『国際芸術祭 あいち2022』 Vol.4 有松地区(名古屋市)

『国際芸術祭 あいち2022』 Vol.3 愛知芸術文化センターに続きます。『国際芸術祭 あいち2022』を見てきました。



愛知芸術文化センターと並び、名古屋市を会場とするのが、名古屋駅より直線距離にて約14キロほど離れた同市南東部に位置する有松地区でした。

有松は江戸時代、尾張藩によって東海道沿いに開かれた宿場町で、往来する人のための土産物として絞り染めが考案されると、以降、有松絞りとして人気を集め、街とともに発展しました。



明治維新により一時、有松絞りは衰退するものの、その後に新たな製法の開発などによって再び隆盛し、明治後期から昭和初期にかけては最も繁栄しました。現在は有松絞りとともに、主に江戸末期から明治時代の建築物が保存され、重要伝統的建築物保存地区として日本遺産に認定されています。



有松地区の玄関口は名鉄名古屋本線の有松駅で、展示は東海道沿いのエリアにほぼ集中していました。屋外の会場としては『あいち2022』で最もコンパクトにまとまっていて、すべて歩いて回ることが可能でした。



同エリアの展示は10時にスタートするため、時間にあわせて有松駅を下車し、インフォメーションである山田家住宅(旧山田薬局)へと向かうと、伝統的な日本家屋が立ち並ぶ光景が見えてきました。



いずれも江戸末期から明治、あるいは昭和前期にかけての絞商の母家が残されていて、木造2階、切妻屋根などを基本とする統一感のある街並みが形成されていました。



有松で最も歴史ある竹田家住宅で展示を行っているのが、ドイツを拠点にするコラボレーションのプリンツ・ゴーラムとメキシコのガブリエル・オロスコでした。



このうちオロスコは、日本の古布を用いた掛け軸や伝統的な尺に触発された彫刻などを展示していて、和の空間へ幾何学的ともミニマルとも呼べるような造形を介在させていました。



この竹田家住宅は、茶室「栽松庵」へ徳川家茂が立ち寄ったとも伝えられていて、明治から大正にかけて土蔵や洋間、座敷が整備されるなど、有力な絞商の屋敷構えを伝える建物として知られてきました。



一棟の建物としては有松最大規模を誇る岡家住宅では、AKI INOMATAが職人による絞り染めの技術と虫の生態をモチーフとした団扇や映像インスタレーションを公開していて、有松の絞り染めの伝統を踏まえつつ、建物と共鳴するような展示を行っていました。



またサモアを拠点にするユキ・キハラは、同国の伝統的なテキスタイル「シアポ」と日本の振袖を融合した作品を展示していて、ビーズなどの装飾もなされた着物が畳敷の空間を鮮やかに彩っていました。



旧東海道を離れ、唯一、名鉄線の線路を挟んだ反対側にて展示を見せているのが、株式会社張正でのイワニ・スケースの『オーフォード・ネス』と題したインスタレーションでした。



ここでスケースは、雲や雨を思わせるような1000個ものガラスのオブジェを吊るしていて、作品の外からだけではなく、合間を歩いて鑑賞することもできました。



ガラスのかたちは一様ではなく、どこか雨粒とも細長い植物のようなすがたを見せていましたが、これはスケースがルーツを持つというオーストラリアの先住民の主食、ヤム芋をモチーフとしたものでした。



このほか、『あいち2022』の開幕の前に「有松手芸部」を立ち上げ、地域の人々や来場者とのコミュニティを築こうとする宮田明日鹿の作品も、有松の歴史や地域に根ざした取り込みといえるかもしれません。



おおよそ800メートルほどの東海道沿いの歴史的地区には、同地の山車を展示する有松山車会館や、絞り実演や土産物などを扱う有松・鳴海絞会館といった観光施設も点在していて、程良い街歩きとしても楽しめました。



それに岡家住宅や安藤家住宅といった東海道沿いの建物を彩った、ミット・ジャイインののれん状の絵画も芸術祭のムードを盛り上げていたかもしれません。



一通り有松の街を楽しみ、作品を鑑賞し終えたのちは、最後の会場となる常滑市へと向かいました。

『国際芸術祭 あいち2022』 Vol.5 常滑市(やきもの散歩道)へと続きます。

『国際芸術祭 あいち2022』関連エントリ
 Vol.1 一宮市(一宮駅エリア) / Vol.2 一宮市(尾西エリア) / Vol.3 愛知芸術文化センター / Vol.4 有松地区(名古屋市) / Vol.5 常滑市(やきもの散歩道) / Vol.6 常滑市(INAXライブミュージアム)

国際芸術祭「あいち2022」@Aichi2022
開催地域:愛知芸術センター、一宮市、常滑市、有松地区(名古屋市)
開催期間:2022年7月30日(土)~10月10日(月・祝)
開催時間:10:00~18:00(愛知芸術センター、一宮市)、10:00~17:00(常滑市、有松地区)
 ※愛知芸術センターは金曜日は20:00まで。一宮市役所は17:15まで
休館日:月曜日(愛知芸術センター、一宮市)、水曜日(常滑市、有松地区)
料金:一般3000円、学生(高校生以上)2000円、中学生以下無料
 ※フリーパス。この他に1DAYパスあり
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