都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
『どうぶつかいぎ展』 PLAY! MUSEUM
PLAY! MUSEUM
『どうぶつかいぎ展』
2022/2/5~4/10
PLAY! MUSEUMで開催中の『どうぶつかいぎ展』を見てきました。
ドイツの作家、エーリヒ・ケストナーは絵本『動物会議』において、かわいらしい動物を主人公にして、戦争を繰り返す人間を痛烈に批判する物語を描きました。
そのケストナーの『動物会議』に着想を得て、8名のアーティストが絵画や立体、映像などの作品を公開しているのが『どうぶつかいぎ展』で、絵をつけたヴァルター・トリアーの複製原画とともに、物語の内容を追うようにして展開していました。
『無題』 梅津恭子 2021年
まず冒頭ではぬいぐるみ作家の梅津恭子が、人間たちの行いに憤りを覚えて話し合うゾウやキリンたちをぬいぐるみで表現していて、続くイラストレーターの秦直也は動物会議を開くべく世界中の動物たちと連絡をとりあう姿を細かなイラストして描いていました。
『めざせ動物ビル』 村田朋泰 2021年
動物たちが「動物ビル」に向かう様子をインスタレーションに表現したのが、アニメーション作家の村田朋泰でした。ここでは動物たちが汽車や飛行機に乗る光景をアニメに映しつつ、白くまやペンギンたちが氷山に乗って海を渡るすがたを立体の作品にて表していました。
『無題』 植田楽 2021年
造形作家の植田楽は「動物ビル」そのものの立体として表現していて、ビルの中にはセロテープで作られた86体の動物のオブジェが置かれていました。海から陸に生きる動物たちはさまざまで、中には会話していたり、喧嘩するような仕草を見せるものもいました。
『いざ、動物会議』 菱川勢一 2022年
物語の核心でもある「動物会議」の様子を作品として再現したのが、映画監督としても活動する映像作家の菱川勢一でした。
『いざ、動物会議』 菱川勢一 2022年
いずれも毛皮を丸めたような不思議なかたちをした動物たちが、ぷるぷる震えたり、ふて寝をしていたりとさまざまなすがたを見せていて、動物たちの鳴き声を取り込んだ音も流れていました。
『いざ、動物会議』 菱川勢一 2022年
それらはまるで森の中で動物たちがガヤガヤと語り合っているかのようで、時折、鳴き声がシュプレヒコールを上げるようにして盛り上がるのも臨場感がありました。
鴻池朋子 展示風景
そうした菱川の作品に向かい合うようにして展示されたのが、動物をかたどる作品でも知られる現代美術家の鴻池朋子のインスタレーションでした。
鴻池朋子 展示風景
牛の皮にキツネやタヌキを描いた絵や、妖怪のような動物たちを回転する灯籠から映し出す作品などを展示して、机の上には自らの著書『どうぶつのことば』から抜粋された「人間と動物の境界に出現するノート」を公開していました。そこからは鴻池の動物に寄り添おうとするメッセージも感じられるかもしれません。
動物たちが人間たちに突きつけたメッセージをポスターとして描いたのが、画家で絵本作家としても活動するjunaidaでした。
『闇の世界 夢の世界』 junaida 2021年
黒や赤、黄色など5色を基調としたポスターには、いずれも目隠しをした子どもたちが描かれていて、「NO WAR」や「FOR PEACE」といったスローガンが記されていました。
『闇の世界 夢の世界』(原画) junaida 2021年
それらはまさに動物が人間に提示した5つの条件が要約されるかたちで示されていて、目隠しの部分には絵本『動物会議』の内容と同様、動物と子どもたちが遊ぶ光景も表されていました。
『動物会議の最終日』 ヨシタケシンスケ 2021年
エポローグでは絵本作家のヨシタケシンスケが、『動物会議』が終わったあとのストーリーを描くとともに、ケストナーとトリアーが絵本を出版したのちのエピソードなどを表していました。
絵本『動物会議』原画/ヴァルター・トリアー/1947-49年/オンタリオ美術館蔵
『動物会議』は第二次世界大戦後の1949年に出版されましたが、戦争や貧困によって子どもたちが困難に置かれる状況は、いまだなおかつ解消されているとは全くもって言えません。現にヨーロッパでは大規模な侵略戦争が行われ、人々の命が失われるとともに、日常の生活が奪われようとしています。
今回の『どうぶつかいぎ展』では、ケストナーの原作を知らずとも作品やキャプションを通してストーリーを追うことができますが、あらためて絵本を読んだ上で、展示にじっくりと向き合うのも良いかもしれません。
ケストナーの名作絵本に現代アーティストらが向き合う。PLAY! MUSEUMの『どうぶつかいぎ展』で考える子どもたちの未来 | イロハニアート
『無題』 秦直也 2021年
撮影も可能です。4月10日まで開催されています。おすすめします。
『どうぶつかいぎ展』 PLAY! MUSEUM(@PLAY_2020)
会期: 2022年2月5日(土)~4月10日(日)
休館:2月27日(日)
時間:10:00~18:00
*平日は17:00まで。
*入場は閉館の30分前まで
料金:一般1500円、大学生1000円、高校生800円、中・小学生500円、未就学児無料。
*同時開催の「ぐりとぐら しあわせの本」展の料金も含む
*平日は当日券のみ/休日は希望者に向けてオンラインチケットの日付指定券を販売
住所:東京都立川市緑町3-1 GREEN SPRINGS W3
交通:JR立川駅北口・多摩モノレール立川北駅北口より徒歩約10分
『どうぶつかいぎ展』
2022/2/5~4/10
PLAY! MUSEUMで開催中の『どうぶつかいぎ展』を見てきました。
ドイツの作家、エーリヒ・ケストナーは絵本『動物会議』において、かわいらしい動物を主人公にして、戦争を繰り返す人間を痛烈に批判する物語を描きました。
そのケストナーの『動物会議』に着想を得て、8名のアーティストが絵画や立体、映像などの作品を公開しているのが『どうぶつかいぎ展』で、絵をつけたヴァルター・トリアーの複製原画とともに、物語の内容を追うようにして展開していました。
『無題』 梅津恭子 2021年
まず冒頭ではぬいぐるみ作家の梅津恭子が、人間たちの行いに憤りを覚えて話し合うゾウやキリンたちをぬいぐるみで表現していて、続くイラストレーターの秦直也は動物会議を開くべく世界中の動物たちと連絡をとりあう姿を細かなイラストして描いていました。
『めざせ動物ビル』 村田朋泰 2021年
動物たちが「動物ビル」に向かう様子をインスタレーションに表現したのが、アニメーション作家の村田朋泰でした。ここでは動物たちが汽車や飛行機に乗る光景をアニメに映しつつ、白くまやペンギンたちが氷山に乗って海を渡るすがたを立体の作品にて表していました。
『無題』 植田楽 2021年
造形作家の植田楽は「動物ビル」そのものの立体として表現していて、ビルの中にはセロテープで作られた86体の動物のオブジェが置かれていました。海から陸に生きる動物たちはさまざまで、中には会話していたり、喧嘩するような仕草を見せるものもいました。
『いざ、動物会議』 菱川勢一 2022年
物語の核心でもある「動物会議」の様子を作品として再現したのが、映画監督としても活動する映像作家の菱川勢一でした。
『いざ、動物会議』 菱川勢一 2022年
いずれも毛皮を丸めたような不思議なかたちをした動物たちが、ぷるぷる震えたり、ふて寝をしていたりとさまざまなすがたを見せていて、動物たちの鳴き声を取り込んだ音も流れていました。
『いざ、動物会議』 菱川勢一 2022年
それらはまるで森の中で動物たちがガヤガヤと語り合っているかのようで、時折、鳴き声がシュプレヒコールを上げるようにして盛り上がるのも臨場感がありました。
鴻池朋子 展示風景
そうした菱川の作品に向かい合うようにして展示されたのが、動物をかたどる作品でも知られる現代美術家の鴻池朋子のインスタレーションでした。
鴻池朋子 展示風景
牛の皮にキツネやタヌキを描いた絵や、妖怪のような動物たちを回転する灯籠から映し出す作品などを展示して、机の上には自らの著書『どうぶつのことば』から抜粋された「人間と動物の境界に出現するノート」を公開していました。そこからは鴻池の動物に寄り添おうとするメッセージも感じられるかもしれません。
動物たちが人間たちに突きつけたメッセージをポスターとして描いたのが、画家で絵本作家としても活動するjunaidaでした。
『闇の世界 夢の世界』 junaida 2021年
黒や赤、黄色など5色を基調としたポスターには、いずれも目隠しをした子どもたちが描かれていて、「NO WAR」や「FOR PEACE」といったスローガンが記されていました。
『闇の世界 夢の世界』(原画) junaida 2021年
それらはまさに動物が人間に提示した5つの条件が要約されるかたちで示されていて、目隠しの部分には絵本『動物会議』の内容と同様、動物と子どもたちが遊ぶ光景も表されていました。
『動物会議の最終日』 ヨシタケシンスケ 2021年
エポローグでは絵本作家のヨシタケシンスケが、『動物会議』が終わったあとのストーリーを描くとともに、ケストナーとトリアーが絵本を出版したのちのエピソードなどを表していました。
絵本『動物会議』原画/ヴァルター・トリアー/1947-49年/オンタリオ美術館蔵
『動物会議』は第二次世界大戦後の1949年に出版されましたが、戦争や貧困によって子どもたちが困難に置かれる状況は、いまだなおかつ解消されているとは全くもって言えません。現にヨーロッパでは大規模な侵略戦争が行われ、人々の命が失われるとともに、日常の生活が奪われようとしています。
今回の『どうぶつかいぎ展』では、ケストナーの原作を知らずとも作品やキャプションを通してストーリーを追うことができますが、あらためて絵本を読んだ上で、展示にじっくりと向き合うのも良いかもしれません。
戦いをやめよう。世の中をよくしよう。PLAY! MUSEUMは、ケストナーが絵本に込めた普遍的なテーマを引き継ぎ展覧会で伝えます。 https://t.co/NrQNEsfDSy
— PLAY_2020 (@PLAY_2020) February 24, 2022
ケストナーの名作絵本に現代アーティストらが向き合う。PLAY! MUSEUMの『どうぶつかいぎ展』で考える子どもたちの未来 | イロハニアート
『無題』 秦直也 2021年
撮影も可能です。4月10日まで開催されています。おすすめします。
『どうぶつかいぎ展』 PLAY! MUSEUM(@PLAY_2020)
会期: 2022年2月5日(土)~4月10日(日)
休館:2月27日(日)
時間:10:00~18:00
*平日は17:00まで。
*入場は閉館の30分前まで
料金:一般1500円、大学生1000円、高校生800円、中・小学生500円、未就学児無料。
*同時開催の「ぐりとぐら しあわせの本」展の料金も含む
*平日は当日券のみ/休日は希望者に向けてオンラインチケットの日付指定券を販売
住所:東京都立川市緑町3-1 GREEN SPRINGS W3
交通:JR立川駅北口・多摩モノレール立川北駅北口より徒歩約10分
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