都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
『再開記念展 松岡コレクションの真髄』 松岡美術館
松岡美術館
『再開記念展 松岡コレクションの真髄』
2022/1/26~4/17
設備改修工事を終え、約2年8ヶ月に再開した松岡美術館が、館蔵の名品を紹介する『再開記念展 松岡コレクションの真髄』を開催しています。
1975年、実業家の松岡清次郎(1894〜1989年)によって東京・新橋に開館した松岡美術館は、清次郎が生涯にわたって収集した東洋陶磁、日本画、西洋彫刻の作品を長く公開してきました。
そして1989年に清次郎が逝去すると、1996年には白金台の私邸跡地に新美術館の建設がはじまり、2000年に移転開館しました。そして2019年から館蔵品の修復調査と設備改修のために休館に入り、この2022年1月にリニューアルオープンを果たしました。
まず『再開記念展 松岡コレクションの真髄』にて充実しているのは、「館蔵 東洋陶磁名品選 松岡清次郎の志をたどる」と題した東洋陶磁のコレクションで、清次郎が作品を収集した経緯を辿りながら、日本、朝鮮、そして中国の陶磁が一堂に公開されていました。
『色絵 花卉文 大壺』 江戸時代(1700〜1740年代)
清次郎が最初に収集したのは日本の陶磁で、日本画を収集していた傍ら、60歳代になってから少しづつ購入すると、17〜18世紀の古伊万里を中心に90点のコレクションを築き上げました。
『青花 双鸞菊文 大盤』 中国・元時代 14世紀
そして1972年の頃に海外のオークションへ出向くと、中国陶磁の魅力に引き込まれ、積極的にコレクションしていくようになりました。
『青花龍唐草文天球瓶』 中国・明時代(1403〜1424年)
中国の明時代の『青花龍唐草文天球瓶』は同館を代表するコレクションの1つで、清次郎が一度は落札にできなかったものの、最初の落札者であったポルトガルの銀行王がクーデターにより逮捕されたため、改めて手に入れたという異例の経緯を辿った作品でした。
『青花双鳳草虫図八角瓶』 中国・元時代 14世紀
元時代の『青花双鳳草虫図八角瓶』は、世界有数のコレクションを築いたフレデリック・メイヤーの旧蔵品で、収集当時、中国の美術品としては史上2番目の金額にて落札されました。なお『青花龍唐草文天球瓶』と『青花双鳳草虫図八角瓶』は同時に出品されるのは、約7年ぶりのことでもあります。
『黄色地琺瑯彩牡丹文碗』 中国・清時代(1662〜1722年)
一連の優品の中で私が印象に残ったのは、日本の鍋島や中国の清の時代の小さな碗などで、中でも色彩鮮やかでかつ精緻な模様が描かれた『黄色地琺瑯彩牡丹文碗』に魅せられました。
池上秀畝『巨波群鵜図』 1932年
続く2つの展示室にて展開した「館蔵日本画 花鳥風月」も見応えがあって、江戸時代の酒井抱一をはじめ、近代以降の横山大観や渡辺省亭、それに小林古径らの作品が約50点(展示替えあり)ほど公開されていました。
酒井抱一『月兎』 江戸時代
酒井抱一の『月兎』は、おぼろげに照る月の下、秋草と白い兎を描いた作品で、月と兎は周囲を薄い墨でぼかす外隈と呼ばれる技法が用いられていました。すました表情で前を向く兎などがまるで影絵のように表されているのも趣き深いかもしれません。
渡辺省亭『青梅に雀の図』 1896年
渡辺省亭の『青梅に雀の図』も魅惑的な作品で、雨に濡れた梅の木へ二羽の雀がやって来る姿を描いていました。雨に溶け込むような梅の木の詩的な表現と、一転して写実的ともいえる雀の描写が巧みで、情緒深い光景を生み出していました。
下村観山『杉に栗鼠』 1907〜12年頃
横山大観の『木菟』や下村観山の『杉に栗鼠』などもかわいらしい作品ではないでしょうか。池上秀畝の『巨浪群鵜図』といった大作の屏風も見応えがありましたが、あたかも清次郎の生き物に対する慈しみが感じられるような小さな掛軸画に魅せられました。
常設展示:古代東洋彫刻 展示風景
この他、館内では古代エジプト美術から中国・ガンダーラの仏教彫刻群にインドのヒンドゥー教神像、それにヘレニズム、ローマ期の大理石彫刻、はたまたヘンリー・ムアといった西洋の近現代彫刻なども公開されていました。陶磁器、日本画などとあわせればかなりのボリュームではないでしょうか。
私も久しぶりに松岡美術館へ出かけましたが、個人の邸宅を思わせるような佇まいに惹かれるとともに、東洋陶磁を中核とした質の高いコレクションに改めて感心させられるものがありました。
『アルテミス』 ローマ期 1〜2世紀頃
展示替えの情報です。「館蔵日本画 花鳥風月」において一部の作品が入れ替わります。
「館蔵日本画 花鳥風月」出品リスト
前期:1月26日(水) ~3月6日(日)
後期:3月8日(火)~4月17日(日)
会期中に2度目の観覧が半額となる「リピーター割引券」が受付で配布(1人1枚)されています。2年に渡る修復を経て以降、初めて公開される伝周文の『竹林閑居図』(後期に出品)など、前後期追いかけながら絵画の優品を愛でるのも良さそうです。
館内は一部展示室と作品を除いて撮影が可能でした。ただし電子音やシャッター音を鳴らしての撮影やフラッシュは禁止です。消音対応のカメラアプリを利用されることをおすすめします。
予約は不要です。4月17日まで開催されています。
『再開記念展 松岡コレクションの真髄』 松岡美術館(@matsu_bi)
会期:2022年1月26日(水)~4月17日(日)
休館:月曜日(祝日の場合は翌平日)
時間:10:00~17:00。
*第一金曜日のみ19:00まで開館
*入館は閉館の30分前まで。
料金:一般1200円 、25歳以下500円、高校生以下無料。
住所:港区白金台5-12-6
交通:東京メトロ南北線・都営地下鉄三田線白金台駅1番出口から徒歩7分。
『再開記念展 松岡コレクションの真髄』
2022/1/26~4/17
設備改修工事を終え、約2年8ヶ月に再開した松岡美術館が、館蔵の名品を紹介する『再開記念展 松岡コレクションの真髄』を開催しています。
1975年、実業家の松岡清次郎(1894〜1989年)によって東京・新橋に開館した松岡美術館は、清次郎が生涯にわたって収集した東洋陶磁、日本画、西洋彫刻の作品を長く公開してきました。
そして1989年に清次郎が逝去すると、1996年には白金台の私邸跡地に新美術館の建設がはじまり、2000年に移転開館しました。そして2019年から館蔵品の修復調査と設備改修のために休館に入り、この2022年1月にリニューアルオープンを果たしました。
まず『再開記念展 松岡コレクションの真髄』にて充実しているのは、「館蔵 東洋陶磁名品選 松岡清次郎の志をたどる」と題した東洋陶磁のコレクションで、清次郎が作品を収集した経緯を辿りながら、日本、朝鮮、そして中国の陶磁が一堂に公開されていました。
『色絵 花卉文 大壺』 江戸時代(1700〜1740年代)
清次郎が最初に収集したのは日本の陶磁で、日本画を収集していた傍ら、60歳代になってから少しづつ購入すると、17〜18世紀の古伊万里を中心に90点のコレクションを築き上げました。
『青花 双鸞菊文 大盤』 中国・元時代 14世紀
そして1972年の頃に海外のオークションへ出向くと、中国陶磁の魅力に引き込まれ、積極的にコレクションしていくようになりました。
『青花龍唐草文天球瓶』 中国・明時代(1403〜1424年)
中国の明時代の『青花龍唐草文天球瓶』は同館を代表するコレクションの1つで、清次郎が一度は落札にできなかったものの、最初の落札者であったポルトガルの銀行王がクーデターにより逮捕されたため、改めて手に入れたという異例の経緯を辿った作品でした。
『青花双鳳草虫図八角瓶』 中国・元時代 14世紀
元時代の『青花双鳳草虫図八角瓶』は、世界有数のコレクションを築いたフレデリック・メイヤーの旧蔵品で、収集当時、中国の美術品としては史上2番目の金額にて落札されました。なお『青花龍唐草文天球瓶』と『青花双鳳草虫図八角瓶』は同時に出品されるのは、約7年ぶりのことでもあります。
『黄色地琺瑯彩牡丹文碗』 中国・清時代(1662〜1722年)
一連の優品の中で私が印象に残ったのは、日本の鍋島や中国の清の時代の小さな碗などで、中でも色彩鮮やかでかつ精緻な模様が描かれた『黄色地琺瑯彩牡丹文碗』に魅せられました。
池上秀畝『巨波群鵜図』 1932年
続く2つの展示室にて展開した「館蔵日本画 花鳥風月」も見応えがあって、江戸時代の酒井抱一をはじめ、近代以降の横山大観や渡辺省亭、それに小林古径らの作品が約50点(展示替えあり)ほど公開されていました。
酒井抱一『月兎』 江戸時代
酒井抱一の『月兎』は、おぼろげに照る月の下、秋草と白い兎を描いた作品で、月と兎は周囲を薄い墨でぼかす外隈と呼ばれる技法が用いられていました。すました表情で前を向く兎などがまるで影絵のように表されているのも趣き深いかもしれません。
渡辺省亭『青梅に雀の図』 1896年
渡辺省亭の『青梅に雀の図』も魅惑的な作品で、雨に濡れた梅の木へ二羽の雀がやって来る姿を描いていました。雨に溶け込むような梅の木の詩的な表現と、一転して写実的ともいえる雀の描写が巧みで、情緒深い光景を生み出していました。
下村観山『杉に栗鼠』 1907〜12年頃
横山大観の『木菟』や下村観山の『杉に栗鼠』などもかわいらしい作品ではないでしょうか。池上秀畝の『巨浪群鵜図』といった大作の屏風も見応えがありましたが、あたかも清次郎の生き物に対する慈しみが感じられるような小さな掛軸画に魅せられました。
常設展示:古代東洋彫刻 展示風景
この他、館内では古代エジプト美術から中国・ガンダーラの仏教彫刻群にインドのヒンドゥー教神像、それにヘレニズム、ローマ期の大理石彫刻、はたまたヘンリー・ムアといった西洋の近現代彫刻なども公開されていました。陶磁器、日本画などとあわせればかなりのボリュームではないでしょうか。
私も久しぶりに松岡美術館へ出かけましたが、個人の邸宅を思わせるような佇まいに惹かれるとともに、東洋陶磁を中核とした質の高いコレクションに改めて感心させられるものがありました。
『アルテミス』 ローマ期 1〜2世紀頃
展示替えの情報です。「館蔵日本画 花鳥風月」において一部の作品が入れ替わります。
「館蔵日本画 花鳥風月」出品リスト
前期:1月26日(水) ~3月6日(日)
後期:3月8日(火)~4月17日(日)
会期中に2度目の観覧が半額となる「リピーター割引券」が受付で配布(1人1枚)されています。2年に渡る修復を経て以降、初めて公開される伝周文の『竹林閑居図』(後期に出品)など、前後期追いかけながら絵画の優品を愛でるのも良さそうです。
館内は一部展示室と作品を除いて撮影が可能でした。ただし電子音やシャッター音を鳴らしての撮影やフラッシュは禁止です。消音対応のカメラアプリを利用されることをおすすめします。
本日、2年8か月ぶりに再開・「再開記念展 松岡コレクションの真髄」を開催いたします!今会期中、#松美の真髄 をつけて松岡美術館についてSNS投稿していただくと、受付での画面提示でポストカード一枚をプレゼントいたします♫皆様のご来館を心よりお待ち申し上げております。#松岡美術館 pic.twitter.com/9fUvnz1zgX
— 松岡美術館 (@matsu_bi) January 26, 2022
予約は不要です。4月17日まで開催されています。
『再開記念展 松岡コレクションの真髄』 松岡美術館(@matsu_bi)
会期:2022年1月26日(水)~4月17日(日)
休館:月曜日(祝日の場合は翌平日)
時間:10:00~17:00。
*第一金曜日のみ19:00まで開館
*入館は閉館の30分前まで。
料金:一般1200円 、25歳以下500円、高校生以下無料。
住所:港区白金台5-12-6
交通:東京メトロ南北線・都営地下鉄三田線白金台駅1番出口から徒歩7分。
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