『第14回恵比寿映像祭 スペクタクル後』 東京都写真美術館

東京都写真美術館
『第14回恵比寿映像祭 スペクタクル後』
2022/2/4~2/20



2009年に映像とアートの国際フェスティバルとしてはじまった『恵比寿映像祭』は、今年で第14回を迎えるに至りました。

今回のテーマは「スペクタクル後」で、19~20世紀の博覧会や映画の歴史から現代にいたるイメージや映像表現が紹介されていました。

まず3階の展示室では、ゲスト・キュレーターの小原真史による「スペクタクルの博覧会」と題した展示が行われていて、19世紀から20世紀にかけて世界で行われた博覧会に関する資料が一堂に公開されていました。

ここでは小原自身が収集した資料と写真美術館のコレクションにより、ロンドン万博以降、第二次世界大戦後の大阪万博までの絵葉書やポスター、また写真資料などが並んでいて、かつての白人を上位とした人類学や先住民への差別といった、コロニアリズムやレイシズムの観点が浮き彫りとされていました。ともかく資料が1つの特別展のように豊富でかつ充実していて、今回の映像祭でも特に時間をかけて見入りました。

同じく3階では、撮影用カメラと映写機を一体化したシネマトグラフを発明したリュミエール兄弟に関する展示とともに、ブエノスアイレス生まれでアメリカに在住するアマリア・ウルマンの映像なども公開されていました。そのうちウルマンの作品は、日用品の巨大市場である中国・浙江省の義鳥を舞台に、作家本人が現地で仕事を得ようとする様子などを演じていて、実に12ヶ国語という多くの字幕によって展開していました。


パンタグラフ『ストロボの雨を歩く』 2015年

続く2階の展示室では、複数の現代のアーティストらが作品を公開していて、天井からは回転する傘に絵が動き、アニメーションが浮き上がるパンタグラフの『ストロボの雨を歩く』が吊るされていました。※毎時00分よりストロボを使った実演を実施。


三田村光土里『Till We Meet Again また会うために、わたしはつくろう』 2020年

三田村光土里は、遠く離れた友人たちとの再会をテーマにした映像『Till We Meet Again』と、それを起点に「アッセンブリッジ・ナゴヤ2020」にて発表したインスタレーションを再構築した展示を行っていて、とりわけ何らかの物語を呼び起こすようながらんとした寂しげな室内空間が印象に残りました。


ひらのりょう『Krasue(ガスー)』 2021年

アニメーション作家のひらのりょうによる映像インスタレーション『Krasue(ガス―)』も鮮烈だったかもしれません。日本のヤクザとタイの妖怪などが登場するアニメーションは、時に暴力的表現を伴いながら、猟奇的とも呼べるような展開を見せていて、それこそ怖いものをあえて目にしたくなるような独特の魅力が感じられました。


小田香『Day of the Dead(死者の日)』 2021年

ラストの地下展示室では3名のアーティストがスケール感のある作品を公開していて、中でも、メキシコのマヤの洞窟泉セノーテをめぐる旅をモチーフとした映像インスタレーション『Day of the Dead(死者の日)』における神秘的な世界観が心に残りました。


藤幡正樹『Voices of Aliveness』 2012年

2階と地下の展示は無料、3階の展示は有料(500円)です。無料展示も楽しめましたが、3階の「スペクタクルの博覧会」が想像以上に見応えがありました。あわせてご覧になられることをおすすめします。


三田村光土里 展示風景

『恵比寿映像祭」では展示以外にも、上映プログラムといったさまざまな催しが行われます。スケジュールなどは公式サイトをご覧ください。


2月20日まで開催されています。※一番上の写真の作品は、山谷佑介『Doors』(2019年)

『第14回恵比寿映像祭 スペクタクル後』 東京都写真美術館@topmuseum
会期:2022年2月4日(金)~2月20日(日)
休館:月曜日。
時間:10:00~20:00
 *最終日は18:00まで。
 *入館は閉館の30分前まで。
料金:無料
 *3階展示室、定員制のプログラム(上映、イヴェントなど)、一部のオンラインプログラムは有料。
場所:目黒区三田1-13-3 恵比寿ガーデンプレイス内
交通:JR線恵比寿駅東口より徒歩約7分。東京メトロ日比谷線恵比寿駅より徒歩約10分。
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