる心遣いであらう。孤高の存在を標榜していた缶詰ブログも(うそです)、いつの間にかこうして他のブロガーと交流が出来ているのである。 「続けててよかったなー」と、思わずにはいられない。

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 かくのごとし。
 凄まじい匂いがしている。多分、おそらく、きっと、赤唐辛子の匂いである。
「よしよし、ガチンコで勝負してやろうじゃないの!」
 と、珍しく闘争本能が目覚めた。こいつはただの缶詰さんではないようだ。
 中身を見ると、ツナとグリーンピースがたっぷり入っている。過激な匂いのわりにはヘルシーな具材なのでふふふと笑う。手元にあったニョッキをご飯のかわりにした。
 タイのビールで喉を潤し、さりげなーい感じでスパイシーツナクリアカリーを一口...。
 ひでぶっ、辛辛辛いっ! ものすごい辛さだ! 
 唐辛子の辛さなのだが、スーパーで売っている赤唐辛子とは本質とかイデーがまるで違っているのだ。
 薄くなった頭頂部から激しい発汗が始まった。汗は眉を通り抜け目の中へ。
 口中はヒリヒリし、目はチクチク。苦いタイビールが美味いこと! そこでまた、一口。滝汗。
 ところで、今日は頭痛がひどかったのだが、このカレーを頬張っていたら痛みが消え失せてしまった。恐るべしタイ本国のカリー。

 ああ、この勝負は筆者の完敗であった。


内容量:155g
原材料名:タイ語ゆえ判読不能
原産国:タイ


ボルミオリのジャー

2004-09-16 17:51:51 | 缶詰考察
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 今回は自分で瓶詰を作ることについて考察してみよう。“学研の科学”風の楽しい実験になること請け合いだ。
 まずは瓶。BORMIOLI社は傘下にフランスのデュラレックス社などを持つキッチンウエアの大企業。カラフやグラスなどでもおなじみだが、ここで出しているジャーが堅牢で使いやすい。
 ガラスジャーでの保存の歴史は大変古く、冷蔵庫がない時代から重宝されてきた。熱い料理を入れて密封すると常温でも数週間、ものによっては数ヶ月の保存が可能なのだ。その驚異の仕組みは使い方にある。まずは瓶と蓋を熱湯で殺菌しよう。

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 煮立てることはない。沸騰した湯を上からかけてもOKだ。注意すべきは瓶の内側、蓋の内側をまんべんなく殺菌してやること。そして自然乾燥させたのちに熱々の料理を入れ、蓋をきっちりと閉める。あとは室温で徐々に冷めていくのを待つのだ。やがて中の空気は冷えて収縮し、金属で出来た蓋の真ん中がへこむ。この内外の気圧差が高い密閉作用を作り出すのだ。だから蓋を開けるときにはペコッと小気味良い音がする。こうしておくと缶詰と同じで、非常に長い期間の保存が可能だ。ただし一度開けたら食べきること。

 酢漬けのピクルスやゆで卵ならば、何度も開け閉めしても大丈夫。いろんな大きさのジャーに食品を入れて並べておくと楽しいキッチンになるだろう。
 ちなみに一番上の画像を良く眺めていただきたい。蓋が盛り上がっているのがお分かりだろうか。これは使い方を失敗した例なのだ。中身はキムチ。良かれと思って入れてみたら、キムチは生きて発酵し続ける食品だから、中の空気が膨張してしまったのだ。さしものボルミオリさんも発酵パワーに負けて蓋が歪んでしまった。恐るべしキムチパワー!

教訓:発酵食品は密閉容器に入れないこと♪


トム・カー・スープ

2004-09-09 23:58:54 | 汁物
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 表の桜並木に黄色い葉が混じるようになった。すっかり陽が短くなった。秋である。
 ああ哀しい。やれ哀しい。私は去り行く夏を惜しみ、あの尋常でない暑さを渇望し、ひっそりと辛いスープ缶を開けたのだった。
 TOM KHA SOUPという名前の缶詰さん。エキゾチックフードというのが製造会社のようだ。タイからいらっしゃったので、あのグリーン・カレーのようにきっと今回も期待出来るだろう。 

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 かくのごとし。調理法に鶏肉とキノコを入れて熱して下さいとあった。鶏肉は100g用意したがキノコはない。
 本当は開けて熱するだけで(もしくはそのまま)食べられる缶詰を私は欲していたのだ。ああ勘違いをした。しかし開缶してみると立派なフクロタケが入っているではないか。いいではないか。

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 いやはや、実に美味い! レモングラスとココナツミルクの香りが鼻腔を上って抜けていく。トム・カー・スープというもの初めて食べたが、辛すぎず、品の良い甘みと酸味がある。そしてこの缶詰さんにはトマトとフクロタケがたっぷりと入っていてオトクでもある。これで100円というお値段だったのだ。ううむ、安すぎるっ。
 調子に乗って口に運んでいたら赤唐辛子をガブリとやってしまった。ひぃっ。たちまち薄くなった頭頂部から激しい発汗が始まった。着ているTシャツもいつの間にか汗でびっしょり。あの8月の炎天下、アスファルトの上を歩いているような状況である。
 ああやっぱり暑いのはもう充分である。素直に秋を生きていくことにします。

内容量:410g
原材料名:ココナッツミルク、フクロタケ、ガランガル、チリ、砂糖、食塩、レモングラス、酸味料、調味料(アミノ酸)
原産国:タイ
追:ガランガルはショウガの一種


マイユのマスタード

2004-09-07 20:24:14 | インポート
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 世に粒マスタードは数あれど、これが一番美味いのだとおっしゃる方々が多い。フランスはブルゴーニュ地方からいらっしゃったMAILLE®マスタードさんだ。酸味がきりっと立っていて、マスタードの粒も香ばしく苦みがない。
 マイユ社は創業が1747年。老舗であり、かつ現在も世界中のレストランが文句なく愛用しているということが人気の秘密だと思われる。食品業界でも信頼と実績は重要なのだ。

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 本日はビール。キリンの秋味だ。これが酒屋の棚に並ぶと、「ああもう秋なのだ...」としみじみすることが出来る。毎年味わいが微妙に違っているようで、そこは『がんばらないで、やせよぉ』“今シーズン初の秋味”で紹介しております。

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 どうしてビールかと言えば、本日は秋の味覚ホイル焼きなのであった。オーブンに入れる前にオリーブオイルをたらして軽く塩を振る。焼き上がったらマイユのマスタードをボテッと添える。
 この調理法は本来野外で行うのに最もふさわしいものだが、なかなか行けないので屋内で実施である。熱々のところに粒マスタードをこってりと乗せて口中へ。はふはふすると湯気が漏れる。やたらと大きなオクラはねっとりと濃厚。舞茸はソーセージの旨味とオリーブオイルを吸っておつゆたっぷり。そこに酸味の効いたマイユさんが実に良く合うのだ。やけどしそうになった舌の上に冷た~い秋味を流し込む。「今すぐ天国に召されても文句ないな、俺...」
 ホイルの底にたまった肉汁と野菜汁をすすると、ふと森の木々の匂いが蘇ったような気がした。粋人soroさん制作のバターナイフと大皿のせいか知らん。

追:同じく秋の味覚ヒラタケをフライにするユニークな料理を『イタリアごろごろ猫記』“キノコのフライ - funghi impanati”で紹介しています。実に美味そうですぞ。