『奇想のモード』 東京都庭園美術館

東京都庭園美術館
『奇想のモード 装うことへの狂気、またはシュルレアリスム』 
2022/1/15~4/10



東京都庭園美術館で開催中の『奇想のモード 装うことへの狂気、またはシュルレアリスム』へ行ってきました。

20世紀の大きな芸術運動であったシュルレアリスムは、芸術の領域のみならず、モードの世界とも密接に関わり、多くのクリエイターらに影響を与えました。

そうしたシュルレアリスムとモードの関係を中心に、「奇想」の観点からさまざまなファッションを紹介するのが『奇想のモード 装うことへの狂気、またはシュルレアリスム』で、16世紀の歴史的なファッションプレートからコンテンポラリーアートに至る約190点の作品や資料が展示されていました。

まず目を引くのが西洋のコルセットや中国の纏足、スコットランドのライチョウの足を用いたピンなどで、サルヴァドール・ダリの大型の彫刻などとあわせて展示されていました。

そもそもシュルレアリストたちは、1938年に開催した『シュルレアリスム国際展』にて、マネキンをダリやエルンストが飾るなどモードの世界に接近していて、例えばキリコもマネキンのモチーフを絵画に取り入れたりしました。

一方でモードにおいてもシュルレアリスムを契機に新たな制作をするようになり、過去には使わなかった素材を使ったり、だまし絵的なイラストや内と外を反転させたデザインなどを採用しました。シュルレアリスムとモードとは互いに深い関係にあったといえるかもしれません。



このシュルレアリスムに共鳴したのが、ココ・シャネルのライバルでもあったデザイナー、エルザ・スキャパレッリでした。コクトーやダリとのコラボなども手がけたスキャパレッリは、「ショッキングピンク」を考案したり、当時としては奇抜ともいえるデザインを取り込んで脚光を浴びました。本館の大食堂におけるスキャパレッリのドレスなどは展示のハイライトと呼んでも良いかもしれません。


「和装の奇想」 展示風景

日本に関しては「和装の奇想」と題し、浮世絵における花魁の装いや、蛇といった小動物を象った帯留などが展示されていて、江戸時代から大正、昭和時代のユニークともいえる装いの一端を見ることができました。


舘鼻則孝 展示風景

ラストの「ハイブリットとモード」では、舘鼻則孝や串野真也、それに永澤陽一といった現代アーティストたちの作品が紹介されていて、とりわけレディ・ガガに見出されて話題を集めた舘鼻則孝の『ヒールレスシューズ』が目立っていました。


ANOTHER FARM 『Modified Paradice』2018年

串野真也と尾崎ヒロミ(スプツニ子!)によるアートユニット「ANOTHER FARM」は、遺伝子組み換えによって発光体となったシルクを用いた『Modified Paradice』を展示していて、西陣織によって仕立てられたドレスから神秘的な光が放たれていました。

ダリ、マン・レイ、スキャパレッリから舘鼻則孝まで。『奇想のモード』で知るアートとモードの密接な関係|Pen Online

アール・デコ様式の本館の佇まいとモードやシュルレアリスム作品との邂逅も見どころかもしれません。またダリやキリコといったシュルレアリスムの彫刻や絵画とともに、エルンストのポスターやカッサンドルがデザインした雑誌の表紙など、メディアに関する資料が多かったのも印象に残りました。


串野真也 展示風景

新館の展示のみ撮影が可能でした。(本館は不可)


事前予約制です。4月10日まで開催されています。

『奇想のモード 装うことへの狂気、またはシュルレアリスム』 東京都庭園美術館@teienartmuseum
会期:2022年1月15日(土)~4月10日(日)
休館:月曜日。ただし3月21日は開館、3月22日(火)は休館
時間:10:00~18:00。
 *入館は閉館の30分前まで。
料金:一般1400(1120)円 、大学生1120(890)円、中・高校生・65歳以上700(560)円。
 *( )内は20名以上の団体料金。
 *小学生以下および都内在住在学の中学生は無料。
 *第3水曜日のシルバーデーは当面中止。
住所:港区白金台5-21-9
交通:都営三田線・東京メトロ南北線白金台駅1番出口より徒歩6分。JR線・東急目黒線目黒駅東口、正面口より徒歩7分。
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