『国際芸術祭 あいち2022』 Vol.6 常滑市(INAXライブミュージアム)

『国際芸術祭 あいち2022』 Vol.5 常滑市(やきもの散歩道)から続きます。「やきもの散歩道」に点在する5つの展示会場を見終えて、再び起点となる陶磁器会館へと戻ると、次のINAXライブミュージアムへのバスまで少し時間が空いていました。



常滑市で6つ目の会場にあたるINAXライブミュージアムは、「やきもの散歩道」エリアとは離れていて、会場の1つである常々から徒歩で約20分ほどと案内されていたものの、すでにかなり歩いていたので無料の巡回バスを利用することにしました。

常滑市での巡回バスは、常滑駅より陶磁器会館、そしてINAXライブミュージアムなどを回っていて、土日祝日限定にて運行(1日8便)されています。



陶磁器会館の近くにあるカフェni:noに入り、ケーキなどをいただきながら、バスの時間を待つことにしました。



いわゆる古民家風のアンティークな店内も居心地が良く、すでにピークタイムも過ぎていたからか空いていて、炎天下の常滑で歩いた疲れも癒すことができました。



巡回バスに乗り、とこなめ陶の森を経由して、約20分弱にてINAXライブミュージアムに着くと、お子さんを連れたファミリーなどで賑わっていました。



INAXライブミュージアムとは、世界のタイル博物館、建築陶器のはじまり館、土どろんこ館、陶楽工房など6館からなる文化施設で、さまざまな展示を行うだけでなく、「体験・体感型ミュージアム」として体験教室やワークショップなどを開いてきました。



「あいち2022」における同ミュージアムの展示は、大正時代の窯と建物、煙突を保存し、公開している窯のある広場・資料館の2階にて行われていて、常滑市生まれの鯉江良二が陶を用いたインスタレーションを見せていました。



それらは反核をテーマとした『証言(ミシン)』や『チェルノブイリ・シリーズ』といった作品で、いずれも社会への強いメッセージを伴っていました。



INAXライブミュージアムでの「あいち2022」の展示は鯉江の作品のみだったので、その後はミュージアムのチケットを購入し、館内の施設を見学することにしました。



まず大正から昭和初期の建築陶器と呼ばれるやきもののタイルで飾られていたのが、建築陶器のはじまり館と呼ばれる施設で、屋外広場では日本を代表するテラコッタ作品などが展示されていました。かつての横浜松坂屋本館のテラコッタや朝日生命館(旧常盤生命館)の巨大なランタンなどが目立っていたかもしれません。



子どもたちやファミリーでも賑わう土・どろんこ館では、「日本のタイル100年 ― 美と用のあゆみ」と題した企画展が開かれていて、古くは飛鳥時代にさかのぼる瓦の伝来にはじまり、明治以降の西洋の建築文化の流入によるタイル文化の変遷をたどることができました。(8月30日にて終了)



またここでは台所、トイレ、それに洗面所や銭湯、またビルや地下鉄の駅などに使われたタイルといった資料も多く展示されていて、いかに人間の生活にとってタイルが密接に関わっているのかを知ることができました。



INAXライブミュージアムでも特に見応えがあったのは、実に7000点もの装飾タイルを収蔵する世界のタイル博物館でした。



1階の常設展示室ではメソポタミアにおけるやきものの壁の再現(BC3500年頃)をはじめ、世界最古のタイルとされるエジプトの「魂のための扉」(BC2650年頃)やイスラムのタイル張りドーム天井などが紹介されていました。



とりわけ幾何学模様が広がって宝石のように輝くイスラムのドームの美しさには心を奪われました。



オランダのブルー&ホワイトのタイル(17〜18世紀)やイギリスのヴィクトリアン・タイル(1830~1903年)などにも目を引かれたかもしれません。いずれも空間を演出するかのような臨場感のある展示方法も魅力的に思えました。



続く2階では古代から近代までのタイルコレクションが、オリエント、イスラム、スペイン、中国、日本など地域別に分けて展示されていて、まさに世界各地のさまざまなタイルの様相を一覧することができました。



シリアやパキスタン、それにモロッコなど、必ずしも馴染みの深いとは言えない地域のタイルも興味深い品が多かったのではないでしょうか。さまざまに意匠の凝らされたタイルの奥深い世界に目を見張りました。



タイルに関するグッズも充実したショップを見た後は、閉館の17時まで滞在し、17時15分発の無料巡回バスに乗って常滑駅へと戻りました。

さて今回の「あいち2022」ですが、私は1日目に一宮市と愛知芸術文化センター、2日目に有松地区と常滑市の展示を巡りました。



基本的にすべての展示を見たつもりでしたが、1泊2日のスケジュールでは映像作品などへじっくり向き合う時間はなく、やはり公式サイトも推奨するように2泊3日にてスケジュールを組むのがマストと思われます。



愛知芸術文化センターの展示にどれほど時間をかけるかは人ぞれぞれかもしれませんが、少なくとも一宮市は丸1日、また常滑市も観光を兼ねると同じく1日は欲しいように感じました。一方で有松地区はコンパクトのため、私のように常滑市と兼ねて1日で回るのも無理ないかもしれません。公式サイトのモデルコースでも、有松地区と常滑市はあわせて1日としておすすめされていました。



一宮市では駅エリアと尾西エリア、および常滑市ではやきもの散歩道とINAXライブミュージアムの間の移動時間を考慮してプランニングする必要がありました。とはいえ、特に車がなくとも、徒歩や路線バス、また巡回バスを利用すれば不自由なく回ることができました。ただし屋外での移動が多いため、温度の高い日は暑さ対策が必須です。



「あいち2022」を通して特に印象に残ったのは、旧一宮市立中央看護専門学校の塩田千春と旧一宮市スケート場のアンネ・イムホフ、および愛知芸術文化センターの和合亮一、リタ・ポンセ・デ・レオン、カズ・オオシロ、百瀬文、リリアナ・アングロ・コルテス、ホダー・アフシャール、そして有松地区のガブリエル・オロスコとAKI INOMATA、常滑市でのデルシー・モレロス、シアスター・ゲイツでした。



また一概に言えませんが、愛知芸術文化センターでは「STILL ALIVE」のテーマのもと、まさにどう生きるのかが問われるような作品が多く、一方でまちなか会場では、各地の歴史や産業、文化などにリサーチした作品が目立っているように思えました。



6回に分けてブログに感想を書きましたが、少しでもこれから廻られる方の参考になれば嬉しいです。

国際芸術祭「あいち2022」は10月10日まで開催されています。

『国際芸術祭 あいち2022』関連エントリ
 Vol.1 一宮市(一宮駅エリア) / Vol.2 一宮市(尾西エリア) / Vol.3 愛知芸術文化センター / Vol.4 有松地区(名古屋市) / Vol.5 常滑市(やきもの散歩道) / Vol.6 常滑市(INAXライブミュージアム)

国際芸術祭「あいち2022」@Aichi2022
開催地域:愛知芸術センター、一宮市、常滑市、有松地区(名古屋市)
開催期間:2022年7月30日(土)~10月10日(月・祝)
開催時間:10:00~18:00(愛知芸術センター、一宮市)、10:00~17:00(常滑市、有松地区)
 ※愛知芸術センターは金曜日は20:00まで。一宮市役所は17:15まで
休館日:月曜日(愛知芸術センター、一宮市)、水曜日(常滑市、有松地区)
料金:一般3000円、学生(高校生以上)2000円、中学生以下無料
 ※フリーパス。この他に1DAYパスあり
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