速水御舟「京の家・奈良の家」 東京国立近代美術館

東京国立近代美術館所蔵品ギャラリー「MOMAT コレクション」
速水御舟「京の家・奈良の家」
8/10~10/14

右に京都の町屋、左に奈良の大和棟の家屋を描いた二面の風景画。せり上がる三角形の屋根と赤や黄色の壁面。作品に組み込まれた色と形が鮮やかに浮かび上がってくる。


速水御舟「京の家・奈良の家」1927年 紙本彩色 額2面

東京国立近代美術館に今年度、新たに収蔵された速水御舟の「京の家・奈良の家」です。

描かれたのは1927年、御舟33歳の時。「モダニズム日本画への意識」(キャプションより引用)とも称される独特な画面構成。翌年には「翠苔緑芝」、さらに翌々年には「名樹散椿」と、時にセザンヌやキュビズムと関連付けられる名作を生み出した時期の作品でもあります。


速水御舟「京の家・奈良の家」1927年 左面

それにしてもここに見られる構図感は個性的です。縦に家屋も連なる奥行きのある空間にも関わらず、建物の面を切り取った構成だから、おおよそ平面的。建物を図像、もしくは平面として連ねていくという意識が強く感じられます。


速水御舟「京の家・奈良の家」1927年 右面

面白いのは建物の上部に着目した構成でもあることです。地面を描き入れないことで屋根と空が相似的に浮かび上がってくる。また大和棟の白い三角屋根と、なだらかな曲線を描く町屋の屋根の図形もどこか対比的です。また空も京都の「静」に対し、奈良は渦巻く雲が描かれるなど「動」的です。

新収蔵とありますが、何も新出の作品というわけではありません。近年、関東では一度、2008年に平塚市美術館で開催された「速水御舟ー新たなる魅力」にも出品されました。カタログにも図版の掲載があります。

「いつもとはからりと変つたものー二題ながら構図は児童のように単純だ。(略)壁の色の対比、屋根の頂上の鳩の瓦、作者の境地に住みたい。」
 評:京都日出新聞 昭和2年10月25日(「速水御舟ー新たなる魅力」展図録より。)

「もっと知りたい速水御舟/尾崎正明/東京美術」

半ば造形と色面構成の実験とも呼べるような展開。常に新たな画面の獲得を目指した御舟ならではの進取性にも富んだ作品と言えそうです。

速水御舟「京の家・奈良の家」 東京国立近代美術館本館所蔵品ギャラリー「MOMAT コレクション」 
会期:8月10日(土)~10月14日(月)
休館:月曜日。但し9/16、9/23、10/14は開館。9/17、9/24は閉館。
時間:10:00~17:00(毎週金曜日は20時まで)*入館は閉館30分前まで
料金:一般420(210)円、大学生130(70)円、高校生以下、65歳以上無料。
 *( )内は20名以上の団体料金。
 *無料観覧日(所蔵作品展のみ):9月1日(日)、10月6日(日)
場所:千代田区北の丸公園3-1
交通:東京メトロ東西線竹橋駅1b出口徒歩3分。
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