築地市場移転問題を考える~有毒物質に汚染された豊洲・東京ガス工場跡地に移転して良いのか!?

築地市場の東京ガス豊洲工場跡地への移転問題は、都民および国民さらには近年急増する外国人観光客のみなさんの食の安心・安全に対して、深刻な影響を与えかねない事情を大きくはらんでいます。人体に致死的な被害をもたらしかねない有毒物質を含む土壌の上に、私たちの口に入る生鮮食品を扱う市場を建設することは、食の安心・安全の観点から常識的には考えられないことですし、そもそもそんな発想そのものがあってはならないことだと私は思います。

移転が計画された当時(2001年)、東京ガスが行った土壌汚染状況調査において、水に溶ければ青酸カリになるシアンが環境基準値の490倍、和歌山カレー事件でも知られる猛毒の砒素が環境基準値の49倍、発ガン性のあるベンゼンが環境基準値の1,500倍もの濃度で検出されました。この時点で速やかに豊洲への移転計画を中止し、むしろ築地の現在地での再整備の道を探ることが、本来東京都が都民のためにとるべき行動だったのではないかと私は思います。何よりも第一に、都民の食の安心・安全を最優先することが行政の役割であり使命です。

しかし東京都は、一旦着手した計画を白紙に戻すことに抵抗を示し、汚染された豊洲の土壌を環境基準値の10倍(!?)以下までに浄化していくとし、その説明に悪戦苦闘しているのが現状です。平成14年に施行された土壌汚染対策法は、築地市場の東京ガス豊洲工場跡地への移転計画を意識して、その附則3条にわざわざ「この法律は施行前に使用が廃止された工場敷地には適用しない」という文言を明記しています。環境省はその時点で築地市場の移転計画を承知していたのですから、東京ガス豊洲工場跡地の土壌汚染を十分に把握した上で適用除外にしたとしか考えようがありません。

本年5月に東京都は専門家会議を招集し、豊洲予定地の地下水・土壌調査およびその対策に取り組んでいますが、土壌汚染対策法で検出されてはならないと定められているシアンを完全に除去することは、土壌そのものを全て入れ替えない限り到底不可能です。揮発性の有害物質は、盛り土やコンクリートで隠蔽できるものではありません。

更に重要な問題は、この豊洲予定地は、20~30年以内にあると想定されている震度6強の直下型地震(東京湾北部地震)が発生した場合、液状化現象を起こすことが既にわかっているという点です。その場合、4本の橋だけで陸地とつながるこの埋立地は、間違いなく液状化を起し陸の孤島と化し、被災者への食糧の供給さえも不可能になってしまうのです。しかも土壌は致死的な有害物質を多く含んでいます。液状化で噴出したそれらの有害物質に汚染された市場は、有害物質が完全に除去されるまでは、私たちの口に入る食べ物を扱うことはできなくなってしまうのです。

現在東京都が招集している専門家会議は、環境汚染に関する土壌汚染対策に特化しています。平行して液状化対策のための調査にも取り組むべきですが、現段階ではまったくの不作為です。私は11月5日に行われた第5回専門家会議も傍聴しましたが、座長も液状化調査は別途行うべきであると発言していました。東京都が本気で移転を推進したいのならば、液状化の調査を実施しないことはあまりにも不誠実としか言いようがありません。

築地市場用地は、今となっては都心で唯一の23ヘクタールにも及ぶ広大な敷地です。市場を移転させ、この地の再開発を虎視眈々と狙う人々は言うまでもなく多数存在します。環境学者をも巻き込んだ反対運動が起こっているにもかかわらず東京都知事が頑なに豊洲への移転にこだわる理由には、手狭・古い・市場機能の活性化などの建前論の他に、大手ゼネコンを巻き込んだ隠された利権の謀略があるのではないかと疑われても仕方がありません。何故なら、移転予定地は、東京ガスが青酸カリの元であるシアンや和歌山カレー事件で知られる砒素などの有毒物質を垂れ流し続けた汚染された土壌であり、震度6強の直下型地震で液状化現象を起す土壌であることがわかっているからです。誰が考えても、生鮮食品を扱うには、あまりにも非常識で不適切な土地なのです。

築地市場の魅力は、一言では語り尽くせません。鐘の音で始まるまぐろのせり、あちこちで行き交うターレ、威勢のいい掛け声に気風のいい売り場の人々、関東大震災にも耐えた築地の地で、築地市場は再整備されるのが当然です。築地市場は、日本を訪れる外国人観光客からも大変注目されている名所です。まさに築地市場は、日本の食文化の殿堂です。築地市場を豊洲に移転することは、日本人が自ら日本の食文化を摘み取ることにもなるのです。

日本の食文化を大切に守りつつ、1日2,000トン以上もの水産物を扱う市場機能の更なる活性化に、東京都は知恵をしぼっていくべきなのです。都知事をはじめとする一部の利害関係者のために、日本の食文化の歴史に終止符が打たれることは絶対にあってはならないことだと強く思い、私は築地市場移転には今後も強く反対していく覚悟です。
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