都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「柚木沙弥郎 life・LIFE」 PLAY! MUSEUM
PLAY! MUSEUM
「柚木沙弥郎 life・LIFE」
2021/11/20〜2022/1/30
PLAY! MUSEUMで開催中の「柚木沙弥郎 life・LIFE」を見てきました。
1922年に生まれた柚木沙弥郎は、20代から型染の染色家としてデビューすると、70歳を超えてから絵本の制作を手がけるなど幅広く活動してきました。
その柚木の創作の全体を紹介するのが「life・LIFE」で、絵本の原画をはじめ、人形、ポスター、はたまた布の作品などが一堂に公開されていました。
まず冒頭に並ぶのは「絵のみち」とした絵本の仕事で、「つきよのおんがくかい」や「せんねんまんねん」、さらに「雨ニモマケズ」といった作品の原画や複製が展示されていました。
「たかいたかい」 柚木沙弥郎・作 2006年 福音館書店
「たかいたかい」はウシやネコの赤ちゃんを抱いてあげる様子を描いた作品で、赤ちゃんが嬉しそうにはしゃぐ姿を布を染める型染と同じ方法で表現していました。
「つきよのおんがくかい」 山下洋輔・文 柚木沙弥郎・絵 1999年 福音館書店
「つきよのおんがくかい」は山下洋輔のジャズコンサートの催しから着想を得た作品で、山下の役をクマが務め、イヌやネコ、それにウマなどが楽しそうに楽器を鳴らす光景を描いていました。ともかく一生懸命でかつ愉快に演奏する姿を鮮やかな色彩にて表していて、あたかも音楽のリズムまでが伝わるかのようでした。
「せんねんまんねん」 まど・みちお・詩 柚木沙弥郎・絵 2008年 福音館書店
まどみちおの詩に絵をつけた「せんねんまんねん」は、あらゆる生命が支え合い、繋がることを謳った作品で、ヤシの実やミミズ、それにヘビといった植物や生き物が、揺らぎを伴うような瑞々しい色遣いにて描かれていました。
「せんねんまんねん」 まど・みちお・詩 柚木沙弥郎・絵 2008年 福音館書店
あらゆる生き物が太陽を中心に輪になっている表紙からは、生命賛歌とも呼べるような多幸感も感じられるのではないでしょうか。まさに柚木の絵本の傑作といっても良いかもしれません。
絵葉書「注文の多い料理展」原画 1974年
元々、民藝運動から染色の道を歩んだ柚木は、民藝の拠点だった光原社(盛岡)から同社の出版した宮沢賢治の「注文の多い料理店」の絵を依頼され、型染絵による絵葉書を発表しました。その後も柚木と光原社の縁は続いていて、賢治をテーマとした作品を発表していきました。
型染ポスター
また光原社と同様、日本民藝館で開かれる展覧会や催しのための仕事にも長く携わっていて、「日本民藝協会新作工芸展」や「アフガニスタンの工芸展」といったポスターも多く手がけました。いずれも型染の技法を用いた作品で、独特の温かみのある風合いを見ることができました。
「町の人々」 2004年
紙粘土や染布、さらに古着などを素材にした人形を並べたのが「町の人々」で、絵本「トコとグーグーとキキ」に登場する動物たちをモチーフとしていました。
それらは柚木が子どもの頃に見た人形芝居の記憶も参照されていて、40数体の完成作のうち、約半数をフランスのギメ東洋美術館が収蔵し、残りの20数体が日本に残されました。
「布の森」展示風景
「絵のみち」から右へカーブする通路を抜けると現れるのが「布の森」と題する展示で、型染の技法によって作られた約50点もの色とりどりの布が一面に吊るされていました。
「布の森」展示風景
布の作品は壁だけでなく、石を敷いた展示室の中央へも吊るされていて、それこそ「布の森」の中を散策するようにしてさまざまな角度から鑑賞することができました。
「布の森」展示風景
青や茶、黄、灰色といった色はもとより、幾何学的、あるいは水、さらには動植物などモチーフも千差万別ながら、いずれもが自然のかたちを切り出して表現しているようで、絵本と同様に温もりが感じられました。
「布の森」展示風景
また布の合間を歩いていると布が微かに揺れていて、布同士が透けたり重なったりして見える光景も美しく感じました。
「柚木さんの好きなもの」
柚木が世界各国の民芸品や玩具をコレクションした「柚木さんの好きなもの」も楽しいのではないでしょうか。所狭しと納められた人形や器などを見ていると童心に帰るような気持ちにさせられました。
WEBメディア「イロハニアート」にも展覧会の内容について寄稿しました。あわせてご覧いただければ幸いです。
くらしと人生を豊かにする彩り。染色家でアーティスト、柚木沙弥郎の70年を超える創作活動の軌跡(イロハニアート)
会場内の撮影も可能でした。また巡回の予定はありません。
1月30日まで開催されています。おすすめします。
「柚木沙弥郎 life・LIFE」 PLAY! MUSEUM(@PLAY_2020)
会期:2021年11月20日(土)〜2022年1月30日(日)
休館:会期中無休。但しただし12月31日(金)、1月1日(土)、2日(日)をのぞく
時間:10:00~18:00
*平日は17:00まで。
*入場は閉館の30分前まで
料金:一般1500円、大学生1000円、高校生800円、中・小学生500円、未就学児無料。
*同時開催の「ぐりとぐら しあわせの本」展の料金も含む
*平日は当日券のみ/休日は希望者に向けてオンラインチケットの日付指定券を販売
住所:東京都立川市緑町3-1 GREEN SPRINGS W3
交通:JR立川駅北口・多摩モノレール立川北駅北口より徒歩約10分
「柚木沙弥郎 life・LIFE」
2021/11/20〜2022/1/30
PLAY! MUSEUMで開催中の「柚木沙弥郎 life・LIFE」を見てきました。
1922年に生まれた柚木沙弥郎は、20代から型染の染色家としてデビューすると、70歳を超えてから絵本の制作を手がけるなど幅広く活動してきました。
その柚木の創作の全体を紹介するのが「life・LIFE」で、絵本の原画をはじめ、人形、ポスター、はたまた布の作品などが一堂に公開されていました。
まず冒頭に並ぶのは「絵のみち」とした絵本の仕事で、「つきよのおんがくかい」や「せんねんまんねん」、さらに「雨ニモマケズ」といった作品の原画や複製が展示されていました。
「たかいたかい」 柚木沙弥郎・作 2006年 福音館書店
「たかいたかい」はウシやネコの赤ちゃんを抱いてあげる様子を描いた作品で、赤ちゃんが嬉しそうにはしゃぐ姿を布を染める型染と同じ方法で表現していました。
「つきよのおんがくかい」 山下洋輔・文 柚木沙弥郎・絵 1999年 福音館書店
「つきよのおんがくかい」は山下洋輔のジャズコンサートの催しから着想を得た作品で、山下の役をクマが務め、イヌやネコ、それにウマなどが楽しそうに楽器を鳴らす光景を描いていました。ともかく一生懸命でかつ愉快に演奏する姿を鮮やかな色彩にて表していて、あたかも音楽のリズムまでが伝わるかのようでした。
「せんねんまんねん」 まど・みちお・詩 柚木沙弥郎・絵 2008年 福音館書店
まどみちおの詩に絵をつけた「せんねんまんねん」は、あらゆる生命が支え合い、繋がることを謳った作品で、ヤシの実やミミズ、それにヘビといった植物や生き物が、揺らぎを伴うような瑞々しい色遣いにて描かれていました。
「せんねんまんねん」 まど・みちお・詩 柚木沙弥郎・絵 2008年 福音館書店
あらゆる生き物が太陽を中心に輪になっている表紙からは、生命賛歌とも呼べるような多幸感も感じられるのではないでしょうか。まさに柚木の絵本の傑作といっても良いかもしれません。
絵葉書「注文の多い料理展」原画 1974年
元々、民藝運動から染色の道を歩んだ柚木は、民藝の拠点だった光原社(盛岡)から同社の出版した宮沢賢治の「注文の多い料理店」の絵を依頼され、型染絵による絵葉書を発表しました。その後も柚木と光原社の縁は続いていて、賢治をテーマとした作品を発表していきました。
型染ポスター
また光原社と同様、日本民藝館で開かれる展覧会や催しのための仕事にも長く携わっていて、「日本民藝協会新作工芸展」や「アフガニスタンの工芸展」といったポスターも多く手がけました。いずれも型染の技法を用いた作品で、独特の温かみのある風合いを見ることができました。
「町の人々」 2004年
紙粘土や染布、さらに古着などを素材にした人形を並べたのが「町の人々」で、絵本「トコとグーグーとキキ」に登場する動物たちをモチーフとしていました。
それらは柚木が子どもの頃に見た人形芝居の記憶も参照されていて、40数体の完成作のうち、約半数をフランスのギメ東洋美術館が収蔵し、残りの20数体が日本に残されました。
「布の森」展示風景
「絵のみち」から右へカーブする通路を抜けると現れるのが「布の森」と題する展示で、型染の技法によって作られた約50点もの色とりどりの布が一面に吊るされていました。
「布の森」展示風景
布の作品は壁だけでなく、石を敷いた展示室の中央へも吊るされていて、それこそ「布の森」の中を散策するようにしてさまざまな角度から鑑賞することができました。
「布の森」展示風景
青や茶、黄、灰色といった色はもとより、幾何学的、あるいは水、さらには動植物などモチーフも千差万別ながら、いずれもが自然のかたちを切り出して表現しているようで、絵本と同様に温もりが感じられました。
「布の森」展示風景
また布の合間を歩いていると布が微かに揺れていて、布同士が透けたり重なったりして見える光景も美しく感じました。
「柚木さんの好きなもの」
柚木が世界各国の民芸品や玩具をコレクションした「柚木さんの好きなもの」も楽しいのではないでしょうか。所狭しと納められた人形や器などを見ていると童心に帰るような気持ちにさせられました。
WEBメディア「イロハニアート」にも展覧会の内容について寄稿しました。あわせてご覧いただければ幸いです。
くらしと人生を豊かにする彩り。染色家でアーティスト、柚木沙弥郎の70年を超える創作活動の軌跡(イロハニアート)
【MUSEUM 柚木沙弥郎展ムービー】PLAY! MUSEUM「柚木沙弥郎 life・LIFE」のムービーを公開しました。愉快な絵本の世界が広がる「絵のみち」、ユーモラスな人形たち、そして色とりどりの大きな布が織りなす「布の森」の空間を、ムービーでも感じていただけたら嬉しいです。https://t.co/ExcUrr049l pic.twitter.com/Nrr16AL5s6
— PLAY_2020 (@PLAY_2020) December 17, 2021
会場内の撮影も可能でした。また巡回の予定はありません。
1月30日まで開催されています。おすすめします。
「柚木沙弥郎 life・LIFE」 PLAY! MUSEUM(@PLAY_2020)
会期:2021年11月20日(土)〜2022年1月30日(日)
休館:会期中無休。但しただし12月31日(金)、1月1日(土)、2日(日)をのぞく
時間:10:00~18:00
*平日は17:00まで。
*入場は閉館の30分前まで
料金:一般1500円、大学生1000円、高校生800円、中・小学生500円、未就学児無料。
*同時開催の「ぐりとぐら しあわせの本」展の料金も含む
*平日は当日券のみ/休日は希望者に向けてオンラインチケットの日付指定券を販売
住所:東京都立川市緑町3-1 GREEN SPRINGS W3
交通:JR立川駅北口・多摩モノレール立川北駅北口より徒歩約10分
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